管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

住民の間の温度差というもの
(世代間だったり、建物ごとだったり)




<世代間の意識の差?>
先日の理事会でこんなことがありました。





理事会開催日の2週間前に、ちょっとした緊急案件が生じました。敷地内にある「某設備」に関することなのですが、これが「小さな子供にとっては非常に危険なこと」だが「大人にはまったく影響のないこと」という性格のものです。
管理会社としては、「これを放置すると小さな子供が死ぬ危険性がある」ということで早急に動き、理事長や副理事長2名に相談し、「急いで対処しないと死亡事故になるかもしれません。すぐに工事業者を手配して見積もりを出させますので、次回の理事会で実施決定をしましょう」と進言。
出てきた見積もりは、その工事の相場としたらそんなに高くはなく妥当な金額。他の役員にも事前に、このことを知らせておいた。そして、理事会の席で決を取ろうとしたら・・・・

この場にいたみんなが「これは急いでやらないと」と思っており、当然、「全員一致で可決」のはずだったんですが、めったに理事会に出ないで、今回はたまたま出席した1人の役員だけ反対をしました。
理由を聞くと、
「小さな子供のためだけに管理組合がお金を出すのは納得できない」とのこと。(この人は単身高齢者女性で独身)
他の人はみんな「え?」って感じで説明を求めました。

「大人には関係ないんでしょ? 小さな子供にだけ危険なんでしょ? だったら、何もしないで放置でいいじゃない? マンション内の小さな子供がいる家庭に直接行って、”あそこは危険なんで、子供が近寄らないようにして下さい”って言えばいいじゃない」
「でも、来訪する人の中にも小さな子供がいるかもしれませんよ」
「注意書きを貼っておけばそれでいいわよ」
「そういわれればそうかもね」
「うん、そうね、そうよ」
「お金もったいないもんね」
「子供のためにお金を使うなら大人のために使ってほしいよな」
「こういうのは基本、親の責任だよ。管理組合は関係ない」

なんということか、話し合ううちに、ほぼ全員がこの人の意見に同化し、結果的に「無駄な工事だ。やめよう」と決まってしまったのです。
今期の役員は、「家族に小さな子供がない人」ばかりなので、こういうふうになったのかもしれません。

いやあ、しかし、私も含めて、ほぼ全員が「緊急工事が必要」と思っていたのが、たった一人の言動により「無駄 やめよう」と変わってしまったことに驚きました。しかし、会議というのは、名作映画 「12人の怒れる男」もそうでしたが、こういうものなのかもしれません。潮流みたいなものがあるのかもしれません。

困ったのはフロントくんのほうで、「この工事は絶対に可決される」「緊急性の高いものだから、理事会で可決されたら3日後に工事開始」って決めていて、施工業者の決定どころか、必要な特注部品もすでに発注済みだったのです。この損害は管理会社がかぶらないといけません。


私の方でも「工事のご案内」の掲示物は作成済だし、困りました。

しかし、「子供の命なんかどうでもいい」って考える人がいっぱいいることに驚きです。

まあ、安倍晋三みたいに、「自分の仲間以外の命なんかどうでもいい」「拉致被害者なんか帰ってこなくていい」「災害被災者なんか放っておけ」っていう人間が総理大臣やってる時代ですから、これも不思議なことではないのかもしれません。

いやあ、驚きました。

(もちろん、あとあとの裁判に備えて、管理会社がちゃんと動いて進言したことの記録は残しておきますし、発注した部品は保管しておいて、来期、新役員に入れ替わったら再度提案して可決させる予定です。「管理会社が提案したが断られたので直せない」という内容の掲示もします)



<東棟と西棟>


愛読者の皆さんには「耳にタコ」ですが、ご勘弁下さい。

当マンションは、地方都市にあり、敷地はかなり広いです。そこに、「東棟」と「西棟」の2本のタワー上の建物が並んで立っています。この2本の建物は、1階部分(玄関ホールや電気室や管理室や集会室がある)ではつながっており、見た目は「2つの建物」であっても登記上はひとつの建物ということになっています。ただ、エレベーターも別で、完全に別の建物のため、東棟の住民が、西棟に入り込むことは特別な用がない限り、めったにありません。自転車置場や駐車場もゴミ置き場も、東棟住民用と西棟住民用に分かれているため、いっそう、東棟住民と西棟住民は「隔離」されています。
子供の遊び場なんかは、西棟側にあります。もちろん、東棟の住民も利用できますが、構造上、そこに行きにくいため、東側の住民が遊んでいる姿はめったに見ません。
このように、ひとつのマンションであっても、実際は2つのマンションみたいなもので、管理人も清掃員も、その仕事は「普通の倍ある」と言えます。だから、ほんとに疲れます。
さて、東棟と西棟がこんなふうに分かれていると、住民の意識も分断されます。理事会役員の人選は、「東から7人」「西から7人」というふうに、公平に選ばれるようにはなっているものの、うちみたいな民度の低いマンションでは、理事会の出席率が非常に悪く、管理会社のフロントは毎回毎回、「今日の理事会は、半数以上出席の定足数を満たすことができるだろうか?」とはらはらしています。
そんなわけで、「理事会に出席した7人の役員が、全員東棟の住民だった」「6人が東棟住民で、西棟住民は1人だけ」なんてこともまま起きます。
そうなると、「西棟用のゴミ置き場のフェンスが壊れてしまい、修理が必要なんですが」という議案でも、「あたし、関係ないもん」「私、見たことないし」・・・となりがちで、そんな消極的な役員ばかりでは「急いで修理しなくてもいいんじゃないの? 面倒なことは来期にまわしましょうよ」となって、否決されます。
とにかく、東西分離により、「一度も見たことがない」とか「その存在を知らなかった」なんていうものがけっこうあって、それに関しては話し合いをするというのは、東京都議会議員が、ドイツのベルリンのことを話し合うみたいなもので、ちゃんと議論できるわけがないです。
そうやって、大事なことを放置する結果になることがたくさんあります。
このため、私は毎年、新役員の人たちに対して、「役員になったらマンション内を全部回って、設備を確認して下さい」「そういうイベントをやりましょう」と提案していますが、毎年拒絶されています。それじゃ、まともな理事会なんてはなから無理です。


<駐車場利用者と車を持っていない人>


これも意識差が大きいものです。実は、どこもそうですが、古くなってきて、当マンションの駐車場の「地面に書かれている駐車場番号」が薄くなっており、読めない箇所もいくつかあるため、つい先日も、「8番駐車場の人が、7番駐車場に間違えて自分の車を置いた」〜「このため、一個ずれてしまい、7番駐車場の人が6番に置いた」〜「6番の人が5番に」・・・・なんてことが発生し、けっこう大混乱になってしまいました。
このため、駐車場利用者から、「こっちは高い駐車場料金を払っているんだ。管理組合の方で、番号をきれいに吹き付け直ししろ」という要望が出されました。これは私も以前から「やるべき」と提案していたものです。
これに関しても、「駐車場を利用している役員」は当然賛成だし、管理会社フロントも「これはそろそろやらないとまずいよなあ」という考えで、理事会に議案を提出したのですが・・・・
この時の理事会に、その「駐車場利用役員」が欠席したため、出席役員全員が「駐車場を利用していない人」になってしまい。。。。 「駐車場のことにみんなの管理費を使わないでよ(※駐車場利用者が高い駐車場料金を毎月支払い、それのおかげで、管理費会計が潤沢になっているのをその人は知らない)」「自分の置き場所を間違えるわけがないでしょ。うそ言わないでよ」「間違えるようなバカは車を運転してはだめだ。免許証を返還させろ」とか言い出し。結果、番号ペイントはしないままになりました。
これも、駐車場利用者にその旨を伝えると、理事会の責任は関係なく、「管理会社は何をしてるんだ!」と、管理会社に対して怒るし、こまったもんです。


<健康な人と病弱な人>
これは「世代間格差」と言ってもいいのですが、かなりの高齢でもすごく元気な人もいるので、必ずしも「年齢だけ」で分けられるものではないです。
健康に関するものって、自分がその病気にならないと、その気持はわからないものです。介護とか認知症とかも、いざ、自分がそういう家族の身にならないと全然理解できないものでして。

「ホームヘルパーさんとか介護職員とか、そういう人たちが、自転車やバイクで来訪するケースが増えています。そういう人のための駐輪場がないとまずいです」と、私が提案しても、身内にそういう人がいない人が役員で、そういう役員ばかりの出席で理事会が開催されると、誰も真面目に考えてくれません。

「救急車が敷地内に入れなくなるから、駐車違反はちゃんと取り締まりましょう」というのも、健康な人は、「だったら、外の道路に救急車を駐車すればいいじゃん。患者さんに100mくらいストレッチャーに乗ってもらってもいいでしょ」とか言います。本当に重篤な病気の際の「一分一秒を争う」という感覚を共有してもらえないのです。


ほんと、困ったもんです。とにかく、役員になったら、理事会はちゃんと出席してほしいよ。




2018/9