管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 痴呆??  鍵 交換魔 



  
 
<その一> 
鍵交換魔

 老人男性の一人暮らし世帯。最初はわからなかったのですが、どうやら痴呆のようです。
 「管理人さん、玄関ドアの鍵を交換したいんだが、業者を紹介してくれ」「はい、いつもよく来るのはここですが」と、鍵を交換しました。(ここでいうカギとは、錠前全体のこと。本来は管理会社の仕事ではない)

 1ケ月後、同じ人がまた管理人室に現れて、「管理人さん、玄関ドアの鍵を交換したいんだが、この前の業者をまた呼んでくれ」「え? でも、先月交換したばかりでしょう? どうしたんですか?」「いや、なんか、あの鍵じゃ不安なんだ」「でも、国産じゃ一番高級な最新型ですよ」「うるさい、とにかく呼んでくれ!」「は、はい」

 同じ業者を呼んで、また別の鍵に替えました。その業者さん、帰り際に「あのお客さん、頭ちょっとおかしいんじゃないのか? 被害妄想かもしれないよ」とのことです。たしかに変です。理事長に話を聞くと、「あ、あの人ね。以前も”空き巣に入られた”とか騒いで、結局何も盗まれてなかったんだよ。その後も何度も”泥棒に入られた”とか”誰かが、ドアノブをガチャガチャする”とか騒いで、そのたびに警察呼んで。いまじゃ、あの人が110番しても警察は無視するそうだよ。組合でも、対応しないことにしてあるんだ」とのこと。アチャー、常習犯だったんですか。(前任者から聞いてないよ) 完全な被害妄想です。今は、警察呼んでも無駄なんで、鍵に対象が変わったようです。

 こういう人を相手にするのは苦労です。それも一人暮らしは困ります。ひどい言い方ですが、どこか施設に入って欲しいです。もしくは、親族がきちんと面倒見てください。(隣県に息子さんがいるそうです)

 その翌月また来ました。「鍵屋を呼んでくれ」(自分で店の電話番号知ってるはずなのに)。「いい加減にしろ」と言いたい所ですが、住民はお客様ですから、従いました。呼びました。でも、今度は鍵屋のほうが怒り出しました。「そりゃ、鍵の交換は儲かるからうれしいよ。でもね、こっちだって職人だよ。1ヶ月しか使っていない新品同様の鍵を取り外して捨てるなんて事は、いやだよ。鍵作った人に申し訳ないよ。今回は断る」と、帰って行ってしまいました。この男性、警察からも鍵屋さんからも見捨てられてしまいました。

 「これだけ言われれば、この人もあきらめるだろう」と思ったのですが、
「管理人さん、別の鍵屋呼んでくれ」だって。私も匙投げたいです。徒歩歩。

 

<その二> 鍵なくし魔

 この方も老人の一人暮らし。この人は、外出するたびに鍵をどこかになくすのです。「管理人さ〜ん。鍵なくしちゃったんだけど、管理人室に届いていない?」「ないですよ。警察には届けました?」「うん、届けたけど、まだ連絡ないの。落としてもすぐわかるようにって、娘が大きな鈴をつけてくれたから、落としたら気がつくはずなんだけどね〜」「もっと、よくカバンの中探してみたらどうですか? じゃ、私は玄関前の掃除しますんで・・・   あれ! 鍵が落ちてますよ。鈴ついてますよ、この鍵!?」「あ、それよ。よかったわ」 みたいなことがしょっちゅうある人なんです。

 別の日は、どうしても見つからないし、私の夕方の終業時間がすでに過ぎてしまっていたので、緊急手段として、私が隣の家のベランダ越しに室内に入ったこともあります。(上のほうの階のため、ベランダ側のサッシに鍵をかけていない) この人、とにかくしょっちゅう鍵をなくすんで、合鍵屋の常連です。でも、合鍵からまた合鍵を作ると精度が落ちるため、ここのところ、「もう作れないね」と断られているそうです。

 つい先日は、「散歩にいって帰ってきたら鍵がないの。どうしても見つからないの。それに今日に限って、サッシもきちんと閉めちゃったし。しょうがないから、鍵屋さん呼んで開けてもらって欲しいんだけど」「わかりました。呼びましょう。でも15000円くらい取られますよ。いいですか?」 ということで本職を呼んであけてもらいました。「あ〜よかった。これで部屋に入れる。ほっとしたわ。」「でもね、奥さん、なくした鍵って、最後の一個で、部屋の中にはもう合鍵ないんでしょう? 開けたのはいいけど、閉められないよ。どうするの?」「そうよねえ。どうしましょう? まあ、とにかくあとで考えるわ。まず、鍵屋さんにお金払わないと・・・」と、財布をあけたら、「あれ! 鍵あった。なんで、財布の中になんて入れたんだろう??」 ですって。今度は鈴はありませんでした。残業までしてつきあった私&鍵屋、腰が抜けました。

 後日、また来ました。先日の二の舞は困るんで、「ちょっと管理人室に入って下さい。カバンの中とか、ポケットの中とか、きちんと全部調べましょう」と、万引きを逮捕したコンビニの店長のように身体検査です。でも、出てきません。「しょうがないね。また、鍵屋さん呼んでよ」「はい、呼びましょう。それしかないですね」 呼びました。「え? また開けるの? 2回目だと、痛んで、もう錠前使えないかもしれないよ」「けっこうです。今度は鍵全体を交換するそうですから。うちのマンションに適合する錠前を何種類か持ってきて下さい」
 そんなわけで、鍵全体を交換して新しいものにしました。
 その翌日、「なくしてもいいように。合鍵10本作ったわ。管理人さんも、3本持ってて」ですって。「管理人は鍵は預かりません」(この人に限っては預かったほうがいいような気がするけど)



<その三> 
粗忽夫婦

 以前、ピッキングが話題になった時のこと。
 警察や役所が「ワンドアツーロックがベスト」とか宣伝するものですから、補助錠を取り付ける部屋がたくさんありました。その中で、Cさん夫婦(30代)は、「2個より3個のほうがいいだろう」と、今ある鍵の上下に補助錠をつけて、万全の防犯体制にしたそうです。私も巡回の時に気づいていました。「すごいなあ、3個か」
 ある日、Cさんの奥さんがやってきて、「鍵が変なのよ。どうしても開かないの? 鍵屋さん呼んでくれない?」とのこと。「どうしたんですか? 何が変なんですか? ちょっと見させてください」と部屋のほうへ。
 見たら、この部屋、鍵が3個ある部屋だったんです。奥さんは、私の前でも鍵を開けたり閉めたり、何度もいろいろやります。「どうやっても開かないのよ」「奥さん、これって、鍵多すぎないですか? どれかを開けたつもりで、実は閉めてるんじゃないですか? ちょっと鍵貸してください。私がやってみます。」 ドアに耳をつけて慎重に音を聞きながら、鍵を回転させました。こうすると、カンヌキ部分が飛び出たのか引っ込んだのか、ある程度わかるんです。ゆっくり、3個の鍵をあけると、見事にドアは開きました。

 奥さんによると、「主人が面倒がって、時々、1個しかとか2個しかとか、鍵をかけないことがあって、そんなときはわかんなくなっちゃうのよ」とのこと。「でもね、奥さん。自分の部屋の鍵なら、右に回せば開くとか、左に回せば開くとか覚えてるんでしょう?」「そんなのわからないわよ」

 たしかに、3個も鍵があると、開閉の組み合わせは8通りあります。そのうち1通りしかあきません。一度、こんがらがると、訳がわからなくなるのも道理です。

 このご夫婦、その後は「真ん中の鍵しか使わないことにした」そうです。たしかにそれが賢明かも。見た目3個あれば、泥棒は敬遠しますから、脅しだけで十分です。




 マンション生活はいろいろありますよ。飽きませんね。疲れるけど。


2005/2


テレビカメラ付きのインターホンに交換する住民もけっこういます。便利みたいです。