管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 姉歯事件 とりあえず@ 







ふざけるんじゃねえぜ! 建築業界!

 05/11/24現在の情報で書きます。

 前代未聞の不祥事が発生しました。設計図面の偽造です。地震どころか、そのまま放置していても崩壊の恐れがあるという、なんとも怖い建物がいつくも出来上がってしまいました。黒ひげ危機一髪のタルの中に住んでいるようなものです。いつ崩壊して、中の人が死ぬか? わかりません。

 主犯は。千葉の姉歯一級建築士。一級殺人鬼といってもいいでしょう。人が死ぬのをわかっていながら構造計算書書いたんですから。この男、髪の毛も偽造だそうで、家もボロボロ、ゴミ屋敷。でも車はベンツ。仕事がたくさんあったから儲かったんでしょう。

 今、問題になっているのは「建て替え」「補償問題」です。”つぶやき山内”に、ヒューザーの対応を褒めたのですが、ここの社長、いざ具体的な話になると、「改修も考慮し・・・・」なんてバカなことを言い始めて、最初の声明は、根拠のない単なるパフォーマンスだったようです。褒めて損しました。とりあえず、泣きの一手で国から助成してもらおうと考えているようです。

 とにかく、建物がボロボロなんですから、取り壊して建て替えるしかないでしょう。急いでも2年近くかかります。この間の仮住まいの費用だけでもかなりなものになります。

 今、マスコミがいろいろ騒いでいますが、「恐ろしい」と思ったのは、緊急アンケートをした建築士の約6割が「ほかでもやってるかもしれない」と答えたことです。つまり、姉歯は氷山の一角だということ。となると、全国のすべてのマンションを検査しなくてはならないという、日本列島を揺るがす大事件に発展するかもしれません。

 「構造計算書の偽造をする建築士がいる」
 「その書類の欠陥を見逃す検査機関が存在する(イーホームズ他)。そして、”適正に検査した”などと平気な顔で開き直る」
 「偽造された図面どおりに建設する建築業者がいる。明らかにおかしな建物なのに疑問の声をあげない」

 この図式、なんなんでしょう? もう、頭ポカーんとしてしまいます。

=今までの私たちの常識=

●「建築士がおかしな設計をする」・・・・・これは理解できます。”エレベーターの設置場所が不便なところにあったり”、”住民が実際に住んでからの動線をまったく考えない場所にゴミ置き場があったり”、”なくてもいい場所に照明があったり、なければいけない場所に照明がなかったり””エアコンが取り付けられないように、スリーブ穴があったり””オートロックマンションなのに、フリーな裏口があったり”・・・・・・枚挙に暇がありません。要するに、建築士がバカで、かつ住む人の実際の生活を何も考えていないということです。ただし、すぐ壊れるような建物は作らないでしょう。

●「建築主は表面ばかり重視する」・・・・エントランスだけやたら豪華なマンション多いです。阪神大地震以来、構造のことをアピールするマンションも増えましたが、購入側が表面にこだわることもあり、「見た目豪華なマンションを作りたがる」のは事実です。

●「建設業者の手抜き」・・・・水で薄めたコンクリートを使ったり、指定された性能のものを使わずに粗悪品を使って作ったり、図面どおりに作らなかったり・・・・ これもいくらでもあります。当マンションでも、何かが壊れて修理する度に、修理業者が「なんだこれ? こんな粗悪品使ってるのか?」「これ、図面と違うじゃないか?」「手抜きだ。これじゃ防水できない」など、露見しています。配管なども、図面はまったく信用できない、というのは、この業界の常識です。ある建築業者が「図面どおりに作るわけないじゃないか! 違って当たり前」と開き直ったのを聞いたこともあります。


=知らなかったこと=

●構造計算書の検査が民間委託されていたことは今回初めて知りました。車の車検なんかも民間委託ですし、別に不思議なことじゃないですが、イーホームズのような手抜き行なわれていたのはショックです。「行政側がやれば安心なのか?」と言われれば、それも不安なんですが(なにしろ公務員も腐ってますから)、いくら腐れ公務員でも、ここまでひどい手抜きはしないと思います。

●チェックNPO建築士でもわからない
今回の事件の該当物件を、「竣工内覧会に同行して、不具合をチェックするサービスを有料で行なうNPO」が、実際に同行してチェックしていたことがわかりました。その時、どういう判定だったかというと、「OK」だったとのこと。問題はなかったそうで、「大丈夫のお墨付き」をもらったそうです。この依頼者、今どう思っているでしょうか? 安くもないお金を払った検査で、建築基準法違反の建物を見抜けなかったなんて。このNPO、「構造のことまでわからない」と弁明しています。たしかに、そうなのかもしれませんが、一般消費者としたら、プロに頼んだ以上、「そのくらいわかれよ」と思うのが普通です。

●診断は非常に高価
今回の事件を知った住民が、「うちのマンション大丈夫なの? すぐに検査してもらってよ」と言い出すでしょうから、私もあわてて行政に問い合わせをして、「耐震診断をしてくれる団体を紹介してくれ」と聞きました。そしたら、耐震診断って、100万円以上もする非常に高価な検査なんですねえ。構造部分というのは隠れた部分ですから、非破壊検査の技術が必要でお金がかかるそうです。構造計算書の検査というのは、図面を見るだけですから、数万〜十数万でやってくれるそうですが、問題は、「図面が正しくても、はたして、図面どおりに建築しているか?」ですから、図面だけでは不十分です。でも、100万円以上も出して検査をするのは、総会案件にするべき大きな問題です。



 「一生に一度の買い物」を売る側がこのように腐敗しきった業界であるということは、実に情けないです。わが、マンション管理業界も情けないですが、ハードではなくソフトですから、やり直しが仕事です。しかし、建物は作ってしまったら取り返しがつきません。

 検査・チェックをもっとちゃんとした制度にしなければだめです。「第三者機関をチェックする別の第三者機関が必要」というややこしいことになってきます。今回の事件も「国が補償しろ」という意見が、みのもんたはじめ強いですが、一部の悪者の尻拭いに税金を投入して良いのか、という問題でもあります。だったら、すべての犯罪被害者も補償しなければなりません。

 ほんと情けないです。


トホホ管理人からの提言

 豪華なモデルルームをきれいに見せたり、竣工後に内覧会を開いたりではなく、建設途中に、”こういう鉄骨を作って丈夫な建物を建設しています”といった、工事発表会をしたらどうですか? または、工事期間中は監視カメラを24時間すべて稼動し、建設中の様子をまるまるビデオに残す。このビデオがない建物は認めないといった制度を国が作る、というのはどうでしょうか?

 だいたい、実際の工事の現場では、工事写真というのを残してるのに、それがいつの間にか消えていて、マンション管理組合の手元には来ない、というのもおかしいです。工事に関する書類は、建設会社だけでなく、コピーを管理組合に渡すべきじゃないでしょうか?

 それにしても、いろいろ考えさせられます。マンションというのは、ほとんどが青田売りです。つまり、完成予想図だけ見せられて、まだ出来てもいない建物を買わされる。これも変です。しかし、「完成後しか売れない」としたら、「資金回収が遅くなると経営が立ち行かない」と倒産する業者も出てくるかもしれません。でも、今回の機会に考えなおした方がいいです。

 「ミスを発見しない。早く仕事を終わらせる業者が”優良業者”で、儲ける。人気がある」
 これも、管理人と似てますネエ。規約違反の住民がいても、何も注意せずに見逃す。ゴミも分別違反であっても、別の大きな袋に入れてごまかしてだしてしまえば、いつもゴミ置き場は清潔できれい、ということになり、「ちゃんと清掃をしてくれる、いい管理人」となる。分別違反を注意したり、袋を開けて、再分別する管理人は、まじめにやればやるほど、「うざったい管理人」と言われる。挨拶だけちゃんとやってれば、全体的な評価は高い。 我々管理人の仕事は実は表面に見えにくい、「構造」に関する部分が多いですから、真の評価は難しいです。    

 普通の人は、ベニヤ板の表面に貼られた「化粧プリント」を見ているだけなんです。中身は見てません。困った業界です。



                                                                                                                                                                                                                                                                      このマンションが崩壊したら、周囲の建物も巻き添えを食います。
 












05/11/30
読者からご指摘がありました。転載してご紹介します。

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今回のような、マンション建物躯体基礎に関わるような部分は設計図通り建築しなければなりませんが、建物のそれ以外の部分や配管や電気配線などは、設計図から建築中に変更が常になされます。当然その変更時に建築士がチェックし図面を書き直していきます。
建物完成後、完成された建物図面は「完成図(面)」とも「竣工図(面)」とも言われます。この「完成図」が施工主から建物所有者へ、建物引渡し時渡されます。マンションの場合は、まずはデベロッパーから管理組合へですが、建築時には組合が設立されてしませんので、管理会社が代わりに受取ります。そして、あとで組合へ渡ります。

ところが、問題として
1、「完成図」が渡されていない、あるいは、管理会社が保管したまま
2、設計図から変更された部分が書き換えていない「完成図」=現状の建物とはちがう 「完成図」が存在します(組合保管)
3、組合が「完成図の違い」に気がつくのは、ほとんどが大規模修繕実施時(築10年以上経過)


長くなりましたが、「設計図」と「完成図」のちがいと、その「完成図」と実際建物とちがう問題。かつ、それに組合自身が中々発見できないこと。発見したときは時すでに遅し!
そして、これが多くのマンションで存在する問題であり、まだ、問題にもなっていないマンションがたくさんあると思います。

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 今回の姉歯事件もそうですが、「欠陥・不具合に気がつくのが遅い」「もしかすると永遠に気がつかないかもしれない」という点が、偽造や手抜きを誘発する原因になっています。制度構造上の問題ですね。
 マンション管理もふくめた、建設業全体の体質を変えなくてはいけません。
 




2005/11