管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

洗濯物が飛ぶ〜大事故に





 
 ”関東では春一番が吹いた”なんていうニュースをやっていましたが、日本は南北に長く、当地域はまだまだ寒いです。

 さて、このマンションでも、強風が吹くことがあります。特に上層階に行くほどに風の力は強まりますから、洗濯物を干す際は細心の注意が必要です。が、しかし。気を使わない人もいます。

 今日、ある奥さんが管理室にやってきました。「洗濯物が風で飛んじゃった。管理人さん、いっしょに取りにいってよ」「取りに行くって、落っこちたなら自分で拾ってください」「いや、地面に落ちたんじゃなくて、下の階の部屋のベランダに落ちたの」「じゃ、自分でその部屋の人に頼んで拾ってもらえばいいじゃないですか?」「でも、知らない人なんだもん。いっしょに行ってよ〜」「自分で行ってくださいよ。管理人は関係ないですよ」「そんなこと言わないでさあ・・・・」 結局、つきあわされます。そして、私が悪いわけでもないのに、「すいませんが、お宅のベランダに上の階の人の洗濯物が落ちまして・・・・・」と謝罪しなければなりません。これで、洗濯物がシャツとかならいいんですが、女性の下着なんかだと、男の場合、「いや、これ、僕が拾っていいのかなあ」とか、向こうが恐縮してしまいます。とにかく、洗濯物を干す時は、階下に落とさないで欲しいです。

 また、逆に、下の階の人が、「こんなのが上から落ちてきたんだけど」といって、洗濯物を管理人室に持ってくることもあります。この場合、ハンガーなどに引っ掛けて、「どなたか、落としましたよ」と展示しておきます。しかし、ブラジャーなんかだと、展示できず、「女性用下着が落ちてました」という文章を貼っておき、落とし主が来るまで保存しておきます。以前、いちど、なぜか、ブラジャーばかり持ち込まれる、強風の日があり、管理室内が、「下着泥棒の部屋の中かいな?」みたいな状態になったことがあります。ブラジャーなんか、落としたほうも恥ずかしがって、まず絶対に取りに来ません。それに、今はみんな衣服に関しては裕福で、「落ちたら落ちたでしょうがない。また、買えばいいや」と思う人ばかりですから、回収率が極めて低く、「どう処分しようか?」とそのまま保管している衣類がたくさんあります。もったいないです。
 

 洗濯物自体、つまり、衣類だけ落ちる分にはまだいいのですが、先日の騒動はひどかったです。なんと、強風のため、物干し竿ごと吹っ飛んだのです。そして、その"洗濯物満載の物干し竿”が落ちた場所が、マンション前の路上です。けっこう距離があるんですが、ほんとに"飛んだ”ようです。ただ、路上にストンと落ちれば良かったのですが、最悪なことに、道路を走行中の自動車のボンネットに落ちたそうで、それにびっくりした運転者がハンドルを切り損ねて、対向車線にはみだし、対向車とガッチャーン! 

 どちらの車もエアバッグが作動して、車の中の人にはたいしたケガがなかったのは幸いですが、いずれにしろ、街中を騒がす大事故で、救急車やらパトカーが来て大騒ぎ。ガソリンタンクから燃料が漏れ出し、消防車まで出動です。ただ、歩行者にケガ人がいなくて、本当に良かったです。

 実は、この時間帯、ちょうど昼休みで、私は食堂に出かけていたため、サイレンの音には気づきましたが、まさか自分のところの事故だとは思わず、のんきに食事をしていました。
 1時になって、マンションに戻ると、警官やら消防署員やらがイッパイ。住民も大勢が外に出て騒いでいます。警官は、私を見つけて、「あんた管理人か」「はい、そうです」「この物干し竿が落ちて・・・・・・・云々」説明を受けて、びっくり仰天。「ついてはだな、これがどの部屋から落ちたかわかるか?」「いや、急に言われてもネエ。まあ、ベランダを見ればわかると思いますが・・・・」 じっくりと見てみると、物干し竿がなくなっている部屋を発見。「あ〜、○○号室のFさんですね」「そうか、ありがとう。行ってみる」と警官はFさんの部屋へ急行。しかし、Fさん、自分の起こした災難がこれほど大きなことになっていることに恐れをなして、自分の竿だということを認めません。このため、警官は「管理人さん、あの部屋じゃないそうだ。他に心当たりはないか?」「いや、でも、確かに、Fさんのベランダにいつもある物干し竿が今はないです。路上に落ちている竿がFさんのものだと思いますよ。それに、落ちている洗濯物を見ると、子供服もあるし、間違いないと思いますよ」「しょうがない、手当たり次第にあたってみるか、管理人さん同行してくれ」・・・・といった次第。でも、もちろん他の人は「うちじゃない」と言うに決まっています。結局、その日は犯人探しは失敗に終わり、警官も帰っていきました。ただ、「今後、このようなことが二度と起きないように管理人として、全住民に注意を呼びかけてくれ」と警察に頼まれました。

 言われたとおりに、注意書きをすぐに作成しました。

 Fさん、実はいろいろと問題のある人でして、あんまりつっつくと、逆上してキレそうなので、私からはなんとも言いませんでしたが、「お願いだから、自首してくれよ」と祈りました。

 一週間後、事故に巻き込まれた運転者2名(1名はクビにギプス)がマンションにやってきて、「いったい、どこの部屋だ。教えろ!」と凄まれました。まあ、自分には一切非がなく、天から災難が降ってきたのですから、怒りたい気持ちは理解できます。でも、これ以上、トラブルに巻き込まれたくないし、小学校の修学旅行みたいに、下着に名前が書いてあれば別ですが、「自分のではない」と本人が否認する以上、どうしようもないです。「個人個人のベランダの洗濯物のことまで管理していません。また、道路は、マンション敷地外であり、管理会社の契約の範疇ではありません。管理人は関係ありません」と、なんともいやらしい役人みたいなことを言って、逃げました。だって、本当にトラブルに巻き込まれたくないですもん。


 物干竿って、ものによっては、きちんと固定するのもあるらしいのですが、ただ、金具に乗っけているような場合、すごい強風だと飛ぶこともあるようです。飛ばないまでも、片端がベランダ内の床に落っこちることはよくあります。強風の時(または予報であらかじめわかっている時)は、洗濯物は室内干しして下さい。イチイチ面倒見てられませんよ、コッチも。

 



2006/3



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