管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

元請け? 下請け? どっちなの??? ゼッケンのお話も
大規模修繕 リノベーションの話もいろいろ






2016/5

 大規模修繕工事を経験したことがあるマンションの人ならわかると思うのですが、大規模修繕工事で、実際に工事に関わる人というのは、この写真のような、ベストというかゼッケンというか、そういうものを着ています。ここには、大きく、その工事の元請け会社の名前が書かれているのが普通です。「四井建設」とか「西急工業」とか。

 特に、最近の大規模修繕工事は「警備面」「不審者が紛れ込まないか」といった点が大事になるので、このゼッケンが一種の「身分証明書」「IDカード」の役割を果たします。逆に言うと、このゼッケンを手に入れると、その工事会社がやっている現場に、するりと侵入することが可能です。ですから、工事会社は、このゼッケンの管理も厳重にしています。ちゃんとした業者だと、このゼッケン1枚1枚に通し番号が振ってあり、「1番 **建設(下請け業者の名称) 鈴木」とか、一覧表を作成し、正確に把握しようとしています。

 さて、大きなマンションの大規模修繕工事になると、いろいろな会社がからんできます。

 管理会社が元請けになると、このゼッケンも管理会社の名前になり、「四井レジデンシャルサービス」とか書かれています。管理会社じゃなくて、工事業者が元請けの場合は、「カシワバロ工業」とか書かれています。
 まあ、いずれにしろ、実際に工事をするのは、ある程度大きな「大規模修繕工事を専門に行なう」会社がやります。ただ、こういう会社というのは、自社スタッフだけでは工事はできず、一部を下請に出します。会社によってはほとんど全部を下請けに出し、「現場監督だけがこの会社のスタッフ」というケースもあります。そして、その下請けも、また、その業務の一部を下請(=孫請け)に出し、孫請けはひ孫請けに出したり、複雑な階層を構築するものなのです。

 ちなみに、うちのマンションの場合、「東棟」と「西棟」がはっきり分かれているため、「A社」という大きな会社が元請けでしたが、A社は、「東棟をB社」「西棟をC社」というように、下請けに出しました。ですから、「東棟に関する実質責任者はB社の現場監督」であり、「西棟に関する実質的責任者はC社の現場監督」という、二重並列構造になっていました。

 これは、実際に住民からのいろいろな要望を受ける「管理人」としてはややこしいことであり、本当はなんでもかんでも、大元の「A社の現場責任者」に伝えればいいはずなんですが、こいつが頭が悪くて、かつ、働かないやつで、こいつに伝えても、結局はB社の現場監督に伝言ゲームになるわけで、伝言する際に間違って伝わったりすることがあって、「だったら、東棟の住民からの苦情は最初からB社の現場監督に」って感じになりました。

 なお、こういうふうに、完全に会社を別に分けてしまうと、その「会社の質」というのも出るもので、工事期間中にすでにわかってましたが、「B社はまあまあの仕事をする」が「C社の仕事はあてにならない」という「工事品質の差」があって、それは、工事終了後の「1年たったら塗装が剥げてきた」といった苦情が「西棟のほうが多い」など、明らかに現れています。

 さて、話を戻しますが、こういう工事では、下請けとか孫請けの会社の人でも、その人達は、マンション住民に対しては、「四井建設」とかの元請けのゼッケンを着て、かつ、「私は四井建設のものです」という言い方をします。(元請け会社が、そういうふうに徹底していることが多い) まあ、住民に対して、全然無名な「ひ孫請けの会社名」(その人が実際に所属する会社)を名乗っても意味が無いのでしょうがないのですが。

 ただ、我々、「管理会社の人間」とか「大規模修繕工事担当の専門役員」とか、そういう「内情がわかっている一部の人間」に対しては、「とにかく一律に元請けの名前を名乗る」というのはやめて欲しいのです。私らは、そういう多層階層の仕組みがわかったうえで話をしますから、正直に「足場組立の下請けをしています、山田組のもんですが」と名乗ってくれたほうがいいのです。

 例えば、工事中の昼休みに、住民から丸見えの場所で、その現場に寝転んでタバコを吸って、エロ本を読んでいる作業員がいたとします。そういうのは苦情が来るので、文句を言いにいって、「あなた、どこの会社の人」と聞くと、こっちが「管理人」だと名乗っているのに、「四井建設です」って言うのです。こっちは、この人の実際の所属の会社名を聞いて、あとで、四井建設の監督に、「鈴木組の人が態度が悪くて苦情が来たよ」とか伝えたいのに、「四井建設です」では困るのです。
 「四井なのはわかってるけど。それも元請けの会社名でしょ。あなたの本当の所属会社は?」「だから四井です」「じゃなくてさあ・・・」てな無駄な会話を繰り返すことがあります。彼とすると、「必ず四井の名前を出すように」と、親方から言われたのかもしれませんが、融通が効かないのであきれます。

 具体的な下請け会社名がわからないと、その次の朝の朝礼で、大勢の作業員がいる場で、「住民から苦情が来たのだが、そういうことをしたのは誰だ?」とか聞かないいけないわけで。そんなことすると、正直に手を挙げないかもしれないし、関係のない真面目な他社の人は、「俺達は関係ないのに、なんで、こんな話聞かされるんだ」ってことになるし。

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話は変わって、大規模修繕工事じゃなくて、最近はやりの「リノベーション」なる、要するに、各部屋単位の「リフォーム工事」についてすが。

これも、「台所の混合栓の交換」とかだけだったら簡単ですが、リノベーションとなると、大掛かりな、長期間の工事になり、各分野の専門業者がいろいろ絡んできて、大規模修繕工事のような「多層請負」構造ができてしまっています。でもって、この「リノベーション」を扱う業者にはいい加減なところが多くて。なかには一度も事前に挨拶に来ない業者もいます。また、挨拶に来た人が必ずしも「担当者」ではなかったりして、「この工事に関しては私が担当しています」という人物と会えないことも多いのです。

そして、実際の工事は「完全分業制」とかになっているため、私が「昨日来ていた業者、エレベーターの中を汚していったぞ」と、今来ている業者に怒ると、「私ら関係ありません」とか言われます。なので元請けの「担当者」なる人物に電話をかけると、そこの会社のお姉さんが、「**は今、出払っていて」とかいって、なかなか捕まりません。

先日なんか、事務の女子職員とは話はできたものの、突っ込んだ話をすると、「実は、ここは沖縄でして、そちらのことはわかりません」とか言い出して。要するに「電話番」だけ、アウトソーシングしているのです。そして、その曜日はちょうど、その工事業者の定休日(不動産関係は、火曜とか水曜に休むことが多い)にあたり、電話番の人にはつながったものの、その担当者は「おやすみです」ということで捕まらず。

本当は、リノベーション業者がすべてちゃんと仕事をしてくれれば、管理人が担当者を呼び出す必要もないんですが、いい加減な工事ばっかりするから、しょっちゅう連絡を取らないと行けない事態で。

そんなこんなで、リノベーション業者に関しては頭に来ることとか苦情を言わないといけないことが多く。下請けの業者さんが、作業車の駐車場所の指示受けで管理室に来るときに、「**社(元請けのリノベ業者の名称)なんですが」と言ってくると、毎回、「本当の**社の人なの? それとも下請け?」と聞き返します。すると、たいてい、この人達は下請けなのに、それを隠して、「いいえ**社のものです」とか言うから話がこんがらがり。「あなた、**社の人なの。だったら言わせてもらうけど・・・・」とこっちから文句を言うと、「いいえ、実は私は**社のものではありませんので、そんなこと言われても」と弁解してきます。こういうふうになるから、最初に「下請けなの?」って聞いてるのに。
下請けだってわかってれば、元請けの不始末に対する苦情なんか言わないのに。そういうわけで、元請け側から「**社の者です、で押し通せ」って指示されていても、相手が管理人とかの場合は正直に下請けであることを言って欲しいのです。そのほうが話が早いんだから。こっちだって、話の通じない相手に話する無駄を省きたいんだし。

元請け偽装しないで欲しんだよなあ。正直に言ってよ。ほんと。

(ややこしい話ですいませんね)





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