管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

賃貸にする区分所有者はいい加減 





届出くらいはしっかりとやって欲しい




 以前から何度も書いてますが、ほんと、賃貸の部屋の扱いは疲れます。

 私もずっと前に、転勤のため、2年間だけ、「自宅マンションを別の人に貸す」ということをやったことがあります。一時期、太ったハゲのオジサンが踊りまわるCMがありましたが、あれと同じ奴です。
 その時は、特に店子の人は何も問題を起こさなくて住んでくれたためよかったでのすが、「ゴミの分別はちゃんとやってくれているだろうか?」「他の住民に迷惑をかけていないだろうか?」と遠く離れた土地からではありますが、ずいぶん心配したものです。何か問題を起こしたとしても、自分が行くことも出来ないため、その点からも、「何もなければいいが」とハラハラしていました。また、賃貸にしていた時にちょうど私が役員に就任する年だったのですが、賃貸にしたため、それを2年ずらしにしてもらったこともあり、管理組合に対して、「申し訳ない」という気持ちも持っていました。そのマンションは「年に1回、秋に住民総出で大掃除をする習慣」があったのですが、これにも当然参加できませんから、この時は事前に組合宛に手紙を書き、お詫びしておきました。そして、2年後戻ってきた際は、管理人さんに「いろいろとご迷惑をおかけしたと思います」とお土産を渡しました。 でも、こういう感覚って世間の常識とはかけ離れているようです。


管理規約では、以下のように書かれています。
「占有者は、○○マンションの使用に関して、区分所有者が管理規約および使用細則で決められた義務を負うのと同一の義務を負う」
「区分所有者は、所有する専有部分を第三者に貸与する場合、管理規約および使用細則で決められた事項を、その第三者に遵守させなければならない」
「区分所有者は、契約の相手方に、管理規約および使用細則で決められた事項を遵守する旨の誓約書を、管理組合に提出させなければならない」


また、区分所有法第6条でも、
「区分所有者から専有部分を賃貸借している者についても、同様の義務がある」と記されています。

 しかし、実際に住んでいる占有者(賃借人)は、マンション内の規則をきちんと守ろうとする人がとても少ないです。このため、当マンションでも、「賃貸部屋が占める割合は全体の約2割だが、何か問題を起こす部屋の割合では、賃貸が約5割を占める」という現状です。


■賃貸の場合、入居の段階からいい加減です。これは、仲介の不動産屋のいい加減さが原因と思われます。

「この部屋を自分の会社が扱っているということを伝えない」・・・・部屋を見学に来るお客さんを連れてくる時も、管理人室前を素通りし、何の挨拶もしません。これでは不審者です。私のほうでは、賃貸入居者(&取り扱う不動産業者)のために「手続きの仕方」「生活のルール」などをまとめた小冊子をあらかじめ作っていて、これを読んでくれれば、おおよそのことが理解できるのですが、とにかく、この書類を渡さないことにはどうしようもありません。むこうから、「今度、○○号室を仲介することになりました、××不動産です」と挨拶に来てくれないと渡せません。

「入居の届を出さない」・・・・日曜日に引越しされると、転入してきたことがこちらはわからず、「あれ、いつのまにか、あの空室に人が住んでいるぞ」ということになります。賃貸の部屋というのはたいてい勤め人で、昼間いることが少ないため、いつも留守で顔を合わすこともありません。「入居されたのなら、届出をお願いします」と手紙を書いてポストに入れておきます。すると、数日後に電話が来て、「よくわからないので不動産屋に連絡しておきます」。その数日後にようやく届出が出ます。

「”管理規約および使用細則を遵守します”と誓約書を出しているのに、規約冊子を持っていない」・・・・これっておかしいですよね。規約冊子も渡されず、当然、規約を一行も読んでいないのに、「守ります」と誓約書を提出するんですから。そして、あとで何か問題を起こしても、「そんな決まりがあるなんて知らなかった」と平気で言います。

「たいていペットを連れてくる」・・・・賃貸物件でペット可のものはまだまだ珍しいため、「犬を飼いたいために、このマンションに決めた」という人がけっこう多く、賃貸部屋のペット飼育率は8割近いです。しかし、上記のとおり、賃貸入居者は規則を知らずに入ってくるため、飼育方法はいい加減です。また、管理組合へ届け出もせずに飼う「隠れ飼い」も多いです。申請すれば認められるのに、なんで、申請しないんでしょうか? 取り扱う不動産業者も、当マンションのペット飼育ルールを理解せずに、ただ、「ペットOKですよ」と宣伝しているみたいです。ほんといい加減です。ペット会も構成員が賃貸の人が多く、活動はまったくしません。

「公共料金の手続きをせずに使い始める」・・・・これは不動産業者は関係ないですが、ガス電気水道を、届出せずに使い始める人がいます。水道検針員が、「管理人さん、この部屋、空室のはずなのに、メーターが回ってるんだけど」と質問に来ます。「いや、先月引っ越してきたよ。今住んでるよ」「え、でも、使用開始手続き取られてないんですけど」「そんなこと言われても、私は関係ないですよ。個人の問題ですから・・・」という会話があります。

「社宅利用はややこしい」・・・・賃貸の場合は、「第三者使用の届出」というものが必要で、これは、区分所有者名義で提出されます。(実際は不動産業者が代筆してますが) このときに、占有者の名義が法人の時があります。つまり、ある会社がこのマンションの一室を、その会社の「社宅」として使用しているのです。これだと、実際のその部屋に住んでいるのが誰なのかわかりません。また、入居者の出入りが発生しても、それはその会社の内部事情であり、賃貸契約上の借主の変更ではないため、何の連絡もされず、転入出のことを不動産業者も大家である区分所有者も知りません。当然、区分所有者から組合への届出も出ません。これは困ります。管理組合としては、「誰が住んでいるのかを、管理会社はきちんと把握していなければならない」としているのに、管理人は何も把握できません。また、社宅に住む人というのは、「別に自分がここを選んだわけではない。社命で住んでいるだけだ」と考えていますから、一般の賃貸入居者以上に組合活動に無関心です。


■生活がだらしない。無関心

 私は、日本人の「金払ってるんだから何しようとこっちの勝手だろう。文句言うんじゃねえよ」という感覚が嫌いです。

 しかし、賃貸入居者の中にはこういう輩の比率が高いです。賃貸入居者は自分で管理費を払っているわけではなく、賃貸料の中に管理費が含まれているのが普通のため、この部屋の管理費がいくらなのか? 具体的な数字が知りません。世間相場と比較してすごく安いのに、高級ホテルの部屋代を払っているがごとく誤解して、我々に横柄な態度をとる人がいます。ビジネスホテルに泊まっているのに、帝国ホテルのサービスを求めようとしています。大きな勘違いです。(帝国ホテルも最近はひどいらしいが)
 ゴミの出し方もいい加減です。よそから来たから理解しにくいのかもしれませんが、そういう人のために、詳細な説明書類が貼り出されていますから、読めばわかるはずです。ペットの飼育方法もひどく、「鳴き声がうるさい」「マンション内で放す」「子供に襲い掛かった」など、苦情も多いです。
 また、「このマンションは自分の財産」という考えはないため、建物を大事にしません。タバコのポイ捨て、ガムの吐き捨て(先月、このガムのせいでエレベーターのドアが故障し、エレベーターが停止しました。防犯カメラに顔がばっちり写ってましたが、「俺じゃない。俺に似た男だ」と言い張ります)、好き勝手な場所に自転車を置く、大型バイク置き場はないのに、ハーレーダビットソンを購入して共用部分に勝手に置く、など生活もルーズです。また、年に1度の排水管清掃でも「いいよ、うちの部屋は」とか言う人がいます。排水管は1室だけの問題ではなく、多数の部屋でつながっていますから、自分だけ「いいよ」ではすみません。
 無関心なので、掲示板も見ません。きちんと予告してあっても、「俺、知らなかった」ということがよくあります。

 また、管理組合も賃貸入居者のことを考慮しないため、「定期総会の案内は区分所有者にしか渡さない」「総会の議事報告も区分所有者にしか教えない」ということがあります。マンションの中で一番重要なことを決定する場なのに、「どんな議案があるのか?」も教えず、「何が決まったのか?」も教えないのですから、これはよくありません。無関心が加速されます。前回の総会では「防犯カメラ設置」が可決されましたが、このことも賃貸入居者には伝えられていませんから、工事が始まったときに初めて、「これ、何の工事なの?」「防犯カメラです」「あれ、防犯カメラ設置が決まってたの?」なんてことになります。
 賃貸入居者には議決権はありませんが、「総会や理事会などの会議の席で意見を言う権利」は保証されています。しかし、「いつ総会を開催するのか?」「何を決めるか?」を知らされていないのですから、意見の言いようがないです。これは、組合側の体制の問題です。
 そして、賃貸入居は絶対に役員になりませんから、たとえ、20年間賃貸のまま住んでいても、このマンションのことが全然わかっていない人もいます。理事会の内部に入らないとわからないことってたくさんありますからね。

 さらに、「お祭りの寄付」「地震の義捐金募集」の時なども、賃貸部屋は「支払い拒否」が多く、集金係の人が困っています。理由は「賃貸だから」というのが多いそうですが、理由になっていません。要するに、地域活動には興味がない、ということでしょうか。でも、「あの家、お祭りの寄付を断ったのに、子供が自治会の縁日に来て、ただでたくさん食べて行ったぞ」と自治会役員に私が文句を言われたこともあります。(なんで私に?子供本人に言えばいいのに)

 排水管の詰まりもよくあります。やはり、自分の所有物でないという意識か、髪の毛などをバンバン流してしまい、その結果、詰まってしまいます。フィリピンパブの寮として使われていた部屋は、大勢の女性がいたせいか特にひどかったです。


■転出のときも無届

 普通の神経があれば、引越しする時は、「管理人さん、来週の日曜日に引越しします」とか連絡しますよ。制度上も、「占有者が転出する際は、転出届を出す」ことになっていますし。でも、現実にはほとんど連絡がありません。本人が連絡しなくても、賃貸契約終了について知っている不動産屋が連絡すべきだと思うんですが、これもまずないです。たいてい、「あそこの部屋、最近静かなんだけど、もしかして引越ししたの?」と近隣部屋の住民から聞かれたときに、気づき、その後、ハウスクリーニング業者か室内改装業者が工事に入ったときにようやく「やっぱりいなくなったんだ」とわかります。しかし、この工事も事前の連絡がありません。たいていは仲介不動産業者の手配斡旋業者ですが、だったら、不動産屋が事前に連絡しなければいけないのですが、しません。これは使用細則違反です。
 転出の場合、きちんと手続きをしてくれないと、その後に、住んでいないひと宛ての「郵便が届く」「宅配便が届く」ということがあります。配達員に質問されますが、私は事情を知らないので何も答えられません。昔は、「管理人なのに、なんで知らないの?」と怒られたもんですが、今は、よそでもそういうのが多いのか、「はい、わかりました」と素直に引っ込みます。(個人情報保護法の影響もあります)
 不在の部屋というのは、管理人のほうで、郵便ポストに封緘をしておかないと大変なことになります。なにしろ、チラシやDMがすごいですから。特に、カタログ雑誌が無理やり投函されると、すぐに満杯になります。ひどいのになると、ポストが壊れます。

 それから、もっと悪質なのは、電気水道ガスの解約手続きをしないまま、出て行ってしまう人がいることです。別にたいした手間でもないのに、なんでしないんでしょうか? 解約しないと、たとえ、使用量がゼロでも、基本料をとられます。解約手続きはしないくせに、銀行口座が閉められていて、ガス会社が「引き落とし不能になりました。どういうことでしょうか? 電話も通じないし・・・」と管理人に助けを求めてくることもあります。無届は多くの人に迷惑をかけます。サラ金の借金取りが来たこともあります。「オイ、管理人! こいつどこに逃げたか知らねえか?」「しらねえよ」 夜逃げだったようです。

 「立つ鳥跡を濁さず」という言葉がありますが、メチャクチャ濁す人が時々います。まず、ペットを飼っていた部屋ではものすごく部屋の中が汚れていたりします。「敷金の没収だけじゃすまない。賠償金ものだ」と揉めている事もあります。荷物を置きっぱなしで出て行く人もいます。家具とか、食器とか、ぶら下がり健康器まで残っていたりします。そうすると、「残物整理屋」さんに依頼して処分してもらわなくてはいけません。そして、その後ハウスクリーニング屋さんがきて、一生懸命掃除します。大変な仕事です。

 困るのは、引越し間際に出すゴミ。「出て行くんだからもう関係ない」という考えなのか、ひどいもんです。(曜日ごとに細かく分別されているので出しにくいのは理解しますが) 分別はめちゃくちゃ。最悪なのは、粗大ゴミを手続きせずに勝手に置いていってしまう人がいること。これは最終的には管理組合の費用負担で処分しなければなりません。もっと最悪なのは、冷蔵庫とかテレビとか「法律で規制されている」品物をゴミ置き場に放置すること。これは行政の粗大ゴミでは出せずに、民間業者に委託して、かなり高額な処分費を払って始末します。下手すると1万円かかります。はっきりと、誰が出したのか証拠があれば、犯人に請求しますが顔がはっきり写ったビデオ映像でもなければ無理ですし、犯人がはっきりしてもシカトされればおしまいです。自転車を駐輪場に置きっぱなしで出て行く人もけっこういます。運ぶ手間よりは、転居先でまた新品を買ったほうがいいということでしょうか? 

 廊下側に面した窓の格子に傘をぶら下げたまま出て行く人もいます。台風で飛んでいったり、ビニール傘だとビニールのため、雨水が傘の内部に溜まって、もっと放置するとボウフラが沸いてくることもあります。


■鳥の巣まで

 空室の部屋に、不動産屋がお客さんを連れて見学に来た際、「キャー」という悲鳴。なんと部屋の中に鳩の巣があったのです。どうやら、ハウスクリーニングした業者が、「風通しをよくするために」ベランダ側の部屋のサッシを半分開けていたようです。仲介の不動産屋としては「すぐに次の人が入るだろう」と思っていたのに、新しい人がなかなか決まらず放置していたから、部屋の中は荒れ放題だったそうです。賃貸の場合、見学者が来ない限り、不動産業者が来訪することはまずないですから、ホッタラカシされるケースが多いのです。


■トラブル時の処理が大変


 不思議なのが、賃貸入居者が部屋に入って、何か不具合を見つけたときに、まず必ず管理人に言ってくることです。入居の挨拶すらしないくせに、「お湯がでないんですよ。直してくれませんか」と来るのです。なんか、ホテルのフロントと勘違いしてるんでしょうか? それとも、寮の管理人と思っているんでしょうか? このマンション全体が賃貸マンションだと誤解していて、「何かあったら、まずは管理人」と考えているのかもしれません。そういう時は、「専有部分内のことは管理人は関係ないです。大家さんに相談してください」と返答するんですが、その大家から電話が来て、「管理人さんのほうで業者を手配してくれませんか?」と頼まれます。なんなんでしょうねえ。私は親切ですから手配をしてあげますが、問題は修理代金の支払い。これをあらかじめちゃんと決めておかないと困ります。業者が管理人室に来て、「管理人さん。この人が代金を払ってくれないんだよ。なんとかしてくれよ」と泣きつかれます。ご当人は、「僕は賃貸で入居しているだけで、湯沸かし器の修理は大家の負担でしょ。なんで私が請求されるの?」と、ごもっともなことをおっしゃいます。これだから、「なんでも管理人任せ」は困るんです。

 「トイレが壊れた。水が流れない」なんて時も、業者を斡旋したりしますが、いざ呼ぶ段階になって、「これは備品の故障だから大家負担だ」「いや、通常の生活の中で経年劣化で発生した故障だから賃借人の負担だ」ともめることがあります。たしかに、電球などの消耗品の交換は賃借人の負担になりますが、トイレの故障は大家負担だと思います。こういう、「賃貸借契約」のことを詳しく知らない人の間にはいると面倒です。管理人はバカではできません。宅建の免許も必要かも。


■犯罪がらみも

 賃貸入居者が又貸しするケースがあります。また、所有者が自分の会社の寮として使用する場合もあります。こうなると、実際に誰が住んでいるのか? 皆目わかりません。そして、そういう部屋では犯罪がからんでくるケースがあります。「ヤクの売人」だったケースもあります。その時は、警察が来る前に、その部屋の所有者がやってきて、管理人室の扉を勝手に開けて、「何を聞かれても、”知らない”って答えてね。絶対よ。これあげるから」と、私に握らせようとしました。5千円札でした。「こんなもの、もらえませんよ」とつき返すと、管理人室用のポストに投げ込んで、「絶対に何も言わないでよ!」と言って逃げていきました。この人、今、行方不明です。当然、管理費も滞納が続いています。私は5千円の件を組合に話しましたが、組合側は「この5千円は、滞納管理費に充当していいものだろうか?」と悩んでいます。

 また、不法滞在タイ人売春婦を軟禁していた部屋もありました。人身売買というやつです。この部屋は毎日午後4時になると、怖い顔をしたお兄さんが運転するワゴン車がマンション内に入ってきて、女性を数人乗せて出て行きます。どうやら、そういう店で働かすための送迎だったようです。このように、おっかないことが多いので、私はなるべく無関心でいるようにしています。何も知らないのが一番ですから。警察に尋問されても、「本当に何も知らないんです」と言えますし。


 このように、多種多様な問題のある賃貸部屋ですが、規則的にはすべて「区分所有者は占有者に守らせる義務がある」のですから区分所有者が責任を持つべきものです。しかし、責任を放棄する人ばかりです。一番多いのは、「その部屋のことは、仲介の不動産業者に任せてある。私は関係ないから私のところには電話をしてこないでくれ」というパターンです。「管理規約では区分所有者が責任を持つことになっているんですが」と言っても、「だから、業者に任せてあるから私は関係ない」との返答。いくら説明しても理解してもらえません。それでも、最初からそういうふうに言ってくれれば、。まだ楽なんです。不動産業者に連絡しますから。しかし、たいていの所有者はそういうことを事前に伝えておくことはしません。何か問題が起きて、区分所有者(=大家)に連絡をつけて、そのときにようやく事情を教えてもらえるのです。要するに、区分所有者は何もしてないんです。店子が変われば当然届出が必要でも、そういった手続きもすべて不動産業者がやるものだと思っています。ほったらかしです。中には、今誰が住んでいるのか知らない大家もいます。賃貸料が入ってくればそれでいいんでしょう。
 しかし、「管理は不動産屋が・・・・」と言っても、不動産屋に電話すると、「うちは仲介の手続きをしているだけで、管理なんか関係ないですよ。そんなお金もらってないです」と返答するケースも多いです。たしかに、今の不動産の仲介の形態は、「不動産会社と区分所有者が契約をして、管理も何もすべて不動産会社が任される。誰に貸そうが関係ない。たとえ、入居者が滞納しても、契約した金額を所有者に払う。(しかし、手数料が高額)」という、丸投げの形が増えているようです。こうなると、完全に「管理は不動産会社が行なう」になってしまいます。賃貸入居者が起こした問題に対しても業者が対処します。任せるほうにしたら、とても楽な契約方法ですが、これは、管理規約違反になるはずです。規約には、「仲介業者」のことなど出てきません。あくまでも主体は区分所有者ですから。契約自体が無効だと思います。

 これとは逆に昔ながらの「賃貸の契約のときだけ介入する不動産業者」もいます。この場合は、入居者に何かあったときは、不動産業者ではなく、直接区分所有者に連絡をします。
 しかし、「どういう形態で不動産業者がからんでいるのか?」を事前に説明してくれる区分所有者は皆無で、このため、「区分所有者に連絡したら、”不動産屋に言ってくれ”と怒られた」とか、逆に、「不動産業者に連絡したら、”それは大家に言ってくれ”と怒られた。その大家からは、”なんで不動産業者に連絡するんだ。自分に直接言え”とも怒られた」など、なかなかうまくいかないものです。私の場合、裏目ばっかり出ます。
 また、「管理をまかされるている不動産業者」というのも一定ではありません。会社を変えるケースもあります。しかし、「取り扱いの業者を変更しました」と教えてくれる区分所有者はまずいません。このため、「○○号室の住民がベランダにすごい荷物を置いたまま出て行ったんだけど、処分してくれませんか?」(自転車を置いたまま出て行ったり、よくあります。粗大ゴミ搬出費用をケチってます)と、以前聞いていた不動産会社に電話したら、「何言ってるんだよ。うちはもうあの部屋は取り扱ってないよ」「え? そうなんですか? じゃ、今取り扱っている業者はどこですか?」「そんなの知るわけないだろ! 」(ガチャン)と言うこともシバシバ起きます。

 いずれにしろ、賃借人がなにか問題を起こして、その対応を区分所有者に求めた時に、「どうもすいません、うちの店子がご迷惑をおかけして」と謝る人は皆無です。たいていは逆切れで私のほうが怒られます。なかには、理事長に電話して、「管理人が賃借人のことでうちに電話をしてきた。迷惑だ、やめさせろ」と談判した人もいます。神経がおかしいですよ。また、逆に、「なんで大家にそんなことチクルんだ!ふざけるな! 俺がもしこの部屋を追い出されたら、お前に賠償金を請求してやる!」と脅迫してきた賃借人もいます。脅迫する前に、自分の迷惑を行為を謝罪するのが筋だろ。


■賃貸契約の内容なんて知りませんよ

 以前、賃貸入居者が、規約で禁じられている大型犬を飼い始めたことがありました。大きいし、見るからに獰猛そうなので、子供さんがいる家庭などから「あれ、おかしいんじゃないの? やめさせて」という苦情がありました。しかし、この飼い主はヤクザ関係だったようで、みなさん、その人に面と向かって「違反よ」と言う人はおらず、全部管理人任せです。理事長にお願いしても、「管理人さんのほうから注意してよ」との指示。仕方なく私が口頭で注意しましたが、そんなの聞くような相手じゃないです。玄関先で放しましたが、その恐ろしい犬を私にけしかけて、「うるせい、出て行け」。話になりません。しょうがないので、大家に電話しました。そうしたら、「え?犬を飼ってるの? うちは部屋が汚れるのが嫌なので、賃貸契約書の中で、”ペット飼育禁止”にしてるんだけど。だから、大小関係なく犬は困るのよ。管理人さん、なんでもっと早く伝えてくれないの?」と言われました。「そんなこと言われても、個々の契約内容なんて私知りませんよ」「とにかく、だめなのよ。だから、管理人さんから、”賃貸契約違反だ”と言って、やめさせてくれる?」「え? ちょっと待ってくださいよ。そんなこと私の仕事じゃないですよ。自分で言ってくださいよ」「いや、でも、うちとしては家賃をちゃんと払ってくれている人に強いこと言えないのよ」「何言ってるんですか? しっかりして下さいよ。苦情もたくさん出ているんですから・・・・・」 なんてことがありました。幸い、このヤクザは1年だけで出て行ってくれましたが、結果的には大家は何も言えなかったようです。 


■滞納が多い

 賃貸部屋の区分所有者は管理費の滞納が多いのも特徴です。自分が住んでいないということで羞恥心もないのでしょう? けっこう平気でいるみたいです。
 また、賃貸にしている区分所有者は遠方に住んでいるケースが多く、管理組合が指定する、「当マンションから一番近い銀行」が、かえって不便なこともあります。このため、「指定の銀行に口座を持つのは嫌だ。毎月自分で振り込む」と主張する人がいます。指定銀行に口座を持つのは、規約で決められたことですし、自動引き落としのほうが楽だとは思うのですが、なぜか、口座を持とうとしない人が多いです。自分で振り込むとなると、必ず、「失念」が起き、その結果滞納になります。滞納になると、その仕事は私に任されます。督促状を作成し、封筒に入れ、宛名を書いて、切手を貼り、投函します。切手代も手間もバカになりません。切手代は管理委託費の事務経費の中に含まれているため、組合としては痛くも痒くもないですが、管理会社の利益からマイナスされます。また、会計のスタッフが毎月、「この人はちゃんと入金しているか、手作業で確認しなくてはならず、会計報告書にも「○○さんから入金」と毎回書かなくてはならず、たとえ、滞納がなくても、その手間は膨大です。会計スタッフは「全員、自動引き落としにしてよ」と悲鳴を上げていますが、フロントは熱心ではありません。ひどいのは、「毎月、引き落とし日の10日後に定期的に振り込む習慣」の人がいます。この人の場合、必ずあとから払うため、最終的には滞納とはいえないのですが、会計処理上は、引き落とし日に入金がない場合は、滞納となり、督促状を作成し配布しなければなりません。そして、切手を貼って宛名を書いて毎月郵送します。なんという面倒なことをさせるのでしょうか? きちんと期日にあわせて振り込んでくれれば滞納にはならないのに。私はこの人に関してだけは、「毎回宛名を書くのは面倒だ」と思い、ラベルシールを買ってきて、PCで印刷して、毎回そのシールを封筒に貼る事にしています。(自腹です) このように毎月大変な作業をしていますが、事務方の苦労を知らない管理組合の役員は、この問題を取り上げてくれません。
 以前、一度、滞納の督促状を郵送する際に「規約に書いてありますから、○○銀行に口座を作って自動振り替えにしてください」と手紙を同封したら、管理会社のほうに、「そんなの俺の勝手だろ! 管理人ごときが指図するな!」とお怒りの匿名電話が行き、また、会社から「余計なことをするな!」と怒られたことがあります。管理規約はマンションの憲法で、我々管理会社の唯一の根拠なのに、なんで皆さん無視するんでしょうか? また、管理規約を守ろうとする管理人を管理会社が叱るのはおかしいです。以前から、「会社のほうで、”口座を作ってくれ”と伝えてよ」と口をすっぱくしてお願いしてもやらないから自分でやったのに。フロントが怠慢なんです。


■役員にならない
 
 よそのマンションでは、賃貸部屋では区分所有者が役員にならないため、「それは不公平だ」と意見が現住区分所有者から出され、それを受けて、「では、管理費を高くしよう」と決定したところもあります。管理費を改定するのではなく、「組合活動協力金」という名目で徴収しているそうです。これはいいことだと思います。本来働くべきことを免除されるのですから、なにかしらのお金を払うべきです。当マンションでも、本来なら、役員就任は10年に1回のサイクルなのに、賃貸部屋が多いために、3年に1回になってしまった階があって、その階の人はいつもブーブー言ってます。至極当然の苦情だと思います。別のマンションでは規約を改正して、賃貸入居者でも役員に就任させることが出来るようにしたところもあります。会議での議決権は、区分所有者から委任状を取って対応します。(しかし、これはごくごく稀なケースです)

 普通の神経なら、「うちは賃貸にしているために、役員にならずにすんでいて、その分、他の人に負担を押し付けている。申し訳ない」と思うのが当たり前なんですが、当の本人は「ラッキー」ぐらいにしか思っていないようです。全然悪びれた様子はありません。賃貸にしている区分所有者の中には、意外と近隣に住んでいる人も多いです。家族が増えたため、近くの一戸建てに移った、というケースです。この町自体は好きなんでしょう。離れるつもりはないそうです。こういう人は、役員になってもらってもいいんじゃないですか? 役員にならないことが、無関心・無責任を助長しているのですから。歩いて数分のところに住んでいても、総会には絶対に出席しません。

 管理組合も、「年に1回総会資料を郵送する」だけでなく、日ごろの理事会の様子も知らせるべきだと思います。多少の経費がかかりますから、「組合活動協力金の徴収」は必須条件です。


■全戸実施作業の際はもう大変

 「鉄部塗装の際の玄関扉の外枠の塗装」とか、「雑排水管清掃」とか、「消防設備点検の避難施設の点検」とか、「必ず全戸実施が必要なもの」があります。この時も、賃貸部屋が大変です。最初に述べたように、昼間いない人が多いからです。そして、誰が住んでいるのかわからない部屋もあるため、いっそう大変です。どうにもこうにも賃借人と連絡が取れない場合は、しかたなく大家に頼みますが、「自分は行けない」で終わりです。ひどいのは「俺には関係ねえ」(海パン芸人かい??)と返答します。賃借人も、自分の財産ではないため、「立会いなんか面倒。うちは別に塗装なんかしなくてもいいわよ」とか思ってますから、家にいてくれることなどしません。
 このため、「未実施のままおしまい」「別に日を改めて実施」ということになります。排水管はいっそう詰まりやすくなります。


■本人が行方不明

 賃貸にしている区分所有者は当然、外部の別のところに住んでいるのですが、組合に連絡なしに引っ越してしまうことがあります。というか、今までに「引っ越しますから、今後連絡はこっちのほうにお願いします」と伝えてくれたこと一度もないです。「総会資料を郵送したら返送されてきた」「何か大事な用があって電話をかけたら、不通だった」といった時に、転居に気がつきます。こうなると新住所を探さなくてはなりません。たいていは、仲介の不動産屋に聞けばわかるのですが、「うちも聞いてないです」という場合もあります。こうなるとやってることは探偵並です。元の住所がマンションの場合、そこの「管理組合の理事長宛」に事情を書いた手紙を郵送して、教えてもらったりします。最近は個人情報がうるさいので、「私は怪しいものではありません。こういうものです」という証拠に、自分の身分証明書のコピーも同封して送ります。ただし、そういう人というのはすべてにだらしないので、そこの管理組合にも無届で出て行ってしまったケースも多く、こうなると完全に行方不明です。
 逆のケースで、賃貸入居者とか不動産業者のほうから、「大家さんと連絡をとりたいんですが、以前聞いていた住所にいないんですよ。管理人さん知りませんか?」と聞かれることもあります。



 とにかく、賃貸部屋は大変です。そして、そういう大変なことを管理人に押し付けているということを自覚していない大家の多いこと。本来なら、菓子折り持って挨拶に来るべきなのに、連絡があるときは苦情ばっかり。

 最低限の届出事項だけはちゃんとやって欲しいです。

  
 トホホ。管理人は超つらいよ。



2007/8