管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

紙ひも なんか使えない バカな公務員の古紙回収
宅配ピザも





 清掃用具の倉庫を整理してましたら、写真のような[紙紐]を大量に発見しました。30〜40個はあるでしょうか? 管理室の備品として買ったものもありますが、これらの大半は、住民からもらったもの。「不要だから管理人さんにあげるわよ。使ってね」といただきました。というか、おしつけられました。もらってもしょうがないんですけどね。私も使わないから。こういう紙紐は、いまだに、「年末の大掃除をしたら、出てきたのよ。新品だから。あげるよ」と、時々、届けられます。正直、保管場所に困っており、「地震の被災地で必要だったら贈りたい」くらいです。

 なんで、こんなに紙紐があるかというと。以前、「古紙回収を行政が義務化した」際に、清掃局がいろいろと制度を作ったんですが、その中に、「紙類を資源回収に出す際は、ビニール紐は使ってはいけない。紙紐を使いなさい」と命令したのです。



 その根拠は、「ビニール紐だと、リサイクルをするときに、そのビニール紐を切って取り除くという作業が必要になり面倒。紙紐なら、そのまま、古紙といっしょにリサイクルできるから楽」というものです。この理論、わかります。ええ、おっしゃるとおりです。でも、現実は甘くありません。

 私は、ゴミ回収制度が変る際の市民説明会に勤務時間外に交通費自腹で参加しました。その時に、この説明も聞きました。しかし、納得が出来ずに、手を上げて意見を述べました。

「紙紐は硬くて柔軟ではない。きつくしばれないから、まとめた古紙がゆるんで崩れる。トラックに積み込む際に、ひもがほどけて、散乱する可能性があって危険」
「無理やりきつくしばると容易に切れてしまって危険」
「従来どおり、ビニール紐のほうがよい」
「今回のルール設定は無理がある、やめなさい」
と。

 しかし、私の意見は無視され、「もう決めましたから、これで行きます。ご協力下さい」との返答。

 私は引き下がらず、「あなたがた役人は、今回の制度を決めるにあたり、マンションの管理人の意見を聞いたりしたか?」と質問。「いいえ、でも、自治会の皆さんに意見を聞いてますから大丈夫です」と返答。「そんなの大丈夫じゃない。あなたがた役人は現実を知らない・・・・・」(その後、妨害人物として会場からつまみだされました)

 そうやって、「古紙を出す際は、紙紐を使いなさい」というルールが決められ、マンションにも、そういうルール説明冊子が来たわけですが。これが混乱の元。

「ホームセンターに紙紐を買いにいったけど、売り切れよ。どこに行っても買えないわ」という苦情が管理人に。そう、もともと、紙紐なんか、この市ではどこにも売っておらず、本来は、紙紐メーカーに連絡して、たくさん供給してもらうべきなのに、それを怠っていたのです。まあ、それは時間の問題なので、数ヶ月で解決し、市の広報を読まない人たちをのぞいて、大部分の世帯が紙紐を買ったんですが。

「ビニール紐よりも紙紐のほうが高くて不経済」
「紙紐って、なんか、変なクセがついているから結束しにくい」
「ちゃんと結べないよ。古新聞を部屋から集積場まで持って行くだけで、崩れちゃった」
「ビニール紐を使う機会がなくなってしまい、これ、どうすればいいの?」

という住民からの苦情もたくさん。

そして、集まった古紙を整理する我々としても、
「整理しようとして持ち上げたら、紐が切れて、雑誌が散乱。管理人が、また、紙紐で結びなおししないといけない」
「ゆるゆるでまったく結束できていない」

とにかくやりにくい。
そして、それを回収車のトラックに積みあげる回収業者の人も、「こんなの困るよ。紙紐だとちゃんと結べないんだよ」と愚痴ばかり。実際、トラックの荷台に置いたときに、紐がきれたり、ゆるんだりで、散乱してめちゃくちゃになるのを何度も見ました。
古紙回収の専門業者自身が、「市が勝手に決めやがって、
困るよ。これじゃ、回収作業に時間がかかって効率が悪い」と嘆いています。

 このような事態で、市にも苦情が殺到し、わずか3ケ月後に、市の広報の
隅っこのほうに、「紙紐だけじゃなくて、ビニール紐でもいいですよ」という修整記事が掲載され、こっそりと、あっけなく、制度変更。

 この記事を読んだ人たちは、「それ見たことか」と、すぐにビニール紐に戻りました。そうやって、ビニール紐を使う人が出てくると、事情を知らない人が、「あの人ビニール紐を使ってるわ。市のルールではいけないはずよ。管理人、注意しなさい」とかチクッてくる人がいます。相手するのが面倒です。市の方は、面目がないことなので、あまり、おおッぴらには訂正しないため、周知度が低いのです。清掃局に電話をして、「以前配布したゴミのルールブックの改正版を作って再配布しろ」と要望しましたが、「予算がないのでだめです」と拒否。「じゃあ、1枚のペラの紙でもいいから、掲示板に貼れる様な案内を作ってくれ」とお願いしましたが、「広報誌で伝えましたから、それで十分です」とか、言いやがります。

 しょうがないので、毎度毎度同じですが、市に代わって、管理人が個人で「制度が訂正になりました」という掲示物を作りました。ほんと、管理人って、しょっちゅう、
バカな公務員の尻拭いをしています。市からは一銭ももらってないけど。

 その掲示物を貼ったら、「ああ、よかった。紙紐じゃなくてもいいのね。こんな、使いにくいもの、いらないわ。管理人さんあげるね」と、私の元には、使いかけの紙紐が集まる集まる。そして、こういう事態になったわけです。

 
ほんと、公務員はバカ。なにかやるときは、管理人に意見を聞いてからやれよ。しょせん、おまえらは現場のことなんか全然知らない素人なんだから。どうせ、自分の家の古新聞も、奥さんに処理を任せてるんじゃないの? 素人のくせに、管理人の4倍も給料もらいやがって、世の中おかしいぞ。


追記「汚れた紙 宅配ピザ」

 古紙回収を本格的に始めた際、「とにかく、すべての紙製品を、紙として回収します」と市は言いました。その中にはなんと、「宅配ピザで使われる紙容器」も入っていました。私は説明会で、「宅配ピザの容器なんか、汚れが染付いていて、あれはきれいにリサイクルできないぞ」と言ったんですが、「とにかく、市で決めたルールですから従ってください」の一点張り。「食べ残しをそのまま箱の中に入れて出す奴もいるぞ」「中身はなくして箱部分だけで出して下さい」「そんなことちゃんとするような人間が、この街にいると、あんた本気で思っているのか?」「思ってます」・・・・ 不毛な議論でした。

 でも、案の定、回収が始まったら、油汚れでべちょべちょのものや、ピザの耳部分を残して中に入れたまま、古紙回収に出す人があとを立たず。紙としてのリサイクルは不可能で、古紙回収業者から苦情が殺到したようです。結局、紙紐同様、こっそりと、「宅配ピザの箱は、生ゴミとして出して下さい」という修正記事を、市の広報に小さく載せてました。
 
全部、私がいったとおりになりました。こんなクソバカ公務員よりも、私が清掃局の局長をやったほうがよほど市民の役に立つぞ。



こういったケーキの底部分の紙も、当初は回収していましたが、その後、回収しないことになりました。修正ばっかりで頭おかしくなります。


2011/5