管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

シンドラーのリフト
規制緩和 競争 の影響 & 業界の悪習

※2006/6/10に書きました。6/14 7/7追記 7/25追記 8/1追記 8/17 8/25追記



 2006/6頭、東京の港区というところの公営住宅(といっても、23階建ての高層マンション。最近は公営住宅といっても、「イコール貧乏人が住むところ」というわけではないそうで、豪華なものもあります。そういえば、秋田の殺人事件の犯人が住んでいたのも、「町営住宅」とはいえ、広大な敷地に建てられた立派な一戸建てで、びっくりしました。都会なら6000万円はするような豪華な家です。そこに母子二人だけで住んでいたなんて、またまた驚き。そして、もっと驚くのは、この畠山という女性、生活保護を受けていたそうで・・・・。ちょっと待ってよ、真面目に税金を払って生活している我々は、うさぎ小屋に住んでるのに、生活保護を受けてる一家が豪邸に住んでるなんておかしくない? おまけに軽とはいえ自家用車も持ってます。私なんか、車なんかないですよ。だいたい、畠山の両親の家庭は裕福じゃないですか? 「親と同居すると生活保護がもらえなくなるから、別居している」そうですが、こういうのって村上ファンドのやり方同様おかしくないですか? というか、住居費を考えると、この親子、月額30万円以上の保護を受けているのと同じです。それで、携帯に毎月7万円払って遊んで暮らしているわけですか? 私なんか、毎日精一杯働いても、20万円にならないですよ。それで税金も払ってます。報道陣に悪態つくほど元気だし、体は丈夫だし、あんなヤンキー女に税金投入しないで欲しいなあ。なんか合点がいきません)のエレベーターで高校生が挟み込まれて死ぬ事件がありました。この問題、マンション管理に携わる人間にとって、他人事ではありません。

 また、姉歯の耐震偽装事件の中身も少しずつですが、だんだんとわかってきました。行き過ぎた「規制緩和」も原因のひとつのようです。この点も考えてみます。


○この高校生、「自転車とともに、エレベーターに乗り込んだ」と報道されていましたが、このマンションでは、そんなことを許してるんですか? だめなマンションです。自転車は駐輪場に置くものであって、エレベーターに乗せて、自分の部屋の前の廊下に置く物ではありません。規約違反、不法占拠です。管理がなっていません。しっかりルールを守らせなくては。管理側に問題ありです。

○小泉改革の「競争原理」で、役所もずいぶん変わったようです。この住宅のような公共施設でも、「入札」が行なわれ、各設備の管理委託業者もころころと変わっているそうです。「安い費用で済む会社に変える」ことは、たしかにいいことなんですが、質の管理をきちんとしないと、このような悲劇が起きます。
 今回の住宅では、エレベーターの保守管理業者を短期間に2回変更したそうです。そして、このエレベーターが過去に何度も故障しているのに、そのことを最新の業者に引き継いでいなくて、十分な点検保守をしていなかったようです。マンション管理会社も、「安いところへ、安いところへ」と変更するのが”流行”しています。しかし、「バカ安」なところには絶対に落とし穴があります。つまり、手抜きです。「手を抜かないと、そんなに安くできるわけがない」という業者に任せてはいけません。なんでもかんでも、「安ければいい」という考えは危険です。100円ショップのバケツは水を満杯に入れると取っ手が壊れます。これがエレベーターだったら、大変なことです。「人間がやることは最低限のコストがかかる」ということを肝に銘じて欲しいです。たしかに、大手エレベーター業者は「法外な保守点検費用をむさぼっている」のも事実ですが、安すぎるのも問題です。2度の会社変更で、当初のメンテ費用のなんと4分の1までに安くなったそうです。
 今回担当していたSECエレベーターは、ボクシングチャンピオンの具志堅選手をキャラクターに使って営業している会社です。かなり安いです。でも、肝心の「制御盤」に関しては、「製造元に任せていた」とのこと。独立系のエレベーターメンテ会社に頼むのはコスト削減には有効ですが、結局、すべての管理を任せられるわけではなく、一部は製造元に頼まなくてはならないのです。独立業者に任せるのも考え物です。シンドラーのエレベーターが各地で事故を起こしているという情報もつかんでいなかったわけですし、「優秀な業者」とはいえません。

 
○また、もっと問題なのは、前エレベータ管理会社から新エレベーター管理会社への「引継ぎ」です。今回は全く行なわれてなかったようです。マンションの管理会社でも、新旧会社の引継ぎは非常に大事にもかかわらず、うまく行なわれていない例が多いです。というか、組合の役員がよほどしっかりやらない限り、引継ぎというのはうまくいくわけがないんです。旧会社は「うちは、クビを切られた。もう儲ける事は出来ない。もはや、このマンションには義理もヘッタクレもない。汗かくつもりもない。適当に残務処理をすれば、それでいい」と思って、真面目に引継ぎなどしません。また、新会社も「安い金額で受注したから、引継ぎに労力を割くことは出来ない。適当にやればそれでいい」と思ってますから、やはり、熱心にはやりません。
 この結果、旧会社が今までにやってきた、そして得た、このマンションに関する知識や履歴が、いったんリセットされ消えてしまうことがおうおうにしてあります。「組合が熱心で、毎月理事会が行なわれ、活発に論議され、その議事録がきちんと保管されている」「設備の保守管理の書類も、組合側がきちんと保管してある。メンテナンスの記録も整理してある」「設備担当の専門委員会があって、”1年ごとに委員が総入れ替え”ではなく、継続的に運営が行なわれている」のであれば、まあまあ大丈夫かもしれませんが、たいていのマンションは、管理会社に書類管理も任せ切りです。「5年前にエレベーターが故障した」という事実があっても、新会社にそれが引き継がれません。歴史が消えてしまうのです。このように、管理会社の変更というのは、非常に大きなリスクが伴うものであり、組合役員がよほどがんばっていないと、うまくいきません。
 管理会社を変更する時は、一時的なコストがかかるにしても、マンション管理士さんを雇用して担当してもらうとか、みやまさんのようなコンサルタント会社にお願いして、”しっかりと”やってもらったほうがいいです。組合だけで完璧にやるのは無理です。(ろくでもないマンション管理士も多いので注意)


○安物買いの銭失い=シンドラー社
スピルバーグの映画のせいか、シンドラーという名前は「いい人」という気がしたんですが、実際はとんでもないひどい会社みたいです。世界第2位のメーカーだそうですが、世界各地で事故を起こしているようです。また、日本では、後発メーカーということで、「安く売ってシェアを広げよう」としています。会社のHPにも「安い」と書いてありました。
日本でのシェアはわずか1%。しかし、総台数は7000台にのぼり、けして少なくはないです。(分母が大きいのです。社会保険庁殿) そして、今回、マスコミが調べたところ、故障・トラブルは459件もあり、閉じ込め事故も85件もあります。日本では、安売りに重点が置かれ、「自分たちの給料は下げないけど、設備や下請の人件費は下げたがる」公務員のために、公共機関では「最安値入札」で次々と仕事を獲得しているようです。でも、公共機関こそ、「安心できる機械」が必要です。安けりゃいい、というものじゃないです。(おそらく、会社としては、「安い価格で設置して、その後のメンテ料金で元を取る」という思惑だと思いますが)
 それにしても、この会社、腐ってますね。社長は会見を開かないし、下っ端の広報担当は「何も言えません」の繰り返し。おまけに、「個人情報保護」だの「会社の方針ですから」だの、下らん理屈をつけて、「エレベーターの設置リストの公表」を拒んでいます。HPにも会社側の説明文が掲載されていましたが、製品に自信を持っているのか、自分たちの非はまったく認めません。最悪の会社です。訴訟に備えて、非は一切認めないのかな? 外資は訴訟慣れしてるから、謝罪することは少ないです。

○安全第一の原則
今回の事故に限らず、六本木ヒルズの回転ドア事故、JRの脱線事故・・・・・すべてに共通なのは、「大事故の前には、小さな事故が発生している。小さな事故の前にも多数の小さな不具合が生じている」ということです。ヒヤリ・ハットというやつです。そして、「小さな芽のうちに抜本的な対策をとらなければいけない」というのが、安全の鉄則です。しかし、今回のことも、小さな芽を無視した結果です。無視しちゃいけないんですよね。
 マンションの中にも、「これは危ないなあ」というちょっとした不具合がいろいろあります。私は上記原則をわかってますので、逐一、担当フロントや組合理事長に報告しますが、残念なことに、「別にたいしたことじゃないんじゃないの?」「そんな小さなことでこっちの手を煩わせないでよ」「子供のいたずらじゃないの?」と嫌な顔をされることがほとんどです。でも、京都?の少女マンホール転落事故みたいに、責任を追及されても困りますので、必ず証拠の残る文書で報告しています。(相手は、紙での報告は嫌みたいですけどね)

○他社の反応
うちのマンションは国内大手メーカーA社の製造で、そのメーカーがメンテをしています。点検も頻繁にしています。ただ、「点検をした翌日に故障した」なんてことも過去にあり、私は正直信用していません。今回のシ社の事故で、住民から私のほうへ「うちのは大丈夫なのかな? なんかこわいねえ」といった心配の声が多く寄せられています。おそらく全国どこのマンションでも、すべての管理人さんが同様の質問を受けていると思います。普通、これだけ世間で騒がれていたら、他のメーカーも「緊急点検を実施します」とか言いそうなんですが、しませんねえ? 「自信があるからしない」のだったらいいのですが、それならそれで、「居住者各位 当エレベーターは大丈夫です」みたいな、安全宣言をしてもらって、掲示板に貼り出して欲しいんですが、そういったことはまったくありません。高いメンテ料金を払っているのですから、それくらいして、居住者の不安を取り除いてもいいんじゃないのかな? 管理人にばかり負担かけないで欲しいです。なんか、A社の対応もイマイチです。

○公務員に、ちゃんとした仕事は無理
今回のマンションは公営賃貸住宅ということで、普通の分譲マンションやその管理会社のようなものではなく、所轄の公共団体及びその外郭団体が管理主体になっているようです。すでに家宅捜索を受けています。シンドラー社の責任が一番大きいとはいえ、過去に何度も故障しているエレベーターをほったらかしにしていた管理者側も問題があります。特に、エレベーターの保守点検業者を変更した時に、過去の故障情報をきちんと伝達していなかったのは、落ち度です。ほんと、公務員は高い給料はもらうけど、仕事はきちんとしません。どうしようもない連中です。


○防火シャッター
 ついでといってはなんですが、同時期に新潟の小学校で「防火シャッターが突然落ちてきて、子供が挟まれ重傷」という事件も起きました。この種の事件も何度繰り返されることか? はっきりいって、「火事が起きうる確率よりも、防火シャッターによる事故が起きる確率のほうが高い。だったら、防火シャッターなんかなくしてしまえ」と思います。学校というのは広くて避難しやすいし、低学年は下層階が教室になっているため逃げやすいです。実際問題、学校が火事になること(理科室の薬品が燃えるとか)はありますが、死傷者はほとんどでません。危険なシャッターなんか不要です。
 今回の事故もいろいろな要因があります。
@「同型のシャッターで事故が起きていたため、緊急点検が指示されていたのにもかかわらず、それを無視して点検していなかった」・・・これは完全に学校側の落ち度です。当時の校長は懲戒免職ものです。やはり、公務員はだめですね。
A「子供がいる時間帯に消防設備点検を行なった」・・・なんで土日にやらないんだろう? わざわざ子供がいる時にやらなくてもいいでしょう? 無人のほうが点検作業もやりやすいし、学校側にしても「点検員を装って学校に侵入して、子供に危害を加えようとする人間がいるかもしれない」ことを考えると、防犯面からも休日のほうがいいはずです。
B「消防点検員ってけっこういい加減」・・・・我々は実際につきあいがありますからわかりますけど、けっこう手を抜いてますよ。それに、「消防点検費ももっと安くならないか」というオーナー側の要請のためか、「少ない人数で短時間で終らせようとする」傾向が見られます。学校の防火シャッター事故が頻発しているのはわかっているんですから、本当は、シャッターの位置に専門の係員を立たせて安全確保するとかの対策が必要です。点検業者の側も問題があります。
C「いつまでも学校にいるな。家に帰れ」・・・小学1年生は普通、この時間はすでに帰っているはずです。学校に長居するから事故に巻き込まれたんです。授業が終ったら早く帰りましょう。


 なんかとにかく、「規制緩和」「アメリカ型の競争社会」の歪がいろいろなところに出ているような気がします。村上ファンドの「影のオーナー」=オリックスの宮内氏は、規制緩和&アメリカ迎合を強烈に押し進めてきた、小泉のブレーンですが、私は彼のやり方は嫌いです。近鉄・オリックスの球団合併の時のやり方も大嫌いです。マンション偽装もそうですけど、「なんでもかんでも民間」「競争第一」「落ちこぼれはそのまま捨てろ」みたいな考え方は賛成できません。競争したら負ける人が必ずいるんです。国はそういう人のことを考えないといけません。ドミニカみたいなひどいところに移民を送って、そのまま見捨てるような国は、国ではありません。
 


2006/6


6/13追記

「新潟 小学校防火シャッター降下事故」の続報が入りました。なんともまあ、お粗末な結果でした。「スイッチを切ったとしても、同時に3箇所の火災報知器が作動すると、防火シャッターが降下してくる仕組みに最初からなっていた。取扱説明書にも書いてあった。点検業者はそれを知らなかった」との警察発表です。あきれて物が言えません。資格を持った専門家が「取扱方法を知らなかった」ですって、シンドラーの社長も呆れてしまいます。これじゃ、完全な人災じゃないですか? 私が書いたとおり、「点検業者はいい加減」だったわけです。情けない。バカバカしい。
 それにしても、そんな単純な理由だったら、製造メーカーが一言警察に説明すれば、すぐにわかったんじゃないでしょうか? なんで今まで時間がかかったのかなあ?


6/14 追記

 Y新聞で「エレベーター業界 ”密室”体質」という記事が出ています。

 「メーカーは不具合情報を決して、系列以外の管理会社に漏らさない」 都内の独立系保守管理会社の社長はそう明かす。

 私たち業界人にとっては常識ですが、上記発言は事実です。でも、「独立系の管理会社でも大丈夫ですよ」と宣伝して営業をしている独立系会社の社長がこんなこと言っていいのかなあ? 「自分たちには完璧なメンテナンスはできません」と告白しているようなものです。
 国内では独立系の管理会社は50数社あり、全体の1割程度のメンテを行なっているそうです。そして、メーカー系管理会社から独立系管理会社に変更になった場合には以下のような「嫌がらせ」があるそうです。

・元のメーカー系が、エレベーターのかごの上部にある動作点検用のスイッチを取り外す。
・閉じ込め時にドアを開ける専用キーを売らない。
・管理会社に黙ってメーカーが機械を直していくことがある。機種に欠陥があっても公表されることはない。

 

 2002年には三菱電機テクノサービスが独立系管理会社に対して、保守部品の納入をわざと遅らせたり、不当な高値で売ろうとしたとして、公正取引委員会から排除勧告を受けています。

 この業界って、腐ってますね。「坊主まるもうけ」のメンテナンス契約は、すごい収益です。(なにしろ、独立系にすると料金が4分の1になるんだから) そういうありがたい契約を分捕っていく他社を憎む気持ちを、わからないではありません。でも、自分たちの会社が作って設置したエレベーターに愛着はないのでしょうか? わざと事故を起こしたいのでしょうか? 利用者のことを考えているんでしょうか? 私は以前流通にいましたが、「よそで安売りの店ができて、お客さんを大勢むこうに取られた。だから、向こうの店の商品の中に針を入れてやろう」なんてことは絶対にしません。しかし、それをするのが、このエレベーター業界なんです。おかしいと思いませんか? もともと、不当な利益を得るような高額なメンテ料金に設定しているのがおかしいんです。そんなに高額な割には、カゴ内の換気扇が汚れていても、全然掃除しないでほったらかしだし、落書きされたのを消してくれないし、サービス悪いです。
 

 今回の死亡事故を契機に、業界全体の猛省を望みます。「日銀総裁=台湾華僑村上」みたいに、「エレベーターメーカー=メーカー系メンテ会社」のズブズブの関係も是正してください。

 こういう弊害は、マンション管理会社の変更の場合も起きます。マンションを分譲した会社の系列管理会社が、竣工時に自動的に管理を受託し、その管理委託費の高さに悲鳴をあげた管理組合が、安い委託費の管理会社に変更した場合。引継ぎに熱心ではない、どころか、不都合なことを隠します。特に、「建物・設備の不具合があっても、住民に知らせずに、管理会社レベルで握りつぶしていること」が実はけっこうありますが、こういうことは絶対に新管理会社に教えません。表に出ては困るからです。親会社の欠点を子会社が暴露するわけにはいかないのです。
 このため、熱心で真面目な新管理会社が、新たに受託したそのマンションをじっくり調べると、今まで管理組合が知らなかった様々な不具合・不都合・欠陥が次々と明らかになることもあります。


7/7 
 
シンドラーの信用は地に落ちました。今後、日本で商売はできないでしょう。さて、シンドラーと同様、メンテ会社のSECのひどさもわかってきました。先日は、エスカレーターの事故があり、SECの係員が「部品を上下さかさまにつけていた」、という大チョンボが露見しました。ほんと、「安かろう悪かろう」の見本みたいな会社です。大手資本に属さない独立系の会社は、心情的には応援したいのですが、これじゃだめです。大手以上に熱心に完璧なメンテをして、信用を構築していかないと、成長できません。


7/25
 
当サイトからリンクしている「メル住み心地事務所」さんのブログにも書かれていましたが、今回のシンドラーの事件は各所に波紋を投げかけ、大きな教訓となっているようです。・・・・と言いたい所ですが、実際は逆効果を与えている一面もあるようです。

 つい先日、組合さんから依頼された件で、当マンションのエレベーター会社某大手M社に問い合わせする機会がありました。エレベーターのプロだったら、何も資料も見ずに電話口だけすぐに答えられる内容のはずなんですが、「ちょっと調べないと無理です」とのこと。で、ちょうど、2日後に定期点検があるため、「問い合わせの回答は、点検のお兄さんに持たせて下さい」とお願いしました。しかし、点検当日、いつも来るお兄さんは、「そんなこと聞いていません」との返答。こういうこと過去にも何度もありました。「またか。この会社はいつもだめだなあ」と思いつつ、サービスセンターに電話しました。「まだ、答えがまとまっていなくて、明日にでもお答えしますから・・・・」と蕎麦屋の出前みたいな返答。「わかったよ。じゃあ、待ってる。でも、絶対に明日までに回答してよ。組合の理事さんが怒ってるから・・・」と念を押しましたが、それから1週間たっても連絡なし。頭にきて、再度電話すると、「○○(担当者)は昨日から夏休みを取っておりまして、今日は不在です。」とヌケヌケと言う始末。さすがの私も頭にきて、「今ほど、エレベーター会社の信頼が揺らいでいる時はないのに、なんだ、その対応は!! ふざけるな!!」とキレてしまったわけ。(この電話の声を聞いていた住民は、「この管理人の態度悪いなあ」と思ったでしょう)
 どうも、シンドラー事件は、大手エレベーター会社にとっては教訓になっていないようです。むしろ、私が考えるに。

@安売り攻勢をかけて、公共施設の入札に勝ってきたシンドラー社が事実上日本から撤退するため、その分の仕事が大手に戻ってくる。
ASEC(保守管理会社)のだらしなさが露呈してしまい、「独立系のエレベーター管理会社はやっぱりだめだ。やっぱり、製造元が保守管理もしないと」と一般の人が思うようになり、”濡れ手で粟”で儲かる保守業務を他社に取られることが減る。


 
といったことで、大手としては、「シンドラー事件のおかげで、うちらがこれから儲かるようになる。大手による寡占状態が強固になる」と思っているんじゃないでしょうか? つまり、「今回の事件を教訓として、厳しい管理をするように変化する」、というよりも、「これでうちら大手は安泰。ワッハッハ」という感じじゃないでしょうか? もともとルーズだったけど、今後いっそうひどくなるような気がします。やっぱり寡占はだめだなあ。
 
 ”メル”さんのブログでも、「過去の故障・修理の記録をきちんと残さなければダメ」とお書きになっていましたが、うちのエレベーターは、定期点検には報告書がありますが、故障時の来訪には報告書が出ません。当管理人室には「エレベーター保守管理ファイル」というものがあり、そこに書類を綴っていますが、そこには「夜中にエレベーターが動かなくなったために、緊急出動して修理回復させた」といった記録は残っていないのです。以前にも書きましたが、「異常なし」ばかりの定期報告書よりも、異常時の報告書のほうがずっと大事なのに、それがないんです。良い会社とは思えません。



8/1
 別のマンションの管理人さんのところに遊びに行って世間話をしていたら、そこのエレベーター会社大手T社の営業マンがちょうどやってきたため、しばし、シンドラー談義をしました。やはり、大変なことになっているようです。

「ここのところ一斉点検やらなんやらで大忙しで大変でした。やっと一段落しました」
「SECなどの独立系保守会社でやっていたメンテナンスが大手メーカー系に戻ってきている。今、問い合わせの処理で大変」
「シンドラーのエレベーターを入れているところが、”エレベーターを全交換したい”と言ってきている」

 朝鮮戦争の時みたいな特需景気らしいです。ただ、現場は現状のスタッフ数で対応しているため、忙しくてくたびれているみたいです。 

 「シンドラーは日本から撤退するみたいです」という話から発展して、「じゃあ、シンドラーのエレベーター、エスカレーターをおたくT社が保守管理するようになったりするの?」と私が聞くと、「いいえ、それはしません。シンドラーの製品は日本のものとは思想が違うため、怖くて扱えません」と言っていました。やはり、命に関わる製品は、部品の精度も完璧なものを求められますから、シンドラー製の部品もこわくて使えないそうです。「だったら、今、シンドラーを入れているところは、エレベーターそのものを他社のものに交換しないと安心できないということ?」と聞くと、「事件のあったマンションも、全数を交換することが決まりました。その他でも交換の動きが活発になっているようです。昨日もひとつ契約してきました」「え?、近所でもそういうマンションがあるの?」「はい、そうです。まだ、新築間もないマンションなんですが、”命には代えられない””安心して生活するためにはシンドラーのエレベーターを撤去して日本製のものに取り替えるしかない”と、臨時総会を開いて決定したそうです。ただ、まだ、新築同様ですから、エレベーターの交換工事で、修繕積み立て金が一気に消えてしまい、今後の大規模修繕計画の変更を余儀なくされるでしょう。大変だと思います」とのこと。

 姉歯事件で、「建て替え」させられるマンションも大変ですが、シンドラーの不良品のおかげで、大迷惑を蒙っているところがたくさんあるようです。


8/17 追記
 
過剰反応かもしれないけど

 シンドラーの事件のあと、当マンションのエレベーター保守会社(製造元と同じ、大手M社)は、「うちは大丈夫です」という声明文をマンションの掲示板に貼り、住民の不安を取り除こうとしました。
 しかし、先週のこと。わりと近くのマンションで、同じM社のエレベーターで閉じ込め事故が発生し、新聞にも大きく出ました。この新聞を読んだ当マンションの住民は、「よお、管理人さん。大丈夫ですって言っても、同じ会社で閉じ込め事故が起きたじゃないか? 全然大丈夫じゃないだろ!」「うちは大丈夫なの? うちのほうがあのマンションより古いし」・・・・と、苦情・問い合わせがたくさん寄せられました。こういうのの受付って、とりあえず管理人ですから、私が応対しなくてはなりません。(どうせなら、緊急通話装置を介して、エレベーター会社に直接言って欲しいんですけど。そうもいかないな)

 
さっそく、M社に電話したんですが、新聞沙汰だというのに、緊迫感はゼロ。「今回の事故の詳細が判明したら、なんらかの文書を作ってお持ちします」とやんわりと電話を切られました。でも、もう1週間たったのに、何の連絡もなし。こういう対応ってスピードが大事なんじゃないの? エレベーターの昇降のスピードにはこだわるくせに。

 でも、今は社会がエレベーターのことに関心が高いので、すぐに新聞に載りますが、閉じ込め事故って、実際は以前からけっこうな件数があって、「よくあること」のようです。今までは報道されなかっただけのこと。シンドラーのように、「ドアが開いたまま動き出す」というのはありえないけど、ドアが開かなくなること程度は珍しくないそうです。


8/25 慢心? 過労? いずれにしろ問題です

 
シンドラー社エレベーターはいまだに、あちこちで閉じ込め事故やらなんやら発生してます。ほんとどうしようもない不良品質企業でした。さて、今回の事件で「やはり、国内メーカーのほうがいい」「製造メーカーがメンテもやったほうがいい」という論調が出てきたのですが、そうでもないようです。

 世間では、「シンドラーの事件で業界全体が引き締まって、今まで以上にきっちりとしたメンテをやるようになるだろうから安心」と思っているようですが、7/25の追記にも書いたように実際は逆です。大手は慢心してます。また、現場作業員は過重労働でくたびれています。結局、それが「手抜き」「マニュアル無視」につながっています。

 7/24 東京の江東区というところの東芝エレベーター製造・メンテのエレベターで、作業員が点検中に死亡するという事故が発生しました。原因は、機械の不具合ではなく、点検中に作業員が誤ってエレベーターを動かしてしまったことによる人為的なミスです。イロハのイの知らない大馬鹿者です。こんな基本的なミスを犯すとは、東芝エレベーターの信用も地に落ちました。

 大手もダメです。ほんと、この業界、業界全体が腐ってる。やっぱり、ビルメンテナンス業界というのは、埼玉の太陽管財もそうだけど、体質的に腐敗してるのかなあ?
 





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