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マンション管理最前線

電子投票システム 考察




株式会社グラントさんより、メールをいただきました。1企業の宣伝になってしまうのはあまり好きではないんですが、今回、この会社で開発なさった「電子投票システム」というのをご紹介し、検証してみたいと思います。(パンフを読んだだけでは正確に判断できませんが)


HP
http://www.grant.co.jp/mansyon/index.html

くわしいパンフのpdf
http://www.e-tohyo.com/img/system/document_20091212_ver2.pdf


 実は、法改正によって、総会での「電子投票」は、法的にも認められています。しかし、私の知る範囲で、それを実践しているところは知りません。法律的には、「今後、こういう方向に向かってもらってもいいですよ」という呼び水なのかもしれません。

 総会の投票方法に関しては、当サイトでも何度も過去に書いています。委任状というのは、自分の意見を何も言えない、「棄権」と同じであると。

 ここで、「諸悪の根源は委任状制度である」と書きました。そして同時に、「議決権行使書の制度を取り入れないとだめだ」とも書きました。

 この議決権行使書での投票を、電子化するシステムが開発されたそうです。なかなか、面白そうなので上記サイトを読ませていただきました。

 このシステム、なかなかの労作だと思います。製品化されたみなさんに敬意を表します。「ここはいい」と思ったのは「誰がどんな意見なのかわからないようにしたこと」です。たしかに、マンション内で対立するような議案が発生した場合、「鈴木さんは反対意見らしいわよ。そんな人は村八分にしてやる」といった「マンション内イジメ」が発生する危険性もあり、名前を隠せるのはいいかもしれません。


 ただ、やっぱり、「まだ無理じゃないか?」と思えることもあります。少なくとも、当マンションでは無理です。高齢者ばかり多くて、携帯やPCでネットが使える人の割合は半分以下だと思います。それでは、このシステムは導入できません。導入しても、コストがもったいないです。実際問題、私も携帯はありますが、iモードには接続していないので、投票できませんし、QRコードも使えません。
 新しい、「若い人が大勢入居する」ようなマンションでは有効かもしれませんが。

 それから、議決権行使書を提出するにしても、なにか意見を述べられるスペースがないといけないと思います。総会の時というのは、その議案に対する意見(「そういうことをすると、こうなるから、私は反対なんです」という、反対の理由とか)を述べる場でもあり、その他もろもろの、ふだんは言えないが、総会だからあえて言っておこう、「日頃の管理組合活動への意見」を述べる場所でもあります。「このスペースにご自由にお書き下さい」といった欄が欲しいです。

 また、このシステムとは直接関係しませんが、あくまでも、総会に出席する人数を増やす努力が必要です。それには、組合活動への関心を高めること。電子投票システムといったものをせっかく構築するのであれば、総会時だけでなく、「日頃の理事会ではこういうことを話し合っています。こういう結果になりました」といった広報の場としても使えないでしょうか? 総会でしか使用しないのはもったいないような気がします。

 議案に対する投票というのも、本当は、総会の場で、いろいろな説明や議論を尽くしたうえで、すべての知識を得た上で、「そういうことなら賛成です」「議案の文章だけでわからなかったんですが、実際はそうだったんですか。だったら、反対です」と、最終的な正しい判断をして投票すべきものです。議案書の文章だけでは正確とはいえないと思います。ですから、あくまでも基本は「総会に多くの住民が参加する」ことです。


 ただ、世帯数が200を超えるマンションでは、投票の管理、集計だけでもけっこうな事務作業になりますから、このシステムは有効だと思います。特に、「一人で複数部屋を所有している人の扱い」(これは法律的にもとてもややこしくて難しい)、「家族で来ていて、夫婦二人で手を上げて、間違えて2票とカウントしてしまう」などに対しては、いいかもしれません。

 とにかく、私個人の意見としては、電子式うんぬんの前の段階で、「委任状制度は廃止して。、議決権ごとに賛否の意見を表明できるシステム」を、全国のマンションで採用し、民主的に運営して欲しいということです。

 でも、まあ、こういうシステムを開発することはとてもいいことだと思います。今後も応援したいと思いますし、アドバイスもしたいと思います。グラントさん、がんばってください。



2010/1