管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

住民の民度を管理会社の利益率に反映させる



住民のレベルが高いと、経費も安くなりますよ


管理会社が管理組合様からいただく「管理委託費」。
これって、「管理人人件費」「清掃員人件費」「エレベーター保守点検費」・・・・などを元に、ある程度、計算式・フォーマットにのっとって積算されるものです。


私は、これに「住民レベル係数」というものをかけ合わせて計算すべき、という意見を持っています。

詳しくは過去記事2件「@査定」「A査定」をお読み下さい。

この記事は、私本人は、大真面目に書いているのですが、読者の皆さんは「面白いですね」「冗談としてはよくできてます」とかいう反応が多く、真剣に取り合ってくれる人は少なかったです。

ただ、最近、潮目が少し変わってきたような気がします。

「働き方改革」の影響もあり、管理会社の中には、「フロントマンの激務」を緩和させようと考えているところもあります。具体的には「残業を減らす」「休日出勤を減らす」ということです。

今までの「管理委託費」というものに対する「管理組合側」の考えは、「携帯電話」の料金プランの「定額制電話かけ放題」みたいな感じでした。「管理費等を滞納する住民に対する督促作業」なんかでも、「毎日夜遅くにならないと家に戻ってこない、滞納住民」に対して、「じゃあ、フロントの**さん、夜の10時位にマンションに来て、滞納者に直接会って督促してよ」なんてことを平気で要求しました。
理事会の開催日時に関しても、「理事長の都合で、平日の夜9時開始になった」ため、フロントは、夜9時まで喫茶店等で時間をつぶし、それから深夜11時まで理事会に出席する、なんてことをやらされていました。
「日曜日になると、駐車場の車をいたずらされることがよくある。フロント君、日曜日に来て、パトロールしてくれ」なんてことも平気で要求しました。

要するに、「定額の管理委託費を払っているから、どんな働かせ方をしてもいいんだ」というような、鬼畜の考えを管理組合は持っていたのです。

普通に、ちょっと計算すれば、「社員をそんなふうに使えば、ものすごい人件費になる」ってことはわかるはずですが、マンション管理に関しては、「定額働かせ放題」だと思っているのが不思議です。自分の懐から直接払うわけではないため、「安○○三の外遊し放題」みたいなもんで、コスト意識がまったくないのです。

雑排水管清掃なんかでも、住民の意識が低いために、実施率が5割しかなく、半分が残ります。「半分も残ったからさあ、もう一回来てよ」なんてことを平気でいいます。これ、業者にしたら、「作業が2倍になるのに、料金は同じ」という噴飯ものなのに、管理組合側は「追加料金無し」に平気でやらせようとするのです。

私も、つい先日、理事長経験者の部屋の「漏水事故」で、終業時間のあと、深夜10時位までつきあわされましたが、その漏水の原因は、「トイレのウォシュレット更新工事をした業者の手抜き工事が原因」でした。つまりは、「専有部分内で、住民が私的な工事を行なった際の不具合」であり、「管理会社はまったく関係がなく、非もない」ものでした。それに長時間つきあわされたわけです。これ、普通だったら、「管理委託費の他に、別途で人件費を払ってもらわないと困る」ものですが、その理事長経験者はまったくそんなことは思いません。お茶の一杯も出ず、「すいませんね、遅くまで」の一言もなく、タダ働きさせました。
こういうのは、私はしっかりと残業代を申告します。ということは、管理会社としては、「利益が6000円減少した」ってことになるわけですが、それを管理組合に請求することはありません。

ここ10数年の間、特に「マンション管理士」という職業が生まれてから、マンション管理業界では、「管理委託費の値下げ」があちこちで行われ、管理委託費で利益をあげることがなかなかできなくなってきました。利益が少ないのに、さらに「残業代まで負担しないといけない」「悪質行為をする住民がいるために休日出勤しないといけない」なんてことをやらされたら、会社経営としたら、たまったもんじゃないです。
そのため、ここのところ、「委託費を値上げする」とか「契約を更新しない」なんてことが現実に起きています。管理会社サイドから考えれば、「悪質住民ばかり」「理事会はなにもしない」「管理会社の負担がものすごく大きい」「委託費は安い」なんてところは「これ以上やりたくない」「儲けられるマンションだけ扱いたい」のが本音です。

それでも、まだまだ、「簡単には委託費の値上げはできない」「契約解消はできない」という状況下、どこで「利益を上げる」かというと、「修繕工事」とかになります。

今は、どこの管理会社も、本体の「定額管理委託費」では利益をあげることができず、「大規模修繕工事」をトップとする各種工事で稼ぐしかないのが現実です。

具体的に言うと、「連結送水管配管が経年劣化でだめになった。新しく露出で別の配管を設置することになった。下請け業者に発注すると、500万円かかる。これに管理会社の利益を2割加えて600万円にして、管理組合に請求する」というようなことです。

うちの会社は、この上乗せ率が低くて、だいたい、「1割」ですが、他社さんの場合、「3割」「4割」なんて当たり前で、もっとふっかける場合もあります。「相見積もりすれば大丈夫だろ」って言いますが、管理会社に対して「3社分の見積もりを出してよ」と言っても、その3社すべてに管理会社の利益を上乗せしますから意味がないです。相見積もりをするのであれば、理事会の役員が自分で会社を探してこないと、意味がないのです。ただ、役員が見つけてきた業者に工事をさせる場合は、管理会社は一切利益が出ませんから、工事の準備とか、工事の監視とか、工事終了後のアフターに関することとか、そういうのに関わることはしません。だってお金をもらってませんから。ですから、そういうことはしっかりと管理組合さんがセルフサービスでやってもらわないとだめです。「監視の目がないから、手抜きした」なんてのもありますが、これの責任は管理会社ではなく管理組合になります。

さて、この「上乗せ率」ですが、ずっと1割程度でやってきた当社も、このマンションの住民の民度のひどさに辟易して、最近は、「もう1割では無理だ。3割貰おう」なんてことになってきました。
つまり、
「住民の民度が低いと、工事費が高くなる」ということです。

私が昔書いた「住民レベル係数」というのが、形を変えて実際に起きているということになります。
まあ、現実的に「住民が掲示物を全く読まない」「クソガキが多く、そういう連中がいたずらしないように、警備員を立てて監視しないといけない」なんて場合は、警備員の人件費がかかってきますから、工事費が高くなるのは道理です。

逆に言うと、住民がしっかりしていて、理事会もちゃんと機能していれば、管理会社の手間も少なくて済むので、そんなに上乗せしなくてもよくなるので、結果的に工事費は安くなります。

このように、私が書いた「査定」の記事は「冗談」みたいなものでしたが、「工事」とかに関して、現実に起きているということなんです。

民度が高ければ、マンションの維持管理のコストも安くなる


これをよく覚えて下さい。