管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 「両手取引」という、商習慣から、不動産会社・マンション管理会社を考察する




  
マンション管理業界に身を置く人間として、この業界の自己診断は、

「いい加減な業界」

だと思っている。

実際そうなんだからしょうがない。

「おたくの会社だけでしょ?」って言われるかもしれないが、実はこの業界は人の流通が激しく、うちの会社の中で働いている人で、「新卒採用」の人なんか誰もいない、みな、どこぞの管理会社や、全然異分野の会社で働いていた人が「流れて」くるのである。だから、他の会社のこともけっこうわかってる。また、最近はツイッター経由で、RJC48の人たちとも交流があり、いろいろなマンションの実情が耳に入ってくる。


(タワーなどの大規模マンションの理事長さんに特化したグループだけど、すごく有意義な活動をしている)


現実問題でも、「不祥事ばっかりやってるから、”マンション管理適正化法”、なんていう制度を作られた」とか「法律ができても違法行為が止まらない」とか、「一流とされる会社でも、1000万円の横領事件とか、しょっちゅう起こっている」とか、新聞記事からもわかるような、ひどい業界である。

また、知り合いのマンションで実際に起きたことだけど、「理事会の日に、管理会社のフロントが風邪で欠席したが、会社からは代わりの社員は来なかった」というのがあった。その理由は、「担当者じゃないとわからないので」というもの。つまり、バックアップ体制なんかないってことだし、上司が日頃から部下の仕事のチェックするような体制もできていないってこと。直行直帰が多いから、資料も全部自宅に持ち帰っていたりする。
だから、この業界では「いいフロント社員にあたると、いい管理ができるけど、悪いのにあたると大変だよ」ってことを言われる。 フロント社員とか管理人とか、その人の「
個人の資質」で、そのマンションの管理の質が決まってしまうのである。情けないが。

さて、「管理会社はいい加減」ってことは、あちこちでさんざん書いているんだけど、それに反論されたことはない。まあ、みんなわかってるんだろう。

ところで、その「マンション管理会社」が、なぜいい加減で、犯罪ばかり犯しているのか? を考えてみる。それは、「マンション管理会社は、そのほとんどが、大手不動産会社の子会社だから」だと私は思っている。不動産会社というのは、たいていが「悪質企業」である。(実体験で考えると、9割が悪質、1割がまとも、と思っている。まともがゼロとは言わない。)

そういう、「悪質企業」の子会社なんだから、管理会社も当然悪質である。最近、テレビCMで話題になったH社なんかは、親会社内で、はじきとばされた無能社員が、子会社である「マンション管理会社」の支店長とかをやっているらしく、そうなると、その質は、すぐに推し量れるわけである。

ということで、「不動産業界はろくでもない」ってことをツイッターで書いたら、現役不動産会社社員さんなのか、そういう人からすぐに反論が来た。

=不動産業ほど締め付けられてコンプラ守ってる業界って他に無い。年4回の講習、主任者講習は義務。他の資格でこんな義務しょってる業界は無いです。管理業、弁護士、医師、会計士、と一緒にしないで。民間相手ですぐ訴えられる。みなその為の保険に加入してます。まじばな=

まだ、若くて、自分のいる業界に誇りを持っている人なのかもしれない。でも、現実を教えてあげないといかんと思って、「締め付けが厳しいのは、根が性悪な業界だからなんだよ。もともと、優良な業界だったら締め付けする必要はないでしょ」とか、いろいろと、不動産業界の現実(マンション管理人の場合は、主に、売買仲介専門や賃貸取り扱いの不動産業者と関わることが多く、それ連中の仕事のいい加減さには、とことん迷惑をうけている)を懇切丁寧に教えてあげたら、逆ギレされてしまった。
(彼の言う「保険」も調べてみたが、その支払額は1千万円だけだった。それじゃ、何億もの詐欺被害にあった買主は補償されないと思うんだけど)
==
「大ボラ吹き」
「人を馬鹿にしていいかげんな事吹き捲くるとどんなざまになるか教えてやる」
「あんたの脳の馬鹿さ加減 がくっきりだ」
「管理人風情に経済の何が判る」
「詐欺にやられるような奴は不動産一つ買えるはずも無い」
「免許業者が詐欺商法する訳ない」
==

その不動産会社社員君は、他にも、私の親のことまでバカにする暴言を吐いたが、記載するのはこれくらいにしておく。

「不動産業界は、いい業界です」と主張したくて、私のツイッターに反論してきたはずなのに、いつのまにか、ヤクザも驚くような暴言や脅迫までしてきた。これじゃ、自らが「不動産業界は、極悪です」って認めているようなものなんだけど・・・・? 本人はわかってないんだろうか? う〜ん、相当なアホだなあ。こういうのしかいないのだろうか? 不動産業界は。もちろん、ちゃんとした人もわずかながらいるけどね。


さて、そんななか、私の知り合いの小林さん(仮称)が、日経新聞に出た。2013/7/10版



この中で、仲介業者がよくやる
両手取引ということを解説している。「売り手」と「買い手」の両方から仲介手数料をいただこうという時に行われる手法で、かなり、「詐欺」に近い、悪質な商習慣である。

この両手取引は以前からいろいろと問題になっていた手法で、下記のような記事も見受けられる。読んでもらえると幸いです。

「不動産両手取引禁止の波紋」

仲介手数料の両手とは?プロが分かりやすく解説!そうだったのか!

【不動産】不動産仲介の両手取引は禁止すべきではないか?―中古住宅市場の活性化を考える(2009-07-05)

「不動産業界にもあった、八百長問題」

3番目の記事の中では、「良心的な業者に当たるかどうかは運次第」と書かれている。要するに「この業界のほとんどは悪質」ってこと。

そういうわけで、こういう「客観的事実」を述べると、上記の「反論してきた業界人」の主張なんか、あっさり論破できるんだけど、本人は、ワタミの社長同様、「自分は優良」だと思っているようだから、これ以上、何を言っても無理だろう。桜田淳子に「統一教会はよくないよ」と諭すようなものである。

ただ、上記の彼が言った言葉で、一点だけ、捨て置けないのがある。「管理人風情に経済の何がわかる」というもの。これは、正直、頭に来ている。でも、こういうのが、世間一般の「管理人評」なんだろうなあ。しかし、管理人のことをよく知っているはずの不動産業界の人間から、こういうことを言われるのはつらいものである。

さて、話を「両手取引」に戻すけど。実は、管理人サイドとしては、意見は、「正反対」なのである。ごめんね、小林さん。

マンション管理人としては、「両手取引」は、大賛成です。

すいません、自分の立場としては、これが正直な感想です。

なぜかというと、

マンション管理人は、そのマンションの部屋が売買になると、仲介の不動産業者から、いろいろなこと(重要事項説明に関わることなど)を聞かれて、その相手をするのがけっこう大変なんである。その大変な作業が、「売主側の不動産業者」と「買主側の不動産業者」の両方の相手をするとなると、単純に
「倍」の労働量になってしまう。
届出書類とか、管理費等の銀行振替の変更作業などの事務作業も、売主側と買主側の両方を別々にやると、これがなんともメンドクサイ。
これが「両手取引」だと、相手にする不動産業者は1社だけ。この会社にすべて伝えればOK。これは、管理会社としては楽なのである。

とにかく、不動産業界って、いい加減だから、「ペットを自由に飼ってもいい。どんな大型犬もOK」なんてことは言ってないのに、そういう広告を出したりするし、まともな相手じゃないから、その相手をするのはすごく大変。言葉遣いも、上述の彼みたいに悪いのが多いし、訪問の約束の時間も守らないし。届出用紙も、うちの組合の規定のものがあるのに、自社で用意しているもの使って、「これでいいでしょ」とか提出してくる。困るんだよなあ、そういうの。
それから、この業界特有の「問題」として、「不動産屋は、火曜と水曜の平日に連休をとる」というのがある。管理人は基本的には、「平日勤務」だから、これが困る。火曜日の朝に、なにかすぐに伝えないといけないことが起きても(例えば、「該当の部屋が上の階からの漏水事故の被害を受けた」など)、伝えられるのは、木曜の朝になってしまうのである。大事な案件が「2日間遅れる」というのは大きな問題である。だから、不動産業者相手はすごく疲れるのである。

そういう、面倒な仕事が「倍」になるのは、正直、嫌。だから、両手取引を歓迎するのである。

今回の結論は「反社会的」なものになってしまったけど、マンション管理会社的にはそういう考えなんで、なにとぞご理解下さい。

追補:ただし、両手取引で困ることもある。それは、
「売買までに時間がかかる」ということ。要するに「塩漬け」なんだけど。これが長いと、「その間に、雑排水管清掃実施がある。誰かに来てもらってドアを開けてもらわないといけないのだが、空室だから、それができない」ってことが、たまに起きる。空室って基本的には困るんだよなあ。


2013/7




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