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マンション管理最前線

「介護臭」? 臭い の視点で考える高齢化


 築年数の浅いマンションに関わるブログで「騒音問題は難しい」ということが書かれていました。そう、こういう「個人個人で間隔の度合いが違うもの」「生活に関わるもの」というのは、集団生活の中ではとてもむずかしい問題です。
今回は「騒音」のことを置いておいて、「臭い」に関する話です。






急速に高齢化が進むマンションに長年勤務していてわかったことがあります。高齢化はいろいろな問題を生み出しますが、「悪臭化」というのもあるんだということです。


「加齢臭」
これは私自身も家族から「お父さん臭い」とか言われており、まあ、多くの人が抱える問題です。名前のとおり、ある程度の年令になるとみんな臭くなります。

「線香臭」
年をとると、家族の誰かが亡くなり、マンションの部屋の中にも「仏壇」が置かれ、毎日、線香が焚かれます。線香の臭いも壁に染み付くとなかなかとれないものであり、高齢化と同時に「線香臭」もひどくなっていくと思われます。

「消臭剤臭」
なんか矛盾した変な言葉ですが、自分の加齢臭に気がついた本人や家族が、それを消そうと、「消臭効果のある洗剤」とかを多用することがあります。今、テレビでもさかんに宣伝されているので購入する人も多いです。ただ、こういう「消臭剤」というのは、たいていが、「別の臭いをつけることでもとの臭いを消す」ようにしているので、この消臭成分の臭いというのがあって、これがいかにも「化学薬品」っぽい臭いで、私は個人的には大嫌いです。
洗濯物に含まれる臭いなので、ベランダから外に放出され、他人の鼻に入りやすい臭いです。


「介護臭」(私が勝手に作った新造語です)
高齢化で「要介護」の住民が増えると同時に、この問題が顕在化してきました。
具体的に一番大きいものは「排泄物」の臭いってことになります。私も先日、重度の要介護の人がいる部屋に、「台所の蛇口が不良なのでちょっと見てくれ」と言われて、室内に入りましたが、いやあ、強烈な臭いでした。使用済み紙オムツとか、こういう「生ゴミ」は、毎日捨てられるわけでもなく、当地域は「週に2回」の回収ですし、ゴミ出しをやってくれるホームヘルパーさんの勤務曜日との兼ね合いで、「週に一回しか生ゴミを出すことができない」という部屋もあります。となると、室内に保管していると、密閉していても、けっこう臭います。
また、「臭いものを室内に置きたくない」ということで、「ゴミ出しの曜日までベランダで保管する」という部屋もありますが、ベランダに置くと、隣接住戸から「臭い」という苦情が来ます。
(これからマンションを購入する人は、こういった高齢化のことも考えて、「毎日好きな時間にゴミを出せる仕組み」になっているマンションを選ぶことをオススメします)

「不潔臭」
ヘルパーさんとかが来てくれる部屋はいいですが、そこまで重度ではない場合、体の弱い高齢者だけで生活しないといけない場合もあります。特に単身者の場合、生来の性格にもよりますが、高齢化とともに、部屋の中が不潔になる傾向があり、それとともに悪臭を発生します。



「開放臭」
(私が勝手に作った新造語です)
上記の「部屋の中で発生する悪臭」は、本来、玄関ドアやベランダ側のサッシを閉めていれば外には漏れにくいのですが、高齢化すると、「エアコン嫌い」が増えてきて、真夏の暑い時期でも「エアコンは嫌だから、ドアを開けて自然の風を取り入れる」という高齢者が多いです。このため、この悪臭が外に漏れやすくなります。そして、悪臭というのは、気温が高いほど、もっと臭くなるものでして。
当マンションでは、今年のものすごい酷暑(気温37度)の時でも、30世帯くらい(いずれも高齢者)でドアが開いていました。そして、そこからは悪臭が漂ってきます。ですから、館内巡回するのも苦行だったりするわけで。そして、当然、近くの部屋からは苦情が来るわけでして。
ただ、「あなたの加齢臭をなんかとしてください」とも言えませんし、熱中症予防の件に便乗して「ドアをしめて、室内でエアコンをかけましょうよ」と勧めましたが、いずれの高齢者も「あたし、エアコン嫌いなのよ」「アベノミクスが大失敗で、年金生活者の生活は苦しくなるばかりでしょ? 電気代を節約しないと」「うちにはもともとエアコンがないんだよ」などと反論してくるわけで、なかなかドアを閉められません。

また、「高齢になると寂しくなってペットを飼いたがる」という傾向もあり、高齢者世帯では「ペット臭」の問題もあります。そして、「高齢者は自分の家の中にいる時間が長い」ということもあるわけで、それだけ、悪臭を放つ時間も長くなるのです。さらに、高齢になると「植物が好きになる」傾向もあります。それで、マンションの共用部分に勝手に自分の好きな植物を植え、それを、タバコをプカプカ吸いながら見て楽しんでいる高齢者住民もいて、そのタバコの煙が漂い、苦情のもとにもなっています。しかし、このマンションでは「敷地内での喫煙は禁止」という規則はないため、「タバコ吸わないで」とも言えません。

とにかく、高齢化が進むマンションで働く管理人は、「悪臭との戦い」も重要な仕事になっています。まあ、自分自身は匂いに対して鈍感なのでそんなにつらいわけではないのですが、「臭いに関する苦情の多さ」に苦労しております。管理組合が何も動かないので、全部、管理人が苦情を受けないといけませんし・・・・

ほんと、トホホな仕事です。