管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

新築直後のマンション管理組合
最初に、1年間、こういうことをやって、
しっかりとした道筋をつけておくと、あとが楽ですよ





今回の記事はすごく長く、かつ乱雑です。

マンションを分譲する会社も、管理する会社も、基本的には、両方共「ろくでなし」です。身内が言ってるんだから間違いないです。

 その「ろくでなし」が作った、建築当初の制度というのも、ろくなもんじゃない場合が多いです。

例えば。

「修繕積立金が異常に安価で、これじゃ、第一回の大規模修繕工事すら実現不可能。早急な値上げが必要」

最初から、長期修繕計画に基づいた適正金額に設定しておけば、苦労しないのに、マンションを売れやすくしるために設定した安価すぎる金額のため、住民が困ることになるのです。あとから、値上げするというのは、その時の役員さんにとっては、すごく、面倒で、精神的にも疲れる作業になります。

「理事会の役員の任期が1年に設定されている」
これもねえ、最初から、「2年任期 毎年半数ずつ交代」って制度にしておけばいいのに、しません。

「管理規約の中に、管理会社**株式会社という固有名詞が記載されている」

これもねえ、原始的な手法なんですが、規約内に、管理会社の固有名詞が記載されていると、「管理会社を変更する際には、規約の変更が必要ってことになり、通常なら過半数の普通決議でいいのに、4分の3以上の特別決議になってしまう。こうすると、管理会社変更をしにくい」っていう手なんです。セコイですねえ。

 それから、細かい話になりますが、「ペット飼育細則」の中の「ペットの体長は70センチ以上とする」といった規制の条文。「体長の計測方法」の定義が書いてないと意味ないんです。4つ足動物の犬の場合、動物学的には、「体長」というのは、「首の付根から、尻尾の付け根まで」ということになっており、細則の「体長」が、動物学的なものだとすると、「体長70センチ」という規制は、「大型犬でも飼育可能」ということになってしまいます。一般常識で考える体長「鼻の先からお尻まで」とは全然違う概念になります。ですから、飼育細則を作るときは、「子犬ではなく成犬状態での計測」とか「体長とは、**から**までを意味する」といった、但し書きが重要になります。こういう細かいことが書いていない、飼育細則は、あとで、トラブルの元なんです。
 それと、「飼えるペットの数は原則2頭とする」といった条文。「原則って、なんなんだよ!」と突っ込みたくなります。こういう条文の中に「原則」とか「基本的に」といった、曖昧表現の用語は使わないで欲しいです。

またまた、細かい話になりますが。「専ら」(もっぱら)という用語も、いろいろとトラブルの種です。よく使われるのは、マンションの部屋の使用目的に関する条文で
専ら住宅として使用することとするといったもの。
これは、「居住する部屋」としてだけ使って下さい、「塾」とか「整体院」とかに使っちゃだめですよ、という意味なんですが、この「専ら」とう言葉の解釈が、「100%という意味だ!」という人もいれば、「90%くらいの大部分という意味だ!」という人もいて。後者の場合、「自分の部屋の中の、3つの居室のうちの、ひとつを使って、整体院を経営しても、問題ないだろ!」とか言い張る人が出てくるのです。ですから、こういう「専ら」とかの誤解を招きやすい条文が使われている規約は、速攻で改定が必要で、「居住目的以外の使用は不可」と、はっきりさせるべきです。

 さて、マンションの会計制度のことが論じられる時、よく、「お役所の会計方法と同じ、予算主義です」と言われます。そう、会計に関しては、役所が手本なのです。そして、管理組合の運営方法も、「事なかれ主義」だったり、「過去の慣習をなかなか変えたがらない」という、お役所的なところがあります。でも、それじゃ、「悪い制度なのに、ずっと存続する」ってことになります。それはだめです。

 ですから、前回書いた、「1年目は、自治体の助成制度として、
有能なマンション管理士が、強制的に、顧問として、組合に助言を行なうようにする」という制度を実現化し、その、有能なマンション管理士(実際にはほとんどいないけどね)が、1年間に、制度をしっかりと整えることが大事だと思うのです。規約とか細則に関することは、その期の締めの定期総会で、改定することになります。


 もっと細かい話になりますが、
理事会の役員の役職決めの方法なんかを、管理会社の社員が、明文化されてないが、経験則的に、「まずは立候補で、やりたい役職に手を上げてもらい。それで残った人たちでじゃんけんをしてもらって、負けた人に理事長になってもらいましょう」なんてことを言って、これが一種の「不文律」になってしまうと、このルールがその後何十年も続いてしまいます。「負けた人が理事長」ってのは、いかにも、「理事長は誰もやりたがらない。ある意味、ペナルティみたいな役職なんです」という、よくないイメージを住民の皆さんに刷り込むようなものです。そうやって、「やる気がなくて」「無能な人」が理事長になり、それを、管理会社が二人羽織のように操れば、「管理会社は安泰でウハウハ」ってことなんです。

「理事会の開催頻度」
ひどい管理会社になると、これさえ決めてないところがあります。特に初年度は、欠陥建築とかでなければ、「設備面の問題」などは出にくく、「何か問題があった時だけ理事会を開催しましょう」というのでも通用してしまうものです。役員側は「仕事が無いのはうれしい」と思ってますから、そういう管理会社の提案にはすぐ乗るでしょうし。でも、そうやって、「初年度は、半年に1回、年に2回しか理事会を開催しなかった」なんていうのが、過去の実績になってしまうと、3年目から「毎月開催します」とった変更はしにくくなってしまいます。初年度から、きちんと、「毎月開催します」というのを決めるべきです。

「理事会役員報酬」
 これを出すか出さないか、というのも、よく問題になります。でも、私の意見としては、出すべきだと思うのです。特に、理事長は仕事の量がはんぱなく多いし、電話代などの必要経費だって、けっこうかかりますから、「奉仕活動」を超えて、持ち出しになるケースも多いです。「報酬」という言葉にアレルギーを持つ人が多い場合は、どこかの兵庫県議会ではありませんが、「政務活動費」ならぬ、「理事長活動費」みたいな名目にしてもいいです。なにかしら出すべきだと思います。そして、そういうのは、「4年目から支給することになった」となると、1〜3年目の理事長は「なんで、俺達の時は出なかったんだ!」と憤慨します。ですから、そういうのは、1年目に決めてしまっていいのです。

「役員の職責分担」
 管理組合の理事会という組織は、内閣における「総理大臣の職務」よりも、一極集中しており、私が考えるには、「理事会の仕事の90%は理事長に背負わされている」といえます。これは、はなはだ不平等であり、なるべく公平に分担すべきです。そういう、「役職ごとの、仕事の具体的内容」も、1年目に決めてしまうべきです。
 例えば、「理事長が長期出張とかで留守になる、といったことがないと、実質上何も働かない、副理事長」という職がありますが、これもおかしな話です。「副理事長Aは、住民から、管理組合に対する要望や苦情の受付窓口の仕事をする。理事長は、この件はノータッチ」といったことを決めていいと思います。

「掲示板は大きなものに」
当HPの読者であれば、皆さん、ご存知ですが、私は「広報が大事」ということを連呼しています。ですから、「掲示板が大事」ということになります。でも、マンションの掲示板って、意外と小さかったりします。建築士が、掲示板の重要性をわかっていないからです。ですから、初年度にいきなり、掲示板を大きくしてしまいましょう。(今あるものを撤去するのではなく、別のものを足せばいいです)

「議事録は自分で作りましょう」
 質の悪い管理会社は、理事会とか総会の議事録も、ろくなものを作りません。これは意見の別れるところですが、私は、議事録は管理会社が作るものではなく、理事会のほうで作るべきものと思っています。管理会社が作ると、「労力をかけたくないから、簡単なものになる」「管理会社に不利になることを記載しない」など、いろいろな弊害があります。こういうのも、「最初の3年間は、管理会社が作ってくれたのに、4年目から自分で作るって、不公平じゃないか?」とか、あとで文句が来たりするものですから、初年度に、「自分たちで作るもの」という規定を作ってしまうのがいいです。

「設備関係は専門委員会に任せる」
 1年毎、もしくは、2年毎に、役員が入れ替わる理事会では、どうしても長期的視点がかけます。そして、長期的視点がないと困るものが「建物・設備類」です。これは、やはり、専門委員会を作って、同じ委員が、何年も関わるような制度にするほうがいいです。初年度に作ってしまいましょう。


「設備面の不備や瑕疵は、なるべく早く洗い出す」

(これ、ものすごく大事なことですよ)
マンションの「建物」「設備」に関わる、売り主(分譲会社)の瑕疵担保責任は、たいてい「2年」で切れてしまいます。ですから、2年の間に、分譲主側に、きちんとした証拠とともに「指摘」をしておかないといけません。これは、分譲主側からしたら、大きな負担がかかることなので、分譲側は嫌がりますし、ごまかそうとしたり、はぐらかしたりします。できれば、こういう「チェック」の専門家を雇って、最初に徹底的に調べてもらうといいでしょう。調査費用にたとえ「100万円」かかったとしても、それによって得られるものの金額のほうが遥かに高いです。(それだけ、完璧なマンションなんかなくて、分譲側が手抜きをしてるってことなんだけど)


「長期の植栽計画を作成する」

大規模修繕工事といった「設備」や「建物」のことは、皆さん、関心を持ちますが、植物の管理のことまで関心を持つ人は少ないです。新築ですと、最初は、植物の背丈も小さいから、そんなに目立たないという理由もあります。でも、植物は伸びるものです。建築設計士や分譲会社で、「30年後の植栽の様子」まで考えて、植栽を作る人はいません。だから、最初に、長期計画をきちんと立てて下さい。もし、分譲会社が、「桜の木」のように、「根っ子が周囲の土を持ち上げてしまう」「花びらの掃除が大変」「実が落ちて大変」「秋になると枯れ葉の掃除が大変」のような木を植えてしまったとしたら、思い切って、それを抜き取ってしまうくらいのことが大事です。
植栽管理に関しては、初年度は、「植物が小さい」ということから、初年度からきちんと植木屋さんを入れることはないのですが、これも最初に「何月に消毒する」「何月に剪定する」といったことをある程度決めておくことが大事です。植栽管理の費用は意外と高いですから、その予算の計上の計算もしておかないといけません。
また、住民が勝手に、共用部分に、私物の鉢植えを置いてしまうようなマンションの場合、これを毅然とした態度で、「共用部分には一切私物は置けません!」と禁止することも大事です。こういうのは、一回、黙認すると、あとで、「あの人の鉢植えは問題なかったのに、なんで、あたしのはだめなのよ! 不公平だわ」とか文句が来るので最初が大事なんです。ですから、一番最初に、「方針を決めておくこと」が大事です。
もし、「住民がきれいな花を置いてくれるのはありがたいこと」と思うのであれば、最初に、住民内での「植栽同好グループ」をきちんと作っておくことも大事です。そして、管理会社に負担をかけないように、自分たちできちんと面倒を見て、自主的にきれいに管理していくようなルール作りが必要です。

「自転車駐輪場の運用」
入居者全員が自転車を持っているわけではありません。ですから、ところどころ、駐輪場には空きがあるはずです。「それを自転車を2台以上持っていて、置き場所に苦労している人に貸し出す制度」というのがあればいいのですが、建設当初に、そこまで考えて制度化しているところは少ないです。こういうのも、1年目に決めてしまえばいいのです。
「2段式機械駐輪場」の場合は、「下段には、後部カゴつき自転車は置けません」といったルールも明文化すべきです。

「布団叩きの可否」
これは、最近のマンションでは、最初から使用細則で「不可」という規定を作ってあるところも多いようです。これもモメることなので、規定がないようであれば、最初に、規定することが大事だと思います。

「喫煙」
こういうのも、最初に、「マンション敷地内共有部分での喫煙は禁止」と決めてしまうべきです。

「書類の保管年限」
これも、明文化されていることは少ないので、最初にびしっと決めておきましょう。http://tsuraiyo.com/NT4402-HOKAN.html
永遠に保管ということです。
10年経ってから決めても、「社内規程で、3年で破棄になっているので、捨てました」とか管理会社に言われる危険性が有ります。


 そして、これが、新しいマンションでは、考えつかないことで、古くなってくると、後から考えて最も大事なことなんですが。
「専有部分と共用部分の境界・区別、負担方法を最初にしっかり決めておく」
これ、まじですごい大事なんです。

建物が老朽化してくると、「
漏水事故」というのが起きるものです。ここで、「その漏水事故の責任は誰が負うのか?」「復旧工事の費用は誰が負担するのか?」というのが非常にシビアな問題になります。なぜかというと、規約には、細かいことが書いてなくて、境界の判別が微妙だからです。
「床下の水道管に亀裂が生じて漏水した」という場合、古いマンションのように、「モルタルの中に水道管が埋まっている」という場合は、「モルタルの中なんだから、それは共用部分で、管理組合の責任じゃないの?」ということになるケースが多いと思いますが、二重床の下のほうの床の上に水道管がある場合、規約上では「専有部分内」であり、「専有部分なんだから、その部屋の所有者の責任だ」ということになるケースが多いです。でも、住民の心情としては、「自分の目の届かない場所の漏水なんだから、管理組合で責任を持ってよ!」と思うのではないでしょうか?
そこで、私個人の考えですが、規約で言う「境界」をそのまま適用するのではなく、「漏水の事故の場合は、規約上の専有部分内であっても、床下であれば、管理組合が責任を負う」といった特例の「使用細則」を、そのマンションごとに、作ってもいいと思うのです。(漏水というのは、建設時の欠陥が原因であることも多いし)
そのあたりを具体的に明文化することが大事だと思います。台所のシンクの下の、扉を開ければ見える場所で、漏水していたら、それは常識的に、「所有者の責任」としていいと思います。
 こういうのは、とかく、「法律の条文にうるさい」、頭デッカチのマンション管理士は、「規約文に、こう書いているのだから、こう解釈すべきだ」とか言って、床下の漏水は、「区分所有者の責任」とか言い出しやすいのですが、これは、水道の使用法に問題がある、とか、個人の責任じゃなくて、ある種、「はずれクジを引いた」ようなものですから、相互互助組織という性格もある管理組合の場合、「みんなで負担することにしようよ」という弾力的な解釈でもいいと思うのです。

 それから、よく問題になるのが、「玄関ドア」は、「個人?」「管理組合?」どっちなの? という件。これは、特に、大震災のあと、各地で問題になりました。地震の揺れで、ドア枠が歪んでしまい、「ドアが開けにくくなった」というトラブルが頻発したからです。
 玄関ドアは、不思議な物で、「表面は共用部分」「内側は専有部分」「錠前部分は専有部分」とか使い分けてます。でも、1枚のドアで、こういう使い分けはおかしいと思います。ですから、これも、細則で、「ドアが歪んで、開閉がしにくくなった際は、管理組合負担で修理する」というのを制定してもいいと思います。
(ただ、玄関ドアに関しては、「不良犬飼い主が、室内の玄関部分で、犬のブラッシングをして、それを水で廊下に流して処理していた」なんて場合、「その水によって、玄関ドアの鉄製の枠が錆びて膨張して、あけにくくなった」、という、「個人の責任だろ?」ってのもあって難しいのですが)
 また、ベランダ側アルミサッシの表面についている「網戸」なんかも、規約の読み用によっては、「共用部分」と読めるケースもあり、「網戸がだめになったから管理組合で貼替えしてくれ」とか、ひどい住民になると、「共用部分なんだから、管理会社が掃除しろ!」なんてのもあります。これも、きちんと規定しておくことが大事です。(掃除は、個人でやるべきでしょう)

 とにかく、こういうのは、「人によって、管理組合側の対応が違う」というのが問題になるので、「Aさんの玄関ドアが歪んだときは、理事長は、個人負担と言ったのに、その翌年に、Bさんの玄関ドアが歪んだ際は、その年の理事長は、組合で直すと言った」という「不公平」は絶対にあってはいけません。(実際、震災後は、「震災のせい」ということで管理組合負担で工事をしたが、その前までは、個人負担としていたので、苦情が出た、という例がたくさんあるようです。)

 ですから、新築で、まだ、不具合が出ないうちに、将来の不具合発生を見越して、ルールを先に決めておくことが大事です。こういうのは、経験豊富なマンション管理士なら考えつきますが、現場のことを知らないマンション管理士では思いつかないことだといえるでしょう。

 とにかく、「最初が肝心」ということなんです。

 


2014/8



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