管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 賃貸部屋(=外部居住オーナー)への割り増し管理費



2013/11記

 以前、このページで「現に居住しておらず、自室を賃貸にしている、外部に住む、区分所有者」に対しての「割増管理費」のことをちょっと書きましたが、その後10年を経過し、状況が少し変わってきましたので、今回、また書きます。

<2010年 最高裁で画期的な判決が出た>

大阪のNマンション。不在所有者のみから「協力金」(1世帯=2500円)を徴収することを決めた。これに対し、第三者に部屋を貸している一部の不在所有者が拒否したため、組合側が支払いを求め大阪地裁に提訴した。

最高裁で「管理組合の運営を巡り、不在所有者に対し一定の負担を求め居住所有者との不公平を是正しようとしたことについては、必要性と合理性がある」と判断し、協力金は適法と認める判決を言い渡した。これにより、不在所有者側の敗訴が確定した。

第三小法廷は、「居住所有者のみが組合の役員となってマンションの保守管理に努め、不在所有者はその利益のみを享受していた」と 指摘。その上で、「管理組合の業務や費用は、本来、組合員が平等に負担すべき」と言及し、金銭的負担で不公平の是正を図ることは合理的と認定。その上で、 上乗せ金額が管理組合費の15% とさほど高額でないことや、大半の不在所有者が支払いに同意していることなどを考慮し、「不在所有者が我慢すべき限度を超えているとは言えない」と結論付 け、支払いを行っていない不在所有者側に未払い分を納めるよう命じた。


こういう判決が出ています。これは、マンション管理業界内では「大事件」でした。国のお墨付きが出たわけですから、今まで、「訴えられたらどうしよう?」と二の足を踏んでいた管理組合にとっては、「やったぜ、ベイビー」的な朗報でした。

私も、この考え方には賛成です。
賃貸にしている住居は、事実上、「管理組合役員になることがない」です。つまり、「強制労働をしなくてもいい」という特権が与えられているわけです。(「強制労働」という考え方は好きじゃないんだけど、よく、こう比喩される)
これは、甚だしい「不平等」です。

また、管理の実務者から言わせてもらうと、賃貸の部屋というのは、「マナーの悪い、管理組合に非協力的な、賃借人が居住することが多く、管理の手間が余計にかかる」という現実があります。又、事務的にも、「賃借人と区分所有者の両方に通知しないといけないことがある」とか「総会開催資料などは、高額な送料をかけて、外部居住者所有者の家に送らないといけない」といった、「実際に、紙代、コピー代、切手代、封筒代などの事務経費がかかる」という面もあります。
加えて、現実問題として、「賃貸にしている部屋は、管理費等の滞納の率が高い」(当マンションだけかもしれないけどね)という事象があります。外部に居住していると、「理事会の席上で滞納者の氏名を公表されても、痛くも痒くもない」という点から、滞納に関してルーズになるのではないか? と私は考えています。

また、管理組合活動だけではなく、地元自治会の活動(例:年末の「火の用心」の見回り活動とか)にも、外部居住者は参加しませんし、賃貸で居住する人も、本当はその人も地元の自治会会員扱いなんですが、「私の部屋じゃないですから」と、そういう自治会活動にも参加しません。(そういう労苦的なものには参加しないものの、賃貸入居の人は若い家族持ちが多く、地元の子供会活動で、「なにかをタダでくれる」というイベントには積極的に参加するんだよなあ)

まあ、とにかく、「不平等である」「経費が余計にかかる」というのは事実です。ですから、外部居住組合員に対して「割増管理費」を徴収するのは「いたって当たり前」だと考えています。新幹線の「指定席」と「自由席」の料金が違うのと同じくらい「当然のこと」ではないでしょうか?

さて、実際に、割増金を徴収する際のことですが、いろんな方法があると思います。

「管理費を10%増しにする」・・・これは部屋の広さによって、もとになる管理費が違いますから、割増金の金額も部屋の広さによって異なることになります。

「全戸一律の”負担金”を徴収する」・・・今回の裁判の例のように、「一戸=毎月2500円」とか定額にするものです。書類の郵送料とかは、部屋の大きさによって変わるものではありませんから、私としては、この「定額」のほうがいいと思います。

次に、その金額ですが、今回の裁判は、「管理費が8500円」のマンションでの「2500円の割増金」でした。私の感覚では、正直、「比率としてはちょっと高すぎるかな?」という感じです。だから、提訴されたのかもしれません。これが「1000円」だったら、みんなが納得して払ったかもしれません。
私の感覚は、「実際に余計にかかる事務経費」のことも勘案していますので、「管理費が1万円だとして、10%=1000円〜15%=1500円の割増」ってところが適当ではないか? と思います。管理費が2万円だったら、「2000円〜3000円」でいいと思います。

マンションは、今後も、高齢化が進み、「役員のなり手が減る」という事態になると思われますから、この「割増金」を財源に、「役員になった人への、活動報酬」を制定すべきだと思います。そうやって、役員のなり手を募らないと組合運営ができません。

なお、2010年には、国の指針も変更になり、

「実際に住んでいるかどうか」を条件から外し、部屋の所有者の配偶者や親族、第三者に貸している所有者も借り主も対象にする。

という方針が発表されました。もちろん、これはあくまでも指針・見本なんですが、こういうお墨付きが出ていますから、これを根拠に、各マンションで、管理規約を変更して、「賃借人を役員にしてもいい」ってことに変更しても良いのです。
(そこまでは、いかなくても、少なくとも、「区分所有者は実は同じ町内に住んでいる」なんてことはよくあることなので、近所に住む場合は、役員になってもらって、いいのでは、と考えます)

私が考えるに、賃借人が役員になれば、その部屋の「外部居住オーナー」は、「協力金を支払わなくていい」ってことになりますから、その場合は、「役員に就任して、組合活動をしてくれれば、賃借料を値引きする」ってことになってもいいと思います。借主にしても、「家賃が安くなるんなら役員をやります」って人がいるかもしれません。

マンションは、このように、「柔軟に」やっていかないといけないと思います。実際、毎年、役員のなり手を捜す苦労は並大抵のものではないですから。