管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

賃貸部屋(占有者)への総会通知はどうする?



2015/4


 我々、プロの人間はどうしても専門用語を使いたがります。先日も、NHKテレビの「しぶ5時」という番組で、「ド素人住民に向けてのマンションの管理費と修繕積立金の解説」をしていて、はるぶーさんのマンションが紹介されていました。番組では「こうやれば、管理費を節約できる」という視点であれこれレポートをしていましたが、「管理人の勤務時間・人数に関しては逆に増やした」というのを伝えていなかったのは残念でした。
 また、マンション管理士の深山州さんが解説者で出演していましたが、「管理人・清掃員の給料は実際は全然上がっていない」のに、「人件費も高くなっています」とか言ってたのは「オイオイ、そんなことねえぜ」と突っ込ませていただきました。まあ、工事関係の職人の人件費は上がっていますけど、特に資格や腕の必要なわけではない我々の職種は、あいかわらず最低賃金のままです。

 さて、その際に、深山さんは、ぽろっと「あいみつをとって安く」とか言ってました。この「あいみつ」って言葉も、この業界ではよく使われますが、素人さん向けの一般のテレビでは使ってはいけない専門用語だと思います。まあ、玄人はだしの役員がいるマンションの映像に対する解説なので、つい、専門用語が出てしまったのかもしれませんが。

 さて、「あいみつ」と似たような専門用語で「
占有者」という言葉があります。出自は「民法」だと思います。

 これ、実は私も、この業界に入るまで知りませんでした。なんか、「地上げ屋が不法占拠している部屋のことなのかな?」 とか思ってました。しかし、マンション業界で、この「占有者」という専門用語は平たく言うと、「賃貸入居者」のことです。
 うちのマンションの「諸手続き関係の書類」にも、占有者という用語は載っており、新しく賃貸で入居する人にこの書類に記入してもらうのですが、たいてい、「占有者ってなんですか?」って聞かれます。届け出書類はわかりやすい用語を使うべきだと私は思いますが、管理会社って、そういう配慮ができないんですよねえ。アホですねえ。

 そういうわけで、賃貸専用マンション(建物のオーナーが一人いるだけのもの)ではない、分譲マンションでも、年数が経つと、徐々に、賃貸入居者の人数も増えてきます。

 ご近所にも、「賃貸部屋が半数以上」というマンションがあります。そこのマンションの管理人さん(=知り合いです)が、集合ポストに来月開催の「定期総会資料」を投函していました。(そういう季節になりました。あ〜忙しい) その投函の数が少ないので、「おたくはどれくらいの数が賃貸なの?」と聞いたわけです。

 このマンションでは、定期総会の資料は「区分所有者」にしか配布していません。まあ、それでも、違法ではないのですが、実は「占有者」には、区分所有者ではないから「総会での議決権」はないのですが、実際に生活している人間ですから、総会に出席して「意見をいう」ことはできる、となっています。まあ、至極当然の理論だと思います。

 さて、「意見を述べる」ってことは、総会で何が話し合われるのか?わかっていないと意見の言いようがありません。ということは、「占有者」に対しても、「総会の資料を配布すべきではないか?」 と私は考えます。まあ、区分所有者宛の資料とまったく同じものを配布することはない(管理費の値上げとかお金に関する議題は関係ないから)ですが、せめて、占有者の生活に関する問題については、エッセンスをまとめたものでもいいから、「今、管理組合ではこういうことをやっています」とわからせるためにも、資料を配布すべきと考えます。

 なのに。そのマンションは、「5/9に総会を開催します」という案内の掲示物すら出さないのです。つまり、「占有者(賃貸入居者)は総会開催の予定すら知らされない」ということになります。これはひどいなあ、と思います。
 例えば「駐輪場の使用法を変えます」なんていう議題であれば、これは、占有者にも大きく関わる問題です。それを「賃貸の奴は黙ってろ。管理組合が決めたことに素直に従えばいいんだよ」っていう思想はいかんと思います。でも、そういう思想の管理組合や管理会社って、けっこう多いんです。そのほうが事務的には楽ですから。
 でも、占有者が「そんな変更聞いていないよ。聞いてないから従わないぞ」なんて反発が起きることもあります。そういう時に一番迷惑を被るのが管理人です。管理人のためにも、私は、占有者にも総会の情報を与えるべきだと思います。

 まあ、総会というのは、実際は議論をする場ではなく、毎月の理事会で決めたことの全体の承認を得る場であって、その場で、議論してなにか変わるものではないので、大事なのは、総会前の議論の場である、日頃の「理事会の活動」であり、そういうのを、毎回、細かく、占有者に伝えるべきです。

 とにかく、我々現場の意見としては、「そんなことをやってるから、いっそう、占有者が無関心になるんだよ」と怒っています。占有者を組合活動に引き込み、関心を持ってもらうためにも、日頃の組合活動の積極的な広報が必要であり、もちろん総会の案内もして、意見を言ってもらうべきなのです。

 「占有者は関係ない!」と排除するような姿勢のマンションは、それだけで「ここはだめだ」と私は判断します。



※ところで、賃貸入居って仲介の不動産屋もいい加減でして。賃貸契約書に「管理規約・使用細則を順守することを誓います」という条文があるのに、その「管理規約の冊子」は、入居者には渡さないんですから、ひどいもんです。見ていないものを「守ります」とか、よく誓約させるよねえ。ひどいなあ。
というわけで、賃貸入居の人が引っ越してくると、私は毎回、「管理規約の冊子持ってますか? それ守らないといけないって、あなたは誓ったんですよ」と言います。そして、ほぼ100%の人が持っていないので、組合でストックしてある冊子を渡しています。まったくもう、不動産屋っていい加減だよなあ。苦労するこっちの気持ちも「さっし」てくれよ。