管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

非常用の発電機は「2サイクル」のほうがいい???
いや
ホンダのエネポがいいと思う
さらに
大型充電池もいいと思う



2019/12  2020/1加筆
ブログで書いたのを、こちらにまとめました。コメントいただいた皆さんありがとうございます。転載させていただきます。


2018/9「北海道全体が停電しブラックアウト」したことがありました。
また、2019年9月には台風の強風で千葉県で大きな&長期間の停電がありました。
電気製品だらけの現代。電気がないと何もできません。特に、「スマートフォン」の普及により、「以前のガラケーなら1週間は持ったのに、スマホだとすぐに電池が切れて充電が必要」「スマホがないとなにもできない」という時代、「スマホを充電できない」というのが、ものすごく困ることが顕在化しました。

そんななか、「発電機」への注目が高まっています。
(アホな森田健作とかいう知事がいる千葉県では、非常用の発電機を多数保管していたにもかかわらず、県庁職員が馬鹿で、「要望がなかったので貸さなかった」とか、あとから、胸糞悪い話をしておりました。ほんと、公務員って、国を滅ぼす元凶です)



ということで、某マンション管理専門家の人(すごく人柄のいい優秀な人です)が、ブログで、発電機のことを取り上げました。取り上げるのはいいことなんですが、内容がちょっと気になりました。女性なので、機械ものが苦手なのかもしれませんが、情報を発信する以上、正確にしてもらいたい、と思った次第です。




まず、その前に、

「エンジン式発電機には、4サイクル方式と2サイクル方式がある」(※「サイクル」ではなく「ストローク」と表現する場合もあります。特にバイク乗りの間では、「ツースト」「フォースト」と呼ぶことが多いです)

ということを頭に入れておいて下さい。

そのうえで、上記専門家さんは
「2サイクルがいい」と結論づけています。

その理由は・・・
「4サイクルエンジンは、普通のガソリンを燃料として使用するが、”燃料が古くなって使えない場合がある””災害時にはガソリンスタンドのガソリンも枯渇するから入手できない”という欠点がある」

「しかし、2サイクルエンジン発電機で使用する”2サイクルオイル”は、密閉容器に入っているため、10年間も長期使用できる。ホームセンターで容易に入手できる。通常のガソリンがなくなった時でも、このオイルは店に残っている可能性が高い」

だそうです。

ということで「非常用発電機をこれから揃えるなら、2サイクルのものを買いましょう」と主張しているのですが・・・・・ 私は疑問を持ちました。

まずは、この筆者が「エンジンのこととか、よくわかっていないのではないか?」ということ。(私は、高校生からずっとバイクに乗っているので、2も4も両方とも乗った経験があり、多少の知識があります)


そのブログでは
>>>
この方式のエンジンを「2サイクルエンジン」、
その燃料を「2サイクルオイル」というのです。
「2サイクルオイル」は、
ガソリンにオイルが混ざったもので、
ガソリンスタンドでなくホームセンターでも販売できる
という特徴があります。
>>>

という文章があるのですが、これは誤解を招きます。
エンジンに関する話題の時の「オイル」というのは、「エンジン内を潤滑させるオイル」なので、「2サイクルオイル」という名称は、「潤滑オイル」だけのことを指すものであり、本来は、「2サイクルエンジン専用混合燃料」と表記するべきかと思います。(燃料は英語ではFuel) 
実際、ホームセンターでは、「2サイクルオイル下さい!」だと、分離給油する方式の2サイクルエンジン搭載のオートバイなどで使用する、「潤滑油」のことになり、燃料ではありません。

2サイクルの「発電機」や「草刈り機」や「チェーンソー」などの燃料は、「混合燃料(2サイクルエンジン専用)」と表記されて販売しています。これを「2サイクルオイル」と呼ぶのはド素人です。

蒸気機関車のことを「この電車はかっこいいですね」とか言うのと同じレベルです。



さて、「2サイクルエンジン」と「4サイクルエンジン」の長所短所を述べてみます。

<2サイクルの長所>
・エンジン構造が簡素なため、安価&小型&軽量に作れる。
・排気量あたりの出力が大きい。


<2サイクルの短所>
・潤滑オイルと燃料をいっしょに燃焼させるため、排気ガスが汚い。
・騒音がひどい。振動もひどい。
・燃費が悪い。


(このため、環境問題に厳しくなった現代、バイクでは21世紀になってからは2サイクルはなくなり、ほとんど4サイクルになっている)

<4サイクルの長所>
・2サイクルよりも排気ガスがきれい。
・騒音・振動も2サイクルより静か。
・2サイクルよりも燃費がいい。

<4サイクルの短所>
・構造が複雑なため、大きく、重く、高価になる
・定期的なエンジンオイルの交換が必要になる

といった点があります。

そういう事情のため、「発電機」に関しても、バイク同様、大手メーカーでは、「2サイクルの発電機」は作っていません。みな、4サイクルに変わっています。

つまり、「新しく買うなら2サイクルがいいですよ」と言いながら、現実には、「4サイクルの発電機しか売っていない」「2サイクルを買うのであれば、中古」ということなのです。

この点を、筆者に質問したところ、メーカーや製品名は示さないものの、「今販売中であることを確認して、この記事を書いた」との回答がありました。

しかし、私がいくら調べても、「新品の2サイクルの発電機」は見つかりませんでした。

その時に、うちのブログの読者さんが見つけてくれました。

これです。リンク先を御覧ください。

長崎にある「パワーテック」という会社の、PG700iという製品です。これが、現在入手できる唯一の「2サイクル発電機」だと思います。
安価で小型です。しかし、この会社、失礼ながら、ほとんど無名です。誰もしらないと思います。申し訳ないですが、信用できません。(ごめんなさい)

※ここまで書くと、「今、2サイクルの発電機がないのに、なんで、今でも、ホームセンターで”2サイクル用の混合燃料が売ってるの?”と疑問に思った人がいるでしょう。これには理由があります。混合燃料のパッケージにも記載されていますが、現在、2サイクル用混合燃料を使用するのは、「草刈り機」や「チェーンソー」が多いのです。



これらは、人で手で持つものです。そのため、「軽いほうがいい」ということで、今でも「2サイクル」が主になっています。また、4サイクルのエンジンは、「エンジンオイルがエンジン内下部に溜まっている構造」のため、草刈機とかチェーンソーのような持ち歩いて振り回して、動き回るものには向かず、そういう点でも2サイクルの製品が多くなっています。そういう需要があるため、今でも、混合燃料は作られています。(ただし、価格は、一般のガソリンの倍以上します)

さて、私は、他人の批評をする際に、「だったら、何がいいんだよ? 教えろよ」と言われるのを見越して、常に代案を示すようにしています。

私が、今、「マンションでの非常用の発電機としておすすめする」のは、ホンダの「エネポ」という製品です。約12万円です。
これは、家庭用のカセットコンロで使用されている「カセットボンベ」を使用します。ボンベ2本使用で、800wの電気製品を約1時間動かせます。

「燃料の入手のしやすさ」という点で考えると、カセットボンベは、ホームセンターはもちろん、スーパーやコンビニでも買えます。また、ガソリンのように保存方法にそんなに気を使う必要はありません。保存期間も、大手メーカーのボンベであれば、10年は可能です。まあ、発電機でしか使用しない、混合燃料と違い、カセットコンロでも使用できるのですから、逐次、「管理組合主催バーベキューパーティ」とかで使用して、常に新品を補充しておけばいいと思います。
素人が操作しないといけない「マンションの管理組合」では、このカセットボンベが一番、扱いやすいのではないでしょうか? ガソリンだと、給油の際に、「タバコを口に咥えたまま操作してドカン!」ってこともありますが、ボンベなら大丈夫です。ボンベの価格も、「3本450円くらい」ですから、安いです。

こういう、最適な製品があるにもかかわらず、某先生の「2サイクル発電機がいい」という言葉を鵜呑みにして、マンション管理の専門家がブログ記事にはするのは、どうかな? と思います。

さて、発電機の専門家ではない私の記述は、信頼性が低いと思います。それに対して、専門家の人からコメントいただいたので、それを転記してご紹介いたします。(「昔からのファン」さん、感謝)

>>>
発電機もどう使うかによります。ホンダのエネポは、本当にたまにしか使わない人でも、始動性が悪くないように、燃料にガスを選んでいます。それにガスボンベを使うと、ガソリン臭さから開放されます(←これ大きい)。

非常用発電機での一番のネックは、非常時にエンジンがかかりにくいことです。2サイクルでも4サイクルでも、エンジンがかからなければ意味がありません。

ガソリンを使う発電機は、気化器内に残留する燃料の影響で気化器が詰まりやすく、長期間放置した後の始動性が著しく悪化します。特に2サイクルだと、気化器内のガソリン成分だけが気化してオイルだけが残る。それが酸化して気化器内がドロドロとなります。

1ヶ月に1回以上は必ず使うと言う人なら別ですが、使うかどうかわからない非常用なら、始動性という点を考慮するとガスエンジンにメリットがあります。ガソリン臭さから開放されます(←これ大きい)。

非常用発電機での一番のネックは、非常時にエンジンがかかりにくいことです。2サイクルでも4サイクルでも、エンジンがかからなければ意味がありません。

ガソリンを使う発電機は、気化器内に残留する燃料の影響で気化器が詰まりやすく、長期間放置した後の始動性が著しく悪化します。特に2サイクルだと、気化器内のガソリン成分だけが気化してオイルだけが残る。それが酸化して気化器内がドロドロとなります。

1ヶ月に1回以上は必ず使うと言う人なら別ですが、使うかどうかわからない非常用なら、始動性という点を考慮するとガスエンジンにメリットがあります。


あと、私が管理人なら、そんな無名メーカーの品を“非常用備品”には推奨しません。
エンジンが始動しない時に、有名日本メーカー品ならメンテナンスを受けやすいけど、無名メーカーの品の場合はどうしましょうか? 絶対、「誰だこんなメーカー品を推奨しやつは!」と責められますよ。

さらに、燃料の廃棄の問題。ホームセンターで買えるという混合燃料、3年経過したらどうやって廃棄しますか? 3年の期限を無視して5〜10年保管しますか? (誰の責任で?) 備品としてたくさん買うでしょうから、使用期限後の処分が困ります。混合ガソリンは再利用できるひとがほとんどいないんです。

カセットガスは10年くらいは問題なく使えると言われています。
買うのも簡単、保管も簡単、災害時にはガスコンロで再利用できる。

そういう理由から、僕も2サイクルのその発電機はないわ、と思います。

発電機の耐用年数は何年ですか? マンションの備品なら20年くらいは使いたいところでしょう。発電機の場合は、使用しないで放置することによる故障(燃料詰まり)や、ゴムやホースの劣化、小さいパーツの破損などで動かなくなることがほとんどです。日本メーカーの発電機なら、長年の使用実績があるのでどこの部品を交換したら良いかすぐわかるし、部品もすぐに入手できます。エネポも10年の使用実績があります。

無名メーカー品の場合、一度壊れたら直せない可能性が高いです。部品の入手が困難なのです。気化器、燃料コック等が壊れたらお手上げになるかも。

電源の質の検証も重要です。エネポの場合は、家庭用医療用機器を動かせるほど出力正弦波がきれいです。無名メーカー品の場合、家庭用医療用機器をつないで大丈夫か、検証されてませんし、使用実績もありません。停電時に住人の誰かが医療機器を動かさねばならない自体が生じた場合、格安2サイクル発電機を使えますか?(医療用機器が壊れたらどうする!)

発電機一つの購入でも、長いスパン(購入から20年)を見据えた上で、いろいろ検討する必要があるのです。 

あとね、燃料のガソリンってやっかいなんです。
40L以上のガソリンの保管は、消防法令に基づく届け出をして、それなりの保管場所の確保が必要になります。40L未満でも「ガソリンをまいて・・・」の京都での事件以来、取り扱いに一層の注意が要求されています。

これに比べてカセットガスの保管はハードルが低いんです。100円ショップで売ってるし、各戸のキッチンにもあるものだから、置く場所の制約が少ない。消防法でも、保管量が300kg(ボンベ1200本分?)を越えなければ届け出が不要みたい(←私は専門でないので自信なし。要確認)。
>>>  

とのことです。やはり、専門知識のある人に解説してもらうとありがたいです。

というわけで、長崎のメーカーさんには悪いですが、私としては「2サイクル発電機はオススメしない。ホンダのエネポを買いましょう」というのが結論です。

私は個人的に、若い頃に、故本田宗一郎さんと親交があったので、ホンダ推しになる面はありますが、そういうのなしでも、ホンダのこの製品はいいと思います。実際、多くのマンションで購入してますし。
*******************************
というわけで「エンジン式発電機」のお話をしてきましたが、現在はそれ以外にも選択肢があります。高性能のバッテリーが開発されているため、
USBソケットだけでなく、「普通の家電」も使用できる「AC100ボルトのコンセント」が装備されている、大容量バッテリーというものがたくさん発売されており、非常用&防災用だけではなく、「車中泊」とか「キャンプ」などのレジャー用としても利用されています。(「ポータブル電源」とも言われる)
この記事を書いている今は、1月、厳冬期ですが、このバッテリーがあれば、車中泊のときに、なんと「電気毛布」が使えて、暖かく睡眠することができます。また、キャンプ用の低消費電力の電気釜なども発売されており、このバッテリーで車内でご飯を炊くことも可能なんです。
値段もピンきりで、電気容量もピンきりですが、だいたい、5万円くらいのものを買うと、いろいろ使えるかと思います。また、「ソーラー発電パネル」を接続できるものもあり、これがあれば、避難生活が長期化した場合でも、電気を消費しても、光発電でまた充電することが可能になります。
エンジン式発電機の場合、「燃料の保管」というのがどうしても問題になります。「ガソリン」は危険だし、ボンベといえど可燃物であり、保管には細心の注意が必要です。保管場所のスペースも必要です。大容量バッテリーは、小型化が進んでいますから、小規模マンションの管理室内に置いておくことも可能です。
「住民の皆さんのスマホの充電」「防災拠点として機能させる管理室内の電灯とかパソコンなどを動かす電力」として有効に使用できると思います。
私の個人的な考えでは、今の時代はエンジン式発電機よりも、充電池のほうがいいんじゃないか? と考えています。特に、100世帯以下の小さなマンションでは。
皆さんもいろいろ調べて検討して、防災対策を考えてください。