管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

「管理費等の滞納」の実情と解決方法  総集編 (長文です) 





2015/12

※マンションに関する問題は、そのマンションごとに対応策は異なるものです。ここに記すものはあくまでも私個人の「私見」です。
でも、きっと、皆さんのところでも応用可能だと思っています。

 はるぶーさんのブログでリンクされたせいか、ブログや当HPに、「管理費滞納」のことを調べにやってくる人が少し増えています。ただ、私のブログやHPの欠点として、「その時時の思いつきで書いているせいで、情報が分散している。系統的になっていない」「何年もやっているので、最新情報とはいえない。その時によって、世の中の情勢や考え方も少し変わる」という点があり、調べている人にとってわかりにくいかもしれません。
 そこで、本ページに「2015年12月現在」の全情報を総集編的にまとめて、「滞納問題は、このページ1枚を読めば、ほとんどわかる」みたいにしたいと思います。そのため、大変長くなりますが、どうかおつきあいをお願いします。(飛ばし読み、斜め読み、歓迎です)

★滞納問題って、結局は「人間対人間」のことで「心理的要素」が非常の大きい問題だと思っています。なので、そっち方面のアプローチが多くなっています。「法律論」や「手続き論」が好きな、一般的なマンション管理士さんなんかの「滞納に対するアドバイス」とは違うところです。


■参考までに、まず、当HPで過去に「管理費等の滞納」について書いたページをご紹介します。大きなテーマであることから、何回も書いております(※これは今読まなくてもいいです。暇があれば、あとで読んで下さい )


509号室  「滞納問題」  なぜか管理人が督促状を出している
801号室 「問題児」  金があるのに管理費等を払わない
1604号室 「ボーナス一括払い」  年に2回しか管理費を払わない住民
2906号室 「食い逃げ」 管理費を払わないのは無銭飲食と同じ
4608号室 「管理費と給食費」 昔は給食費を払わない子供が公表されていた
4903号室 「督促業務を管理会社に押し付けてはいけない」 督促の主体はあくまでも管理組合です
5207号室 「先払いはイヤ」  翌月分を払う方式は心理的に拒否される
6806号室 「滞納をなくす方法を考える」  滞納させない環境づくりから、滞納解決方法まで、このページだけ読めば、ほぼ解決できるエッセンス的ページ

■続いて、付属ブログ「トホホ管理人のマンションつらいよ日記」で滞納について書いているページ

15/7 「自公政権の数の論理はマンションも同じ」 督促は複数の人間でやらないとだめ
15/6 「滞納の解決方法」 方法をコンパクトにまとめました
13/5 「外部居住区分所有者に関わる通信費」 滞納督促にかかる通信経費や手間もばかにならない
13/1 「犬のせいで管理費滞納」 犬が病気するとお金が莫大にかかります
12/12 「無駄な事務の手間で翻弄される管理人」 内容証明郵便ひとつ出すのもすごい手間がかかる
12/3 「年度末の管理費滞納」
  年度末は必死です
11/11 「情報を漏らして怒られた管理人」 ほんとうは滞納したら駐車場契約解除なのに

10/12 「管理人はなんでもやると思っている」 管理業務主任者の試験問題には本当の解決方法は出てこない
10/9 「管理会社の督促と弁護士法」 管理会社が債権回収業務はできない
10/7 名前を晒すのが一番効果的 滞納者を公表すると滞納はゼロに
10/3 「数の論理」  一人で問題解決のための頑張った理事長。でも、その後報復が・・・
09/9 「夫婦別会計」 管理費の滞納額が複雑怪奇


さて、では、ここから本編です。
管理費等(管理費だけでなく、修繕積立金や駐車場使用料やルーフバルコニー・専用庭使用料、も含むお金のこと。現実には、管理費よりも修繕積み立て金のほうが金額が多いマンションが一般的なので、「修繕積み立て金等」のほうが正確かと思われるが、慣例上、「管理費等」と称します)の滞納問題というのは、マンション管理における、「重大案件」で、「なかなか解消しない」「解消したと思ったら、また、別の人が滞納開始」といった、「永遠に解決できない大問題」です。

また、「お金」のことゆえ、「その時の景気状況」にも左右されやすく、今(2015/12)みたいに「消費税増税」&「アベノミクス大失敗」の世相では、滞納者も増えている傾向があります。

 このため、「マンション管理セミナー」などでも主要議題となりますし、マンション管理士の宣伝文句に「滞納解消はお任せ下さい」的なことが書かれたり、http://ameblo.jp/haruboo0/entry-12095396958.html はるぶーさんのブログ を読むと、「滞納管理費回収会社」ってのもあるくらいだそうです。(管理費総額の2%を払えば残りの98%の支払いを保証して回収を一括してやってくれるそうです

 それだけ、滞納の問題が大変だってことなんでしょう。では、これから、滞納の問題を考えてみます。ただし、前提条件をしっかりと認識して下さい。(このへんは、「はるぶーさんのブログのパクリじゃねえか!」って批評する人がいると思いますが、もともとは私の書いてることがネタ元なので、その点、よろしく)


■滞納する人はどんな人? その分類
@うっかり忘れた     「管理費等」引落し専用にしている銀行口座にお金を入れておくのを忘れた。 といった「うっかりミス」型
 A払えるのに払わない    「お金を持っているのに、管理費等を払わない」 確信犯型
 B本当にお金がない    「本当にお金がなくて払えない」 困窮型
 Cその他    「前払いは嫌だ」「あの銀行は嫌いだ」「ボーナス一括払い」など、「変人」「困ったちゃん」型。  & 認知症高齢者

おおまかに上記のような分類ができます。(「区分所有者自身が住んでいる」と「賃貸にして、本人は外部に住んでいる」との差も大きく、それも分類基準にすべきですが、今回はパス。後者に対してのアプローチはあとで説明します。)

結論を先に言うと、滞納問題で重要視しないといけないのは、「A お金を持っているのに払わない人」です。これは詳細に説明したいと思います。
その前に、「重要視しない」、他の3分類の説明をしておきましょう。

@うっかりミス型
これは「滞納」というよりも、「一時的な引落し不能」といったほうが正確かもしれません。高齢世帯に多いです。

「年金が振り込まれる銀行」と「管理費等の引き落とし用の銀行」が別のため「管理費等用の銀行の残高が一時的に不足し、引落しができなかった」といったことがよく起きます。(※マンションによっては、管理費等引き落とし銀行が指定されていて、そこの銀行口座しか使えないようになっていることがある。その場合によく起きる弊害)
「クレジットカードで宝石を買ったことを忘れていて、自分の思っていたよりも、普通口座の残高が減っていて、管理費等が落ちなかった」なんてのもあります。要するに「勘違い」「計算間違い」「忘れちゃった」という、「悪意のない」ものであり、当マンションの場合、「引落し不能者リスト」の3割は、この人達です。

 うちの管理組合の会計シテムでは、こういう「一ケ月分だけのうっかりミス」であっても、「引落し不能者リスト」にのり、「督促状」というきつい名称ではないのですが、「払って下さい」という書類を発行し、私がポストに入れます。もともと悪意がないですから、普通は「あ、ごめんなさい。すぐに振り込んでおきます」と払ってくれます。(※うちの場合、銀行のシステムの関係で、「翌月に2ヶ月まとめて引落し」ということができません。これが可能だと、住民は何もしないでいいですから楽なんですけど)
 この人達の名前は、理事長だけには事務的に伝えますが、理事会的には「滞納者とは考えない」ということで、理事会の席上での「滞納者」としては発表されません。(会計担当役員にも伝えません。うちの会計担当役員は、小口現金の管理しかしませんので)

 この「うっかりミス」は「収納システム上の欠陥」が原因でもあるので、それを改善することも必要ですが、とりあえず、悪質ではないですし、書類を配布すれば、ほぼ必ずすぐに払ってくれるものなので、「滞納問題」としては重要ではないと言えます。

※この種の人達で困るのは、「とても真面目」「潔癖症」な人たちでして。たった1回の引落し不能なのに、「ねえ、あたしって、理事会の席上で滞納者ってことで名前を公表されるの?」「銀行のブラックリストに載っちゃうの?」「もしかして、クレジットカードが停止させられるの?」「あたしの銀行残高が不足していたってことは絶対に内緒にしてね」「決算書には載せないでね」「ごめんね、手間をかけさせちゃって、ほんとすいません。これ、お詫びの印です。(=お煎餅一袋)」とか・・・いらぬ心配をして、管理人のところに相談に来ることがあるのです。まあ、たしかに、今のクレジットカード会社とは厳しくて、「1回引落し不能」をしただけで、「5日後にカード利用停止」とかの厳しい措置をしますから、そういう制裁措置を心配する気もわからなくはないですが、管理組合はそんなに厳しくありません。
後述の「確信犯的に何ヶ月も堂々と滞納する」人がいる一方で、こんなふうに過度に心配する人もいるってのが、「マンションって、いろいろな人間がいるなあ」と思うところです。


B本当にお金がない困窮型
読者の皆さんが、一番気にしていて、理事会でも話題になるのが、この「払うお金が本当に無い人」のことでしょう。「本当に貧乏でお金がないんだから、絶対に払ってもらえないでしょう?」とお考えでしょう。
でも、実は、管理組合的には、そんなに心配することはないのです。「人でなし!」と思われるかもしれませんが、結論から言うと、「放っておいて大丈夫」ってことです。

「滞納問題」と言うと、「経済的困窮で払えない人」のことばかり思い浮かべますが、実際問題、「滞納している人」の中で、「どうしても払えない人」の割合はかなり低いです。「払えるけど払わない人」のほうが人数的には多いのです。
 管理人をやっていると、その住民の生活のことなどもわかりますから、役員とかマンション管理士なんかと違って、真実の姿を知ることができます。本当に生活が苦しい人というのは、「商売用で使っている車が、毎日、駐車場に置きっぱなし(=仕事が無いってこと)」「ビール飲んでいたのが、発泡酒に変わり、その後、アルコールの空き缶はゼロに」「借金取りがやってきている」「電話が止められている」「奥さんが逃げ出してしまった」「電気や水道が止められた (今は、「それじゃ殺人行為だ!」って批判があり、なかなか止めることはしないが、昔はすぐに止めていた)」「管財人がやってきて、こそこそ調査している」「税務署や市役所の市民税係の人間がやってくる」「その人が経営している会社の従業員が押しかけてきて”給料払え!”とデモ行進する」「車を手放した」「子供の服がいつもいっしょ」などなど、いろいろなことが起きています。
 でもって、「何ヶ月何年も管理費等を滞納」「いくら督促しても払ってくれない」となると、何をしても無駄です。「無い袖は振れない」からです。ここで、ちょっと知識のある管理組合役員や、マンション管理セミナーの講師や、マンション管理士さんなどの、いわゆる「自称専門家」(=私に言わせると、専門家としての知識はない、素人なんだけど)の人たちは、こういう「絶対に払えない人」たちに対して、「少額訴訟をしましょう」「裁判に持ち込みましょう」「内容証明郵便を毎月発送しましょう」「管理会社フロントに頼んで訪問してもらいましょう」など、あれこれ言いますが、「そんなの意味なし」「時間と経費の無駄」なんです。だって、そういう人は、この大不況下、いずれ破産しますから。
※ただし、管理費等の債権の「時効」は5年と決まっているので、「時効の中断」のために「内容証明郵便を送る」等の措置は必要なので、「完全に放置」はいけません。要注意です。

競売
 私も実際に何件も見てきましたが、お金がなくなると、「自分から部屋を売って出て行く」か、もしくは、「住宅ローンの債務」やら「市民税滞納による差し押さえ」等で、最終的には、その部屋は
競売にかけられます。競売物件というのは、このご時世いっぱいあって、「競売物件だけを扱い、安く買って、高く売り出す不動産業者」なんかもいるくらいです。
 そうやって、どっちにしろ、自分の部屋を売って、お金に変えて出て行くしかないのです。そういう「苦しんでいる人」に対して、管理組合が「払え!」と追い込むのは、無駄なことだし、心理的に考えると「万一、自殺しちゃったらどうするんだよ! 事故物件になっちゃうぞ」「これ以上、精神的に追い込む必要はないだろ? かわいそうじゃないか」って、私なんかは考えるわけです。
 ですから、「督促をガンガンやる」のではなく、管理人を使って、その家の状況を注視して把握しておくことのほうが大事です。

●先取り特権
 マンションの管理費等については、とてもありがたい「特権」があります。それは、競売に出されるような人はいろいろな債務をしょっているはずだけど、競売で落札して現金化された際に、
「マンション管理費等」は、優先的に、その現金から返済される、ということです。
 ですから、管理費等の滞納額が「30万円」あるとして、競売落札額が800万円だとしたら、その800万円から、まずは、「住宅ローン残高」が取られて(管理費等の滞納の先取特権は、抵当権には負けるため)、残額から、滞納分が支払われます。
 実際のところは、「これだけの管理費等の滞納がありますよ」というのが明示されて競売にかけられるため、落札する人がそれを承知で、その滞納分を計算(=マイナスする)したうえでの価格をつけて落札し、新しく区分所有者になった人(落札者)が、所有権取得後、その滞納分を管理組合口座に一度にまとめて支払って「これで完済完了」、というパターンになります。 こういう実例を、私は何度も見ています。(あまりうれしいことじゃないけど)

 ここで、問題となるのが、「オーバーローン」というもので、これは、住宅ローンなどの抵当権が設定されていて、そのローン残高が高額で、競売落札価格を上回るケースです。この場合、ローン返済のほうが優先されるため、先取特権があっても、管理費等滞納額に充填するお金がないため、管理組合は回収できなくなります。
 うちのマンションの場合、築年がバブル前ですから、購入価格が安く、かつ、年数も経過しているため、「オーバーローン」というケースはありません。ただ、よその「バブル末期に購入したマンション」の場合、その後、マンションの価値が大きく下落していますから、オーバーローンになるケースもないではありません。その場合は、競売になる前に、滞納を解消してもらうよう努力しないといけませんが、そういう人は生活も困窮してますから、実際にはあきらめるしかないでしょう。
 というわけで、比率的にも低いですし、本ページでは、「オーバーローン」のケースは割愛します。なお、リゾートマンションなどでは、「滞納額が膨大」「建物の維持管理がひどく、資産価値が大きく下落し、競売入札価格も低い」ということがありますが、逆に「「住宅ローンを組んでリゾートマンションを購入している」人は少ないですから、これも今回は割愛します。

●要注意 「先取り特権」の対象には「駐車場利用料」が含まれない可能性が高い

 「管理費等」の中には、「管理費」の他に、「修繕積立金」「専用庭使用料」「ルーフバルコニー使用料」「トランクルーム使用料」なども含まれます。
 これらのものには「先取特権」があり、これも回収できます。しかし、「駐車場使用料」については、「先取特権には含まれない」という見解が多く、競売で落札しても、「駐車場使用料が回収できなかった」というケースが発生します。(※判例では、「東京地裁平成20年11月27日判決」のように、「駐車場使用料は管理費等と同等の扱いにする」として、先取特権を認めたものもあり、司法の場でも、その判断は分かれています)

 一般的には、駐車場の利用契約書に、「2〜3ケ月滞納すると、駐車場を明け渡してもらう」といった規則があり、滞納がひどくなると、駐車場を使えなくなり、また、生活に困窮すれば必然的に、「車を手放して現金化する」ことが多いので、「高額滞納者が駐車場利用者である」ということはあまりありません。しかし、最近の「駐車場余り」という状況下、「滞納しても、次に入りたい利用希望者がいないため、明け渡してもらうように要求しない。できない」という管理組合も増えており、「生活困窮&高額滞納者なのに、駐車場利用者である」という事例もありそうです。(※特に、商売で自動車を使っている人の場合、最後の最後まで車を手放さないですから)

●<重要ポイント> 滞納分が納入されたら、まずは「駐車場利用料」に充当する
 上記のように、「駐車場利用料には先取特権がない」場合、管理組合は、競売にかけられても回収できない可能性があります。そのため、これに備えた方策が必要です。
 滞納者が、駐車場利用者で、駐車場利用料を含め、「管理費等」を「6ケ月分 計18万円」滞納しているとします。(内訳: 管理費1万円 修繕積立金1万円 駐車場1万円 計 1ヶ月分=3万円) 
 その滞納者が、「お金ができたので、2ケ月分払います」と、「6万円」を振り込んだとします。これを、素直に「2ケ月分」と解釈して会計処理をしてはいけません。これは「駐車場利用料6ケ月分」として処理するのです。つまり、滞納者は、「駐車場利用料は完済したが、管理費と修繕積立金は、6ケ月滞納しているまま」となります。あくまでも、事務処理上の方法論なのですが、この差は「いざ競売!」というときに、大きいのです。
 こういうところまで配慮できる管理会社はまずないし、管理会社は面倒なことが嫌なので、わざわざこんなことはしません。ですから、管理組合さんの方で自ら、管理会社に「こういうふうに会計処理してね」と頼むことが必要です。また、滞納者にも、その内容をきちんと知らせることが必要です。(おそらく意味はわかってもらえないだろうけど) 次回以降発行する「督促状」にも、この明細をきちんと書いておくのも大事です。こうやって、「まずは最初に、駐車場利用料の滞納分を消す」ことで、いざという時の「回収できる金額」が変わってくるのです。

●競売になるような住民は、とりあえず無視しても大丈夫
 そういうわけで、「本当に困窮して管理費等が払えない」という部屋は、「管理人を上手に使って情報収集を続ける」ことは大事ですが、「督促作業」に関しては、「やっても無駄」と考えて、過度な「取り立て」はしなくてもいいと、私は考えます。理事会の席上で「この人のこと、どうしようかあ?」と長時間議論するのも時間の無駄です。他にもっと議論すべき案件があるはずです。


C「変人」「困ったちゃん」型
 これは、「頭のおかしな住民が異常に多い」、当マンションだけの問題かもしれませんので、読者の皆さんは無視してけっこうです。興味のある方はお読み下さい。私がどれだけ苦労しているか理解してもらえることでしょう。

●ボーナス一括払い
 信じられない話ですが、「管理費等のボーナス一括払い」をする人が数名います。管理規約で決められている口座振替の手続きをしていない住民です。いくら 「規約を守って自動引き落としにしてください」とお願いしてもだめなのです。(管理会社から、「管理組合として公式に、規約を守らせるよう要望して下さい」と組合さんにお願いしているのですが、組合は何もしてくれません)
 この人達、振り込んでくるのは「年に2回」だけ。ボーナスシーズンの7月と12月に、まとめて払うのです。 ですから、その二月以外は、常に「滞納状態」で、私は、毎月、督促状を発行&郵送しなければいけません。大変な事務作業&経費です。年度末決算をする「3月末」には必ず滞納がありますから、毎年「未収金」として会計処理しなければなりません。これも面倒です。お金がないわけじゃないんだから、ほんとやめて欲しいです。

●「翌月分払いは嫌だ」
 当マンションの「管理費等」の銀行引き落とし日は、「毎月25日」です。民間企業の給料日に合わせているようです。この「25日」ですが、実は、「その月の分の支払い」ではなく、「翌月分の管理費等を、前の月の25日に払う」ということになっています。ですから、厳密に言うと、「前払い」ということになります。
 この「前払い」が嫌だって人がいるのです。「スーパーで物を 買う時に、商品を手に入れる前に金を渡すやつがいるか?」と私に反論してきます。また、「25日に引落し不能」の場合、月末〜月頭には「引落し不能リスト」が銀行から送られてくるのですが、私は、それをもとに「支払われてませんよ」という書類を作成・配布するわけでして。これが、「まだ、当月が終わっていないのに、なんで、当月分の督促状が来るんだよ!」と怒る人もいるのです。ですから、こういう人は、その該当月の末日に振り込んできます。結局、お金は入ってくるのですが、会計処理上、毎月、「未収金のリスト」に入れないといけません。ほんと面倒です。その住民自身も、自分で、振込手数料もいくらか払って、振り込んでいるのですから、お金も無駄だし、手間も無駄だし、自動振替にすればいいと思うんですけどねえ? 亀山くん。(杉下右京調で)  こういう「人間の心理」がからんでくるとややこしくなるのです。

「あの銀行は、バブルの時に騙されたから、大嫌いなんだ。だから、あの銀行を儲けさせることになる、自動引き落としはやらない。郵便局しか使わない」
 当マンションの場合、マンションから一番近い場所にある銀行を「指定銀行」にしており、そこに強制的に口座を作ってもらって、そこから引き落とす形になります。そのため、住民が指定銀行を選り好みすることができません。
 銀行って、あくどいことをいっぱいやっている犯罪者集団ですから、この気持がわからないでもないのですが、やっぱり、規約にしたがってくれないと、我々は困ります。この人はいちおう、「25日」には郵便局から振り込んでくれているようですが、こういう手作業だと、遅れることもしばしばあり、時々、未収リストに載ってきます。

●指定銀行が遠くに移転したため、使いたくない
 銀行って、統廃合がすごくて。当マンションの指定銀行も、実はその憂き目に会い、元の場所から、別の遠い場所に移転してしまいました。移転の実測距離自体はたいしたことはないものの、「線路の向こう側へ移転してしまった」というのが大問題でして。住民からすると、「徒歩10分分くらい遠くなった」という実感でして。おまけに新店舗は「自転車置き場がない」(以前はあった)という不便さもあり、現状の指定銀行支店の評判が悪いのです。このため、口座を解約した人もいるし、新しく入居してきた人の中には、「あんな遠いところの銀行は使いたくない」って人もいるし。そういうのが、滞納につながってしまいます。これは、気持ちはわかるので、あんまり強く言えないのがつらいです。(管理費収納に、間に「ファイナンス会社」をかませることにより、どこの銀行でも使えるようにすることができますが、ここの管理組合はそれをやってくれません。変なことに反対する気質があるのです。変人ばかりなので)

●夫婦であっても別会計
 新しく引っ越してきたAさん一家。毎月、管理費を滞納していますが、その中身が複雑で、管理会社の経理担当者が頭を抱えています。
 このAさん(夫婦と子供の3人暮らし)、「自動振替申し込み手続き」を拒否しました。そして、案の定、滞納が始まりました。わけがわからないのは、督促を出して、その後、手動で振り込んでくれるのですが、その時の金額が「1ケ月分」ではなく、半額というか、4割くらいという か、6割くらいというか、よくわからない中途半端な金額なんです。これが不定期に振り込まれます。また、その際に、「振込み人」の名前が、「ご主人の名前」の時と「奥さんの名前」の時と2種類あり、これも疑問でした。
 現在の滞納額合計は、「4.4ケ月分」。なんとも不思議な中途半端な滞納です。「なんで、振込みがこんな変な金額なん だ?」と理事長も不思議がっています。Aさんは、日中はほとんど不在で、連絡がとれなくて困っていたのですが、先日、雑排水管清掃の際に、「チャンスだ」 と思って、コンタクトをとりました。そして、「意味不明の滞納金額」の理由がわかりました。
 このご夫婦、夫婦なんですが、なんでもかんでも「夫婦といえどもしょせんは他人。お金のことは別々」という考えなんだそうです。部屋を購入した際も、共有名義だそうです。2SDK(Sはサービスルームのこと)の部屋なんですが、ご主人がサービスルームを使うということで、「夫6割 妻4割」という共有負 担割合にしたそうです。そして、「管理費等も割り勘にする」ということで、同じ割合になりました。
 こういうわけで、ご主人が管理費を振り込む際は「6割」の金額、奥さんのときは「4割」の金額となりました。そして、お互いにお互いの振込み状況に干渉しないようで、まちまちな滞納、まちまちな振込みが行われ、事態がより複雑化してしまいました。督促状を書いている私の頭の中も、こんがらがっていますし、組合の通帳の管理をしている、会社の経理の女性も、「何がなんだかわかりません。??? 助けて下さい!!」とお手上げ状態です。在室していた奥さんに、口頭で再度督促をしましたが、「私の分は来月中に払います」と言ってくれましたが、「主人は主人ですから」「主人に直接言ってくれますか?」と旦那さんの分はあいまいなままです。

●認知症高齢者
 変人枠に入れるのは大変失礼ですが、最近、「認知症のため滞納する人」がポツポツと出現しています。
 「実際は、口座に残高がないのに、”あるはずだ”と主張する人」「実際は行っていないのに、”先月、銀行のATMで3ヶ月分振り込んだぞ”、と言い張る人」 いろいろです。認知症の人の場合、「2ケ月分の滞納なのに、なぜか、4ケ月分を振り込んでくれて、逆に返金をしないといけなくなった」というケースもあり。とにかく疲れます。


 あ〜、つらい。


さて、ここからが本題です
■滞納問題の主対象となるのは、A「払えるけど払わない」人

今までの説明で、@BCは、ある程度無視してもいい、ということがご理解いただけたことでしょう。そして、問題となるのが、「お金はあって、払うことはできるのに、払わない人」なのです。

「払ない」ではなくて 「払ない」なのです。ここが重要です。

 この種の人がけっこういます。ですから、
「滞納問題の解決は、払わない人に、いかにして払わせるか?」ということです。

 「なんで、その住民がお金を持っている、ってわかるの?」と思うことでしょう。でも、わかります、我々管理人は。

「滞納しているのに、高級外車に乗っている」
「滞納しているのに、海外旅行に頻繁に行っている」
「滞納しているのに、通販で高級品を買っている」
「滞納しているのに、ミネラルウォーターの宅配を注文している」
「滞納しているのに、乾燥機付きの高級洗濯機を購入している」
「滞納しているのに、高級な服を着て、高級な装飾品を身にまとっている」
「滞納しているのに、高級な家具が配達される」
「滞納しているのに、子供を高級私立学校に通わせている」
などなど、管理人じゃなくても、一般の住民でもわかるようなことがいろいろあります。

●ペナルティがない「管理費等滞納」
 「滞納すると延滞金が加算される」という制度にしているマンションがあります。この制度は標準管理規約の中にも「設定していい」となっているはずなので、標準管理規約に準拠した管理規約のマンションであれば、すぐに実行できる方法です。
 これは「有効」な手段ですが、経理的にはややこしくなるので、仕事が増えて困ってしまう管理会社の人間としては立場上「自らオススメできる」ものではありません。それに「滞納者」というのはずうずうしい人が多いので、わずか「数%」の延滞金では、シカトする率も高いです。ビデオレンタルの延滞金くらい高ければ効果が甚大ですが。また、「加算される延滞金」に関しては、前述の「先取特権」は「対象外」「無効」となっているので、その点でも効果が薄いです。

 さて、私は、「管理費等滞納は無銭飲食と同じ犯罪」と思っています。無銭飲食であれば、店主に怒られ、警察に通報されます。また、電話代を滞納すればすぐに回線が遮断されます。クレジットカードを滞納すれば、すぐに利用停止になります。また、昔(昭和30〜40年代)は、「学校の給食費を払わない家」がけっこうあって、その場合は、クラス全員の前で担任の教師が、「おい、鈴木! 給食費払わないとだめじゃないか! それで給食食べるのは泥棒と同じだぞ。親によく言っておけ!」と、氏名を公表して、辱めを与えたものですが、マンションでは、そういうこともありません。
 
管理費等を滞納しても、事実上、何のペナルティもないのです。エレベーターは普通に使えるし、滞納者の部屋の前の廊下の電灯が消されることもないし、滞納していることを公表されるわけでもない。督促はされるものの、たいした意味のない書類が来るだけだし、初期対応を任されている管理会社からの督促はやる気のないものだし、理事会役員が、その人の玄関ドアを叩いて「払ってよ!」と怒鳴ることもないし。

 こんな甘い対応をしていて、当人にとって、なんの不都合もないのであれば、「滞納したほうが得」と考えるのが普通です。


●「督促業務は全部管理会社がやる」というのは大きな勘違い
 私は法律に詳しくありませんが、本来、債務の督促というのは、当人以外では「弁護士しかやっちゃいけない」ものらしく、そのからみがあるのか、マンション管理費等の督促に関して、「管理会社がやるべきこと」というのは、実は、ほんの少ししかありません。

根拠となる「マンション標準管理委託契約書」をご紹介しましょう。

マンション標準管理委託契約書 第10条(管理費等滞納者に対する督促)
乙は、第3条第1号の業務のうち、出納業務を行う場合において、甲の組合員に対し別表第1 1(2)Aの督促を行っても、なお当該組合員が支払わないときは、その責めを免れるものとし、その後の収納の請求は甲が行うものとする。
2 前項の場合において、甲が乙の協力を必要とするときは、甲及び乙は、その協力方法について協議するものとする。
マンション標準管理委託契約書コメント 10 第10条関係
弁護士法第72条の規定を踏まえ、債権回収はあくまで管理組合が行うものであることに留意し、第2項のマンション管理業者の協力について、事前に 協議が整っている場合は、協力内容(甲の名義による配達証明付内容証明郵便による督促等)、費用の負担等に関し、具体的に規定するものとする。
マンション標準管理委託契約書 別表第1 事務管理業務 1基幹事務(2)出納 
A管理費等滞納者に対する督促
一 毎月、甲の組合員の管理費等の滞納状況を、甲に報告する。  
二 甲の組合員が管理費等を滞納したときは、最初の支払期限から起算して○月の 間、電話若しくは自宅訪問又は
   督促状の方法により、その支払の督促を行う。  
三 二の方法により督促しても甲の組合員がなお滞納管理費等を支払わないとき は、乙はその業務を終了する。

この文章の趣旨は、
「債権回収はあくまでも管理組合がやるもの」としています。「初期の督促業務だけは管理会社でやるが、あとは管理組合でやらないといけない」ということです。「初期対応」を具体的に説明すると以下のようになります。(当マンションの実例)

■毎月1回、銀行から発行される「自動引き落とし状況表」をもとに、管理費未納の組合員を抽出する。誰が、いくら滞納しているかは、毎月、管理組合に報告する。
■未納がわかった組合員に対しては、「管理組合名」で(管理会社名ではない)、おとなしめの「払ってくださいね」という督促状を発行し、各部屋のポストへ投函する。外部居住組合員に対しては、郵送をする。
■未納が3ケ月以上の「大口」になると、管理会社フロントが「電話」または「直接訪問」をし、「払って下さい」とお願いする。
■上記方法でも払ってもらえない場合は、内容証明郵便で、初回のものよりはちょっときつめの文で「督促状」を送る。


 管理委託契約書に従えば、これだけやれば、管理会社の仕事はお役御免です。「これだけ」と書きましたが、「直接訪問」なんかは、たいてい、 夜間になりますし、わざわざ出向いてくるフロント君も大変です。事務作業だって楽じゃないです。毎月、5〜6通になる、「外部居住者宛の督促状」(外部居住って、滞納率が高いのです)の切手代なんかは、管理会社が負 担しています。

 「え? これだけ?」って思う人もいるかと思いますが、うちの会社なんか、まだ良心的なほうでして。ひどいところでは、滞納者に電話をかけて、留守電対応だったら、「それに1回メッセージを残しただけ」で「電話をかけて督促しました」だったり、1回訪問して、インターホンを鳴らして、それが留守でも、「直接訪問して督促をしました」ってことにしちゃう管理会社もいっぱいあるわけです。これじゃあ、「払う気はない」滞納者を翻意させるのは無理です。

 その後の督促業務はすべて「管理組合さんで、自分でやって下さい」というのが、一般的な管理委託契約の内容です。これを知らない役員が非常に多く、誤解のもとになっています。ですから、一般の皆さんが、「滞納した管理費を払わせるのは、全部、管理会社の仕事だろう!」と思うのは、実は「契約違反」だったり「違法行為」になっちゃうのです。

 これを読んで「管理会社って手抜きじゃん」と思う人も多いでしょうが、私から言わせると、最初から、管理会社に任せること自体がおかしいのです。だって、滞納者とはいえ、マンション住民は管理会社から見ると「お客様」であるわけで、立場の低い「管理会社」が「お客様」に対して、強いことを言えないのです。「お前なあ、みんなが払った管理費で金もらってるくせに、住民に対して、その態度はなんだ!」とか言われれば反論しにくいのです。また、フロント一人で訪問したって、滞納住民が「家族4人」で応対して、「そんなことでわざわざくるんじゃねえよ!」と強硬な態度を示せば、人数的にも負けるのは当然です。

 「管理会社がやるべきものだろう」という論争ではなく、もともと、「管理会社が督促したって、払わない人は払わない」ってことを理解して下さい。


●<解決編> その1 前提条件「払いやすい環境づくり」

滞納に対する督促の方法を述べる前に、まずは、「滞納させないための制度作り」を考えましょう。

■「当月分払い」を基本とする
 具体的に言うと、「”毎月25日に翌月分を振り替える”ということはしない」「毎月20日とか月末に当月分を振り替える方式にする」ということです。
 心理的なものですが、けっこう重要です。「俺、食券方式のラーメン屋って嫌いなんだよなあ。まだ食べてないのに、なんで先に金を払うんだ」って人がいるからです。また、「先払い」の場合、1ケ月分を滞納しても、ご本人の感覚としては「先払いじゃなくて当月払いにしたんだ」ということで「滞納をしているという罪悪感」がありません。ですから、滞納しても、「1ケ月分」だけなら、平気なんです。

■「指定銀行口座」というのはやめる
 うちもそうなんですが、古いマンションの場合、分譲時に「管理費等の支払いのために、当社で指定する銀行の支店(=たいていは近所にあるもの)に口座を作ってください」と分譲会社から指示されるケースが多いです。特に三井系のマンションだと、やはり、系列の「三井住友銀行」を指定されたりします。しかし、このように、銀行や支店を指定されると、住民サイドとしては、いろいろ不都合です。特に、部屋を賃貸にしている「外部居住の区分所有者」の場合、指定銀行は自宅から遠く離れていることが多く、そこに口座を作ることを嫌がります。
 現在、ファイナンス会社を通して、「どの金融機関でも管理費等の振替ができます」というシステムができていますから、「指定銀行のみOK」という古い制度はやめて、「どこでもOK」という方式にすることをお勧めします。(※制度切り替えの時だけは一時的に多大な事務的仕事が発生します)



■管理組合指定の方法を全員に遵守してもらうよう努力する
管理規約には、普通、「管理費等の納め方」という条文があって、「管理組合の指定する方法で納めること(たいていは金融機関からの自動振替)」とか書いてあります。しかし、現実には、自動振替措置を取っていない人が少なからずいます。管理会社としては、この人たちの会計処理はほんと面倒なんです。こういう人には、理事長名で、「規約違反行為です。規約に従ってください」と毅然とした態度で、遵守を求めて下さい。自動振替していない人の滞納率は非常に高いです。(自動振替をしていない人の分も、銀行から振替手数料は取られてます) 
 「規約どおりに自動振替して下さい」と、「定期総会の資料に毎年記載する」とか、「年に2回 掲示板に貼り出す」とか、そういうふうに、住民全体を啓蒙することが大事です。

■1回滞納した場合の対処方法を事前に知らせておく
当マンションでよく起きる誤解。
「3月分が”残高不足で引き落とし不能”になった場合、その後、お金を口座に用意しておけば、4月分引き落とし時に、自動的に2ケ月分がまとまって引き落とされる。だから、何もしなくていい」
このように考える人が非常に多いです。これは、当マンションの場合、完全に誤解で、翌4月は、「4月分の1ケ月分」しか降りません。管理組合と銀行との間で、そういうシステムになっているからです。そういう「制度内容」もきちんと周知させることが大事です。

■NHKのマネをする
「皆様が払った受信料で支えられています」というNHKの言葉を、マンションでも使用すべきです。「みなさんが支払った管理費で、廊下の電灯がついているんです」とか。ことあるごとに、広報物の下の隅っこに書き入れるとか、そういう努力も必要かもしれません。






●<解決編> その2 
こうやって滞納をなくそう!

■名前を公表しましょう    やっちゃえ、日産!
 今は「個人情報保護」の観点から、理事長にさえ、滞納者の氏名を教えない馬鹿な管理会社もあるそうですが、1ケ月目の滞納で督促状を出し、それでも払わない人(つまり、ウッカリミスではない、滞納の自覚のある人)は即刻、理事会で役員全体に対して、名前を公表すべきです。
 現実的には、「滞納者の氏名は理事長にしか教えない」という方式にしている管理会社も多いようですが、ウッカリミス以外の滞納者は、理事会の席上で、役員全員に公表すべきだと思います。そして、公表の「段階」を設けて、月数が増えるごとに広範囲に公表しましょう。
@「2ケ月滞納は、理事会の席上で、理事会資料に指名が明記され役員に対して公表される」(ただし、議事録には記載しない)
A「
3ケ月滞納は、理事会の席上で、理事会資料に指名が明記され役員に対して公表され、かつ、議事録にも記載される」(理事会の議事録を全住民に配布しているところでは、これで、区分所有者全員に名前が知らされることになる)
B「6ケ月滞納は、掲示板に名前が貼りだされる」(掲示板なので、住民以外の部外者の目にも触れる)

 このように、滞納月数が増えるごとに「晒し者」の度合いを強くしていき、「辱め」を与えるのです。マンションによっては「氏名まで掲示板に貼るのはちょっと???」という控えめなところもあるかもしれません。その場合は「部屋番号だけ掲示板に貼る」というのでもいいかもしれません。

 大事なのは、この「公表する」ということを、事前にきちんと「公表する」ことです。いきなりやっちゃだめです。このレベルのことは「理事会決議」で決めていいと思いますが、いずれにしろ、マンション全体に対してきちんと広報し、かつ、「では来月から」ではなく、猶予期間も設けるべきでしょう。可能であれば、「細則」として明文化したものを作るのが理想であり、「細則の追加」ということで、総会議案として可決させてから実行するのがベストです。

■督促は早めに
 管理会社に任せっきりで、管理組合がまったく動かないマンションの場合、「事実上、半年間くらい、ほったらかし。滞納額が10万円を超えて、ようやく焦ってくる」ということになりがちです。上記の通り、管理会社のする督促は「甘い」ですし、滞納住民側も「そんなの屁の河童」と思ってますから、滞納する側は、管理会社の言うことなんか聞きません。そんな感じで、半年分とか貯めると、けっこうな金額になり、返すのが大変になります。
 そうなる前に、手を打たないとだめです。私の意見としては、「3ケ月以上の滞納は、管理会社に任せず、管理組合自らが動かないとだめ」というものです。

■管理組合がする督促作業 実はそんなに大変じゃない  必ず複数で
 そうやって「管理組合自らがやるべき」ということを聞くと、「それって大変な仕事じゃないの? そんなのあたしたちにはできないでしょ?」って思うかもしれません。しかし、そんな心配はご無用。実は簡単なんです。
 私が提案する方法は、「毎月の理事会の開催後に、解散する前に、出席した役員が全員で、滞納者の部屋を訪問すること」です。(※夜の9時以降の督促は法的に問題があるので、夜遅く理事会をやっている組合の場合は、理事会開催前でもいいです)
 滞納者は「書類」が来てもなんとも思わないし、管理会社の人間が一人で行ってもたいしたプレッシャーにはなりません。特に「一人だけ」というのはほんとだめで、滞納一家が「家族4人で応対」としかしたら、数の力で最初から負けです。
 頑張っている管理組合でも、よく、「会計担当役員が一人で行く」とか「理事長が一人で行く」というパターンがありますが、これもだめです。上述の通り、数の力で負けることもありますし、1名で行くと、それは「個人」ということになり、「うるせいなあ、馬鹿野郎! ごたごた言ってんじゃねえよ。」という滞納者の怒りの矛先が、「管理組合全体」ではなく、「会計役員個人」「理事長個人」へ向けられてしまうからです。「個人への恨み」ということになると、「理事長の部屋のポストに犬のウンコを投げ込む」とか、そういう卑劣な嫌がらせが起きる危険性があります。「管理組合全体で滞納の督促に来た」という印象を与え、滞納者が家族全体で応対しても、それに勝つ人数、ということになると、「最低でも3人以上」できれば、5人以上」で訪問して下さい。そうすれば、かなり強いプレッシャーを与えることができます。これが毎月続けば、滞納者も根負けしてすぐに払うでしょう。
 なお、法律で「脅迫的な言葉での督促」は禁止されていますので、「この野郎、払えよ!」といった乱暴な言葉遣いはだめです。「払って下さい」と丁寧に言いましょう。でも、「払って下さい」「払って下さい」「払って下さい」「払って下さい」「払って下さい」「払って下さい」と6人が全員言えば、相当な効力はあります。
 「役員全員で訪問し、”払って下さい”と言うだけ」、これだけのことです。簡単でしょ? 管理会社に任せっきりで、滞納が雪だるま式に増える前に、自分たちでチャッチャと動けばいいのです。

ただし、事前に滞納部屋の生活パターンを調べておいて、その時間に在宅しているか調べておくことが必要です。これは管理員に情報を聞いておきましょう。

■「賃貸部屋」はちょっと難儀
 これは、滞納している区分所有者が別の場所に住んでいるので、簡単に自宅訪問するわけにもいかず、難しくなります。「隣町にいる」くらいなら、役員のみんなで「散歩も兼ねて、ちょっと行ってみますか?」もありかもしれません。
「実名が書かれている議事録を送付する」
「実名が書かれている掲示板の様子を写真に撮って送る」
「(賃貸入居者には悪いけど) 入居者の部屋を訪問し、”おたくのオーナーが払わないんで困ってるんです”と愚痴をいい、困った入居者が、”大家さん 困りますよ。私が迷惑を受けています”と苦情を言うように仕向ける」
といった感じになりますが、外部区分所有者に督促状を送付するのは、実際のところ、郵送料などの実費もかかるわけで、それをペナルティとして、「督促状1枚郵送のたびに、手数料1000円を加算する」などの「罰金」を貸す制度にするのもいいかもしれません。



■督促方法はマニュアル化する
「せっかく、その年の役員ががんばって滞納をゼロにしても、その次の年の役員がぐうたらで、また滞納が増えてしまった」ということがよくあります。ですから、「滞納問題にはこうやって対処する」ということを理事会でマニュアル化し、次期の役員は、ただ、「マニュアルに沿ってやっているだけ」ということにしないといけません。

とにもかくにも、「滞納解決のためには、管理組合自身が汗をかく」ことが大事だと考えます。「管理会社に任せる」意識では解決しません。そして、いろんなNPOやらマンション管理士は、すぐに「裁判」とか「法的措置」とかの「最終手段」を口にしますが(法的なことはちょっと勉強すれば誰でも答えられるから、実は楽)、「そうならないようにする」「小島瑠璃子 もとい こじれる前に対処する」ってことが肝心です。



以上、長文の完読、感謝します。








<お願い> 当HPは閲覧に際し、購読料をとることはしておりません。有料メルマガなどもありません。でも、もし、ご協力いただけれるのであれば、アマゾンで買い物をする際は、このバナーよりアマゾンサイトに入って購入して下さい。当貧乏管理人の生活費の足しになりますので。なにとぞ、よろしくお願いします