管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

2013/12記

見て見ぬ振り 〜 自分を守ること

映画「マンデラの名もなき看守」を見て、尼崎監禁事件などのことも関連して思うこと (今回は長編です)





 2013/12  南アフリカのネルソン・マンデラさんが亡くなりました。

 

 マンデラさんのことは、詳しくはないのですが、クリントイーストウッド監督の映画「インビクタス 負けざる者」を見て、この中に出てくるモーガンフリーマン演じるマンデラさんの姿や言動から、だいたい、どんな人なのか、概要は知っていました。映画の中では、主役の、マットデーモンが、マンデラさんが収容されていた、ロベン島の刑務所跡(現在は観光地になっている)を見学するシーンもあります。

 とはいえ、この映画の中に出てくるマンデラさんは、大統領になってからの姿であり、反アパルトヘイトで戦っていた時代ではありません。

 マンデラさんが亡くなり、ツイッター上では「インビクタス」の話題も出ましたが、「”マンデラの名もなき看守”がよかったよねえ」という声が多く上がっており、正直、この映画の存在はこれまで知りませんでしたが、さっそく、DVDをレンタルしました。

 この映画の主人公は、マンデラさんが収容されていたロベン島の刑務所で「看守」(当初は、手紙や電話の検閲係)として働いた「白人 ジェームズ・グレゴリー」さんです。マンデラさんなどの現地黒人の言語である「コサ語」を理解できたために、マンデラさんら「黒人指導者」の監視として、送り込まれたのです。この人が書いた本を原作とした「実話」です。
 ですから、この映画は「白人視点」で描かれています。通常ですと、「迫害を受けている黒人視点」で考えられることの多い「アパルトヘイト」ですが、この「白人視点」というのが珍しく、ある意味、発想の転換を強いられました。

 グレゴリーさんは、奥さんと子供2人でいっしょに、ロベン島の中にある「官舎」で暮らしています。ですから、この「家族」も主人公の一人になります。ここで、奥さんの口を借りて、「アパルトヘイトの必要性」が語られます。
 「人種隔離をしないと、富は皆、黒人に奪い取られ、白人が貧乏になる」「白人女性はみな黒人に強姦される。殺される」・・・・・などなど。一種の「白人側の一方的なエゴ」に聞こえるのですが、この主人公家族(奥さんも美人だし、子供たちもかわいい)に感情移入してくると、「こういう論理も、ある程度は正当性があるものだなあ」と思わされてしまいました。

 映画では、その後、「黒人親子が、町で、白人警官に殴られて、親子が引き離される」場面が出てきます。グレゴリーさんは、それを見ても「見て見ぬふり」しかできません。そこでもし助けに入ったら、今度は自分たちが白人社会の中で孤立し、「差別される側」になってしまうからです。でも、子供は純真ですから、そのシーンを見てショックを受け、父親に「なんで助けなかったの?」と責めます。
 グレゴリーさんは、その後、マンデラさんとじかに接することで、徐々に「反アパルトヘイト」になっていくのですが、そのせいで、他の白人から差別され、「家族を殺すぞ」と脅されたりします。実際、事件の真相ははっきりしていませんが、脅迫のあと、息子を交通事故でなくします。
 最終的には、マンデラさんが釈放されるところで、映画は終わります。涙なくして見られない感動作です。


 「アパルトヘイト」というのは悪いことなんですが、この映画を見て、一方的に「すべて悪い」とは言えなくなってしまいました。「アパルトヘイトを維持しようとした白人側にも、それなりの理由があったのだなあ」、と思ったわけです。

 翻って、わが日本の実情を見ると、今、安倍政権がやっていることも、一種の「アパルトヘイト」なわけです。「金持ちだけいい思いをする社会を作る」「貧乏人は死ね」という差別社会です。これも、「金持ち」(今の日本では、公務員も特権階級のひとつに入ります)が自分たちの身分を守るためにやっている政治です。
 映画では、刑務所に収容されている黒人指導者たちが出す手紙や、受け取る手紙に容赦ない検閲が課されますが、今の日本も「秘密保護法」が可決され、これから、貧乏人側には、厳しい言論統制が行なわれることでしょう。
 
 実際問題、当HPにおいても、「公務員や政府に対する批判」を多く書いているページが、某筋からの圧力によって、削除を強制されました。おかげで、2013/12現在、このHPはボロボロの状態です。
 
 12/13にはこんなニュースもありました。(東京新聞)

 埼玉県越谷市議会は十二日、辻浩司市議(38)=民主党・市民ネットワーク=に「反省を求める決議」案を賛成多数で可決した。辻氏は、特定秘密保 護法案の慎重審議を求める意見書案を市議会に提出しようとしたが、「自民、公明の不当な反対で阻止された」と、短文投稿サイト「ツイッター」に投稿。激怒 した自公両会派が「反省」を要求した。自公の対応に市民からは批判の声も上がった。

 辻氏は法案が衆院で可決されたのを受け、今月二日に「法案の強行採決に反対し、慎重な国会審議を求める意見書」案の提出を市議会に申し出た。自公が「法案は国会で審議中であり、緊急性はない」などと反対し、提出は見送られた。

 辻氏が三日にツイッターで自公の対応を「不当だ」と批判したため、自公は「看過できない」と十一日に辻氏の反省決議案を提出。採決は十二日午前一時過ぎにずれ込んだ。

 傍聴席で採決の結果を見守った約三十人の市民からは、自公への怒りの声が渦巻いた。

 介護士の男性(60)は「意見書案は、自公が推進した特定秘密保護法に反対するような内容だったから握りつぶされたのだろう」

 別の男性(61)は「辻さんのツイッター発言程度の発信もできないなら、言論がどんどん封殺されていく。特定秘密保護法の施行後の日本の社会を先取りしているようだ」と憤っていた。


 こうやって、庶民にとっては「物言えぬ社会」が構築されていきます。

 また、今話題になっている「尼崎監禁事件」に関しても、近所の人たちは、騒音被害とか受けていたのですが、「注意すると、報復が怖いから、何も言えなかった」と、沈黙していました。そういう「沈黙」が犯罪を増長させてしまいます。
 いまや、「電車の中で強姦犯罪が行なわれていても、周囲の乗客は見て見ぬ振り」という、おぞましい時代になってしまいました。

 当マンションでも、「夜中に、地元の高校生グループがマンション内に入って、玄関ホールで宴会をやって騒いでいる。管理人がなんとかしろ」という苦情の投書が来たりしますが、これなんか、「自分で発見した時に自分で注意しろよ」と個人的には思うわけですが、たしかに、今の子供は、殺人も平気で起しますから、何をされるか怖くて「注意することなんかできない」のかもしれません。でも、「言いたい」わけで、それが、マンション管理人にぶつけられるわけです。(面と向かって注意しなくていいから、こっそりと、警察に通報するくらいのことはしてもらいたいなあ)

 今、管理人に対する苦情とか要望の多くは、「現場を見たのなら自分でその場で言えばいいじゃん? なんで、言わないで、あとで管理人に文句を言ってくるんだよ」と思うことばかりになりました。「口に出せない大人」「注意できない大人」ばかりなんです。
 でも、現実問題、「野良猫に餌をやる人に注意をした、地元自治会の会長が、刺されて死んだ」なんていう事件が起きるわけですから、皆さんが臆病になるのは無理もないです。

 でも、「管理人なら注意してくれるだろう」っていう考えも間違いです。こっちだって、そんな「危険」な仕事できません。そんな危険に見合う給料もらってません。それに、正義感で注意しても、こんなことが起きる場合もあります。

 こうやって、どんどん、「見て見ぬふりばかりする人間が増えていく」社会になっていくのです。

 我々がガキの頃に、「町に必ず一人はいた」という「ガミガミ親父」が復活してくれないかなあと、切に思うわけです。

(なんたって、こういうのを取り締まるべき、警察が、自ら犯罪者集団になってるんだから、救いようがない。性犯罪なんか、ほとんどが公務員によるものだし)

 やな渡世だなあ〜