管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 名前 名簿 プライバシー 個人情報




 
 以前、「表札」の項で書いたこととダブりますがご容赦ください。

 年末です。郵便配達のアルバイトが配達する季節です。バイトなので、慣れていません。「管理人さん、○○さんて何号室ですか?」と聞いてきます。いつものベテラン配達員なら、聞かなくても、自分の頭の中に入っていることが多いのですが、バイトだから仕方ないです。(それにしても、部屋番号が書いていない&間違えている郵便物のなんと多いことか) 郵便に限らず、配達の人たちは苦労してます。ポストに名前のない部屋が多いからです。

 最近、配達の人の他に、「小学生」が来ることが多くなりました。「欠席の子供にノート類を届ける」なんてのがあります。我々の頃はよくやってましたが、一時期廃れたと思ったのですが、最近、教育界の方針なのか、子供にそういうことをさせることが多いみたいです。また、「地域の一人暮らしのお年寄りを訪問する」ということもよくやっていて、高齢者の多い当マンションにもよく来ます。(でも、「あたしは一人でのんびりしたいのに、うるさいガキが大勢来て貰っても困るのよね」と愚痴っているおばあちゃんもいます)

 そんな小学生、大勢でバタバタとやってきて、まず、郵便ポストのところで名前を確認します。どういうわけか、いつも、部屋番号をあらかじめちゃんと聞いていないようで、「え〜と、○○さんの部屋は??? あれ、ないよ。どこだろ?」「ほんと、ないね」「みんなでよく見てみよう」「う〜ん、でもやっぱりないね?」「どうしようか? 管理人さんに聞いてみる?」「でも、教えてくれるかな?」・・・・・・と、声のよく響き渡る玄関ホールでギャアギャア騒いでいます。「グタグタ言わないで、おじさんに聞きなさい。君たちの会話は丸聞こえだよ」と思いつつ待っています。「やっぱり、管理人さんに聞こう」「誰が聞くの?」「あたし、イヤ」「俺もいやだ」 (こんなことくらいで悩むなよ。おじさんはそんなに怖い顔してないでしょ。ほんと、今の子はコミュニケーション能力がないな) 「じゃあ、ジャンケンで決めよう」「最初はグー!」 (うるさいよ。早く聞きなさい) そんなこんなでやっと私の出番になるわけです。ちゃんと、ポストに名前が書いてあれば、こんな面倒なことは起きないのですが、いかんせん、今は名前を出さない人が多すぎです。なんと、今年は理事長すら名前出してませんから、私も理事長あての連絡書類をポストに入れる際に間違えてしまうことがあります。

 その後、巡回の際に一斉点検してみたら、「郵便ポストに名前を書いていない部屋が、約5割」「玄関に表札のない部屋が約4割」という状況でした。何年か前にもチェックしたことがありますが、増えているような気がします。それでも、ご近所のワンルームマンションの管理人さんに言わせると、「おたくはずっとまし。うちなんか、2割にも満たない。だいたい、誰が住んでいるのか、管理人さえ知らない部屋がごまんとある」とのこと。これじゃ、大変だ。

 こんなに、「この部屋には誰が住んでいるのか分らない」という状況だと、住民自体も不安がるようです。「上の階でドタバタしてうるさいのだが、名前もわからないので文句を言いに行きにくい」「駐車場で、車をいたずらしている怪しい人がいた。その車の持ち主に教えてあげようと思うが、誰の車なのだかわからない」といった悩みが出てきます。昨年の個人情報保護法施行以来、管理会社も「事なかれ主義」「教えないほうが得策」と考え、そのマンションの住民からの質問「うちの隣に住んでいる人の名前を教えてくれませんか?」にも、「法律の関係で教えられません」と断る管理人がいるそうです。そこまでするかなあ? 過剰反応じゃないの? この法律のおかげで、不良公務員も、「個人情報ですから」と、不祥事を起こしても名前が公表されることが減りました。なんか、この法律って、もしかすると公務員の不祥事隠しのために作られた法律じゃないの?

 当マンションでも、理事会の席上で、「何年かに1回くらいは、"組合員名簿”を作成して、組合員にだけは配布したらどうなの? 自治会とか外部に配布するのはよくないけど、内部にだけなら問題ないでしょ」と提案されることがあったそうですが、「こんな時代だからまずいんじゃないの?」「法律があるからね」といった反対の意見にかき消されるそうです。「せめて、理事会役員の中だけでも配布したら?」「それまずいんじゃないの?」「だったら、電話番号などはなしにして、部屋番号と世帯主の名前だけの簡単なものならどう?」「それもちょっと」と、やはり、立ち消えしてしまいます。でも、組合という組織を結成するのは区分所有法という法律で決められていることで、組合を作る以上は、組合員名簿を作るのも当然のことじゃないんでしょうか? 「誰がいるのか知らない」ようでは、組合としての体をなしていないと私は思いますが。昔の組合名簿というのは「勤務先」まで書いてあったりしたので、これはさすがに今はまずいかもしれませんが、「部屋番号と氏名」くらいの名簿は、毎年、総会の時に作成して配布すべきだと思います。なんら問題ないでしょう。

 それでも、「しかし、駐車場に関しては、誰が使用しているわかっているほうがいいよ」「隣の車のドアがぶつかってうちの車が傷つけられたなんてこともあった」「隣の車のドアロックが解除されたままになっていたので、注意してあげようと思ったけど、誰のだかわからなくて、連絡できなかった」「室内灯がつきっぱなしだった。教えてあげたい」といった、駐車場利用者の声が数件あったため(今年度の役員はたまたま駐車場利用者が多いのです)、駐車場利用者リストだけは、駐車場利用者に限り、配布することになったそうです。

 国も、個人情報保護法が施行された際、「標準管理規約」も改正して、マンション内の個人情報の取り扱いに関する指針を示すべきだったのではないでしょうか? そういえば、今年の「管理業務主任者試験」でも、「管理会社が組合員名簿を外部に提供していいのかどうか?」といった問題がありましたが、これも現実には対応がケースバイケースで難しい問題であり、「正解=だめ」とはいえないと思います。今、どこのマンションでも「名簿」に関しては悩んでいるんじゃないのかな? 

※神経質な管理会社だと、「管理人室はいろいろな人が入ってくる部屋なので、個人情報に関する書類は一切置かない。鍵のかかる引き出しに入れる」としているところもあります。そこの管理人さんは、「駐車場4番の利用者は誰だっけ?」と疑問に思ったときには、わざわざ鍵で引き出しをあけて、ファイルを取り出して、駐車場利用者名簿を調べなくてはなりません。あ〜、面倒!
 記憶力がものすごくよくて、全部頭の中に覚えておける人じゃないと、管理人業務をスムーズに出来ません。「誰でもできる仕事」なんて、真っ赤なウソです。2006年以降。管理人はIQ130以上じゃないとできない仕事です。(半分マジです)

 ところで、これだけ「名前を出している部屋が少ない」と、間違いがしょっちゅう起こります。ある部屋では、「うちはいつも、3階の鈴木さんと間違えられるんだよな。全然違う名前なのになんでだろう?」と苦情を寄せる人もいます。間違えられて困るのだったら、表札出しなさい。名前が出ていないから間違えるんです。
 それから、うちのマンションには、いい年してずっとヒモをやっている男性もいます。部屋の所有者は女性で、当然組合員名も女性の名前です。ポストも表札も女性の苗字です。管理費の銀行引き落としもその女性の口座です。でも、実際には、その女性はヒモ男性を囲っています。私はその男性の名前を知っていますが、普通の住民は「夫婦」だと思っています。でも、実際はヒモです。女性は働きに出ていますが、この男性は一日中何もしません。でも、家の中にばかりいるわけではなく、マンションの中をいつも散歩しています。不思議な人です。なんなんだろう、この人。名前を表面的には出していないため、配達物がうまく届けられなくて、そのとばっちりを管理人が受けていて困ってるんですけど。(ヒモ男性はいつもマンション内にいるのに、世帯主の女性は働きに出てばかりなので、役員就任要請も「忙しいので無理です」と断ります。いい年してなにもしないでいるんだから、この男性が理事長やればいいんです。暇なんだから、ちょっとは他人のために働きなさい)

 



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2006/12