管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

エレベーター内の「養生」に「往生」する管理人






 専門用語になってしまいますが「養生」という言葉があります。今回は、「エレベーター内の養生」のお話。
「引越し」などで、エレベーターにたくさんの荷物を入れて運ぶ際に、エレベーターの内壁を傷つけないよう、引越し業者は、左の写真のように、内面に「クッション材」を貼り付けるのが普通です。これを「養生」と呼びます。要するに、「今あるものに迷惑をかけないための予防作業」ってことです。

「引越し」以外でも、当マンションのように古いマンションでは「リフォーム工事」がしょっちゅう行なわれているため、その資材の運搬用に養生が行なわれることが多いです。部屋の中をほとんど改造してしまう「フルリフォーム」(=リノベーションとも呼ぶ)の場合、1軒の工事が3週間もかかるケースもあり、そうなると、「3週間ずっと、エレベーターの中が養生されたまま」ということになります。

これで何が困るかというと、まずは「掲示物」。そう、玄関ホールの掲示板は見てくれる人が少ないため、エレベーターの中には、非常に重要度の高い内容の掲示物を貼るのです。「雑排水管清掃がありますよ」とか「ゴミ収集の曜日が変りましたよ」とか「総会は来週ですよ。委任状を出して下さい」とか。

でも、引越しのように、「数時間で終わるもの」はともかく、リフォーム工事のように、ある程度長期間にわたるものの場合、「掲示物の上に養生」をされると、当然、その掲示物は見えなくなってしまうわけで、なんのために、「エレベーターの中にわざわざ掲示をしているのか?」、その意味がなくなってしまいます。
普通、養生する側も、まともな神経をしていたら、「管理人さん、この掲示物が隠れてしまいますけど、どうしましょうか?」とか相談してくるものだと思うのですが、そんな奴、今まで一人もいません。全員、無断で勝手に養生をしていきます。
困るのは、日曜日など、管理人がいない日に、事前予告ナシに、引越しやリフォーム工事をするケース。「台風のために、排水管清掃の日程を急遽変更します」なんていう、急を要する大事な掲示物をエレベーターの中に貼って置いたのに、その上に養生をされて、「誰も読んでいなかった。変更が伝わっておらず、大混乱になった」なんてこともあります。事前に養生することがわかっていれば、エレベーター内に掲示を貼ることはしないのですが。

また、同様に、「事前に養生の日程がわかっていない」と困るのが、「エレベーターのマット交換」。毎月1回、クリーニング業者さんがマットの交換に来るんですが、「なんか、引越しをやっているみたいで、床面が養生されていて、マットを交換することができません。明日、また、出直してきますね」なんてことが時々あります。「悪いねえ」と謝ります。

それから、一番迷惑なのが、「質の悪い粘着テープを使って養生する」ことです。テープを剥がしたあとに、粘着成分が残ってしまうのです。「ベタベタして気持ち悪いから、すぐに掃除しろ」とか、住民から文句が来ます。でも、粘着成分を落とすのって大変なんです。普通ではなかなかきれいに落とせないため、一度、会社に相談して、特殊な成分のクリーナーを配給してもらったことがありますが、これが、すごい有毒ガスが出る製品で、密閉されたエレベーターのかごの中で清掃作業をしたものだから、清掃員さんが気持ち悪くなって倒れたことがあります。あわてて換気したんですが、その毒ガスの臭いはずっと残って、このことでも、住民から苦情殺到。ひどい目に遭いました。

養生する人たちにお願いです。
「必ず事前に連絡をして下さい」(テレビで「すごく丁寧」とか宣伝している有名引越し業者でさえも、事前連絡なしにやってきます)
「養生作業をする際は、掲示物に注意して下さい」
「きれいにはがせるテープを使用して下さい」

ほんと、往生します。トホホ。







2012/2