マンション管理最前線
管理人は超つらいよ
マンション管理最前線
| 管理人は住民個人の召使ではない |
当掲示板でも、管理会社と管理組合の命令系統についてふれられた書き込みがありました。今までも何度か書いてますが、あらためて。
東京では、「メイドカフェ」とか「執事喫茶」なるものが流行っているそうです。そこでは、「お帰りなさいませ。ご主人様」とか、「お嬢様。お茶のお時間です」などといった「擬似貴族ごっこ」ができるそうで、お客は至福の時間を過ごせるそうです。
マンションでも、”管理人を自分の専属の召使だと誤解している”住民がいます。困ったモンです。まあ、「私の部屋の中の水道の蛇口が壊れたみたい。あんた修理してよ」といった、完全に個人的な用件を押し付けるのは、「そんなことは管理人の仕事ではありません。業者を紹介しますから、そちらに電話して下さい・・・・」とつっぱねることも可能ですが、悩むのは、「マンション全体の事柄について、個人的な意見を言って、それをすぐに実現させたがる人」です。
たとえば、「古紙回収の際に、非常階段の下に新聞を置くのは困る。すぐにやめて欲しい」と言ってくる人がいました。住民からの要望を”受付する”ことは管理人の業務と言えますが、「その場ですぐに個人の要望に応える」ことはできません。「そういう変更は管理組合さんから言われないと、こちらでは対応できませんので、よろしければ、あなたさまの階の担当役員さんにその旨を伝えて、理事会で話し合ってもらって下さい」と返答すると、とたんに怒る人がいます。「なんだ、おまえ。その態度は！ マンションの住民はおまえにとって”お客様”だろう。その客がこうして欲しいと言っているのに、管理組合がどうたらこうたらだと！ おかしな理屈こねやがって。ごちゃごちゃいわずに、すぐにどかせ！」と大きな声で罵倒されました。「古紙回収のやり方は、マンション全体の問題ですから、あなた個人の希望をすぐに聞き入れることはできないんです。私ら管理会社の人間は、管理組合、つまり具体的には”理事長”の指示でないと動けません。それには、理事会で話し合ってもらうことが前提です」と、筋道を立てて説明すると、もっと怒ります。「うるさい！ 客の言うことを聞け！」 この住民、実は、古紙回収の際の置き場となる場所に、時々自分用の自転車を置くため、それが置けなくなるのを嫌がって、こういう文句を言ってきたのでした。共用部分に自転車を勝手に置いてはいけないんですが。
また、「上の階の住民がベランダで布団を干して、叩く為、埃が階下に落ちてきて、私の家の洗濯物が汚れる。マンション内での布団たたきはやめさせろ」という奥さんもいます。この問題は、以前話題になったことがあり、理事会でも話し合われたのですが、その時は「いいんじゃないの、布団叩くくらい」で終わってしまいました。最近の新しいマンションでは、使用細則で禁止しているところもありますが、当マンションの管理規約や使用細則には「布団たたき」は触れられておらず、明確な判断基準はありません。ですから、理事会で指針を決めるしかありません。その理事会で「いいんじゃないの？」で終わったしまったことですから、管理人が上の階の人のところに行って、「だめです。やめてください」とは言えません。しかし、そういうことを苦情主に説明すると、「そんな話、私は聞いてないわ。とにかく、住民が被害を受けて、それを訴えているのに、あんたは何も対応しないの？ あんたの給料は私らの管理費なのよ。高い管理費払ってるのに、管理人が”客”である住民の言うことを聞かないなんて、何なのその態度！」と怒ります。そして、うさばらしのために管理会社に電話して、管理人の悪口を言いまくります。（会社で電話応対した人間が事情をわかっていて、理路整然とこの住民の主張を折ってしまうと、そのあと、「お宅の会社は何ナノヨ！ どいつもこいつも融通が利かないわね！」と再び私に文句を言ってきます。これを「苦情のブーメラン効果」といいます。でも、いずれにしても、うちの「管理委託費」は激安だから、「高い管理費を払って」とは言って欲しくないですねえ）
そして、「このマンションの住民はゴミ出しマナーが最低ね。あんたが毎朝２時間ゴミ置き場の前に立って、監視しなさい」と命令する人までいます。ちなみに、この奥さん私よりもかなり年下です。「いや、私はゴミのためだけに働いているわけではなくて、掃除もしなくてはなりませんし、来客の相手や、事務仕事や・・・・いろいろあるんです。仕事のやり方まで強制されては困ります」と説明しますが、「せっかく私がマンション全体の美化のことを考えてあげてるのに、なによその態度。あたしの親切を無にする気！？」「いえ、お心配りは感謝しますが、とにかく、そういうことは理事長から指示してもらわないと・・・・・・」「なによ、あなた。あたしがおせっかいババアとでも言いたいの！・・・・・・」、勝手に自分で議論を盛り上げて、（ノリツッコミみたい）最後は泣き出してしまいました。それも、ものすごい大きな声で。何人かの住民が「おい、どうしたどうした？」と玄関ホールに集まってきてしまい、これじゃどう見ても私が悪者です。どうやら、この奥さん、ウソ泣きで、私を陥れようと演技したようです。かなり悪質です。（よく、普通の企業でもあるじゃないですか？ セクハラを逆手にとって、触られてもいないのに、「課長がお尻を触りました！ セクハラです！」と訴えて、上司を失脚させようとする、ひどい女子社員が。あれと同じです。女は怖い）
住民個人を相手にする場合、その人の主張に妥当性があり、かつ、すぐにその意見に従った方がいい場合（そのまま放置しておくと危険であるなど）は、管理人の独断で動けることはあります。その場合でも、理事長に事後承諾を得ますが。
ただ、上記の住民のように、自分の自転車が置けなくなるから、古紙の置く位置を変えろ、というのは、いわば、わがままです。変更するということは別の場所を決めなくてはならず、そんなわがままにこたえることはできません。また、布団叩きというのは、日常生活で行なわれる常識的な行動です。「酔っ払って大騒ぎする」という非常識な行動とは違います。たしかに、せっかくきれいにした洗濯物に他人の家の埃やダニの死骸がつくのは許せないかもしれませんが、 もし、苦情主の苦情を聞き入れ、上の階の人に私から文句をいったら、おそらく、「なんで、布団を叩いてはいけないんだ。規則で決まってるのか？ 管理人ごときが、住民の生活に口出しするな！ おまえの給料はなあ・・・・」と反論されるに決まっています。管理人の仕事の要領にまで口出しするのも迷惑です。
管理人は、住民個人に雇われているわけではありません。あくまでも「管理組合」と契約している「管理会社」に雇われている人間です。マンションによっては、派遣だったり、管理組合の直接雇用の場合もありますが、とにかく、住民個人からではありません。個人的に、いうことを１００％きかせたいのであれば、執事なり家政婦なりを雇ってください。それに、「俺の金で給料が支払われている・・・・」と常套句のように言われますが、一人あたりが払っている管理人の人件費などごくごくわずかな金額です。そんなにえらそうにしないで下さい。管理費＆修繕積立金の中で、管理会社に支払われる管理委託費の割合は３割程度で、そしてその中から管理人の人件費として支払われる割合は、その４分の１程度です。「あなたが払ったお金の全部が管理人に渡る」わけなんかないんです。月に１万円払っている人の場合、７００円程度です。勤務日１日あたりにしたら、３０円ちょっとです。たった３０円で、全人格を否定されるようなことを言われるのはつらいです。個人で召使を雇いたいなら、毎月３０万円をダイレクトに私に払って下さい。そうしたら、言う事を聞いてあげますよ。みのもんだが読売テレビで、主婦の悩みを親身になって聞いているのは、「分給５０万円」という高額なギャラをもらっているからです。
とにかく、このマンション、役員はみんなぐうたらだし、理事会で決めた「別にいいんじゃないの？」という結論も、議事録にはっきりと残したわけでもなく、そして、議事録はいつも住民に結果報告されないし、どこに保管してあるかもわからないし、どうしようもないです。でも、私たちの仕事は、指揮命令系統としては、管理組合、つまり代表者である理事長の指示がないと動けないことを認識して下さい。一部住民の都合のためにうごくことはできないのです。それに時給８００〜１０００円の待遇で、難しいことさせないで下さいよ。公務員みたいに時給換算「３０００〜４０００円」（恵まれた福利厚生、恩給を考えれば、これ以上だな）ももらっていれば、バンバン働くべきですけど。
マンションに入居する際に、こういうことをちゃんと勉強してから来て欲しいです。
2006/8
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