管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

デジカメによる、マンション全域の定点撮影
これ、けっこう大事で、あとあと、本当に役に立ちますよ



2015/4


 今は4月。全国のマンションで定期総会が忙しくなる時期なので、それに則した話題をひとつ。


 東京スカイツリーが建設中の頃。

 日がたつごとに、徐々に高くなっていく、建設中のスカイツリーを撮影することがブームになったそうです。地元の人とか、マニアの人は、ある一箇所で数日毎に同じアングルで写真を撮り続け、最終的に、アニメのような動画に仕上げている人もいました。
 というわけで、スカイツリーのおかげで、一時期、「
定点観測」というものがブームになりました。

 さて、マンションの話になりますが、当HPやブログで、私は、過去に何度も「とにかく写真を沢山撮って残しておくことが大事」と訴えています。これは、建築後、長い年数がたつほどに、重要性を増します。ですから、新築マンションの管理人なんかは、「なんで、写真なんか撮らないといけないんだよ」とか文句を言って撮りたがらないかもしれませんが、「あとになって役立つものなんだから」と説得して、撮り続けさせて下さい。

 例えば、「正月飾り」とか「クリスマス飾り」。こういうのは、「去年はどんなんだっけ?」ということがよく起きます。特に、完全輪番制の「理事会役員」の場合、昨年のことは当事者ではないので覚えていません。しかし、この手のものは、「1年だけ、特別に大きなもの」とか飾ってしまうのはまずいわけで、たいてい、皆さん、「去年と同じものでいいのでは?」というふうになります。まあ、買った際の領収証は残っているでしょうが、実物の写真がないと、「昨年と同じもの」「同じ程度のもの」を購入するのは難しいです。こういう時に、写真が役立ちます。

 また、実際に近所のマンションで問題になっているのですが、そのマンションは、築後10年が経過したのですが、住民が勝手に共用部分に植えてしまった植物が巨大化し、なかにはトゲのあるものとか、毒性のあるものとか、そういうのもあり、また、通路を塞いでしまっているものなんかも出現し、「建築時にもともとあった植物だけ残し、あとから、住民が勝手に植えた植物は全部伐採しよう」ということになりました。
 しかし、建築図面にはそういう資料が残ってませんし、誰も新築当初の植栽の様子を撮影しておらず、写真が全然残っていないのです。ですから、「どの植物が、建設当初に植えられていたものなのか?」がわからない、ということがわかりました。

 それから、最近は、自然災害がすごくなってきましたが、「大雪」とか「台風のすごい風で軽自動車が転倒した」なんていうのは、文字で記録するよりも、やっぱり写真です。一目瞭然ですから。「5年前の雪はすごかったねえ。ああいう雪に備えて、スコップを買わないとだめだねえ」」などと口で言っても、具体的にどれくらいすごかったのは、やはり、写真がないと説明できません。
 
 実は、この手の「写真が残っていないので困った」ってことは、マンションでは、たくさん発生します。また、管理会社をリプレイスして、変更した場合は、過去の資料がなくなって、とても困ることもあります。そういう時にも、「昔の写真」は役に立つことがあるのです。
 非常に細かい話になりますが、例えば私の場合、何かの修繕工事で業者がやってきた場合、その業者の名称が入った車両も撮影しておきます。そうしておくと、その工事を実際に行った業者の名前が記録されます。この業者の工事に関して、のちのち、瑕疵が発生した際、その業者に触接電話をして対応をお願いすることができます。
 これが、写真が残っていない場合、実際に作業をする下請け業者の名前まで記録に残っていることはあまりなく、探すことが難しくなるのです。特に、管理会社変更を行うと、元の管理会社の持っている細かな資料は、新管理会社に引き継がれないことが多いです。元の管理会社に、「10年前の壁面修繕工事を実際にやった会社を教えて欲しい」と頼んでも、「無理です。わかりません」と断られてしまうでしょう。(契約を切られたわけですから親切に対応するわけがありませんし)

 また、「近隣に工場ができて、そこの排出する煙で、マンションが汚れるようになった」なんていう場合、「もともと汚かったんじゃないですか? 以前はきれいだったという証拠はあるんですか?」なんてことにもなります。これも、昔の写真がないと比較できません。

 そういうわけで、私の提案としては、ぜひ、マンションのすべての部分を最低「年に1回」は、撮影して欲しい、と思うわけです。できれば、定点観測のように、毎年、同じアングルで撮り続けると、「建物の経年劣化の具合が時系列にわかる」ってことにもなります。
 撮影者は管理人がベストですが、委託契約に内容によっては、管理人が撮ってくれない場合もあるでしょう。その場合は、理事会の役員が撮影しないといけません。

 幸い、当HPの記事の効果もあり、全国のマンションでは、「定期総会が終わった後に、新役員が揃って、マンションのいろいろな設備を探索するツアー」を開催するところが増えました。この時に、見学するだけでなく、とにかくバシャバシャと写真を撮りまくったらいいと思うのです。
 デジカメだと、今は、1万円でも購入できますし、フィルム代も現像代もプリント代もないから、撮影してPCの中の保管しておくだけなら経費はゼロ。こんなにいいものはありません。私は常にカメラを携帯して、バシャバシャ撮ってます。駐車違反車両なんかもその場で撮影しますから、「午後2時には置いてありましたよ」って証拠を提示できます。デジカメは日時を同時記録できるからすごいなあ。

ただ、素人さんは、撮影する際に、あとから見て「ここはどこのどの部分を撮ってるの?」と困ることが多いです。なにか目印になるようなもの(例えば、「部屋番号が書かれた表札」とか)を一緒に映し込むことをおすすめします。

 とにかく、「定期総会の日は、全建物の撮影日!」という習慣をつけるといいと思いますよ。

 ちなみに、私のように長年管理人をやっていると、管理室にやってくるいろいろな人からもらう名刺の数も相当になり、保管場所に困るので、最近は、名刺をもらったら、その場で、デジカメで撮影し(スキャナーもあるからスキャンもできるんだけど、ちょっと面倒くさい)、名刺自体はすぐに捨ててしまいます。こうすると、「いつもらった名刺なのか?」も自動的に記録されます。本当は、その名刺をくれた人の顔写真もいっしょに撮影したいんだけど、それは嫌がる人が多いです。

 デジカメ。こんな便利なものを使わない管理組合、もったいないなあ。

 そういうわけで、デジカメのことだけで、2時間くらい講義できる私です。