管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

清掃局員 ゴミ収集時の人員を「3人→2人」へ削減





 管理会社のフロントマンから聞いていたのですが、「隣の市では2007年4月から、これまで3人で収集していたのを、経費削減のため、2人に減らした」そうです。私ら現場の人間の感覚からすると、「あの仕事は2人でもできる。民間なら2人でやるだろう」と思っていたので、「しょうがないんじゃない? 地方財政は厳しいんだから」と話してました。

 約8ケ月経過したわけですが、実は予想していなかった弊害が発生しているそうです。それは、
「ゴミ収集車による交通事故の増加」です。

 実は、3人の収集員のうち一人は交通を監視する役目があったのです。ゴミ収集は、狭い道路に入り込んだり、バックを頻繁にしたりします。また、坂道の途中で車を止めたりします。(その時は輪止めをします) 特にバックする時は、ゴミ収集車は構造上、ルームミラーで後方を確認することはできませんから、誰かが後ろに立って安全確認することが必要です。3人体制の時は、そのうちの一人が交通安全確認専用人員として使えました。

 しかし、2人体制に変わって、事情が変化しました。まず、おなじ量のゴミの収集を二人でやるのですから、当然忙しくなります。作業があわただしく、今までなら、ゴミを持って収集車の近くまで行ってから、投げ入れていましたが、今は歩く時間を省くために、かなり遠くから投げ入れます。遠距離を投げるため当然、作業は雑になり、収集車の周囲にゴミ袋から漏れた細かなゴミが散乱します。収集員はそのまま放置していきます。普通のゴミはまだいいんですが、困るのはガラス類(ビン)です。砕け散ったガラスの破片を掃除するのは大変です。
 そして、急いで次の収集場所に移動しなくてはなりません。この際に、交通の安全確認がおろそかになると事故が起きます。

 「自転車と激突した」「ゴミ置き場のフェンスに突っ込んで破壊してしまった」といった事故が(公表はされていないが)、多数発生しているそうです。
 また、2人体制では時間がかかるため、「最終の回収の便が遅くなった。ゴミの量が多い曜日は、夕方の5時過ぎに来ることもある。管理人の終業後に来られても困る」、という弊害も出ています。

 そして、当市でも(公表はされていないが)、2008年から「3人→2人」の削減が実施されるそうです。当市のゴミ収集員はすでに新規採用は中止になり、また正規の職員を減らして、臨時雇用(高齢者が多いので、高齢者雇用の面ではいいことなんですが、やはり、力仕事ですから高齢者にはきついです)を増やしており、収集の質は落ちています。これに追い討ちをかけるように人数が削減されたら大変なことになります。私もあわてて清掃局へ事実確認をして、同時に削減の撤回を要求しましたが、「上層部の方針で決まったことなんで、現場ではどうしようもないです」とのことで、どうしようもありませんでした。

 フロントマンのほうからは、「このマンションのゴミ収集場は敷地の奥にあるから、住民との交通事故も怖い。管理人さんはよく監視して欲しい」と指示されました。たしかにこわいです。

 なんかいつも思うことですが、「行政の経費削減の余波がいつも我々の負担を増やしている」ということです。市長はマンション管理人に感謝状ださないとだめじゃないの?

 「仕事がないから、昼になると仕事をサボって帰宅してしまう」奈良市の清掃員に聞かせたい話です。



<実際に始まってみて>

 フロントマンの情報どおり、1/4の収集から、収集作業員が2人になっていました。3人が2人になるということは、33%の能力減ですから大きいです。(削減コストも大きいでしょうね) 開始してまだ半月にもなりませんが、予想通りのことが起きています。

「収集が雑」・・・・以前は、ゴミを1点1点見て、「これは違反ですね。回収できません」と、はねられていたのですが、そういう「検査」をする余裕がなくなりました。当マンションでは、管理人と清掃員のほうで違反ゴミは朝一番に取り除いておきますが、時間を守らない住民がそのあとに違反ゴミを捨てていきます。そういった違反物は収集員がチェックしていたのですが、もうその余裕はないようです。「生ゴミの日にダンボール箱」みたいな明らかな違反はチェックしますが、袋の中を覗かないとわからないような違反ゴミはノーチェックです。住民や管理人にとっては「いいこと。楽になる」かもしれませんが、環境問題の主旨にはそむきます。また、袋からこぼれた細かなゴミも、ほったらかしにされるようになりました。これは私が後始末しなくてはなりません。マンション以外の、通常の住宅街の中の集積場も、汚くなっています。地域のボランティアの方が掃除するしかないです。

「ガラスが割れる」・・・ガラス瓶でも平気で投げます。投げないと時間がかかるからでしょうが、投げれば割れます。割れた破片が路上に散乱します。収集員は「あ、すいません。あとはよろしくお願いします」で終わりです。後始末は我々の仕事です。ガラスの破片を掃除するのって大変危険なんですけど。

「いらついてる」・・・完全に態度が悪くなっています。「なんで、今まで3人でやっていたのを2人でやらされるんだ。給料は変わらないのに」とブーたれているような態度です。

「運転が荒い」・・・「周囲の安全確認なんてやってる時間はねえよ」みたいな感じです。今日もバックする際に、うちの住民の自転車とぶつかりそうになりました。マジで交通事故が怖いです。

「危険な事故?も起きた」・・・当マンションの集積場ではないんですが、「収集員がいい加減に投げたビンが収集車の中に入らずに、路上に転がった。収集員はそれを放置して、次の収集場へ向かった。転がったビンを収集車のタイヤが踏んづけた。瓶は破裂して爆発みたいに飛び散った。その破片が、近くを歩いてた当マンションの住民の顔に当たった。目の中に入らなくて幸いだった。目だったら失明の危険もある」ということが昨日発生しました。その住民は、私に向かって30分以上、「何やってるのよ。清掃局は!! プンプン」と怒ってました。「直接、清掃局へ苦情を言ってください。いや、むしろ、市長目安箱のほうがいいかもしれません。市長の無理な施策の弊害ですから、今回のような事故は」と言っておきました。

 今後がますます心配です。

 なんか、マンション管理人の仕事のうちの何割かは、行政のやるべきことを肩代わりしていると思います。我々は「準公務員」として役所から報酬をもらってもいいんじゃない?


追記
 ゴミ収集合理化 事故増加  2008/7

 7月です。暑いです。暑い時期、外での仕事は仕事は大変です。私らも大変ですが、清掃局のゴミ収集員も、暑い中、汗だくだくで働いています。夏は悪臭もひどく、劣悪な環境になり、合理化が進んで、一人頭の業務量が増えている今、それに暑さが加わって、ますますやる気をなくして、頭もボケてきます。
 となると、絶対に歪が出てきます。先日の回収では事故が起きました。当マンションはわずかながら傾斜している土地に立っているため、ゴミ置き場の前も少し傾斜しています。傾斜地に収集車をとめて、ゴミ収集を行なう時は、必ず、車輪止め(写真は埋め込みタイプですが、収集車は観光バスなどが使うのと同じ、積み木型の車輪止めを携行しています)を使用して、車が動かないように固定します。
 収集を終えて発車する際、当然、この車輪止めを外すのですが、今回はそれを忘れました。そして、無理矢理発車したため、車輪が車輪止めの上に乗り上げました。それでも、左右の車輪に両方置いてあれば問題はなかったのですが、今回の収集員は、面倒くさがって、右側の車輪1個にしか置きませんでした。このために、右側のタイヤが車輪止めに乗り上げた際、収集車は大きく、左側に傾きました。そして、荷室の角が、当マンションの壁にぶつかってしまい、「ガリガリガリ!!!」と大きな音が。
 やってくれました。壁が傷だらけです。「弁償する」との確約を得ましたが、役所のこういうものの手続きって面倒なんですよね。今後、あとの処理が大変そうです。清掃局が壁の修理業者なんて知らないから、「そちらで業者を手配して修理して下さい。費用は市で払います」ということになりそうです。

 合理化って、いいことなのか、悪いのか、わかりません。
 



2007/12  2008/1 2008/7追記