管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

「ゴミ注意も命がけ」の時代



2005/9
事前実験はウソばっか


(当サイト読者からの情報提供をもとに執筆)

 私はあまりテレビを見る余裕がないため、知りませんでした。ワイドショーで紹介されたそうなんですが、こんな事件があったそうです。

「新しいゴミ分別制度が実施され、非常にゴミの捨て方が面倒になった町でのこと。ゴミの出し方が悪い住民に対して、自治会関係者?が何度も注意をしたら、その住民がキレて、その自治会関係者を刺した。被害者は重傷。この犯人は、”こんな細かな分別やってられるか!”と怒っている。」

 恐ろしい時代です。今後、日本各地で「ゴミ殺人事件」とかも起きるのかもしれません。たしかに、当市の分別もそうですが、「こんな難しいこと、頭の悪い人には無理だろう」「年寄りには無理だろう」というくらい、複雑で難解な分類になってしまいました。
 「わからない」、からと、役所に聞いてみると、対応する職員によって返答が違う、というくらい、市役所担当職員さえ、詳細がわからないくらいの細かい分類なのです。おまけに、市民からの苦情によって、分別方法が当初のものと、微妙にマイナーチェンジしており、その変更がきちんと広報されていない、ということもあり、ますます混乱に拍車がかかっています。にもかかわらず、市長は、「簡単ですよ。缶とビンの区別くらい、皆さんできるでしょ?」などとバカなことを言って、市民をケムに巻いています。「おまえこそ、自分の家のゴミの分別を自分でやったことがあるのか? どうせ、お手伝いさんに全部やらせてるんだろ!」と突っ込みたくなります。
 

 
こういう制度改定が行なわれる時は、事前に実験が行なわれるのが普通です。でも、こういう実験というのは、「できる」という結果が前提にあって行なわれますから、眉唾物が多いのです。
 なにか公共機関の開発が行なわれる時にも、環境アセスメントというのが行なわれますが、実はこれ、調査機関にワイロを渡して、「”問題ない”という結果を出してくれ」と、裏で手を回しています。ですから、環境問題が大きくうたわれるようになる前までは、どんな開発でも、「環境アセスメントの結果は、なにも問題はありませんでした」というお墨付きをえて、開発(=自然破壊)に着手しました。公務員というのはどこまで悪質なんでしょうねえ。
 「日本野鳥の会」という団体がありますが、ここも環境アセスメントの調査機関のひとつです。「野鳥の会なんだから、自然を守ってくれるだろう」、と普通の人は思うでしょうが、ところがどっこい、野鳥の会の以前の代表者は、大手不動産会社の社長でした。つまり、自然破壊の張本人が、自然愛護の仮面をかぶっていたのでした。これじゃ、アセスの結果は、開発者側に有利なものしか出ません。
 (今は自然保護団体ががんばってますので、昔ほどひどい”出来レース”はなくなりました)

 さて、ゴミ分別ですが、これも、市内の数箇所で実験が行なわれ、市長は「どこの実験地区でも”うまく実施できている”という結果が出ました。ですから、全市域で今後実施します」と言いました。正当な論理のようですが、実は裏があります。
 実験地域に選ばれた場所は、「もともと住民のレベルの高い地域」「自治会ががんばっている地域」「大型団地など、組織化がされている地域」、こういったところです。つまり、最初から、「成功する可能性の高い地域」を選択しています。
 そして、いざ実験が始まると、ゴミ収集場所に、毎朝、市役所の職員や、自治会の役員がべったりはりつき、ゴミを出しに来る住民に対して、その場で細かな指導をするのです。また、大型団地では、十数個に分類されたゴミ箱を用意して、解説パネルもわかりやすいものを貼り付けて、ハード面の準備を十分にしてから実験を開始しています。これなら、必然的に、「きれいに分類されている」という実験結果が出るのは当たり前です。一種の「ヤラセ」です。

 しかし、実際問題、全市域に拡大した際に、上記実験区域みたいにはいきません。いくはずがありません。当マンションの地域のように、住民レベルが最悪のところがあります。自治会がまったく活動していない場所もあります。ゴミ分類が細かくなるというのに、回収箱の整備などのハード面は、市側は何もしてくれません。ほったらかしです。啓発ポスターも貼ってくれません。市役所の職員を全ごみ収集所に貼り付けることなど不可能です。うまくいくはずなどないのです。
 せっかく、実験をしても、それは「最初から結果ありき」の出来レースで、市側のやり方の正当性を無理やり押し付けるためのものです。それに、半年も実験を行なえば、その実験区域の住民から十分な聞き取り調査もできるはずなのに、それをやっていません。このため、いざ全域に広げた時に、「これはわかりにくい。みんな間違える」「この品目の回収頻度は少なすぎる」「燃えるゴミが減るんだから、回収回数を減らしてもいい」「飲み物のビンも、薬のビンも、同じガラスじゃないか?」・・・・・・・と苦情や問題が噴出して、役所側がてんてこまいして、密かにおかしなマイナーチェンジをして、その広報が不十分なため、さらに混乱に拍車がかかる、という悲惨な状況になっているのです。しっかりした実験を行なえば、そんな問題は解決済みのはずなのに。恣意的な実験をしたために、ひどい状況です。ほんと、役人はだめです。私なら、市役所職員の3分の1の給料で3倍役に立つ仕事ができます。

 さて、話を戻しますが、自治会役員というのは、「俺たちはお上から十手を預かっているんだ」的意識を持つ人が少なくありません。というのも、役所側は自治会を非常に重要視しているからです。自治会役員を招いてのパーティなども頻繁に行なわれ、接待しています。今のように、”個の時代”になると、住民を代表するものとしては、自治会を利用するしかないからです。なにか開発をする時も、自治会にお伺いをたて、自治会が了承すれば、「住民の理解を得られましたので」と、開発にGoサインを出します。自治会役員は、「俺たちが許可したんだ」と自分がえらくなったような気がします。自治会役員が名誉職といわれる所以がここにあります。特に人間は年をとるほどに名誉欲が強くなります。(高野連といっしょの精神構造)

 詳しい事情は知りませんが、そんなわけで、今回の被害者も、「自分が町を守る警察官だ」「市が決めたことは住民全員が守らなくてはいけない」と思い込んで、厳重に注意をしたのかもしれません。一戸建ての住宅街の場合、マンションのように管理人がいませんから、誰かが注意をしなければなりません。(実験と違って、役人は来ません) 注意しないと永遠にゴミ集積場は汚いままで、そこに面する住宅は永遠に被害者です。
 ワイドショーのコメンテイターは、「細かく注意するほうが悪い」という論調が強かったようですが、たしかに市の制度もおかしいのですが、刺したほうを弁護するなんて言語道断です。誰かが注意しなければいけないのですから。
 (ただ、こういう爺さん連中は融通が利かなくて、「使用済みのサランラップは綺麗に洗って、プラスティックゴミとして出さなければいけない」と頑固一徹に思ってしまう人もいます。「洗うための洗剤・水道・下水道への負荷を考えれば、そのまま燃やしたほうが環境負荷が少ない」ということは考えられないのです。)

 とにかく、これから全国各地でゴミ殺人事件が頻発するでしょう。バカ&姑息な公務員、悪質住民、気負いすぎる自治会役員など、いろいろな問題がからみあっています。小泉君、郵政より、ゴミのほうが大事だよ。

 私たちも、ゴミ袋の中をあけて持ち主を探して個別に注意することをしています。いつかは刺されるかもしれません。危険手当と防弾チョッキの支給をお願いします。(こんな危険な仕事なのに、給料安いなあ。今日もカミソリの刃をそのまま捨てた人がいて、指切っちゃいました)