管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

電球交換のことを考えて、照明器具を設置して欲しい




※今回の話題は、「専有部分内の照明器具」の話です。真面目に、管理委託契約を守る管理人さんの場合、業務とは関係ありません。その点をあらかじじめご了解下さい。


「私、困っちゃうんです。このマンションの照明器具は、電球の交換がとてもしにくいんです」

と、宇能鴻一郎先生なら書くんではないだろうか?

実は、当マンションにおいて、管理人が、専有部分内の「電球交換」をよくやることがあります。無論、本来は管理人の業務外なんですが、それをあえてやるのは、このマンション特有の「物理的な」理由があるからなんです。

問題になっているのは、脱衣所とトイレの中にある照明器具です。この、「電球交換」が非常にやりにくいのです。



適切な写真がなくて、恐縮ですが、当マンションの「脱衣所とトイレの中にある照明器具」は、こんな感じなんです。「キノコをひっくり返した形」、とでもいいましょうか? こういう照明器具の中にある電球が切れたとき、当然、カバーを外して、中の電球を交換するわけなんですが、どのように、カバーを外すかわかりますか?
実はこれが、いろいろな方法があるんです。

A「プラスティックのカバー部分を、反時計周りに回転させて、カバーを取り外す。ようするに、ネジ方式になっているもの」
もあれば。
B「キノコの傘部分の根元に、押しボタンのようなものが2ケ所あって、それを同時に押すと、傘部分が落ちて、とれる」
というのもあるし、
C「茎の部分の根元から、傘もいっしょに、ネジ方式になっていて、まるごと取れる」

D「茎の部分の根元に、押しボタンのようなものが2ケ所あって、それを同時に押すと、傘と茎と両方がまとまって落ちて、とれる」

E「茎の部分の根元に、天井に向かって刺さっているネジがあって、それを緩めると、傘と茎と両方がまとまって落ちて、とれる」
というのもあります。

とにかく、いろいろな種類があるんです。

さて、当マンションの建築時に標準設定されていたものは、「E」タイプでして。ネジ回しがないと取れないようになっています。そして、このネジがとても小さいし、器具と同化した色なので、見つけにくいという代物なんです。なにしろ、「電球が切れているから電球交換する」わけなので、その作業をするのは、暗い場所で、ってことなので、いっそう、見つけにくく、たいていの人は、「Aタイプじゃないか?」と勘違いして、傘部分だけを一生懸命回そうとして、回せないで、困っています。
そうやって、ようやく、「あれ、ここにネジがある。これを回すのか?」と気づいた人が写真のようなドライバーを使って、ネジを緩めようとするんですが、ここでまた障害が。



傘部分が邪魔になるため、この写真のような普通サイズのドライバーでは、垂直に挿すことができず、回せないんです。つまり、とても、柄が短いドライバーが必要なんです。



つまり、こんな感じですね。でも、こういうのって、普通の家庭にはないじゃないですか? (実際は、この写真のものよりも、柄の部分が細いものじゃないとだめ)

そんなこんなで、私が言いたいことは、「このマンションを設計して、照明設備を決めた人間は、電球を交換する時のことを考えていない、愚か者(By ショーケン)だ」ってことなんです。

住宅内設備というのは、メンテナンスのことまで考えないといけないと思うのですが、この設計者はそういう「頭」がないんです。その、しわ寄せが結局、管理人に来るんです。

まあ、一般的な女性の場合、「外し方」さえ、把握できません。ですから、管理人に救助を求めてきます。多少に腕に覚えのある男性でさえも、「え? 特殊な、短いドライバーじゃないと、電球交換できないじゃないか?」となって、やはりSOS。

古くから住んでいる人で、経験値のある家庭では、方法もわかっていて、短いドライバーも買い揃えてありますが、「売買で新しく入った人」とか「賃貸で新しく入った人」なんかの場合、ほぼ、100%、「管理人さん、電球交換の方法を知りませんか?」って尋ねてきます。
「写真入り、詳細図解つき、交換マニュアル」でも、作ればいいんでしょうけど、それも面倒だし、もちろん、口で言うだけでは相手は理解できないし、そういうわけで、しょうがなくて、毎回、部屋の中に入って、私が説明しながら交換を手伝う羽目になるわけです。(繰り返しますが、これは、専有部分内のことであり、本来は、管理人は関与すべきことではありません。あくまでも、個人的な特殊サービスです)
わかっている人の場合は、「管理人さん、電球交換するから、短いドライバーを貸してよ」って人もいて、私は、このために、チェ自腹で、短いドライバーを買って揃えてあります。また、作業用に、「ライトを固定してあるヘルメット」も用意してあります。これは暗い場所では便利です。

背の小さな女性の場合、脚立とかの台に上らないとできなくて、それも、とても危険なので、結局は、私が一人で全部やってあげるケースが多いです。

まあ、それでも、もとから、このマンションに設置してあった照明器具であれば、私に知識があるので対応できるのですが、30年以上もたつマンションですと、当然、「室内リフォームをした」部屋もたくさんあるわけで、当初のものとは違う照明器具に変わっていることもあります。こうなると、従来の知識が使えません。SOSが来て、私が行っても、「これ、どうやるのかな」となり、悪戦苦闘します。

私が思うに、ナショナルとか、そういう照明器具メーカーは、もっと、「電球交換のしやすい」製品を作って欲しいと思います。そして、取扱い説明書に、交換方法を書いても、そんな書類はいつのまにか、どこかに消えているので、無意味です。説明書ではなく、器具本体に、「交換方法」を書いたステッカーでも貼っておいて欲しいのです。(メーカーの製品開発の人は、管理人に意見を聞くべきなのよ)

まあ、それでも、以前の「白熱電灯」の頃よりは、今は、「電球型蛍光灯」が浸透したので、交換頻度が減少し、私の仕事は少なくなりました。本当は、LEDになると、ほぼ、「ゼロ」になるんでしょうけど、LEDは熱に弱いので、こういう、密閉型照明の場合は使いにくいので、なかなかLED化は進まないかもしれません。

そんなこんなで、とにかく、管理人はいろいろなことをやってるんです、ということを理解していただければ、ありがたいです。

こうやって、業務範囲外のことまでいろいろやっているわりには、管理人の評価が低いんだよなあ。やるのが当たり前だと思ってるんだろうなあ。委託契約の範囲なんか全然知らないから。



2012/8