管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

曖昧な表現 「構内徐行」




具体的なスピードが書かれていないと無意味なんだけど


この前、こんな新聞記事がありました。
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国土交通省の荒川下流河川事務所は河川敷利用ルールの改定案をまとめた。河川敷の自転車走行について時速20キロメートル以下の走行を求めた従来ルール を変更し、人が走る速度並みに「徐行」することを求める新規定を作った。河川敷はサイクリング人気が高いが、事実上スポーツ走行は禁止となる。同事務所は 今後利用者の意見を聞いた上で、11月から新ルールの運用を始める方針だ。
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この記事だけ見ると、「規制が厳しくなり、暴走自転車がいなくなって、周辺住民は喜ぶ」と考えるのが、普通の神経かと思いますが、地元で被害を受けている人たちのブログを調べると、実際は「改悪だ!」という声があがっているそうです。

その理由は、「時速20キロ」という具体的な数字が削除されたこと。

今回、「時速20キロ以下」と明記されていた従来ルールが、「人が走る速度並みの徐行」と書き換えられました。こうなると、ポイントとなる言葉は「人が走る速度」という言葉と「徐行」という言葉です。

早速、ロードレーサータイプの自転車に乗る輩からは、「人間であるウサインボルトが走る速度は、時速37キロだ。だから、人が走る速度というのは、時速37キロだ。俺たちはふだんはもっと早い速度で走っているから、それから比べれば、37キロは徐行していることになる。だから、時速37キロで走ってもいい、ということを、国が保証してくれた」という屁理屈が、「喜びの声」として、繰り出されているそうです。

う〜ん、そうなんですよねえ。こういう「ルール」というものは、具体的な数字を出さないと、なんの意味もないんです。そういう愚策を、国の役人がするというのは、要するに「責任放棄」ってことです。
最悪のクソ公務員です。

私の知っているマンションでも、「ペット飼育ルール」に「小型犬のみ飼える」という文を書いているところがあって、これもあとあと問題になってます。「象から見れば、ゴールデンレトリバーは、小型の犬だ」とか言って持ち込んできた、バカ飼い主がいたそうです。

マンション内のルールって、その基準を明示するのが難しい面もあります。たとえば、「生活騒音」なんかも、「静かにしましょう」じゃなんだかわからないし、「他人の迷惑にならないように」というのも、他人の感じる迷惑の感覚は千差万別だし。リフォーム工事のルールも、「夜間の工事は禁止」と書かれていても、「夜間って具体的に何時だよ?」ってことになるし。
曖昧な表現が多いので、それを運用する立場の管理人は、すごく困るんです。

ちなみに、「徐行」という言葉は、「すぐに止まれる速度」という定義なんですが、その「すぐに」が、1秒なのか、10秒なのか?  人間が歩いている時は1秒で止まれるかもしれないけど、鉄道なんかの場合は、かなり遅い速度でも、完全に停止するには5秒以上はかかるでしょう。とにかく、「徐行」というのは曖昧な表現であり、法律文にはそぐわないのです。

道路交通法では、「徐行」に関して具体的な速度の明記はありません。警察幹部が国会で「時速4〜5キロが徐行です」と発言した記録はあるそうですが。

というわけで、新聞記者は、事実上スポーツ走行は禁止となる と書いていますが、当の自転車乗りは、「これで、堂々と、高速で走れる」と喜んでいるわけです。もはや、「ザル法」でしょう。ほんと、役人というのは、高給だけとって、ろくな仕事をしません。

さて、徐行に関して、なんで、私が怒っているかというと、当マンション内でも同様のことがおきているからです。

この前、マンション内で「マンションの敷地内なのに、すごいスピード(時速30キロくらい)で自転車を走らせる人がいて、その人が、歩行住民をひっかけて、転倒させて、ケガをさせる」という事故(事件って言った方がいいなあ)がありました。
以前から私も気になってたんです。うちのマンションって、郊外型で敷地も広いから、通路とか、わりあい広くて、自動車も自転車もけっこうなスピードで走るから危険なんです。
今回の事故を起こした自転車乗りは、以前、理事長をやった経験のある人の息子で、父親が、マンションの保険のことを知っていて、この息子さん自身はそういう保険には入ってなかったんですが、マンション保険の「個人賠償特約」で、この事故の被害者の治療費も払ったんです。ですから、「保険で補償したんだから、それでいいだろ」って態度で、全然、自分が悪いことをしたと思っていません。

マンション敷地内の事故なので、警察対応なんかも私が行なって、いろいろと大変だったのですが、「管理人さん、ご迷惑かけました」の言葉も当然なし。理事長経験者の親も、「成人した息子と自分は関係ない」ってことなのか、なんの挨拶もなし。

こういう態度なので、被害者側がいっそう怒ってしまい、ご家族が「マンション敷地内では、一切、自転車に乗るのは禁止。歩いて押して移動する、ということにして下さい」と、理事会に乗り込んできたのです。お気持ちは私もわかります。今後、同様の事故が起きる可能性も高いですから、私もこの案に大賛成です。

でも、理事会の会議の決定は、「マンション内は自転車・自動車は徐行する」ってことだけに決まりました。

「徐行」???? なにそれ? って感じです。

そして、私に対しても、「じゃあ、管理人さん。自転車置き場に、”マンション内は徐行してください”って看板を作って貼ってね」という指示がありました。まあ、命令だから作成しましたけど、「徐行」じゃ、意味ないでしょ。案の定、被害者一家が、管理室に怒鳴り込んできて、「徐行とはなにごとだ! なめとんのか、お前!」って、私を非難してきました。私は関係ないのに。トホホ。(というか、理事会に乗り込んできた人に対して、直接、「こういうふうに決まりました」と、決議内容を伝えない理事長にも問題あり。フロントも手抜き。私の作った貼り紙を見て、初めて決議内容を知ったそうです)

現実問題、「押して歩く」というのは反対が多いでしょうから無理だとは思ったけど、せめて、具体的に、「時速5キロ以下で走行する」とか、そういうのを決めて欲しかったなあ。これは、「苦情が来たので、とりあえず対応しました」っていうだけです。公務員体質と変わりないです。情けない。

実を言うと、このマンションでは、部屋の中から折りたたみ自転車を持ち出し、共用廊下を自転車に乗って走る人もいます。そして、エレベーターにも「自転車に乗ったまま」で乗り降りします。当然、廊下を自転車で走れば、危険なんですが、そんなことおかまいなしの人がいっぱい。この極低レベルの住民に対して、「敷地内は全部、押して歩け」なんてこと規制するのは無理無理。規制したってどうせ従わないし。





2013/9