管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

「強行採決」は「凶行採決」
大事な案件は、全員の賛成を得られるよう、努力することが重要
普通決議と特別決議


みんなが納得




  2017/2



「強行採決」

今、国会では、実際の有権者の2割程度しか投票していないのに、自公(維新も含む場合もあり)が、「数の力」で「強行採決」を繰り返し、好き放題やっています。
議会制民主主義では「多数決」が基本原則であり、そのため、民進党など、負けたほうは、「しょうがない」ということで素直に従うしかありません。

しかし、議会制民主主義を模して作られている「管理組合」では、「多数決で議案が可決したとしても、俺は従う気はない」という住民が少なからずいます。そして、こういう人たちが難物でして、その後の管理組合運営に大きな支障になることがあるのです。その結果、「強行採決」は「凶行採決だったんじゃないの?」ってことになります。


では、ここで、管理組合運営において、いろいろと問題になる「修繕積立金値上げ」と「ペット飼育を認める」という案件について考えてみたいと思います。





「修繕積立金の値上げ」・・・
現状、分譲会社が最初に決めた「修繕積立金の金額」は、ほぼ確実に、「本来必要な金額と比較して少ない」です。これは、「正しい金額にしてしまうと、毎月の支払額が大きくなり、客がそのマンションを買いにくくなってしまう」という理由からです。
そのため、数年後に、「足りないので値上げが必要ですが・・・」と値上げ案を提案してきます。「足らないのなら最初からなんで、適正な金額にしねえんだ! あとから値上げするのは、管理組合として、すごく苦労するんだぞ!」って、みんな怒りますが、分譲会社は「売れればそれでいい」と思っている極悪人ですから、ほとんど、どのマンションでも、あとからの値上げが必須となります。
さて、この「修繕積立金の値上げ」ですが、これは、総会における「
普通決議(=過半数の賛成)でいいのか?」それとも「特別決議が必要なのか?(4分の3以上の賛成)」、どっちでしょうか?

以前の解釈は、「管理規約の条文の中に、修繕積立金の具体的な金額が記載されている場合は、管理規約の変更になるため、特別決議が必要。しかし、金額の記載がない場合は、普通決議でOK」というものでした。しかし、平成14年の裁判で、「規約に具体的な金額が書いてあったとしても、それはもともと暫定的なものであり、普通決議で、その金額を変更することができる」という判決が示され、その結果、現在では、「規約に金額の記載があったとしても、普通決議で改定できる」というのが一般的な解釈とされています。(※正確に知りたい方は、マンション管理士等にご相談下さい)



「もともとペット飼育禁止だったのを飼えるように変更する」 または、その逆
・・・
一般的(=古いマンション)には、ペット飼育に関する具体的なことは「管理規約」には記載がなく、「使用細則」の中に、「小鳥、魚などの小動物以外は飼育禁止」といった記載があって、犬猫などのペットの飼育を禁止しているところが多く、その場合は、「使用細則の変更」ということで、「普通決議でOK」とされています。
新しいマンションでは、規約の中にあらかじめペット飼育のことを組み込んでいることが多く、「禁止」のマンションでも、「盲導犬や介助犬は除外する」などの文章も付け加えられているはずです。そうなると、「規約の改定」ということになり、「特別決議」が必要になります。


ここで「普通決議」と「特別決議」の差なんですが、「普通=過半数」「特別=4分の3以上」という、単純な数字の差だけでなく、ちょっとややこしくて恐縮なんですが、普通決議は、「総会(集会)の会議は議決権の半数以上の出席で,出席者の過半数で決する。」という規約条文を採用している組合が多いため、普通決議は非常にハードルが低いといえます。

具体的に言うと、「100戸のマンション」の場合、普通決議は、「50戸が総会に出席し、そのうちの過半数が賛成すれば可決」という最低条件になります。ですから、実際のところ、「26戸の賛成で可決できる」、つまりは、「4分の1を超える賛成を得られればいい」ということなんです。
(投票率の非常に低い選挙で、実際の有権者の2割程度しか自公に投票していないのに、自公が与党になってしまう仕組みと同じです)

一方で、特別決議は、出席者に関係なく、「4分の3以上」なので、「76戸の賛成が必要」ということになり、「組合員を賛成させるための労力」が「約3倍」になるのです。(※区分所有者数と議決権数が異なる場合もあって、単純ではないが、その件はこのページでは省略します)

つまり、特別決議というのは、それだけ、大きな労力がかかる、大変な議決だということです。いろんな考え方がある多種多様な人が住んでいる中で、4分の3以上の人を説得するってのは、ほんと大変です。特に「お金がアップする」なんてことは、誰だって嫌ですから、何も説明せずに、素直に「はい、わかりました。来月から3倍払います」なんて言う人はいるわけがないです。

そういうわけで、特別決議の場合は、事前説明会を何回も開催したり、説明書類を何度も全戸配布したり、疑問に思う世帯へ直接説得に行ったり、組合側もかなりの努力を行ないますので、住民への理解浸透度は高くなります。
しかし、普通決議だと、わりと簡単に通ってしまうため、「説明会なんか開催しなくても大丈夫」とか、手抜きをしがちです。

国会であれば、手抜きをしたって、「議案が通ればそれでOK」かもしれませんが、マンションはそうは行きません。


たとえば、「普通決議」で、「修繕積立金が3倍に値上げ」というのが可決されたとします。しかし、十分な説明がなされておらず、住民の中には納得していない人も多数います。そうなると、「俺は以前の金額しか払わない」と、支払いを拒否し、結果的に「滞納」となってしまう人が出現します。
「普通決議」で「ペット飼育OK」にした場合でも、納得していない人は、「俺は賛成してねえぞ。犬は全部殺せ!」なんてことを管理人に言ってくる人だっています。こういう人の場合、「人質」じゃないですが、「管理組合のやり方に納得できないから、管理費を払わない」なんていう強硬手段に出る人もいます。
また、「簡単に飼育OK」になってしまうのでは、飼育者たちの意識も低く、「今までルール違反をしてきたことに対する罪悪感」もなく、おそらく新たに設立される「ペット飼育者たちで組織される会」にしても、熱心な活動など行なわないでしょう。そうなると、飼育マナーもひどく、あとあと、いろんなトラブルが多数発生することは明らかです。

このように、「手続きのルールとしては問題ない」として「強行採決」すると、あとが問題なのです。特に、その批判の矢面と言うか窓口にされる管理人はたまったもんじゃないのです。

ですから、「お金に関わること」とか「生命にかかわること (ペットを人間扱いして溺愛する人の感情はすごいですから)」など、「重要案件」については、たとえ、普通決議で決められるものだとしても、「特別決議」のつもりで、多くの人に理解をしてもらうことが大切なんです。そして、「特別決議」の場合でも、「75%以上をクリアしたからOK」じゃなくて、できれば「100%」を目指して欲しいのです。「反対者が一人くらいいたってどうってこないだろ」って思うかもしれませんが、その一人が「モンスター」だったら、大変なんですから。マンション住民は「議員」とは違って、「決まったんだから従います」なんてことは言いませんので。

というわけで、結論を言うと、「管理組合は、どんな問題でも、全員の理解を得られるように、積極的な広報活動、情報公開を行うべき」ってことです。(小池百合子みたいになっちゃったなあ)






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