管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

 大規模修繕工事シリーズ
ベランダの植木の始末はどうする???
 




 某Mマンション管理士さんが、大規模修繕工事の話をしていたので、私もそれで思い出したことを。

そのブログ記事では、コンサルタントに任せる方式らしいですが、そのコンサルタントって、実際の現場の知識をどれだけ持っているんだろうか?
工事だから、工事に関する知識は当然豊富に持ってるだろうけど、マンションの場合は、「住民が生活しながらの同時並行工事」ってことが大きなポイントになり、その点に関する知識の有無が、コンサルの評価になると思います。

たとえば、
「ベランダに置かれたプランターや鉢植えをどうするか?」
これなんか、ささいなことですが、住民本人、特に植物好きの人にとっては大問題だったりします。

大規模修繕工事中は、その大部分の期間で、「ベランダに私物を置かないでください」と言われ、鉢植えやプランターをどこかに一時移動しないといけません。

管理組合としては、「ベランダは避難経路にもなる場所で、もともと、管理規約や細則で”私物は置けない”と規定されている場所です。ですから、ご自分の責任で処理してください」と冷たく、言い放つことも可能です。

実際、某大規模修繕工事会社のHPには、このように記載されていました。

<<<ベランダの荷物はどうすればいいですか?(鉢植え・物置・アンテナ)
ほとんどの管理規約ではベランダに私物を置くことはできませんので、大規模修繕工事でも工事金額に私物の移動費や撤去費は含まれていません。工事期間中はなるべくご自身で室内に保管する等のご協力をお願いします。もちろん声をかけていただければお手伝い致します。
※私物の移動・撤去には別途費用を申し受けることがあります。>>>


こういう、突き放した対応でも、原則的には、いいのかもしれませんが、実際は、「部屋の中なんか荷物がいっぱいで置く場所なんかねえよ。どうしろって言うんだよ!」と突き上げを食らうことでしょう。

そこで、管理組合によっては、共用部の敷地を利用して、「ここに移動して保管してください」として「保管場所」を用意する場合もあります。

管理会社のコスモスイニシアさんのHPでは、こう書かれています。

<<<<
植木鉢、プランターボックス、人工芝、置き敷きタイルなどは、ご自宅内や管理組合が指定した場所へ移動していただくか、またはご自身で処分をお願い致します。ご自身で移動させることが困難な場合は、お手伝いを致しますので現場代理人までお申し出でください。
>>>>


「管理組合が指定した保管場所」というのも、工事会社が、手配してくれるものではなく、組合が自分で探して用意しないといけない場合もあります。

管理会社のHPでは、これしか書いてませんが、実際は、まだまだ複雑です。

相手は生き物です。植物によっては、「水が多いほうがいいもの」「水はあまり与えないほうがいいもの」など、様々です。
置き場所には屋根があったほうがいいのか悪いのか?
日あたりはどれくらいがいいのか?

どこの組合でも、「移動場所で保管する際の、水やりなどの作業は自分でやってください」と、セルフサービスにすることと思いますが、これだって、この場所専用のジョーロとかバケツを用意しないといけないし、背の高い植物の場合、倒れないような措置も必要だし。
バラなどの「棘」がある植物は、別の場所にまとめたほうがいいし。アサガオみたいな「ツル状」の植物で、ベランダの手すりとかに巻き付いているものは「外すのは嫌だ」とゴネる住民もいるだろうし。

保管場所の選定・設営・運営管理、だけでもすごい労力になります。

きれいな植物だと、盗まれる可能性もありますし、逆に、心無い人にいたずらされて、蹴飛ばされたり、抜き取られたり、そういうものの、警備も考えないといけません。


それに、保管場所を用意したとして、そこに、みなさんが移動してくれるわけではありません。
「もう。この鉢植えには愛着はない。この機会に処分をしてしまいたい」と考える人もいます。ゴミとして出してくれればいいのですが、「やっぱりもったいないなあ」と思って、夜中にこっそりと、マンションの共用の植栽部分に、移植してしまう人もいます。

環境が変わったことにより、枯れてしまう植物もあります。そうなると、「工事のおかげで私の大事な植木が枯れた。弁償しろ!」という住民も現れるでしょう。

保管期間が終わったとき、「みなさん、ご自分の部屋に戻してください」となりますが、ここで、「捨て犬 捨て猫」ならぬ、
「捨て鉢」というのが起きます。 引き取らないで残ってしまうのです。保管する際に、「この植木は誰のもの」と記録を残しておかないと、誰のものかわからない植木が、ずっとそこに残されて しまったりします。管理会社のほうが嫌になって「捨て鉢」になってしまいます。

ここで、理事会役員が、バカなアイデアを出して、「もったいないから、玄関わきの植栽スペースに植えてしまいましょう」とか言い出して、植えちゃったりし ます。これが、ものすごく生長の早い、外来種の植物だったりなんかすると、「もともと30センチだったのが、3年たったら、2メートル近くになってしま い、もともとあった植物が、日が当たらなくなり、枯れてしまった。」なんてことが起きます。
「成長したら、葉っぱが鋭くなって、ちょっと触っただけでも皮膚が切れてしまう、実は危険な植物だった」なんていうこともあります。いたずら小僧が怪我をして、その親が怒鳴り込んできて初めて、それを知ります。

植物、1種類1種類ごとの、細かな知識も必要なんです。

3年後のことなんか、大規模修繕工事コンサルサントは、当然、「過去の話」で、知らんぷりです。
うちの場合、「持ち主不明で残って、長期間、誰でも触れる場所に放置されていた鉢植えが、実はトリカブト(猛毒植物で、四谷怪談のお岩さんが飲まされた毒のもと)だった」なんてことも起きています。


現場で、毎日、働いている管理人は、ベランダの植木鉢ひとつで、これだけの話ができます。

コンサルや、マンション管理士や、工事会社や管理会社の人は、ここまで深い&長期的視点にたったことを考えられる頭はあるのかなあ?

おそらく、計画段階で、ここまで現実的な話ができる人は少ないでしょう。こういうのをシカトして積算が行われます。でも、本当は、こういうことにかかる労務費用や道具などの実費も加算して、工事費用を算出しないといけないんだけどなあ。


などと、えらそうなことを書きましたが、自分自身は、「仮設置き場」の現場の写真とか、ちゃんと残してなくて、今、後悔しています。(施工会社の、記録写真帳にも、工 事のことだけで、こういう付帯的なのは記録されていない。)  当時は、「12年後の次の修繕工事のこと」まで考える思慮がなかったんだよなあ。アホやな あ。



2014/10



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