管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

認知症が進んできた住民
親族に相談したいんだが・・・ 探偵業務もする管理人






2016/6

 単身高齢者のMさん(60代)。かなり認知症が進んでいる感じです。昨日は「ゴミ集積場の中で他人のゴミ袋を開けて、中を見ている」という目撃情報がありました。本人に聞いてみると、「市のゴミ収集ルールを守らないやつを見つけているんだ」とのこと。う〜ん、Mさん自身もゴミ分別ルールなんかめちゃくちゃで私が困ってる状態なんですけど。

 また、鍵のついていない「集合ポスト」の他人のポストを勝手に開け、中の封書を勝手に開き、「重要なものとそうでないものを分類してあげているんだ」とか言ってまして。もはや、完全に「こりゃ、まずいぞ」という状態で、他の住民からの苦情も多数。
 ただ、「傷害」とか「事件」じゃないので、警察に言っても動いてはくれず。役所にも相談しましたが、「そういうのはご家族やご親族からの申請じゃないと・・・」とやる気なし。

理事長と相談するも、能なし理事長が何かするわけでもなく・・・ ただ、こっちとしては「理事長の指示があったから***した」という根拠を得るために、理事長に相談しているだけ。「親族に動いてもらうしかないね」という結論を誘導し、さて、その親族に連絡をしたいわけだが・・・・

 こういう人って概して、「連絡先」を管理組合に伝えておいてくれない人が多いわけでして。「災害とかあった際に連絡を取れるご親戚とかいませんか?」と聞いても、「教えられない」という返答。(なんかいろいろと事情があるみたい) それでは困るので、あれこれ世間話をしながら、親戚の話をなんとか引き出し。

 「隣の市の++町というところに妹がいる」「妹が嫁いだ先は今はコンビニ経営している」「妹は柔道の有名な選手だったらしい」・・・といった断片的な情報を得ました。
 ただ、妹というのが困るわけで、おそらく結婚して「姓」が変わっているだろうから、ネット検索とかで探索しても、出てくるわけもなく、町内を探しまわっても、姓がわからないとどうしようもなく・・・ 柔道で活躍したといっても、本人ももう60歳は超えているだろうから、活躍してたのは昔の話で検索しても出てくることもなく・・・ それでも、なんとかしないといけないので、ある「日曜日」にその町に行って「探偵業務」を行ないました。もちろん、サービス残業なんですが、この認知症住民をなんとかしないと、こっちも大変なので、「無給でもいい。親戚を絶対に探しだす」と町を歩き回りました。

 とりあえず、かたっぱしからコンビニに入って聞き取りしますが、そこにいるのはたいていはバイトだし、オーナーの奥さんの旧姓まで知っている人などまずおらず。

 5時間くらい歩きまわって、コンビニは全店制覇し、それでも情報はなく。そんなことやっていると、不審者扱いされて、110番通報されて、警察に職質受けたりして。ちゃんと筋道立てて警官に説明したけれど、「一介の管理人がそんなことをサービス残業でやるわけねえだろ、あやしい、ちょっと来い!」と言われ。(まあ、その理論は確かに正しい。「そんなことする管理人なんているわけがない」と私自身も思う) しょうがないので、理事長の自宅に電話をして、「これこれこういうわけで」ということを説明してもらって、無事に無罪放免。

 もうクタクタになって頭もおかしくなってきて、やぶれかぶれで、そのへんを歩いている住民に片っ端から聞きまくり、「有名な柔道選手だった女性、この町にいませんか?」って声をかけて。
 そうしたら、「女性じゃないけど、男性で、昔、柔道選手で有名だった人いるわよ。たしか名前は**」。え? **って、Mさんと同じ名前じゃないか???
 てなわけで、なんか腑に落ちないけれど、その**という男性の家へ行くと。その男性はおらず、「元奥さん」という女性がいて、いろいろと話を伺いました。

<結果>
Mさんの「妹」は実は男でした。(変な日本語だなあ) Mさんは、弟のことを「妹」と言っていたのです。
その弟さんは確かに柔道選手でした。
弟さんは、その町の女性と結婚し、婿入りではないが、その女性の家に同居し、その後、そこはビルに建て直し、一階部分をコンビニにし、弟さん一家でそこを経営。上は賃貸マンションに。
でも、コンビニはつぶれ、弟さんは離婚し、同じ町内の別の賃貸アパートで一人暮らしをしている。

という状況で。この元奥さんは、「別れた旦那の兄貴のことなんか、うちは関係ない」ということなので、この弟さんの住所を教えてくれて、「本人に直接話して下さい」というので、またまた歩いて、その弟さんのアパートへ行きました。
「ああ、これでようやく、本当の親族に出会える。これでなんとか、状況が改善するなあ」と期待に胸を膨らませ、行ったのですが・・・







 対面した、この弟さんはたしかにMさんの弟だったのですが、なんと、この人も、認知症になっていて、なんかもう話が噛み合わなくて。(そりゃあ、無理だよねえ) この弟さんから役所に連絡してもらって、Mさんのことをなんとかしてもらうってのは、結局無理でした。

 いちおう、親族の名前と住所がわかったから、ちょっとは前進しましたが、これじゃ、意味ないなあ。

 疲れました。探偵って大変だなあ。

 これだけ苦労したので、翌日、4ページにもわたる詳細な報告書を作成し、理事長に提出しましたが、その後は「お疲れさん」の一言もなく・・・・・  徒労に終わりました。

 しかし、少子化が進めば、「兄弟すらいない人」も当然増えていくわけで、そういう「天涯孤独」な人が認知症になって、他人に迷惑をかけるようになったら。日本はどうなるんだろうか? 心配です。





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