管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

管理会社の小さな「副業」営業
疲れるなあ





  2016/11



 どこのマンション管理会社も同じですが、
「リプレイス」(=管理会社変更)「委託費削減」だなんだと、管理会社が儲からない時代になってきました。一部の管理会社がやっている「坊主丸儲け」「分譲会社と手を組んだぼったくり」というのはよくないと思いますが、「適正な利益」を上げる企業活動は全然問題ないと思います。しかし、今は、「適正な利益を上げることが難しいほどの削減」にさらされたりしています。

 このため、どこの管理会社も、「通常の管理委託費では利益が上げられない」という状況になってきて、「各種修繕工事費で稼ぐ」という方法になってきています。そして、管理会社のフロントは、「水道は直結方式にしたほうがいいですよ」「共用部の照明はLED化しましょう」「駐輪場を増設しましょう」「防犯カメラを増設しましょう」・・・と、いろんな工事を勧めてきます。もちろん、これらはマンション住民によって有益なものですが、なかには「今やる必要はないのではないか?」とか「コストに見合う、効果はないのではないか?」とか「そんなお金は管理組合は持ってないぞ」というものもあり、なんでもかんでもフロントの言うことを鵜呑みにしてはいけません。
 また、管理組合さんのほうも、このネット時代、いろんな知識を仕入れていますから、こういう工事に関しても、料金を値切ってきて、そんなに儲けられないことも多々あります。

 となると、利益を上げるにはどうすればいいのか?

 



「専有部分内」への進出ということになります。

本来、管理会社が関わるのは、「共有部分の管理」なんですが、個人消費をあてにして、専有部分内でなんとか儲けようと考えています。

一例を上げると、

「ハウスクリーニング」・・・ダスキンさんなんかがやっている分野ですが、ここに管理会社も進出しています。特に、年末は稼ぎどきです。大掃除じゃなくても、「エアコンのクリーニングだけ」とか「換気扇の洗浄だけ」といった、小さな掃除もします。

「玄関の鍵をより安全性の高いものに変える。ダブルロックにする」・・・犯罪の多い地域なんかでは、鍵への関心が高いので、これも商売になります。

「インターホンを変えましょう」・・・経年劣化でだめになるインターホンも多いですし、防犯意識の高まりにより「カメラ付きインターホン」の需要が高く、けっこう商売になります。

「給湯器の交換」
・・・給湯器の寿命は「7年~15年」と言われていますから、竣工後7年以上経過したマンションでは、需要があります。特に冬場は、「突然、給湯器が壊れて、何日間もお風呂に入れないと大変ですよ。壊れる前に新しいものに交換しておきましょう」とか言って、交換させます。

「トイレをウォシュレットに交換しましょう」・・・新しいマンションは、最初からウォシュレットが設置されていますが、うちみたいに古いマンションでは、もちろん、そんなものは当初はついておりません。ですから、「変えましょう」という営業ができます。

「管理室で衣類のクリーニングの取次をする」・・・アベノミクスの大失敗で、クリーニング屋もバンバンつぶれています。近隣のクリーニング店がつぶれてしまって存在しなくなった地域のマンションでは有効な営業です。

「飲料の自販機を設置する」・・・わずかですが手数料が入ります。

「観葉植物のレンタル」「絵画や写真のレンタル」・・・高級マンションでは、こういうサービスもあるらしいです


うちのマンションの「管理委託費」はもともと安く、その点では「リプレイスの心配はない」(G社であっても、うちよりは安くはできない)のですが、「高齢化」「スラム化」などにより、「居住マナーが悪い」「管理費等の滞納も多い&悪質化している」「理事会役員が何もしない」といった「住民の質の悪化」に加え、本来、管理会社の儲けになるはずの「各種修繕工事」も、上記のように「安くひきうけさせられる」ようになり、利幅が薄くなりましたし、「職人の質の低下」によって、「やり直し工事が多い」「苦情が多い」など、非常に手間がかかるマンションになってきたこともあり、収益が悪化しています。

そこで、苦肉の策として、今、ご紹介したような「細かいこと」で儲けるようになってきました。

「ハウスクリーニングなんて、みんな、ダスキンに直接注文するんじゃないの?」「湯沸かし器の交換はガス屋さんに頼むでしょ?」「そんなのを管理会社に頼むなんて人いるの?」とかお思いになることでしょう。たしかに、住民の皆さんの大部分はそうなんですが、一部、「全然知らない業者に頼むよりも、管理会社のほうが安心」とか「管理人さんのところに言って申し込めばいいんでしょ? そのほうが面倒じゃなくて楽でいいわ」という人がいて、そういう人が申し込んでくるのです。

ですから、こういう「小さな仕事」も「やらないよりはやったほうがいい」ということなんです。

しかし・・・ 管理人とすると、たまったもんじゃないです。

それでなくても、スラムマンションの管理はもともと忙しいのに、さらに、そういう仕事の事務を押し付けられるわけですから。やるなら、住民と会社の間で直にやってくれればいいのに、「申込みは管理人室に」というシステムにしているもんですから、こっちが窓口にならないといけません。けっこう面倒なんです。(受付とか連絡業務だけでなく、管理会社でやるとすると、当日の駐車場の手配や、工事の立会や監視もしないといけません)

それに、こういう仕事って、「業者と直接」ではないため、いろんな「連絡ミス」や「意思の疎通がうまくいかない」ことが多々あります。

実際のところ、「管理会社でやります」とか言いながら、下請けに出しているわけですから、
「管理人が受け付ける」→「担当フロントに連絡」→「管理会社内の各担当者に連絡」→「下請け業者に発注」(場合によってはさらに孫請けへ発注ということもある)
という構造のため、伝言ゲームじゃないですが、連絡の時に、「間違って伝わる」「伝わらない」なんてことがまま起こるのです。
私も実際にやっていて、ちゃんとフロントに連絡したのに、それが担当者に伝わっていなかった、なんてのを経験しています。注文した住民からすれば、「なんで工事に来てくれないの? なんの連絡もないわよ」って怒ってます。

私からすると、「実際に工事を担当する業者に、住民から直接注文してもらう」(管理会社は紹介料としての手数料をもらう)という構造が一番いいのですが、そういう業者も最近はなにかといい加減ですから、やはり、管理会社が扱う以上は、申込み受付は管理会社にしないとまずいみたいです。

あ~ とにかく。余計な仕事ばっかり増えて、こっちは大変です。そういう仕事をしても、管理人の給料が上がるわけでもなく、そのままですから、こっちも仕事に対するモチベーションが全然上がりません。もともとの労働契約にはない仕事ですし。そんな気持ちだとミスも起こすし。

これから年末で、この手の仕事が増えてくる季節です。疲れるなあ。

コツコツ、小さな仕事を引き受けて利益を上げていくのも大事ですが、管理人の仕事を増やすのであれば、その分のボーナスを支給するとか、そういう手当がないと、仕事する気にはなりませんよね。






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