管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 賃貸部屋 


 マンションに関することでよく問題になるのが賃貸の部屋。つまり、オーナーが別のところに住んでいて、自分の部屋を他人に貸しているケースです。 ワンルームマンションなら最初から当然多いですし、ファミリーマンションでも、立地条件にもよりますが、年が経過するごとに徐々に増えていく傾向があります。(※最初から「賃貸用マンション」として建設されたものではなく、分譲マンションの話です)

 管理する側から正直に申し上げて、賃貸の部屋は悩みの種です。ワンルームマンションみたいに、全室ほとんどが賃貸だと、逆に、管理会社が好きなようにできて、ある意味楽なんですが、「一部賃貸」というのは困ります。

 当マンションも約2割の割合で賃貸の部屋があります。築20年以上のマンションとしたら普通でしょうか。さて、なぜ賃貸が困るかというと。

理事会役員にならない・・・普通、理事会の役員というのは「区分所有者」です。賃借人は所有者ではないため役員にはなれません。本来なら、別のところに住んでいる所有者がなるべきなのですが、「現に居住する組合員に限る」という規定なので、就任要請ができません。賃貸部屋が多いブロックでは所有者住民が少なく、輪番制だと「Aブロックは5年に1回、しょっちゅう役員の仕事がまわってくる。Bブロックは20年に1回でいいのに」という不平等が発生します。また、「住民全員で草刈作業」などの行事に、外部オーナーが参加することももちろんありません。

・通信の手間がかかる・・・所有者が外部にいるということは、総会の通知も「ポストに入れて、はいOK」というわけにはいきません。封筒に入れて、相応の切手を貼って、わざわざ郵送にしなければなりません。掲示板に掲示した連絡事項も当然読むことはありませんから、大事な連絡事項は、手紙や電話などによって、伝達しなければなりません。「空き巣が増えたので、補助錠の設置を希望する方は管理組合までご連絡下さい。まとめて申し込んで割安な料金で工事してもらいます」のようなことも、いちいち所有者に伝えなければなりません。また、漏水事故が発生した場合など、緊急に工事をしなければならない時にも、賃貸居住者の了解だけで工事にとりかかれません。オーナーの承諾も必要です。このように手間も経費もかかるため、マンションによっては、外部オーナーの場合、管理費を高く設定しているところもあります。(当マンションは同じ)

・ルーズ&無関心・・・やはり、実際に住んでいなくて離れたところにいると、自分の所有物であっても無関心になります。総会に出席することはほとんどなく、委任状も督促しないと提出しない。管理費の滞納(うっかりミスが多い)も頻発。重要なアンケートも返答なし。賃借人に対し、管理規約をみせることもしない。などなど、組合運営上は困ります。「その部屋の管理に関することは、一切不動産屋に任せているから」と何にもしないオーナーもいます。無責任です。不動産屋がしっかりやるわけなんかないのに。

・賃借人もルーズ・・・借りているとはいえ自分の部屋として住んでいるのですから、もっとしっかりしてもいいと思うのですが、賃貸部屋の住民は総じてルーズ&バッドマナーです。「掲示物を見ない」「回覧を見ない」「消防点検・雑排水管清掃などで部屋の中にはいらなくてはならない場合も留守」「ゴミ出しマナーが悪い」「何の許可もなく塾を開いて、苦情が殺到し、あわてて閉鎖した」「子供のしつけが悪く、他住民に迷惑をかける」などなど。「自分の所有物ではない。いずれ出るんだから」という気持ちが、生活態度をルーズにします。

・ペットが多い・・・仲介の不動産業者が悪いのですが、「賃貸物件でペットOKは珍しい」ために、賃貸で入ってくる人のほとんどは犬猫を連れてきます。「規則を厳密に守れる場合のみ飼育可」なんですが、守れる人は現実には少数です。

・転入転出が多い・・・当然のことなんで文句は言えませんが。転入転出は引越し作業、粗大ゴミ出し、書類手続きなど、いろいろと煩雑なことが多いゆえ、管理人サイドから言うと「面倒」です。


 ちなみに、当マンションでは、賃貸入居がある際は、私が独自に作成した「生活ガイド」と役所発行の「ゴミの出し方」(外国人の場合は各国語版)、「管理規約冊子」を必ず配布します。(それでもきちんと読んでくれる人は少ない) 管理人室に挨拶に来た場合は、実際に敷地内をまわって案内もします。最初に、「このマンションは何事もしっかりしている」と印象づけておかないと、ますますルーズになってしまうからです。



2003/6

新婚さんはとりあえず賃貸かな?