管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 押し売り 


 
 押し売りや悪質なセールスがなくなりません。当マンションでも困っています。(私の住むマンションも同様。どこにでも出現しています)

 当マンションは築20年超ということもあり、子供が独立して出て行き、老夫婦のみが住む部屋も少なくありません。老人は恰好の標的です。独身女性も危ないです。そして古いマンションは狙われます。

 「各部屋を訪問しての営業は禁止」となっているため、日中私がいる時は、気づけばやめさせています。しかし、目が届かないこともあります。夜間休日はやられ放題です。苦情が1件でもあれば、すぐに「騙されないで」と掲示物を作成し、居住者に注意を促しますが、敵も言葉巧みです。掲示を見ない住民もいます。そして、ひっかかってしまう人もいます。

 最近多いのは、「水質検査に来ました」「風呂場から漏水していませんか」「換気扇のフィルターを交換しませんか」などです。「市役所のものですが」「水道局のものですが」「管理組合さんに依頼されまして」などと、平気でウソをつく者もいます。
「市役所のほうから来ました」(市役所のある方角から来た、という意味)と、微妙にウソにはならない表現をする者もいます。怪しげなボランティア団体が寄付を集めに来ることもあります。

 特に水道関係は強引で、とにかく部屋の中に入ろうとします。「このマンションは古いですから、いつ漏水事故が起きるかわかりませんよ。もし、起きたら、水が下の部屋に漏れて、多額の賠償をしなければなりませんよ」「点検だけなら無料ですから」と言って、中に入ってきます。そうなるともうダメです。点検の結果がどうであろうと、「やっぱり、漏れてますねえ。バスルームごと交換しないとだめですよ」と話を持っていきます。水質に関する押し売りは、「水が汚いですねえ」と浄水器を売ります。完全にマニュアル化されています。

 こうやって、不要なものを高いお金で買わされます。ただし、完全な詐欺行為の押し売りは減少し、今は合法的に儲けます。クーリングオフなどされないように、法外な料金は取りません。相場の3〜5割程度高くして売るのです。通常の料金がいくらなのか知らない素人なら「そんなものなの? ちょっと高いわね」くらいで、怪しみません。

 そして、1軒でも工事の約束を取ると、横並び集団心理を利用して絨毯爆撃営業をかけます。工事前は、「騒音や振動をさせてご迷惑をおかけしますと思いますがよろしく・・・」と、挨拶のふりをして実は勧誘します。工事当日も、「すいません、廊下にいろいろ物を置いて・・・」とお詫びを装いながら勧誘します。工事後は、「○○さんの家で工事をさせていただいたものです。漏水の心配もなくなり、安心ですし、きれいになって気持ちよいとおっしゃってます。お宅は、汚いままですか?」などと、勧誘します。

 また、他の家ではなく、同じ1軒の家でも、徹底的にむしりとろうとします。「浴室交換をしたら、水道管に錆が見つかりました。水道管は全部つながっていますから、これはトイレも交換しないと・・・ 台所も・・・ 湯沸かし器も・・・ 洗面所も・・・・」と芋づる式を狙います。心優しい人は、あっという間に300万円支払わされます。ローンで。

 こういう訪問販売はクーリングオフの対象になりますから、契約時にはその制度の説明があるはずです。しかし、ないでしょう。クーリングオフの条項は、契約書の裏にあったりして、気づかないままです。客側が無知で、8日間を過ぎれば、もう解約できません。どんなに不要な工事でも、「もう部品を発注したんだよね。解約なんてできないよ」と押し切られます。

 このマンションでも、何度も何度も注意を喚起する掲示を張り出しても被害は後を絶ちません。だまされるような不注意な人は掲示も見ないのです。とにかく、契約前にちょっとだけでも管理人に相談してくれれば、騙されないのですが。

 なかには、営業マンを装って、空き巣の下見をする「窃盗犯」もいるそうです。とにかく、相手をしないことが大事です。

 困った連中です。押し売りって、パンツの紐くらいならいいんですが。(森光子が昔やってたドラマが懐かしいなあ)


2003/5