管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

「意味のない」掲示物にも、意味があるのです


2014/2





 時々、掲示物に関しての、「お叱り」を受けることがあります。

 例えば、「ペットの飼育マナー」に関する注意書きのこと。
「こんな注意書きを貼ったって、ペット飼い主なんか全然見ないんだから意味ないよ」
「該当者が見たって、どうせ、悔い改めるわけはないんだから、貼ったって意味はないよ」
という苦情が来ます。そして、「無駄なことをするな」と怒るわけです。

 そりゃ、私だってわかってますよ。ペット飼い主の悪質さは。こんな「エレベーターの中でオシッコをさせないで下さい」とか注意書きを作ったって、本人は屁でもないわけで。
 その他、居住マナーに関する「お願い」とか「注意書き」も、たくさん掲示しますが、そのたびに、「そんな連中は、掲示板なんかもともと読まない。だから、掲示物を作っても無駄なだけ。やるんだったら、直接、当事者に注意しないと」というお叱りを受けます。

 「効果がない」ってのはわかってます。「直接、当事者に注意しないとだめ」ってのもわかってます。でも、うちの管理組合の役員さんは、誰一人、「注意をしに行く」人がいないじゃないですか? 組合さんがちゃんと動いてくれれば、こっちだって、こんな掲示物を作らなくても済むんです。


 さて、このように「意味のない」ことに思える掲示物ですが、実は、「意味はある」のです。

●苦情を寄せてきた「被害者」に対して、「苦情を無視していませんよ。いちおう対応をしましたよ」というアピールになる

苦情を受けた側が何も対応しなかったら、苦情主も怒ります。たとえ、役に立たないことであっても、いちおう、「対応はしました」という証拠になります。
また、管理会社としても、「仕事をしました」って弁解ができます。
苦情主にしても、「これは、いくら苦情を言っても、蛙の面に小便だろうなあ」ってことがわかっている場合があり、とりあえず、誰かに「言いたいことを言う」ことでストレスが発散される場合もあります。どんな形にしろ、「対応の動きをしてくれた」ってことは、苦情主にとっては、うれしいことなんです。

●「こんなことがあった」ということを、他の住民に知らしめることができる

「東棟のエレベーターの中で犬がオシッコをした」ってことは、お知らせしない限り、西棟の住民には何もわかりません。でも、同じマンション内で起きたことですから、全住民が知っておくべきことです。そういう知識がないと、「ここの、ペット飼育者の会は、実は何も機能していない」ってことに気がつきません。
大勢の人が知ることによって、少しではあるものの、マナー違反者への圧力になります。

●記録が残せる

掲示物はワードファイルで作成してますから、そのデータが残ります。データがあれば、あとで、いろいろと調べる際に参考になるわけです。

●外部の人に知らせることもできる

掲示板というのは、住民だけでなく、訪問者や関係業者も見ることができるものですから、そういう人に対して、「いちおう、このマンションは、こういう苦情に対して、ちゃんと対応してるんだな」という印象を与えることができます。(ただし、このマンションの恥をさらすことにもなるので、痛し痒し)

というわけで、意味のないことでも、実際は、意味があるんです。しかしまあ、こういうふうに「対応」をしても、それをまた怒る人がいるんだから、管理人は何をしても怒られるという、損な役目です。トホホ。