管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 自治会 2 会議に出席しました 


 私の赴任当時、当地区の自治会の会長は、ちょくちょく当マンションを訪れ、私と話なんかもしました。高齢の方でしたが、活発に活動されていました。アルミ缶回収や古紙回収でも先頭になって動いていらして、私も微力ながら協力させていただきました。

 しかし、その方はすぐにお亡くなりになってしまい、そのあとを継いだ新会長さんとは面識もありません。自治会の情報もあまり入らなくなってしまいました。「やる気のない人に代わってしまった」「前の会長が突然死したために、引継がほとんどできずに、また、前会長はなんでもひとりでやってしまう人(悪い意味ではなく)だったために、他に頼りがいのある人を育成せずに終わってしまったせいか、現在、自治会がうまく機能していない」などのため息が聞こえています。

 実際、2年前に、当マンションが大きく関わる道路工事案件が市から提示されたのですが、その「住民説明会」に当マンションから誰も出席しなかったために、反対意見を言うことができず、自治会では「賛成」という決議になり、行政の思うがままに工事が行なわれ、その結果、マンション住民が景観被害を被る事態になってしまいました。この説明会の開催は、たしかに事前予告掲示物もあり、「見ないほうが悪い。出ないほうが悪い」と言われればそれまでなんですが、なんか、控えめな小さな文字の掲示物ですし、ただ、市から配布されて掲示しただけで、「おたくに関係しますよ」といった管理組合へのアドバイスもなく、わかりにくいものでした。中の議案も大きなものがひとつ書かれていただけで、それに付随する当マンション関連の事柄は書かれていませんでした。あれじゃ、管理組合が気がつかなくても無理はありません。

 なんか、その後、町の自治会と当マンション管理組合の関係があまりよろしくないようです。そんななか、今度は近くの公園で「ホームレス対策も兼ねた改修工事」が計画され、その説明会が開かれることになりました。管理組合では以前の轍を踏むまいと、「理事長、今度はちゃんと出席して、意見を述べろ」とハッパをかけられた理事長が出席することになりました。しかし、今期の理事長さんは気の弱い人で、人前で批判したり意見を述べることが苦手な人です。そんなわけか、どういうわけか、「あのさ、管理人さん、いっしょに説明会に出席してくれない?。管理人さん、ホームレスのこととか、公園でのペット問題のこととか詳しいでしょ」と要請されてしまいました。たしかに詳しいんですが。 「会社のほうで残業OKの許可もらったからさ」と押し切られ、結局出席することになりました。

 結果的には出席してよかった気がします。市の計画どおりにすると、当マンションが被害を受ける可能性がある案でした。理事長にアドバイスして、改善点を述べさせました。

 ところで、この説明会、「自治会組織というのはどういうものなのか」勉強するいい機会になりました。いままで、前会長と面識はありましたが、その他の役員は誰も知らず、新会長の顔も知りませんでしたから。
 説明会には自治会の役員が来ていました。出席者は近隣住民なら誰でもいいのですが、結局は自治会役員しか来ません。それもわずかな人数です。行政としては、コソコソと広報し、わずかな参加者で説明会を開催し、そこで、自治会長の賛同を得ることで「付近住民の賛成が得られた」ということにして、計画を進める算段のようです。説明会に大勢集まっては困るようです。役人のやることは汚いです。

 
自治会といっても、地域住民の総意を代表する組織とはとても思えません。
 
 集まったのは全員じいさんばあさんだけです。中年以下の若い人は我々と地元消防団の青年くらいでした。老人は経験が豊富で、過去の経緯にも詳しく、もちろん、いいこともたくさんありますが、老人だけ集って総意とは思えません。孫とかいる三世帯居住ならわかるんですが、話を聞く限り、ほとんどが老夫婦、もしくは単身家庭です。公園を実際によく利用する母親世代の声は出ないのです。
 説明会の流れも納得いかないものでした。司会は自治会長です。会長がなんでも仕切ります。「質問ありませんか?」と聞くと誰も手を挙げない。しょうがないので、私が質問しました。そうしたら、あとからあとから質問が出ます。口火を切るのを遠慮しているようでした。そして、最後に意見をまとめる段階になると、「会長に任せます」「私も会長に任せます」「同上」「同上」・・・・。なんなんでしょうね。ここは北朝鮮なんでしょうか? 「ちょっと待って」と遮って、理事長にマンションの代表者としての意見を述べてもらいましたが、我々が出席しなかったら、たいした議論もなく、「すべて、会長に任せる」となっていたでしょう。その会長は当マンションを訪問したことなど一度もないような人なのに、「一部反対意見が出たようだが、この地域では90%以上の人が、この案に賛成している・・・」と断言していました。200世帯超の当マンションに対して、何も意見を聞いた事がないのに??? 唖然デス。役人からしたら、やりやすいでしょうね。自治会長が賛成さえすれば、GOサインなんですから。(だから、なにかにつけて自治会長連中を集めたパーティを開くのかな)

 もちろん、自治会の役員に若い人がなりたがらない、会合にも若い人は参加しない、など、老人しか集らないような組織にしている地元住民にも非があります。しかし、老人会が地域を牛耳るような組織は、地域の代表とは言えないんじゃないでしょうか? こんな組織だから、「赤十字の寄付は5万円以上集めろ」とか、任意の寄付なのに強制的に命令してくるのだと理解できました。

 自治会の組織率は100%ではありません。入っていない人がたくさんいます。マンションの場合、便宜的に管理組合が自治会費を強制徴収(というか、管理費から出してしまう)してしまうため、表面上100%参加ですが、「自治会なんか関係ない」という人が大勢います。本人の意思を確認せずに、マンション住民=自治会員としてしまうのも、問題ありです。そういえば、日本の神社神道の信者数って、日本人口全員だそうです。ホンマかいな?

 行政としては便利な組織なのかもしれませんが、現代では自治会の性格は変質しており、「自治会=住民の総意」とするには無理があります。
 ほとんどのマンションでは、事務的な面を考慮して、管理組合の役員の中から、毎年数名を自治会担当に選んでいますが、本来組合と自治会はまるっきり別個のものであり、このような運営も問題があります。(昨年の「管理業務主任者」資格試験の問題でも、”組合が自治会の業務を行なうことは間違いである”とする問題がありました。実務面では、間違いではないので、回答に困った人が大勢いたそうです)

 無報酬で尽力されていることには敬意を表しますが、プロ野球界もそうですが、一部の老人だけですべてを決めてしまうのはおかしいと思います。野球界も行政も、もっと情報を広く公開すべきです。地域密着の大事な説明会の出席者が12人だけだなんて、地域人口の千分の一に過ぎません。そんなので「住民側はOK」だなんておかしいです。

 (私個人としては、自治会活動を相当量手伝っているのに、まったくの無報酬、マンジュウのひとつももらったことはありません。それなのに、その労働に対して市からの報償金が自治会に支払われています。そして、役員だけでの飲み食い(茶菓代と表記)に使われます。なんかなあ、納得できないなあ。前会長は「いつもありがとうね」と言ってくれたけど、現会長は何の挨拶もなしだからね。今回の説明会でも、向こうからは何の言葉はなし。なんか、バカにしてるなあ)


2004/9