管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 注意する 


 管理人として、「やりたくないけど、やらなければいけないこと」、それは、マナー違反住民を注意することです。

 これがけっこうあります。注意されて喜ぶ人などいませんから、損な役回りです。なかには、息子の悪行に対して、「あの子、そんな悪いことやってたの? ごめんね管理人さん、あたしからビシっと言って、二度とやらせないから、安心して。迷惑をかけたお宅ってどこ? 今からすぐに謝りにいくから教えてちょうだい」なんていう、厳しい、立派な母親も極稀にいます。そういう場合は、注意した効果があります。それから、「ステレオの音がうるさい」など、「そんなに隣室に響いているとは思わなかった。今後注意します」と素直に謝る「迷惑をかけているとは思わなかった。悪気のないケース」もあり、これも比較的簡単に解決します。また、「ゴミ出しマナー違反」など、「ばれなきゃいいだろう」と思ってやる違反行為も、「証拠はちゃんとありますよ。名前入りの請求書が入ってましたから、あのゴミ袋があなたのものなのは確かです」と証拠を突きつけられると、「すいませんでした」と苦々しい顔をしながらも非を認める場合が多いです。

 しかし、「駐車禁止だとわかっているのに駐車する」「タバコのポイ捨て」「ペット犬の敷地内での排泄」など、悪いことだとわかってやっている確信犯の場合、なかなかこちらの注意など聞いてくれません。特に賃貸に悪質なのが多いです。部屋に行っても居留守を使って無視します。話すらできません。話しても、「おまえなんか、俺たちの払った管理費で暮らしてるんだろう! いわば俺たちは客だろう。客に向かってその態度は何だ!」と開き直る輩がいます。また、こっちは私一人でも、向こうは家族全員5人くらいが出てきて、全員が声をそろえて、「そんなことくらいいいじゃない」「うるせえんだよ、いちいち」「黙ってろ、って相手にいっておけよ」と反論してくる場合もあります。これでは多勢に無勢、勝てるわけはありません。

 管理会社としてできるのは、「注意する」ところまでです。完全に是正させる義務はありませんし、不可能です。

 管理人を注意係として利用したい気持ちもありますが、どうしてもマナー違反を止めさせたいのなら、やはり組合が動くべきです。組合が管理の主体なんですから。理事長一人だと、「なんか嫌だなあ。おれ、嫌われ役は嫌なんだ。あとから嫌がらせとかされないかなあ。うちだってここに長く住むつもりだから、波風は立てたくないなあ。管理人さんなんとかしてよ・・・」と弱腰な人が多いです。「よーし、私がビシッといってやる」なんて威勢のいい人なんかいません。

 でも、こういう時こそ、理事会役員が結束して行動すべきだと思います。理事長一人だと、どうしても弱いのは仕方ありません。だったら、人数で勝負しましょう。最低で3人、多ければ多いほどいいです。役員全部(当マンションでは20人)が大挙して、その悪質住民の部屋に数度に渡って押しかければ、向こうもビビリます。人数が多ければ、理事長一人だけ逆襲されることもないでしょう。向こうだって同じマンションに住んでいるんですから、「これ以上悪行三昧繰り返していると、自分がひどい目にあうかもしれない」と思います。
 「言っても無駄」とあきらめたり、「悪行住民のベランダにゴミを投げ捨てる」などのコソコソした反撃などせずに、全員で協力して、ことにあたることが肝要だと思います。とにかく、人数が多いほうが勝ちです。暴力団を追い出したマンションも、住民全員(正確にはマイナス1戸)が運動に加わったからこそできたのです。
  


2004/4


あそこのおばちゃん、マナーが悪いんだよ。
(子供に言われるのはけっこう効く)