管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

アンケート 2 恣意的な質問項目





 以前、情報公開の項目で「アンケート」が大事であることを書きました。

 実は、当マンション、以前はほとんどアンケートを実施しないマンションで、密室の理事会でほとんど決めていました。これは、「役員たちのやる気のなさ」だけでなく、管理会社フロントの「そんな面倒なことやりたくない。集計だって大変だ」という意思によるものと想像します。
 私がここに来てから、理事長に、「ちゃんとアンケートやって一般住民の意見を聞いておかないと、あとから理事長が責任を問われますよ」と脅して、少しずつではありますがアンケートを実施するようになりました。でも、事前に十分な情報を与えないのに、「どう思いますか?」みたいな、おかしなアンケートも多く、「なんて答えていいかわかんないよ。資料もろくにないのに」と突っ込まれることもあります。あいかわらず、うちのフロントマンは「私はアンケートは好きじゃない(面倒だから)」と言っていて、理事会側に作成回収集計を任せてますので、ろくなアンケートができません。フロントに任せても、ろくなもんじゃないけどさ。ある意味、「いちおう、みなさんの意見を聞きましたよ」という言い訳程度のものなのかもしれません。

 私の個人的意見ですが、アンケートは重要です。というのも、理事会役員というのは、毎年変わりますし、そのほとんどがど素人です。映画「12人の怒れる男」のように、結論が簡単に覆ることもあります。役員の構成がペット飼い主の比率が多ければ、ペット飼い主に甘い決定をするでしょう。駐車場利用者が多ければ、「駐車場料金が高いよ。値下げしよう」という議案が通るかもしれません。
 このように、年によって、理事会の意見は大きく変わるものであり、「住民の総意を集約する理事会」であるべきことは理想であり、現実ではありません。ですから、住民全体の意見を聞く必要があります。しかし、日本人は自分の意見を言うことは苦手です。「御意見・御質問は管理組合ポストへどうぞ」と、意見を募集するような体制をとっていても、まず投函されることはありません。日本人は、井戸端会議などでは、盛んに意見を言えるのですが、フォーマルな場所ではまったく言えない人が多いのです。管理人にも、「もっと理事会がしっかりしてくれないと・・・・」と愚痴を言ってくる人は大勢いますが、「そういうことは私に言っても無駄ですよ。書面にして理事会さんに伝えないと」とアドバイスしても、絶対に書面にする人はいません。書類恐怖症みたいなものもあるようです。今(2006/3)国会で問題になっている、永田議員の偽メール問題でも、メールが書面になっているために、めちゃくちゃ突っ込まれています。「こういう話があるようなんですが」という質問なら、これほど問題にならなかったでしょう。書面にするということは、「公式なものになる」「証拠が永久に残る」「あとで訂正しにくい」、そういうことで敬遠する人が多いです。

 ですから、「意見を手紙で寄せてください」と言っても、まず出ません。やはり、気軽に書けるアンケートが一番です。でも、アンケートの作り方にもいろいろなテクニック、事情があります。

○「マークシートみたいな選択式のみで、意見を書かせる欄がない」
これは、集計の手間をかけない、という意思が働いています。また、「余計なことは書くなよ」という意味もあります。

○「理事会の望む結果を誘導する設問」
これは、公務員がよくやる手です。下記の「心理」を上手に利用して、役人側の思うとおりの調査結果を作るのです。
具体的には、日本人の「賛成を良しとして、反対を悪しとする」心理を利用します。例えば、「駐輪場の増設工事問題」なら、理事会が増設したいと思っている時は、「増設したほうがいいと思いますか? <そう思う> <そう思わない>」という設問にします。こうすると、日本人の心理として、<そう思う>に丸をつけ、工事案に賛成するように誘導できます。逆に、理事会が工事に反対する立場の場合は、「増設しないでいいと思いますか? <そう思う> <そう思わない>」と設問を作ります。これも、<そう思う>に丸をつけたがりますから、結果として、工事反対者が多くなります。
また、日本人は「はっきりと物を言わない」「意思決定から逃げたがる」性格があります。「<賛成><反対><よくわからない>」という選択肢にすると、<よくわからない>が多いのです。ですから、「賛成者が少ないからやめにします」と持って行きたい案件の際は、<よくわからない>という選択肢をわざと入れ、そこに丸をつけさせるようにします。逆に、あいまいな選択肢、<どちらかというと賛成>というのを加えると、賛成者は増えます。「<賛成><どちらかというと賛成><反対>」という三択(わざと、<どちらかというと反対>という選択肢を入れない)にすると、可決できるのです。
この他、「一番最初の選択肢に丸をつけたがる」という心理もあり、それを上手に使えば、答えを誘導できます。
また、「設問が多い場合、最初のうちは真面目に答えるが、後半になると思考力が落ちてきて、いい加減に答える」という心理もあります。問題の順番を替えることによって、結果も変わってきます。
それから、マンション住民は「お金のかかることに拒否反応を起こしやすい」という面があります。このため、ただ単に「工事すべき」と書くと、けっこう賛成票が集まるのに、「ある程度のお金をかけても工事すべきだ」という設問にして、"お金”という文字を加えると、賛成票が減ります。
 他にもいろいろな手があり、統計学の専門家ならわかっているはずです。


 役人の場合は、上記の統計学的心理作戦以外にも、最初に提示する資料を偽造することもやってますから、タチが悪いです。新空港を作る時も、利用客の予想人数とか発表しますが、ほとんどウソ(実際の何倍かに水増しする)を書きます。まず最初に、「絶対に空港を作る」という前提があって、それに誘導させるようなアンケートをとるのです。環境アセスも、日本野鳥の会にワイロを払って、「タカはいない」という報告書を作らせることもあるそうです。静岡空港もひどい。


 こんなわけで、頭のいいフロントマンというのは、こういうことをある程度わかっていますので、「管理会社にとって都合のいい結果を誘導するためのアンケート」も作れます。ですから、アンケート結果が正しいとは必ずしもいえないわけです。マスコミの世論調査でもよくあることです。




2006/3



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