管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

サイレント理事長




絶対しゃべらない



  どこのマンションでも、理事長の資質というものには困っております

資格がないのになってしまう(「無理やりやらされる」というのが真実かな)理事長がたくさんいます。もちろん、当マンションでも悩みの種ですし、「外国人理事長」で困っているマンションもあります。

 さて、某大手管理会社で管理する近隣のマンションでのお話。

 「役員は輪番制」「1年交代」のマンションで、いつものとおり、「じゃんけんで負けた人が理事長になってもらいます」とじゃんけんを実施。その結果、パーを出して負けたAさんが理事長に任命されました。

 しかし、このAさん。役職決定の会議の間中、ひとことも口を開いたことがなかったのです。このAさんは40代の男性ですが単身者で家族はいません。ほとんど誰とも接触しておらず、夜に出入りするだけで、隣室の人でさえ、「顔を知らない」という程度の影の薄い人でした。管理人でさえ、「実は本人とは一度もあったことがないんです。入居の際の手続きは全部不動産屋がやりましたので」とのこと。過去に2度ほど、役員就任をすっぽかし、「今年はいい加減に就任してください。義務です」と言われたために、渋々、顔を出したようです。
 じゃんけんの時も、「最初はグー」といった言葉も発せず、無言でやっていたそうです。結果、負けてしまって理事長にさせられたわけですが、このときに、前理事長から、「それじゃAさん、これから1年間理事長の仕事をよろしくお願いします」と声をかけた時も、「はい、わかりました」とも言わず、ただ、首を立てに振っただけでした。
 普通なら、その場で、前理事長と新理事長の間で「引継ぎ」を行うのですが、このマンションはいい加減で、「あとは管理会社さんにお任せします」で、会議はすぐに解散しました。結局、会議の間中、出席者はAさんの言葉を一言も聞いていないのです。

 数日後、管理会社のフロントが集会室でAさんに対して、「理事長事務の説明」をしたのですが、そこでも、理事長は一言もしゃべらず、首を立てに振っているだけです。「変わった人だなあ」と思いつつも、フロントは一方的に説明をして、その場を去りました。

 その後、開催された定期総会で、新役員のお披露目をしたわけですが、この場で、「それでは新理事長のAさんから一言」と、紹介されたのに、Aさんは、ただ、ぼーっと立っているだけで、ペコペコ会釈をするだけ。やはり、一言も話しません。さすがにみんなも気がついたようです。「この人、もしかして聾唖者?」 総会後、心配したフロントは遠慮がちに聞いたそうです。「すいません。理事長。大変失礼な質問ですが、もしかして、お口が不自由なんでしょか?」 そうしたら、首を横に振ったそうです。どうやら、聾唖者ではないようです。ただ、どうしても言葉を話すのが嫌みたいです。

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 話は横道にそれますが、私にも同様の経験があります。小学校の同級生、6年間ずっといっしょだった男子で、6年の間、いちども言葉を発したことがない子がいました。教師泣かせの子供だったと思います。なにしろ一言も発しないんですから。もちろん、音楽の合唱の時間なんて何もしません。それでも、子供同士では「この子はこういう子なんだ」と理解し、普通に遊んでいました。
 しかし、中学に進学したら、担当教師が厳しい人で、「なんでしゃべらないんだ。教師をバカにしてるのか!」と怒り出し、殴る蹴るをして無理やりしゃべらせたことがあります。(当時は体罰は当たり前でした) ゴニョゴニョと何かわからない言葉を、彼は泣きながら発しました。私たち同級生にとっても、7年目で初めて聞いた彼の声でした。体罰はOKの時代といっても、これは体罰ではなく、生徒の間からも、「殴ってまでしゃべらせようとするのはひどい」という声があがり、また、当然のごとく、保護者も学校に乗り込んできて(親とは話しているのかなあ??)、問題となり、そのあとは、再び、彼は沈黙を貫きました。結局、9年間つきあいましたが、ほんとうに「一言」しか聞いていません。中学卒業後、彼がどうなったのかは知りません。とにかく、そんな人がいたのです。
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 さて、理事長の話に戻りましょう。フロントというのは理事長と話をすることがたくさんあります。しかし、彼は電話に出ません。じゃあ、なんで電話があるかというと、「相手のメッセージを留守電に記録させるためだけ。FAXを受信するだけ」にあるそうです。要するにメッセージレコーダーとして使っているようです。そんなわけで電話で会話できません。幸い、今は便利な「電子メール」という手段があるので、フロントと理事長の間はメールでのやりとりとなるそうです。しかし、管理人室にはPCはなく、管理人とのやりとりは、いちいち手紙を書くそうです。管理人としては大変です。
 そんなわけで、なんとか「文字上でのコミュニケーション」は取れるのですが、どうやら、このA理事長、知的な障害があるようです。(管理業務主任者試験の問題で、民法の「制限行為者」というのを勉強しますが、それに関連します) 「○○の書類の記入をお願いします」といっただけでは理解できないようで、毎回、記入見本というのを添付しないとだめみたいです。添付した場合でも、見本に例として書かれている「D京太郎」といった架空の名前をそのまま書き写していたり、ミスが多く、事務も滞りがちだそうです。管理人も頭を抱えています。「今年の理事長はなんなんだ。これじゃ、仕事にならない」と。

 毎月の理事会でも、司会はフロントが勤めるため、なんとか進行できるのですが、とにかく、主役の理事長が一言も意見を言わないため、議論がかみあわないようで、役員の中には、「あいつじゃだめだ」という声が聞かれるようになったそうです。しかし、「じゃあ、俺が代わりにやってやるよ」とは絶対に言いません。そんなこんなで、フロントと管理人にとって苦難の日々が続いているそうです。Aさん、自分でも無理だとわかっているようなんですが、自分から「辞めたい」とは意思表示しないため、「辞めさせるわけにはいかないし、代わりをやってくれる人もいないし、副理事長は問題児だから、この人に任せたくないし」と、フロントが頭を抱えているそうです。

 
 「ジャンケン理事長」とか「クジ引き理事長」とか、いい加減にやめませんか? 管理組合活動の90%は理事長で決まります。
 


2006/12



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