管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 漏水 ?  油漏れ?  漏油 石油ストーブの話も


2014/1記

 

 冬。寒いです。

 大震災の時に、「停電」「計画停電」にあった当地域では、「エアコンが使えなくて寒かった」「石油ファンヒーターが使えなくて困った」という経験があり、その後、昔ながらの普通の「石油ストーブ」を買い求める人が増えました。

 換気の問題を置いておいて、コストだけを考えると、エアコンよりも石油ストーブのほうが安いですから、アベノミクスで庶民の経済が困窮している今、石油ストーブに切り替える人が増えているのです。

 これで困ったのが、管理人である私。冬場になると、共用廊下上に「石油のポリタンクが放置されている」ことが多くなったのです。家人が留守の間に、灯油の配達業者がやってきて、灯油が満杯に入ったポリタンクを玄関扉の前に置いていくのです。
 可燃物というか、爆薬に近いものを、廊下の上に置きっぱなしにする神経がわかりませんが、とにかく、見かけるのです。一回、組合さんにも「禁止したほうがいいんじゃないですか?」と提案したことがあるんですが、当マンションでは、その他のいろんな品物が廊下上に置かれており、それとの兼ね合いもあって、役員の中でも、そういう「使用細則違反」をしている人がいて、理事会として「禁止のために、何か動く」にはいたりませんでした。

 

 さて、枕はこのくらいにしておき、本題に入ります。

 ある日のこと。午後の巡回に行こうかと思って管理室を出た私のところに、5〜6人の住民があわててやってきました。「どうしたんですか?」
Aさん「なんかねえ、さっき帰ってきたら、家の中がすごく灯油臭いのよ。でも、うちは、石油は使ってないし」
Bさん「Aさんの部屋からなのかな? 石油の臭いが外に出ていて、廊下全体も臭いのよ」
Cさん「うちは、Aさんの部屋の一階上なんだけど、Dさんの部屋の前が石油臭いのよねえ」
私「いったい、なんなんでしょうねえ? こわいですねえ。とにかく、関係しそうな皆さんの部屋を訪ねてみましょう」
ということで、一軒一軒回ってみました。そして、どうも、やっぱり、「灯油」の臭いに思えたので、メガホンを使用して、「火気を使わないで下さい」と大きな声で広報しました。

 その後、誰が呼んだのかわかりませんが、消防車まで出動してきてしまい、大騒ぎになってしまいました。消防士といっしょに、いろいろ調べてみたのですが、どうやら、原因は「Dさんの部屋ではないか?」ということになりました。

 「Dさんの部屋で灯油が漏れて、それが、階下のAさんの部屋にまで漏れ落ちてきている」という見立てなんです。たしかに、Aさんの部屋では、天井から石油が落ちてきているのです。テキサスじゃあるまいし、勝手に石油がわいてくるわけもないです。消防士は「これは石油に間違いない」というし。

 そのDさんは、あいにく留守で、携帯電話も、緊急時の連絡先も知らないので、連絡のしようがありません。

 消防士側も、火事が起きたわけでもないし、「本人に無断で、Dさんの部屋のドアを壊してあけるわけにもいかない」ということで、何もできません。ポタポタ落ちる石油の量もさほどではなく、ほとんど落ちきったのか、時間の経過とともに、その量は少なくなるし・・・・

 というわけで、消防士はいったん帰り、私は、「Dさんが帰宅するまで、残業」「Dさんの部屋の周辺に滞在し、タバコを吸って廊下を歩く人に徹底的に注意する」「引火の可能性のある近距離の部屋の人には、しばらくの間、一切火気厳禁ということで了解してもらう」ということになりました。
 それから、いろんな貼り紙を製作して、あちこちに貼り付けて、非常に忙しかったです。

 午後7時頃、Dさんが帰宅しました。ここは女性の一人暮らしです。すぐに消防署を呼んで、いっしょに、Dさんの部屋を訪問しました。
 そして、事情が判明しました。

「Dさん宅には、大型犬がいる」
「Dさん宅は石油ストーブを使用している」
「その犬が、灯油が入ったポリタンクに体当たりして倒したらしい」
「蓋をきちんと閉めていなかったポリタンクから灯油が漏れ出し、廊下は灯油だらけ」
「それが階下のAさんの部屋にまで浸透し、天井から浸み落ちてきた」

ということだったようです。これで、いちおう、原因がはっきりしました。

 そして、私は近隣の部屋を回り、事情を説明しましたが、そこに、Dさんはついてきません。あきれたことに、この人、一切謝らないのです。「私が悪いんじゃない、犬の責任だ」ですって? あきれはてましたよ。
 だいたい、このDさんは、入居の際に、まだ子犬だった「大型犬」(なんか変な表現だけど)を「ペット規則の体長制限にパスしている」と、詐欺みたいな申告で入ってきた人です。うちの規則の不備(「成犬時の大きさ」という文言を入れてなかった)を突いてきたのです。

 まあ、これで「灯油である」ことは確定しました。とにかく、寒い冬ですが、DさんとAさんの部屋に関しては、ドアやベランダの窓を開けてもらって、漏れた灯油を乾かしてもらいました。

 この夜は私も、なんか心配で、帰宅することもできず、結局、管理室に泊まりました。掲示物を増やして、引火事故が起きないようにして、かつ、夜間も何回も巡回しました。

 しかしまあ、こんな狭いマンションで大型犬を飼うなんてなあ。非常識極まるよなあ。それに犬を飼うのなら石油ストーブはやめて欲しいなあ。

 とにかく疲れました。

 翌日は、「あんな騒ぎを起しておいて、なんで、Dさんは謝罪しないのよ。管理人から謝らせるように言ってよ」と私が怒られる始末。牧伸治じゃないけど、「あ〜あ、やんなっちゃった」だよ。