管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線 部屋番号7709

不動産広告に見る「管理形態」という言葉の意味?
そして、「管理方式」とは?





2018/8


新築マンションのチラシとか、中古物件のチラシとか。
そういうのをよくみると、小さな文字で、いろいろな説明が書かれている箇所があって、「管理費 月額***円」とかと並んで、「
管理形態」という文字を見かけます。

たいてい、「管理形態/ 通勤」とか「管理形態/ 巡回」とか書かれているので、少し、マンション管理のことを知っている人であれば、
「これは、管理人さんの勤務形態のことかな?」ってわかるかもしれません。しかし、マンション管理に関して「素人」である一般の購入客で、この意味がわかる人はどれだけいるでしょうか?



さて、正解は、そのとおりで、「管理人の勤務形態」を示しています。
簡単に言うと、表記方法は、3種類あります。

「住み込み」・・・マンション内に管理人が居住できる部屋があって、そこに住み込んでいる。ただし、24時間働かせるわけにはいかず、労基法に従って、管理人が勤務する時間は規定されており、その他の時間に働かせてはいけない。※緊急時は除く

「通勤」・・・これはわかりにくいです。「住み込み」の対比として、「通勤」という言葉を使用していますが、普通の勤め人と同じように、管理人がマンションまで通勤してきて、マンション内で勤務するってことです。「月曜〜金曜の朝8時〜17時まで (週合計40時間のフルタイム)」とかです。そういう勤務時間なので、「日勤」と表記する場合もあります。

「巡回」・・・この用語は非常にわかりにくいですが、要するに、
「短時間勤務」ということで、「月水金の週3日だけ勤務する(週合計24時間)」とか「月〜金の毎日、朝3時間だけ勤務する(週合計15時間)」とか、そういう勤務形態です。「巡回」と書かれると、「管理人は、マンション内の巡回しか、仕事はしないのか? 清掃はしてくれないのか?」と思う人もいますが、そういう意味の「巡回」ではなく、一人の管理人の立場になって、「月曜と木曜はAマンションで勤務する」「火曜と金曜はBマンションで勤務する」というふうに、一人で複数の現場を兼務し、曜日ごとに行くマンションが変わることから、「あちこちのマンションを巡回する」という意味で、「巡回」という用語が使われています。

詳細を知りたい方は、当HP内の「管理人とは?」のページをお読み下さい。

なお、「住み込み」のことを「常駐」と表記する不動産業者もいるので、これもややこしいです。また、最近は防犯カメラとかネットとか技術の進歩に伴い、「無人管理(管理人は一切いない。清掃員がたまに来たりする)」とか「遠隔管理」とか「機械管理」なんていう言葉もあって、ALSOKなんかを利用して、警備とか設備管理に関しては、通常は、人間ではなく、機械に任せているようなところもあります。「管理人不在時でも機械で遠隔監視しているので大丈夫ですよ」という意味合いもあります。

それから、タワーマンションのような「500世帯を超えるような超大型マンション」では、「管理人が全部で10人いて、それがシフト交代式で勤務しており、日中は、常時2名で勤務し、一人が呼び出されて、管理室を離れても、もう一人が管理室に残り、常に誰かが管理室にいる体制になっている。夜間は、宿直員の管理人がいて、深夜でも1名はマンション内にいる」っていうような、ホテルのように、「365日 24時間 誰かしらスタッフがいる」というような勤務方式にしているところもあります。さらに「受付員(コンシェルジュ)」と「管理員」を別に設置するケースも増えています。(※そこの理事長の趣味で、受付員は若い女性だけだったりする)







このように、不動産広告における「管理人の勤務形態の表記」は、「古い慣習のまま」「管理会社視点で考えられていて、住民の目線ではない」「省略しすぎ」など、不備があり、わかりにくく、あまりいいものとは思えません。

さて、話を戻しますが、「管理形態」=「管理人の勤務形態」って、これ、おかしくないでしょうか? だって、管理会社の仕事って、「管理人業務だけ」ではないですよね? 他にいろいろあります。むしろ、「マンション管理士の国家試験」でも「管理業務主任者の国家試験」でも、その試験問題の内容は、管理人業務に関するものはほとんど無視されていて、「管理人なんかどうでもいい」というのが、日本の国土交通省の考え方です。それなのに、不動産チラシでだけ、「管理=管理人」とされているのは矛盾を感じます。

本来の「管理形態」というのは、私の考えでは、「管理会社に丸投げしている管理なのか?」 「会計とか、機械設備維持管理とか、一部業務だけを管理会社に部分委託しているのか?」「どこにも委託せずに、管理組合(つまり=住民)だけで全部やっている、自主管理なのか?」「自主管理だけど、アドバイザーとしてマンション管理士を顧問として契約している方式か?」など、そういうのが「管理形態」ではないか? と思います。



実は、そこは、業界では、
「管理方式」という用語を使用しています。これは、必ずしも、すべての不動産広告に出ているわけではなく、「管理会社 Hコーポレーション」とだけ書かれて省略されていることが多いのですが、「管理方式=全面委託管理」とか「管理方式=部分委託管理」「管理方式=自主管理(※管理会社に委託しないで自分たちだけで行なう。最初から自主管理ということはないので、これは中古物件の広告に限る)」と書かれていることもあります。 

なので、
「管理形態」と「管理方式」はまったく違う意味になるのです。

でも、そんなこと、普通のマンション住民はわからないし、チラシを見た購入検討客もわからないですよねえ。

また、「新築物件」と「中古物件」では、書き方が違うこともありますし、業者によっての書き方の差もありますし、とにかく、明確な定義がないため、読む側の混乱は必至です。おそらく、書く側もよくわかっていないと思います。

ちなみに、今朝の新聞に挟まっていた新築マンションの表記はこんな感じです。



これも、一目で理解できる人はいないじゃないでしょうか? おそらく、「管理会社に委託」というのは、「全面委託」ということで、「通勤予定」というのは、「日勤の管理人が週40時間勤務する」ということだと思います。「管理組合設立後」というのも素人には理解できないし、「通勤予定」の「予定」も意味不明です。

このように、広告の表記って、すごく難解です。
難解なため、業界人でさえも、よくわかってなくて、例えば、この「東急さんのホームページ」では、「管理形態」と「管理方式」の意味合いが、上記の私の説明と逆になっています。
要するに、専門家の間でもごちゃごちゃってことです。定義がないので「それは間違いだ」とも言えませんが、こういうのも、「不動産業界っていい加減だなあ」と一般の人に思われる原因のひとつではないでしょうか?


とにかく、「管理形態=管理人の勤務方法」ではなく、それは「管理員勤務形態」と表記して欲しいです。理想は、「管理方式=部分委託  管理員勤務形態=日勤(週40時間)」とかにして欲しいです。
本当は国が「マンション管理適正化法」を作った時に、こういう、「用語の定義」も決めて欲しかったです。


★とにかく、難解になる原因は、私は、「管理人」という用語に原因があると思っていて。「用務員」という名称にしてくれないかな? と、ずっと思っています。
★国は、「マンション管理士を積極的利用しよう」と促進しているわけですから、中古物件の不動産広告に、「このマンションはマンション管理士を顧問として契約しています」というのも書かせるようにすればいいと思います。購入客の判断材料のひとつになります。


※わかりやすく説明するつもりが、ますます混乱させるような説明になってしまいました。すいませんね。