管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

悲劇のノッチさん
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 深夜のお笑い番組で、オセロの松嶋がしゃべっていた話。
(この娘、天然ボケで非常に面白い。私の御贔屓のお笑い芸人。でも、自分のマンションの住民だったら、管理人はたまらんだろうなあ)

 さて、この松嶋のお友達で、お笑いコンビ「デンジャラス」の「ノッチ」という人がいます。この人、最近離婚したんですが、恥ずかしくて、そのことを誰にも言えないでいたそうです。

 この別れた奥さんというのが実に愛嬌のある人で、住んでいるマンションの管理人さんに対しても毎日、元気な声で挨拶していたそうです。しかし、離婚と同時に奥さんだけマンションから出て行ってしまったため、この管理人さんは「あの奥さんはどうしたんだろう? このところ全然顔を見ないけど」と怪しんでいたそうな。そこへ、だんなであるノッチさんが通りがかり、管理人は、これぞチャンスとばかりに、「奥さん最近見ないんですけど、どうしたんですか?」と聞いたそうです。しかし、恥ずかしがり屋のノッチさん、離婚したことを知られたくないために、管理人の質問を無視して、暗い顔をしながら通り過ぎていってしまったそうです。

 そして、その日の夜、ノッチさんの部屋の前には警官が数名。「管理人さんから通報を受けまして。ちょっと家の中を調べさせていただけませんか?」と、半強制的に家宅捜索されてしまったそうです。捜索しても、離婚して出て行った奥さんが見つかるわけではなく、「いったい、奥さんはどこにいるの?」と、警官が詰問すると、ノッチさんようやく観念して、「いや、実は離婚しまして・・」と真実をやっと話した次第。このノッチさん、警官が来た時にすぐに言えばいいのに、ひととおり捜索させるまでずっとだまっていたそうな。
 
 彼はほんと面白い人で、海外旅行の際に、むこうで入国手続きする時に、「アイム デンジャラス」と言って、捕まってしまったそうです。
(デンジャラスはコンビ名) そりゃ、捕まるわな。

 ところで、本題です。この管理人さん、正義感でやったんでしょうけど、ちょっと越権行為です。そこまでしちゃだめでしょ。
うちのマンションだって、夫婦の片方がいなくなるなんてよくありますよ。「奥さんが別の人に入れ替わる」なんてこともあります。家庭内のことは本人も話したがらないし。相手が無視したからといって、犯罪に直結して推測するのも短絡過ぎます。管理人が無視されるのなんてしょっちゅうだしね。たとえ犯罪が本当に起きていたとしても、部屋の中で何が行なわれているかまでは、管理人の仕事の範疇外です。

「管理人室の前を、無理やり引きずられて女性が連れ込まれる」といった光景を目撃したのなら110番するでしょうけど。

 でも、「離婚した」とは言わないでいいですけど、「家族の一人が出て行った」とは伝えて欲しいです。家族が半分になると、電気や水道料金がガクンと減るので、水道局の検針員などから、「この部屋、何かありましたか?」と聞かれるのです。



2005/5