管理人は超つらいよ
マンション管理最前線
定年退職クレーマーに悩まされる管理人 |
ここは、老朽化した高齢化マンション。働き盛りだったお父さんたちも次々と定年退職していきます。今、定年退職する人たちは、働き盛りの頃は日本も景気が良くて、けっこう稼ぎ、年金もそこそこもらえるので、定年後に、「また、別の仕事を探さなくてはいけない」という人も比較的少なく、わりと悠々自適な人が多いです。(今後は大変になると思います。私も含めて)
さて、そういう定年退職した人(男性)が、その後どうなるかと言うと、マンション管理人をしていると、いろいろな人生を見なくてはならず、たいてい、「ろくな人生じゃねえな」と思えることが。
何もせずに、一日中に家にいると、ストレスがたまってきます。今まで、「夜に寝る為に帰ってくるだけ」だった自宅が、24時間滞在するようになると、いろんなことにも気が付きます。
「子供の声がうるさい」
「子供がプレイロットで遊んでいてじゃまくさい」
「奥さん方の井戸端会議がうるさい」
「いろんなセールスがやってくる」
「ゴミ収集車の音がうるさい。臭い」
「近所の工場の操業音がうるさい」
「エレベーターが犬の臭いでくさい」
「午後4時くらいのエレベーターの中が化粧品で超臭い」(水商売女性の出勤)
「昼間のテレビがつまらん」
「妻が、ずっと家にいる自分をけむたがっている」
「セールス電話がしょっちゅう来る」
「自慢話をしたくても、相手がいない」
・・・・
まあ、とにかく、いろいろあります。「のんびりできるからいい」というよりは、皆さん、「不満のほうが多い」ような気がします。特に「会社人間」だった人ほど、地域のコミュニティーには無縁ですから、「疎外感」を感じます。
そして、その不満をぶつける相手が、今まで会社にいれば、「部下にあたる」なんてこともできたんでしょうが、今はないため、それが、「管理人」へ。。。。。。。
なにかにつけて文句を言いに来ます。
「玄関ホールの窓拭きが足らない」なんていうのは、「すいません」と謝りますが、「近所の公園に犬の散歩でやってくる、犬の吼える声がうるさい」とか、管理人に言われてもねえ。正直、「そんなの関係ねえ!」ですよ。
「管理委託契約では、共用部に関することは・・・・ 専有部のことは範囲外です」とか「そういうのは、各階を担当する役員さんに言って下さい」ということを最初に説明しますが、それで納得してくれる人は、「カムイ外伝」いや、「皆無」。
「住民からの苦情に対処するのが管理会社の仕事だろ!」とわけのわからない強引な論理。みなさん、自分が会社にいるころには、ちゃんと論理的な思考をしていたはずなんだろうけど、マンション内だと、なんで、みんなIQが下がってしまうのか???
そういうわけで、結局、苦情を受けることになります。まあ、「こういう人は言わせるだけ言わせておけば、満足する。ただ、不満を他人にぶちまけたいだけ。福島原発のベントみたいなもの」と考え、相手をしてあげます。私も、若い頃なら、そんな考え方はできませんでしたが、ある程度の経験をつんで、そう思うようになったわけ。
とはいえ、基本的には「怒られている」わけだから、いい気持ちのわけはない。こっちのイライラも募ってくる。それでもまだ、「広義の意味でマンションに関すること」なら聞いていられるんだけど、「会社時代の自慢話」に話のハンドルが切られてくると、もう、疲れて疲れて、相手にしてられなくなります。なんで、こう人って、昔の栄光ばかり話したがるんだろう? 会社員時代にろくなことがなかった私には理解できない。私はずっと昔から「原発は危険なんだ。政府はウソを言ってる」と会社内でも公言してたから、疎まれてたし。
実は、こういう時に、「中断させる」ための手法を私は持っています。それは、「苦情を聞きながら、机の下で自分の携帯を操作して、管理人室あてに電話をかける。それに出て、なんかこみいった&急ぎの用件があるようなふりをするための演技をする」というもの。そして、苦情主には、「すいません、ちょっとこみいった仕事が入ってしまって」と弁解し、苦情を打ち切らせるのです。
さて、このように、管理人というのは、まるでサンドバッグのように、ボロボロになるまで、苦情主のパンチを受けます。はっきりいって、苦情主の言うことは、難癖であり、ヤクザと変らないんですが、客は客、一切反論はしません。「そうですねえ」と「笑っていいとも」のように相槌を打ち、「おっしゃるとおりですよ」とヨイショします。そうやって、少しでも気持ちよくなったもらって、早く太田胃酸じゃなくて、退散してもらいたいのです。
ただ、こういう管理人の態度が相手をつけあがらせることもあります。先日も、「上の階の住民が、ふとんをベランダで干しながら叩くので、汚い埃がうちの洗濯物についてしまう。なんとかしろ」という苦情がありました。女の人の苦情の場合、感情論的に言いたいことを言えば、多少すっとするんですが、男の場合、変な知識を持ち出して、「使用細則では・・・・」「裁判所の判例では・・・・」「この前の新聞記事では・・・・」と、「自分は知識があるんだぞ」という自慢も含まれ、話が長い長い。おまけに、「私は昔**部長だったときは、クレームに対してこう対処した」と、クレーム処理の方法まで講釈する始末。言わせるだけ言わせておいて、「じゃあ、私のほうから、上の階の人にそれとなく伝えておきます」と完結しようと思っても、「それだけじゃ、だめだ。理事長名で、”布団たたきはだめだ”を作り、掲示板に貼れ」との要求。「そうはいっても、布団たたきは違反という条文が細則に明記されているわけでもないので」と、ちょっと反論すると、「それだから、ここの管理組合はだめなんだ」と組合批判。「だったら、来年度の役員に立候補なさってはいかがですか、ご自分が理事長になれば、なんでもできますよ」と、実はこのマンションでは輪番制であり、立候補制度はないものの、誘ってみると、「いや、我々のような社会を引退したものが、理事長になんかなってはだめなんだ」と意味不明の弁解。
なんか、こういう「口先だけ達者」な人って、表舞台には出ないんだよなあ。
そんなこんなで、この苦情主を最大限にヨイショしてあげて、そろそろ気が済んだろうと思ったのに、こっちがあまりに下手に出たので、図に乗っちゃったんだろうなあ、「よし、じゃあ、今から、上の階に直接文句を言いに行くから、おまえが立ち会え!」。
「はあ、今からですか? やめたほうがいいんじゃないんですか?」 「いや、今すぐに行く」
上の階に行って、私から事情を説明すると、その日、たまたまお休みだったご主人がいて、応対。「そうなんですか、それは失礼しました。かみさんに言っておきます。」と謝罪がありました。私から、「このように謝っていらっしゃいますし、これでいいんじゃないですか?」と私としては、仕事もまだたくさん残っているし、それでおいとましようと思っていたのに、この苦情主、素直に帰ろうとしません。
相手がじぶんよりも若いこともあり、(竹村健一調で)「だいたいね、君。マンションというのはね、共同生活なんだから・・・・・」
あ〜あ。また始まっちゃったよ。
「私が会社で、**部長だったときは、・・・・」
あ〜あ。会社の話もはじまっちゃったよ。
管理人室を離れ、「電話中断作戦」もとれず、そのまま、えんえんと、30分くらい、能書きにつきあわされました。相手も、最初は「はい、そうです。すいません」と、低姿勢だったのですが、徐々に、「いい加減にしろよ、このジジイ。何様なんだ」というのが、顔に書いてあるような表情に変化。「やべえなあ、これ、もしかして」と思った瞬間、パンチ一閃。苦情主の顔をヒット!
「何するんだ! 急に」「おめえなあ、こっちが下手に出てると思って、調子に乗るんじゃねえよ。こっちは最初から謝ってるじゃねえか、それなのに、会社時代の自慢話まで始めやがって、そんなのにつきあう必要はねえだろ! ふざけるな! バカ野郎!」 そして、ドアをバタンと閉めました。苦情主は、閉まったドアに対して、「ご、ごめんなさい」と謝ってました。
私は「こりゃ、当然の報いだな。ざまあみろ」と思って、「じゃあ、これで失礼します」と戻りました。でも、このあと、深夜になって、この人が理事長宅に訪問し、「殴られた。管理組合として警察に通報しろ。理事長の仕事だ」とかなんとか、頭のおかしなことを言ったらしく、私の自宅にも「管理人さん、何があったの?」という緊急連絡。事情を説明し、理事長には理解してもらいましたが、まあ、忙しい1日でした。
管理人が一切反論もせずに、自分の言うことをひたすら聞いてくれたのに気をよくして調子にのっちゃったんですね。会社員時代はそれなりの地位だったんでしょうが、一般社会人としては三流の人なんでしょう。あれだけえらそうなこと言ったら、相手が気を悪くするのは当たりまです。マクドナルドで「アイスコーヒーを頼んだのにホットコーヒーが出てきた」時は、そのことを店員に厳しく怒るのは悪くないけど、会社員時代の自慢話までする人なんていませんからね。とにかく、非常識だと思います。なんにもわかってないんです。かわいそうなオツムだなあ。(そういえば、モナコ公国の王様もかわいそうなオツムだ)
ところで、このような「かわいそうな定年退職者」って、けっこういて、扱いに困っています。なかには、役所に問い合わせて、「福祉のボランティア活動を始めた」なんて人もいるんですが、たいていは、1〜2ケ月で挫折します。社会福祉協議会の職員に聞いたら、「定年後は会社での地位は関係ないのに、ボランティアの仲間に対して、命令したりするんですよ。自分は初心者のくせに。そういう人って、ボランティアはできないんですよね。やめてもらいました」とのこと。だめな奴だなあ。
定年後、急にガーデニングに目覚めて、マンションの共用部分に勝手に花を植える人もいます。これも、「勝手に植える」先輩のおばさんたちに怒られて、挫折しました。
とにかく、男はコミュニケーション能力低いなあ。管理人でもやって、勉強すれば?