管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

管理室の壁にあると便利な「一覧表」あれこれ



2019/11
「過去の工事の歴史」を作成したい


管理室の中には、いろいろな「」があります。

わかりやすいところで言うと、
「住民一覧表」。部屋番号、世帯主の名前、電話番号などが一覧になったもの。
それから
「駐車場利用者一覧表」とか。駐車場番号と、部屋番号と名前、そして、車種が書かれています。
それから、
「今期の管理組合役員一覧表」なんかも大事です。役職名と部屋番号・名前が記載されています。

以上は、一般の人でもわかることだと思います。(ただし、この手の「個人名が載ったもの」に関しては、個人情報保護の関係で、「管理室の机の上に置いておく」とか「管理室の壁に貼っておく」ということが今はできなくなりました。「鍵のかかる、机の引き出しの中に保管する」とか規定されてしまい、取り出して読むのに時間がかかるようになり、不便でしょうがないです。)

さて、こういった「あるのが当然のもの」の他にも、そこの管理人が独自で作成したものもあります。
私が赴任時に驚いた「前任管理人が個人で作成した表」なんですが、それは、
「この土地における、365日分の、日の出&日の入り時刻の一覧」です。



なんでこんなものが必要かというと、管理人は、共用部分の照明灯の「点灯時間」「消灯時間」のセットをするからです。春とか秋は、1日毎に日の入り時刻とが変わっていくので、こまめにセット時間の変更をしないといけません。この資料として、「日の出 日の入り時刻」が必要になるのです。私の前任者は、大きなカレンダーの裏紙を使用して、手書きで、365日分の時刻を書いて貼っていました。すごい労力だと思います。
(これに関しては、私のほうで、抜粋版をワープロで作り直し、日の出日の入り時刻ではなく、実際にタイマーをセットする時刻に読み替えて、A4用紙1枚の表に作り変えました)

また、私が赴任して、ある程度仕事に慣れてから、業務上の必要に迫られて、独自に作ったものもいっぱいあります。
※「独自に」というのは、「会社から言われて」「理事長から言われて」でもなく、もともと、規定としてあったものでもなく、本当に、自分の判断で作ったものということです。ですから、管理人一人ひとりの考え方で変わってくると思います。「他のマンションでも、こういうのは普通にあるんだろう」とか、思わないで下さい。


○「関係先電話番号一覧表」
管理会社本社の担当部署とか電力会社とか警備会社とかエレベーター会社などのほかに、「水道のトラブルの際に連絡する業者」とか「テレビアンテナの不具合の際に依頼する会社」とか・・・・「市役所の代表電話番号」とか「社会福祉協議会」とか「清掃局」とか「一番近くの交番」とか「地元町内会の会長の自宅」とか「廃品回収業者」・・・・・いろいろと必要なものがあるので、それの電話番号の一覧表を作りました。

○「緊急時連絡先リスト」
単身高齢者とかが、いろいろと問題を起こすようになってから、必要になり、わかる範囲で作成しました。これは、その後一回、管理組合でも「ちゃんと作ろう」という決議があって、全戸調査を行なって、正式なものを作りましたが、これ一回きりで、最新版がなく、困っています。

○「賃貸部屋一覧表」
賃貸の場合、区分所有者が別のところに住んでおり、そのへんのことをひと目でわかるようにしておかないといけません。また、総会の書類を郵送する必要もあり、その点でも「一覧表」は必要になります。本来は、管理会社のほうで作っておくべき必須書類ですが、なぜか、なかったので、私の方で作りました。

○「管理費&修繕積立金の部屋タイプ別一覧表」
当マンションは、ワンルームからファミリー向け3LDKまで、多種の部屋があり、それぞれ、金額も異なります。管理規約の付録としての、「部屋タイプ別の金額一覧表」はもともとあるのですが、これだと、「Aタイプ 管理費5000円 修繕積立金6000円」とか書いてあるだけで、「302号室の管理費はいくらなんだ?」といった質問にすぐに答えることができません。このため、タイプの名前ではなく、「101号室はいくら」「708号室はいくら」というのが直感的にわかるように、私の方でアレンジしたものを新規に作成しました。
(住民は、「管理費と修繕積立金の合計額」は知ってるが、内訳を知らない人も多く、そういう質問も来ます)

○「竣工図面の部屋番号読み替え表」
大きなマンションのため、すごく分厚い竣工図書があるのですが、これも、部屋番号は記載されておらず、「タイプ」しか書いていないので、「Aタイプ 該当部屋は以下のとおり = 101 201 301・・・」といった、読み替えに必要な表を作成しました。

○「共用部分の鍵の一覧表」
これも、もともとあるんですが、もともとのものは、「その鍵を誰が持っているのかわからない」「合鍵がどれだけあるのかわからない」「実は、裏門の鍵と、屋上に出る際の鍵が同じである、ってことが、その表からはわからない」「鍵の名前や番号がわからない(設備関係の技術員は番号で話すことが多い)」など、実務上の不便があるため、これも私の方で独自にアレンジして、別の表を作りました。

○「郵便料金一覧表」
管理組合の業務って、いまだに「郵便」を利用することが多く、そのために、「切手代はいくらなのか?」は大事なため、表を作りました。

○「ペットクラブ会員名簿」
本当は、ペットクラブ自身で作るべきものなのですが、有名無実化している、このマンションのペットクラブは、規定されている「毎年、名簿を作成する。変更があった場合はすぐに名簿を作り変える」ということをしてくれないため、私のほうで作らないといけません。

○「防犯カメラ配置図」
こういうのも、防犯カメラ設置業者が作ってくれると思ってましたが、実際は、作ってくれず。しょうがないので、自分で、「1番カメラ=玄関ホール」「2番カメラ=東棟エレベーターカゴ内」といった一覧表を、実際のカメラ映像の写真を加えて作成しました。

○「AED装置を置いている周辺施設一覧表」
非常時に備えて作りました。

○「周辺のコインパーキング一覧 地図つき」
駐車希望の来客に対して、「来客用の駐車場はありません」と断った時に、「じゃあ、どこに置けばいいんだよ」と言われることが必至なので、そのため用に作っておきます。ちなみに、これは配布用に数部コピーしてあります。

○「近隣にある、当マンションと間違えそうな他のマンションの一覧表」
似たような名前で、間違えて、ここにやってきてしまう人がいるので、それ用です。




などなどいろいろあります。

ただ、「もっと作りたい」「作りたいけど、過去の資料がないので作れない (資料はあるけど、探し方がわからない)」といったものもあるのです。それは、「過去の歴史」に関わるものです。自分が、竣工当時からずっといた管理人であれば作れるのでしょうが、そうではないので、「昔のことはわからないので作れない」というものがあるのです。




一番必要性が高いものは、
○「過去の工事の履歴表」
これは大事です。「1985年 第一回鉄部塗装実施」とか「1990年 第一回大規模修繕工事実施」とか、そういう大工事もそうですし、「1982年に、台風で駐輪場の屋根が飛ばされたため、補修工事をした」といった細かいものまで、まあ、「専門の業者がやってきて作業をした」程度のものは、すべて記録が欲しいです。現状、これがないために、すごく不便な思いをしております。
自分が赴任した時点以降に関しては、自分が残している日誌があるので、なんとか調べられますが、赴任する前に関しては、記録がないので、どうしようもないです。(記録はあるのかもしれないが、容易に探せない)
過去の工事に関しては、住民が、「あの時の工事では」とか「ちょっと前にやったあれ」とか、抽象的な表現になりがちです。そして、高齢者になるほど、その時間感覚がいい加減で、「7〜8年前の」とか言いながら、「20年前」だったり、「ずっと昔」と言いながら3年前だったり。やはり、こういうのは、「2010年に行なったテレビブースターの工事」とか、はっきりした年を言えないとだめです。いや、年だけでなく、月までは欲しいです。
ちゃんとした管理会社や、ちゃんとした管理組合は、この「履歴」の重要性をわかっているので、ちゃんと作らせているはずですが、実際には、作っていないマンションも多いです。また、管理会社のリプレイスを行なうと、引き継ぎがうまく行われずに、「過去の履歴が消えてしまう」ことも起きます。要注意の最重要書類だと思います。
当HPは、「初めて理事長になり、何もわからないので読ませてもらいました」といった読者が多いですが、役員とか理事長になって、「自分のマンションをちゃんとしよう」という心意気のある人は、ぜひ、この書類の有無を確認して下さい。


その他にも、

○「漏水事故の履歴」
データが蓄積されると、「Bタイプの部屋で漏水事故が多いなあ。もしかして、施工不良か?」なんてこともわかってきます。「こんなに漏水事故が多いんじゃ、保険会社も逃げ出すわけだ」ということもわかります。

○「大規模リフォーム工事の履歴」(リノベーション スケルトン工事)
特に、「ユニットバスをまるまる交換」とか「床下の水道管も変えた」といったものは、給水管延命工事の時などに重要な資料になります。また、大掛かりな工事では、壁の中の「TVアンテナ端子」もいじってることがあり、「この部屋で、こんな変な工事をしたから、数年後に階下の部屋に影響が出たのでは?」といった際の資料になります。

○「歴代の理事長の氏名&任期一覧」
これも、けっこう大事です。(できれば、理事長だけでなく、全役員の記録が欲しいが、とりあえず、理事長の名前だけは貼っておきたい)

○「規約や細則の変更履歴」
これも大事です。特に、「途中からペット飼育OKに変わった」なんていうマンションでは重要になります。

○「管理費・修繕積立金の値上げの履歴」
こまめに変更しているところでは、大事です。

○「マンション内で起こった犯罪の記録」
「防犯カメラを設置しよう」とかになった時、「このマンションでは過去にどんな犯罪があったのか?」調べないといけないかもしれません。また、ちゃんと記録を取っていれば、「おたくの息子さん、5年前にも同じことやってるでしょ? 親として、ちゃんとしつけをしてくださいよ」ということも言えます。

など、いろいろあります。竣工当初からの全歴史に関するものは、管理人個人の努力だけではできませんから、管理人に任せないで、できれば、管理組合サイドのほうから自主的に動いて作成することが大事だと思います。


今、日本の行政は、ろくでもないことばかりやっているため、「記録はすぐに消去する」「隠蔽する」ということに必死になっていますが、現代では、「デジタル保管」という、「倉庫の不要な保管方法」があるのですから、「書類は永久保存する」ようにして欲しいと考えます。それこそ、「40年前の”桜を見る会”の出席者も、調べればわかる」というふうにしないとだめです。

管理組合に関しても、デジタル化を有効利用し、「すべての書類を永久保管する」とすべきです。いや、書類だけでなく、写真も残しておいて欲しいです。よく、マンション管理士なんかが「5年は保存しましょう」とか言ってますが、私は「永久だよ!」と言いたいです。永久といっても、100年を超えることなんかないのですから。

築40年を超える当マンションですが、「竣工当時、あれはどういうふうになっていたんだろう?」「竣工年の第一回理事会では何をしたんだ?」と調べたくなるものがあります。とにかく、記録はすべて残すべきです。デジタル化を上手に利用すれば、すべての書類を残せるんですから。
写真もすごく大事で、「この大木って、竣工時にあったっけ? 誰かが勝手に植えたんじゃないのか? だったら、切ってもいいだろ? 邪魔だし、照明等を隠してるし、落ち葉がすごくて掃除が大変だし」ってなった時に、「竣工当時の植栽の状況」の写真がちゃんと残ってると、すごく役にたちます。論より証拠ですから。
最近は、私が提案していることもあり、「定期総会終了後に、新役員や住民が、マンション内の建物探検をする」というのを習慣化しているマンションが増えていますが、この時に、徹底的に写真を撮りまくって記録に残すことも有用です。ほんと、長年管理人をやっていると、「過去の写真の重要性」を実感します。

「管理人にはデジカメを支給する」

これ、今は常識ですよ。