管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

 落書き 



これも多くのマンションで困っている問題だと思います。「小さな子供のたわいもない落書き」から「卑猥なもの」「大人同士の悪口、けなしあい」など、いろいろなものがあります。どれも管理人と清掃員が消します。油性ペンで書かれるとしんどいです。それでも薬品を使ったりして、なんとか消します。しかし、先端の硬いもので削って書いたような落書きは消せません。ずっと残ります。みっともないです。

 私が赴任した当時、変な落書きがあったのでご紹介します。それは、近所にあるラーメン屋のものです。「おいしいラーメン 珍々軒(仮名) 出前迅速」という文です。これが、掲示板の掲示物などの紙の余白に書かれるのです。何か掲示するたびにすぐに書かれます。毎回筆跡が同じなので、同一人物によるものと思われます。まあ、紙は最後は捨てるので、「親孝行の子供が、親のために宣伝しているのかな。まあいいか。」と、さほど気にしていなかったのですが、これがエスカレートしてきました。集合ポストの名前札に書かれる被害があったのです。そして、エレベーターの扉に油性ペンででっかく書かれました。(縦に70cmくらい) もう我慢できません。

 この時、いつも来る郵便配達員に聞いてみたら、「あ〜、あのラーメン屋の落書きですか。町中いたるところにありますよ。ひどいもんです。みんなよく黙っているなあ」とのこと。
 私も昼休みに近所を散歩してみると、あるわああるわ。そこらじゅうです。自治会の掲示板にも、電柱にも、よそのマンションのゴミ捨て場にも、蕎麦屋の看板の隅にも。ひどいのは会社の玄関の表札にも。被害にあった人に聞いてみると、「そのラーメン屋に聞いてみても、”うちじゃない、知らない”って言うし、書いた現場を見たことはないし、ほんと困ってるんだ。」という話。
 念のため、警察に被害届を出し、犯人を捜してくれるよう依頼しました。警察曰く「これは、精神異常者だなあ。 珍々という言葉に異常に反応するんじゃないか?」などと、トンチンカンなことを言っていました。(ホント、警察はあてにならない) ところで普通、落書きというのはけなすものです。「ラーメンまずい」というならわかりますが、「おいしい」、これは完全に宣伝です。宣伝となれば、犯人は明らかです。

 そう、そのラーメン屋に乗り込みました。「うん、あの落書き知ってるよ。いろんなところにあるね。でも、うちで書いたんじゃないよ。そんなことするわけないじゃない。うちだって被害者だよ」という返答です。「でもね、ご主人。誰かが書いたとしても、自分の店の名前が落書きされて、その結果、町中の人が迷惑しているなら、責任を感じて、消してまわるんじゃないの? お店をやっているなら、普通そうするでしょう? それが近所つきあいってものじゃない?」と私は聞きました。「そんなの関係ないよ。俺が書いたんじゃないんだから」 どうも怪しいです。だいたい、他人が、自分と関係ない店の宣伝をわざわざ何十もの場所にしょっちゅう書くわけがありません。見つかった時のリスクも大きいです。「落書きなら”まずい”とか書くよ。これは宣伝じゃないの。本当にあなたたちが書いたんじゃないの?」と聞くと、逆上してしまいました。それも家族4人が一斉に。「うるせいな。おまえ、営業妨害だよ。出て行け!」(店の休憩時間だったんだけど)と、すごい剣幕で追い出されました。

 さて、その後ですが。店に直接苦情を言ってから(プラス「警察に被害届を出したから」とも言っておきました)、この落書きパタリとなくなりました。ということは、・・・言わずもがなでしょう。ご想像に任せます。とにかく困った人たちです。いくら不況でも。

(しかしまあ、この町の人たちは、それまで誰も警察に被害届を出さなかったのだろうか? 「誰かが出すだろうから、オレはいいや」とか思ってたのかな? まあ、どっちにしても、町中の目立つ場所に書くまくってるんだから、警察の巡回で警官が気がつくはず。それを放置するって。警察の怠慢もひどいなあ)


2003/4/1