管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 住民と管理人という身分の格差〜発狂した管理人 

2014/5




 
 NHK朝ドラの「花子をアン」を見ていると、明治時代の「地主と小作人」という、身分の格差の大きさがよくわかります。

 平成になっても、そういう「身分格差」は現存すると思います。

 この前、こんなことがありました。

 近所の、管理人さん(Aさんとします)が、
発狂したそうです。

 この人のマンションは、「管理人が一人だけ」「清掃員とかはいない」「会社のフロントもほとんど来ない」「新築なので、わりと暇(老朽化で機械が壊れるとか、ないからね)」というところでした。
 以前、私のほうから訪問して、挨拶をして、「お互いに情報交換しませんか?」と声をかけたこともあったのですが、とっつきにくい人で、断られました。そん なわけで、おつきあいはなかったのですが、そのAさんの隣のマンションの管理人さん(Bさん)とは多少のつきあいがあるので、「Aさんが発狂して、クビに なった」ということを伝え聞いたわけです。
 原因を聞いてみると、主たるものは、やはり、「孤独に耐えられなくて、頭がおかしくなってしまった」ようです。
 また、そのAさんは、前職が、わりと地位の高い仕事だったようで、管理人職についてから、「なんで、この仕事は、こんなにさげすまれないといけないのか? 我々はエタ非人なのか?」とも言ってたそうです。これも、「我々管理人は、社会の最下層の人間」ということを自覚しないとやってけないです。

 私も長年管理人職をやっていますが、住民の大多数が、「管理人は俺たちの払った管理費から金をもらっている召使」「住民は、管理会社から見ればお客様」「管理人なんて、誰でもできる簡単な仕事」「くそじじいがやる汚い仕事」・・・・といった感じで、極論すれば、「ホームレスを変わらない」って感じで扱われています。

 住民の中には、私が挨拶しても一切返事しない人もたくさんいます。中には、私が、親子連れに「おはようございます」と、挨拶した際に、子供が「おじちゃん、おはよう」と言い返したら、「管理人なんかに挨拶しなくていいのよ!」と言い放った母親もいました。そういう職種なんです。


 そういう「身分意識」を前提に考えて欲しいのですが、マンション住民というのは、「あの人の自転車の置き方がジャマだ。管理人から文句を言ってくれ」「あそこの部屋のガキは、悪友を連れてきて、夜、玄関ホールで騒いでいる。親に文句を言ってくれ」「隣の部屋のベランダーからうちのベランダに、物干し竿がはみ出してきている。やめさせてくれ」・・・・・・・ こんなふうに、とにかく、ありとあらゆることで、「管理人から注意しろ!」と言ってきます。

 私から言わせると、「その時に、自分で注意をすればいいじゃないか。なんで間接的に管理人をかませてやるんだよ」ってところです。
 でも、まあ、今の世の中は物騒で、「野良猫に餌をやる、エセ動物愛護家に、注意をした自治会長が、刺されて死んだ」なんてことがありますから、自分で直接注意するのが怖い面もあるんだと思います。わからないでもないです。(でも、中学生くらいならまだしも、幼稚園児のいたずらに直接注意できない大人って、情けなくないか??)

 そんなわけで、「管理人から注意しろ」ってことになるんですが、上記のように、「厳然とした身分格差」が存在する状況で、それは無理だと思うのです。

 
「花子とアン」の場合で言うと、小作人の松本明子が、地主のカンニング竹山に「**するんじゃない!」とか注意したら、「バカ野郎、小作人のくせに、地主に逆らうとは!」と殴られますよ。
 マンション内も同じです。実際、その住民がどんなに悪いことをして、「悪いことをしている」と自覚していても、「管理人から怒られる」と、それだけで頭に来るんです。そう、逆ギレです。逆ギレしないほうが珍しいくらいです。

 圧倒的に、自分よりも下の身分だと思っている相手から、たとえ、それが「正論」であっても、そういうのを管理人から言われたら、誰だって頭に来るんです。素直に、「すいませんでした」なんて言う人、いるわけないんです。

 ゴミ出しのルールを守らずに、清掃局に回収拒否になったゴミ袋の持ち主に、「ちゃんとルールを守ってください」って言って、「はい、わかりました」なんて答える人、いません。たいてい、「おめえがなんとかすればいいだろ!」で終わりです。

 ですから、「管理人から注意させよう」と思っても、それは無理です。本当は、理事長とか管理組合役員といった「対等な立場」以上の人から注意させないと効き目はありません。

 そんなわけで、最近は、「管理人から注意しろ!」と言われた際に、「もし、あなたが、私から注意を受けたら、素直に悔いあらためますか? 管理人から文句を言われたら頭に来るでしょう?」と逆に聞くようにしています。そう説明すると、「そう言われれば、そうだなあ。わかったよ。理事長に言ってみる」と納得して引っ込んでくれる人が1割くらいいます。(1割だけかよ!)








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