管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

高齢ドライバーの免許返納

駐車場が余っている問題 






2017/2

 昨年、神奈川県横浜市で起きた「頭のボケた老人が、軽トラックに乗って、通学途中の児童の列に突っ込み、小学1年生の子供を殺してしまった事件」。犯人の爺さんは不起訴になったそうで、「なんなんだ? この国は?」と憤慨した人も多いかと思います。

 これに限らず、高齢者の交通事故が増えており、悲惨な死亡事故も多く、「免許証を早く返納せよ」ということが声高に言われています。

 実は、当マンションでも、
「高齢者ドライバー」のことが問題になっています。以前からちょこちょこ、「あの爺さんの車庫入れのしかた、危ないよ」とか「隣の爺さんが運転する車にこすられた」なんていう声があったのですが。つい先日、高齢者ドライバーが運転する車がマンション内で暴走し、我々が使用する「物置」(ヨドコウの「10人乗っても大丈夫」くらいの大きさのもの)に衝突し、物置がめちゃくちゃになってしまいました。幸い、死傷者とかはなく、被害は物置だけだったのですが。

 この物置に関しても、管理組合は、「加害者である、その高齢者住民に弁償してもらって新しいのを買え。対物保険でなんとかなるだろ」という考え方で、管理組合でお金を出して買いかえてくれません。しかし、その高齢者ドライバーは、自分の車のバンパーが壊れているという、れっきとした証拠があるのに、「そんなことした記憶がない」と言い張り、保険の申請をしてくれません。他住民の目撃証言も多数あり、証拠は揃っているのですが、本人が認めないのです。そこの息子にも話をしましたが、その息子もひどいやつで、「人の証言なんか信用できないよ。防犯カメラの映像とか、そういうちゃんとした証拠とかあるの?」なんて、生意気を言いやがります。困ったもんです。おまけに、「それじゃあ、警察に被害届を出して、ちゃんと事故扱いにしてもらってやりましょう」と理事長にお願いしたら、理事長は「そんなの面倒だよ〜」とか言って、被害届を出してくれません。名義上、管理組合の物品の管理者は理事長ですから、理事長が動かないと、これじゃあ、何も話が進みません。ほんと、今期の理事長はクソです。
 おかげで、今、我々はその物置を使うことができなくて、大変困っています。

 さて、そんなこともあり、住民の中から「高齢者ドライバーには免許を返納させるよう、管理組合として命令しないとだめじゃないの?」という声が多数上がっています。
 しかし、管理組合にそういうことを言う権利はないわけでして、あくまでも自主的に返納してもらわないといけません。それに、管理組合的には、「返納したら、自動車が不要になるわけで、当然、駐車場の利用もなくなってしまう」「今、駐車場が空くと、次に入る人がいない」「そうなると、管理組合会計の減収になってしまう」という「財政的な問題」があり、積極的に「車に乗るのをやめましょう」とは言い出せないのです。また、地方都市ゆえに、「病院に通うには車が必要」という事情もあります。

マンション内駐車場が余って困っている

この問題は、今、全国各所で起きています。当マンションの昔の資料を調べると、すごい時は、「駐車場が空くのを待っている人が56人いた」なんていう記録もあります。当マンションは建設当時、「部屋数200室で駐車場は30」というものでしたから、「駐車場不足」だったのです。それに、当時は、「マンション外の一般駐車場の月ぎめ料金の半額程度の金額」が、「マンション内駐車場の利用料」でしたから、マンション内駐車場が人気が高かったのは当然です。
一度、修繕積立金の見直しをした際に、駐車場料金も多少値上げしましたが、それでも周辺相場よりは安く、「空き待ちは30人」いました。しかし、その後、「高齢化」「車に乗る人が減ってきた(※その代わり、バイクに乗る人は増えている)」「周辺の駐車場料金が安くなり、むしろ、マンション内駐車場のほうが高いという逆転現象が発生」・・・といった変化の要因があり、今、実は、「空くのを待っているのは誰もいない」という状況なのです。

周辺では、「20台分の駐車場で8台が空き」なんていうところもあり、「料金を下げて埋めようとする」「外部に貸し出し」というところも増えています。外部に貸すにしても、思い切って料金を下げないと借り手がいないため、「マンション住民の駐車場料金と、外部利用者の駐車場利用料金が違い、マンション住民のほうが高いお金を払っていて、苦情が出ている」なんていうマンションもあります。

まあ、それでも、地方都市だと、首都圏のように「
機械式駐車場」のところは少ないので、「機械式のメンテ費用や建て替え」なんかの問題はありませんが、とにかく、「駐車場が満杯の状態を前提」として財政計画を立てており、これが、埋まっていない状況だと、収入が減少し、「修繕積立金の値上げ」なんかも考えないといけなくなります。

そういうわけで、「この人の運転は危ない」「免許を返納したほうがいいのでは?」と思われる高齢者のリストアップをしたら、5人ほどいまして・・・  そして、この5人はいずれも、「自分だけで運転している」「息子や娘が運転することはない」という高齢者だけの家庭でして。つまり、「免許返納=車が不要になる=駐車場利用終了=駐車場に空きが出る」ってことで。

5台も駐車場が空くと、管理組合の収入が、年額で何十万減ることやら? いや、100万いくかな?  

このことはフロントにも伝えてありますが、「収入が減って財政上の問題が出ると、このマンションのことだから、管理委託費を減額しろとかの要求を出してくるに決まっている。だから、この件は管理会社としてはだまっていよう」ってことになり。「事故が起きても関係ない。こっちのせいではない」っていうスタンスになりました。ただ、いちおう、あとで弁解するために、「敷地内での自動車の運転は十分注意をして慎重にハンドルを握ってください」的な、「管理会社としても安全対策をしてますよ」という言い訳が出来るような貼紙を作成しました。

まあ、管理人としても、「駐車場に空きが出る」と、「空いた分を来訪者用に変更しよう」「利用料は1回200円もらおう」「来訪駐車の管理やお金の授受は管理人にやらせよう」とかいう動きが出てくるのはわかっているので、あまり積極的に動きたくはありません。このマンション、面倒なことは全部、管理人に横流しですから。


そんなわけで、とにかく、悩ましい問題です。困ったなあ。



 


2017/2