管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

古紙回収リサイクル制度の崩壊
やばいよ やばいよ

2021/4




回収してくれないんです




「コロナで大阪の医療が崩壊」というニュースを見ていて考えたこと。

全国的な「大ニュース」にはなっていないのですが、ここ数年の間で
「古紙リサイクル」が崩壊しています。

古紙相場が従来の「6分の1」の価格に暴落し、「これでは利益が出ない」「回収するコストのほうが高い」ということで、次々に、古紙回収業者が「倒産」「事業撤退」しているのです。

大都市の横浜でも、古紙回収ができなくなったところがあり、新聞記事になっています。

読者の皆さんからも、「今は、管理組合が回収業者にお金を払って、回収に来てもらっています」という情報が寄せられています。


東京都資源回収事業協同組合(都内各地域で「古紙」などの再生資源を回収・リサイクルする業者の組合)では、2020年1月に「集団回収事業継続の非常事態宣言」をだしています。

古紙って、「古新聞」はもともと回収制度がありましたが、その他の紙は、以前は燃やしていました。これを「リサイクするしよう」ってことになり、行政は、地元町内会などに任せて、「集団で古紙回収して下さい。その時に発生する利益は皆さんの団体の懐に入れていいですよ」ってことで進めてきました。

しかし、引取価格が「6分の1」になると、業者も利益はないわけで、町内会に払うお金ももちろんないのです。

古紙は輸出されることも多いのですが、受け入れ先の国でも、「質の良い紙を送ってくれ」と言ってきており、異物がいろいろ混じった、「質の悪い古紙」は輸出できません。




私も実務として「分別マナーの悪さ」をよく知っていますが、「ダンボールの中に空き缶が入っていた」なんてのはよくある話です。

千葉県の我孫子市では「全国的に古紙回収が困難になっています」というのを公式hpで発表しています。
ここでは「市民がちゃんとルールを守らないと、回収してもらえません」ということをアピールしており、具体的な写真も掲載されていますが、古紙の回収なのに「空き缶」「陶磁器」「蛍光灯」まで混ざって出されており、これじゃあ、古紙としてリサイクルなんかできるわけがないです。当マンションもまったく同じような状況で、マナーの悪さに呆れ果てています。この件は、管理組合さんに対しても「なんとかしてください」とお願いしていますが、理事会の役員自体が「マナーを守らない人ばかり」なので、なんの対策もしてくれません。

そして、「ルールをいちおう守ってはいても、実際は、リサイクルの障害になる」ってこともあって、ややこしいのです。



例えば「牛乳パック」ですが、従来の「紙だけでできているもの」から、今は、「明治のおいしい牛乳」など、「プラスティック製の注ぎ口」がついたものが増えてきています。牛乳メーカーも行政も「このまま、古紙回収に出せます」と言っていますが、これも実際にあれこれ調べてみると、やはり、「紙ではない異物が混ざると、リサイクルの障害になる」「できれば、プラスティックは混ぜないで欲しい」というのが本音であり、この容器が増えることがリサイクルをやりにくくすることになるのです。
似たようなものでは「紙を留めるホッチキス」ですが、これもホッチキスメーカーは「そのまま出せます」と主張していますが、よく調べてみると、「できれば、外してからリサイクルに出す」べきものでした。

そして、うちのマンションでも大量に出される「シュレッダーゴミ」ですが、これも「紙」ではあるものの、細かくしすぎるためにリサイクルの障害になるのです。


このへんのことは、当ブログで詳細を解説しているので、合わせてお読み下さい

このように「分別マナーが悪い」「ルールに従っているが、実は、リサイクルの障害になるものもある」ということもあって、「質の良い、古紙リサイクルができない」「コストがかかって、利益が出ない」という状況になっています。

そして、当地域でも、うちのマンションに回収に来ている業者が突然つぶれました。
「来週から回収に行けません」という「紙の通知」が一方的に送られてきました。
すぐに会社に電話をかけましたが、すでに「現在使われておりません」状態でした。

市役所にも電話をしましたが、「うちもパニック状態でして・・・・」「そちらで独自に、回収業者を探して契約してもらえませんか?」と、こっちに丸投げされました。

すぐに管理組合役員に連絡して、「緊急理事会を開催して、みなさんで話し合って下さい」とお願いしましたが、ここの住民は、「ゴミのことは全部管理会社がやれ」「ルール違反のゴミも管理会社がなんとかしろ」って考えなので、何も動きません。


しょうがないので、私と、フロントのほうで、検索しまくって、手当たりしだいに、古紙回収業者に電話をかけて「うちの紙を引き取ってくれ」とお願いしますが・・・・・

「すでに倒産していて、電話がつながらない」
「赤字なので、これ以上受け付けられない」
「手を広げるともっと赤字になるから、そこには行けない」
「紙はやめて金属だけになったから無理」
という回答ばかり。

町内会や周辺マンションにもあたって、「おたくはどうなの?」と調べると、「うちも倒産なんだよ。どうしよう!」ってところと、「うちはなんともないよ」というところとあります。「なんともない」というところの会社を教えてもらい、そこにお願いしますが、「うちもそろそろ撤退しようと考えているところなので、無理です」とか言われます。

この状況を住民全体に知らせて(
組合は何もしてくれないので、管理会社側の独断で全戸配布を実施。)、「どなたか、回収業者を知りませんか? 知ってたら情報提供して下さい」とお願いしますが、誰一人、何も言ってきません。自分たちのことだという意識が皆無なのです。

そして、いよいよ、次の古紙回収日(毎週一回回収)が来ました。

「回収できなくなりました。出さないで下さい」という情報を全戸配布しているのに、いつもと同じように「古紙回収場所」に大量の紙が出されました。

しかし、回収はしてもらえませんから、こっちは何もできません。置きっぱなしにするだけです。これが2週続くと、大量になり、この場所からあふれています。
そんな状態でも、住民は自分らでなんとかしようとは思わずに、管理人に文句を言うだけです。理事長も何も動きません。
仕方ないので、清掃員と二人で、この古紙を「燃やすゴミの集積場」へ移動します。もはや、「燃やすゴミ」として出すしか無いからです。
しかし、これが公務員の糞なところなんですが、「古紙は古紙回収に出してもらう規則だから、回収しません」とか言いやがって、回収拒否されました。
なんなんだよ、役所というのは、こういう時にちゃんと対応するもんだろ! アホか!

さて、そんなことをしながらも、「引き受けてくれる業者」を探し続けたわけですが、この時に朗報が来ます。これは近所の管理人さんからの情報なんですが、そこの管理会社ががんばって、ある回収業者を見つけたようです。そして、そこの管理人さんからの口添えで、「うちのマンションにも寄って、いっしょに持っていってもいいよ」、とのことです。藁をもすがる想いで、「ぜひ、よろしくお願いします」と頼みました。こういう時に、日頃から、近所の別のマンションの管理人さんと交流をしておくことが役にたちます。(結局、うちの会社のフロントは見つけられなかった)
幸い、「マンション側からお金を払って持っていってもらう」という有料ではなく、無料で回収してもらえるそうです。
(※他のマンションでは、背に腹は変えられず、有料回収の業者に頼んだところもあったようです)

これで「一件落着」と言いたいところですが・・・・



この業者さんから、条件をつけられました。この業者としても商売ですから、質が良い紙だけを回収して、なんとか利益を出すために、なんでもかんでも回収するとはいかないのです。


「シュレッダーごみはかさばって輸送コストがかかるから回収しない」
「ホッチキスは外して欲しい」
「牛乳パックは、プラスティックの注ぎ口がついたものはだめ」
「牛乳パックは、中をきれいに洗ってから出す」
「ダンボールは送り状やガムテープなどを完全に剥がして、ちゃんと畳んで出す」
「百科事典みたいな、表面が布だったり革だったり、そういう異物が入っている本はだめ」
「崩れないように紐でちゃんとしばれ」
「ティッシュペーパーの取り出し口のビニールは剥がしてくれ」
「宅配ピザの箱は汚れているからだめ」
「ビニールで包装されたダイレクトメールは回収できない。ビニールを剥いてくれ」
「種類別に分けて置いてくれ」
などなど・・・・・

要するに「マナーをちゃんと守れ」「異物は困る」という、当たり前の要求なんですが、マナーの悪い当マンション住民にとっては「無理難題」みたいな課題でして・・・・・

ちゃんと守って古紙を出す人の割合は3割程度しかなく。。。。

つまり、7割は違反者なんです。「ちゃんとしないと回収拒否です」というのは何度も説明しましたが、理解してくれる住民は少なく・・・・ 真面目な善人の住民でも、「そんなに細かいこと理解できないわよ」と、知能が足らず。

なので、毎週、古紙回収の日は、集まった古紙を全部細かくチェックして、整理しなおさないといけないのです。そして、これって、「管理会社の仕事じゃない」のに、組合は何もしませんから、結局、こっちの仕事として押し付けられ、毎回、清掃員と二人で3時間ほどかけて、ルールに沿ったものに直しています。この労力たるや、すごい労働量です。そして、その我々が苦労している様子を見ても、住民は「ご苦労さまです」の一言もありません。「さも、当然」という顔しかしません。理事会の役員が通りかかっても、「手伝いますよ」なんて言い出す人はゼロ。



そして、コロナになってから、宅配荷物が増えて、ダンボールの量が半端なく増えています。ダンボールは、ガムテープを剥がさないといけないし、みかんとかの農産品なんかは、固くて太い金属の留め金とか使用しているので、これを取り外す作業が大変です。


幸い、コロナの影響で「ダンボールの使用量が増えて、古紙の相場の暴落が停止し、倒産する古紙回収業者の数が減った」らしいので、今、来ている業者さんもなんとか今後も回収してくれるそうですが、これも、いつまたどうなるかわかりませんし・・・・


とにかく、住民は、この「崩壊状態」を理解して、マナーをちゃんとして欲しいです。そして、「そんな高額な委託費をもらっていない管理会社が、無料奉仕で、契約外の仕事をしてくれている」という「感謝」の気持ちを持って欲しいです。

今来ている「派遣会社からの清掃員」は、人によっては、「そんなのこっちの仕事じゃないですよ。やっちゃだめです。管理組合がやるべきです」と言って、分別の仕事をしてくれない人もいて、その時は、私一人で全部やらないといけません。そんな日は、昼休みも返上で、この仕事ばっかりやって、回収時刻までに間に合わせます。


住民の民度が最悪なマンションの管理人は超〜つらいよ