管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

熱血&長期政権 理事長が突然死



後継者を育てていませんでした



ご近所のマンションの管理人さんから聞いたお話です。

熱血理事長さんがいらっしゃいました。

その人は、すごいがんばり屋さんで、ほとんど一人で、管理会社変更(リプレイス)も成し遂げたそうです。前の会社がぼったくりだったこともあり、管理委託費は半減したそうです。ただ、その際に、「組合運営とか理事会運営は、みな、自分たちでやるから、管理会社のサポートはいらない。だから、その分も管理委託費を安くしてくれ」と交渉して、通常の委託費よりも、安くしたそうです。
委託費を半減したことにより、財政は回復し、そのおかげで、無事、大規模修繕工事も終わらせたそうですが・・・・・

大規模修繕工事で相当苦労したのではないでしょうか? ある日、突然倒れたそうです。(脳出血か何か) そして、そのまま数日後、帰らぬ人に。

この突然死に、ご家族はもちろんなんですが、管理会社も大混乱だったそうです。

なにしろ、管理組合運営の95%は、この理事長がやっていました。
そして、この理事長は、6年連続で理事長をやっていましたが、他の役員は、普通の管理組合と同様に「1年交代の輪番制」です。副理事長にも、何も任せることはせず、任しても、1年任期ですぐにいなくなるから、仕事を教えることもせず。そういうわけで、なんでもかんでも、この理事長は全部自分でやってしまい、そして、その「やり方」(マニュアルってことですね)を記録に残すこともなく・・・・・

つまり、何も「引継ぎ」をしないまま、天国に行ってしまったわけで。

おまけに、この理事長は熱血なんですが、事務的にはルーズだったそうで。なにしろ、「定期総会の資料」でさえも、どこに保管しているかわからない、ということでして。なにしろ、「理事長印の保管場所」さえ、最初わからずに大変だったそうです。

管理人としても、「このマンションは、理事長が書類保管も全部やるから、管理人はノータッチ」と言われていたため、集会室の中の、書庫も引き出しも本棚も、「何があるのか知らない」という状態だそうです。
他の役員からは、「理事長が死んだんだから、あとのことは管理会社がなんとかしてくれ」と言われたらしいのですが、管理委託契約締結の際に、「組合運営に関することはすべて自前でやる。管理会社には任せない。(だから、委託費を安くする)」ということを明文化してあるため、それを盾にして、「役員さんたちで、やってくださいよ。そういう約束なんですから」と、管理会社サイドは、仕事を押し付けられることを拒否。

それで、残された役員が、集会室内の書庫の整理を始めたんですが、ファイルの背表紙に名称が書いてあるわけでもなく、総会の資料がちゃんと一箇所にまとまっているわけでもなく、散乱状態で、要するに、何がなんだかわからない状態で。何も整理がされていなかったのです。
まあ、他の役員連中も、「なんでもかんでも理事長1名がやってくれる」と甘えていたため、「理事会の議事録はどこに保管されている」なんてことも一度も考えなかったようで、書棚を見ることもなかったのです。

「このままじゃ、今後の組合運営が何もできない」ってことで、副理事長と管理人が協力して、(管理人的には無償ボランティアです)、書類の整理をしていったそうですが、どうも、ちゃんと残っていない書類があるらしく。
「おそらく、自分の部屋の中にあるのではないか?」ということで、遺族の遺品整理を待って、そのあと、理事長の部屋の中に、管理組合関係の書類を大量に発見したそうです。(この時も、ご遺族は「管理組合の仕事を全部夫に押し付けた結果、過労死した」と管理組合を恨んでいるので、当然、非協力的で、この書類を手に入れるだけでもすごく大変だった)

書類関係は、こうやって、なんとか、かんとか発見できたのですが、現代は「書類だけ」ではない世界です。そう、PC内のデータというものも大量にあるわけで。どうやら、この理事長、自分の私物PCで、管理組合運営のこともやっていたようで。「私物PCの中にも相当量の、管理組合関係のデータがあるのではないか?(デジカメ写真の画像もかなりあるらしい)」ってことになったのですが、さすがに私物のPCをいじるのは、ご遺族が抵抗感を示されて。なにしろ、この理事長、組合運営に関しては奥さんにも何も話さずに自分ひとりでやっていたため、この奥さんがPCをいじったところでも、なにがなんだかわからないらしく。(というか、奥さんは基本的にはPCをいじれない)

「来年、アメリカに留学している息子が戻ってきたら、このPCの中身を整理してもらって、管理組合関係のものはまとめて、組合様にお返しします」ってことになりました。これで、目処は立ちましたが、とりあえず、1年以上は、PC内のデータを手に入れることはできません。




熱血理事長というのは、そのマンションの住民にとっては、とてもありがたいものですが、いざ、その人がいなくなると、このように、大変なことになります。

今回は、「自分が、組合運営をちゃんとやるから、管理委託費を安くして」という、「ご自分が永遠に健康のまま、理事長職を続ける前提で契約をする」という、一種乱暴なことをやっていますから、いっそう、大混乱です。
そのマンションでは、次年度は、「組合運営の補助を管理会社にお願いする」という、契約内容の見直しをする予定で、当然のごとく、管理委託費も数百万円値上がりするそうです。なにしろ、今までは、「理事会に、管理会社フロントが同席する」こともなかったそうで、「フロントは、定期総会の前後に数回来る」だけだったそうです。大規模修繕工事も、管理会社は関係なく、他の業者に任せたそうで。

後継者もまったく育てず
書類やデータの整理保管もせず
他の人には何も教えず
マニュアルも作らず
長期間理事長を続ける


っていうのは、このように、非常にリスクがあることです。
ご自分も、こんなに急に死ぬとは思っていなかったのでしょうが、せめて、書類関係の整理だけでもちゃんとやっておけばよかったのに、と思います。

ツイッターのお仲間でも、熱血長期政権理事長さんがいらっしゃいますが、私としては、そういう人が突然死んだ場合のあとのことが、恐ろしいです。絶対に、管理人に過度の負担が押し付けられるはずです。

そんなわけで、熱血理事長さんは、いつ自分があの世に行っても、残された人が大丈夫なような、「準備」を、日頃からやっていて欲しいなあ、と切望します。

でも、この理事長さんが素晴らしい人であることは素直に評価します。





2013/6



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