管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

賃貸契約




  このマンションは分譲マンションですが、所有者が別の人に貸す、いわゆる賃貸部屋がいくつかあります。

 先日、賃貸契約に関する画期的な判決がありました。「利用中に自然に磨耗した物の復旧費用も借主側に負担させる」という契約書を、”不当”と判断し、「このような契約自体が無効。貸主は、借主から徴収した敷金を返しなさい」という、この業界では画期的な判決でした。

 以前はこのような悪質な不動産屋や貸主が多く、いろいろとトラブルになっていました。私も昔賃貸マンションに住んでいて、そこを出るときに、「クロスの張替え、床の張替えに○十万必要になる。敷金を充当するだけでも足らない。○万円払え」と言われて、疑問には思いつつ、仕方なく払ったことがあります。あとで、「住んでいることによって当然生じる汚れ、消耗などの復旧費は借主が負担するものではない。当然、賃貸料に含まれているものだ」という解釈を知り、地団駄を踏みました。おまけに、この修繕費が”相場よりも高い”、つまりふっかけた値段をつけていたこともわかり、頭に来ました。また、それ以前に、ガス給湯器が故障した際に、「修繕費は借主が払え」と言われて払わされたこともありました。これも本当は貸主負担でした。騙され続けていたわけです。(電球などの消耗品は借主負担です) 今は、こういった基準の指針が国から示されており、敷金をぼったくられることは少なくなったのですが、賃貸契約の中に、「自然に消耗したものでも・・・云々」の条項を入れることによって、「この契約に納得してサインしたのだから払え」という悪質業者が依然存在し続け、問題となっていました。

 (それにしても、このサイトでも不動産業者の悪質さはしばしば話題にしてますが、まともな業者というのはいないんでしょうかねえ? ほんと業界全体が腐っている)

 今回のこの裁判は、こういった悪質業者も排斥することができる素晴らしい判決です。というか当たり前なんですけどね。

 ところで、このように借主を擁護する体制が整ってきたのにもかかわらず、いまだにトラブルがあります。原因は借りるほうの知識不足です。そう、私のときと同じです。

 賃貸部屋居住者Eさん。 「管理人さん、給湯器が壊れたみたいでさ。お湯が出ないんだよ。自分で業者呼んで修理しなければならないのかなあ?」 「何言ってるんですか、Eさんの部屋は賃貸だから、オーナーに言えばいいんですよ。そういった設備の故障はオーナーの負担ですよ。」「え? そうなんだ。知らなかった」

 同じくHさん。「管理人さん、アルミサッシの閉まりが悪いんだよ。自分で業者呼んで修理しなければならないのかなあ?」 「何言ってるんですか、Eさんの部屋は賃貸だから、オーナーに言えばいいんですよ。そういった設備の故障はオーナーの負担ですよ。」「え? そうなんだ。」

 といったことがけっこうあるのです。みんなお人よしというか、無知というか。特に玄関ドアは、廊下側が共用部分、室内側は専有部分という、ややこしい所有分類なので、ドアの不具合の修繕費用をどのように分担するかは悩むところなんですが、いずれにしろ、賃貸入居者が負担するものではありません。
(もちろん、「通常の使用」というのが前提なので、「賃貸契約にペット禁止と決めてあるのに、それを無視してペットを飼い、悪臭を染み込ませて、それを除去するのに、20万円かかった。その費用を払え」というのは、貸主側の正当な要求として認められます。)

 こうやって私に聞いてくる人がいるということは、何も知らずに修繕費用を自腹で払っている人もいるのかもしれません。やはり、知識というのは大切です。それにしても、今回の判決、15年前に出して欲しかったなあ。そうすれば、30万円ぼったくられなくてもよかったのに。30マンといえば、今の私の2か月分の給料だよ。トホホ。


2004/12
契約書はよく読みましょう。