管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 三輪バイク 


  これは、非常に特殊なケースですから、参考にはならないと思いますが、おつきあい下さい。
 
 ある部屋が売れて、新しい人(Mさん)が入ってきました。管理人室にも挨拶におみえになって、ひととおりの手続き・説明が終わりかけた頃。。。「実は・・・」「はあ、なんですか?」「ちょっとお願いがあるんですが・・・・」 なんか意味深です。

 実はこの人、三輪バイクを購入したばかりでした。このバイクは、ピザ屋のバイクみたいな原付ではなく、1500ccとかある超大型のバイクだそうです。アメリカからの輸入品らしいです。私は最初、ピザ屋のものだと誤解して、「三輪バイクなら、今ちょうど中型バイク置き場が2台分あいてるから、じゅうぶん置けますよ」と答えたのですが、実際は1500ccですから、こんな簡単な問題では済みませんでした。
 パンフレットを見せてもらったら、とにかくでかい。半端じゃない。おまけに、三輪大型バイクというのは日本では自動車扱いになるらしく、「車庫証明が必要なんです」とのこと。「だったら、近くで月極め駐車場を借りたらどうですか?」「いやあ、駐車場は高いじゃないですか。このバイクは車ほどは大きくないし。なんとかなりませんかねえ?」「そんなこと急に言われたって。だいたい、この部屋を購入するときに調べなかったんですか? 私、初耳ですよ」「いやあ、不動産屋には言ったんだけど・・・・・・」(後で不動産屋に聞いたら、「”バイク”としか言わなかったので、置き場所は問題ないと思っていました」との返事。バイクだって置く場所は限られてるよ)

 急遽、臨時理事会が開かれました。Mさんも出席して懸命に懇願したようで、「じゃあ、中型バイク置き場をなんとか整理して、バイク3台分のスペースを作り、彼の大型三輪バイクを置けるようにしてあげよう。そうすれば、車庫証明もとれるよ。駐車場料金は車の3分の1にしよう」と、話は前進しました。しかしですねえ。整理と簡単に言いますが、他のバイクの移動にはその人の許可がいるし、臨時措置でMさんだけの特殊ケースとしても、新たに駐車場として登録するにはそれなりの手続きが要るし、こちらとしては簡単でないのです。「Mさん、あなたのためにやるのだから、移動をお願いするバイクの持ち主への交渉は、Mさん自身がやってくださいね」「はい、わかりました。やります」 という話だったのに、「すいません忙しくて」とか「いついっても留守なんですよ」とかうまいことをいって、全然交渉してくれません。しかたなく私が交渉すると、「そんな奴のために言うことを聞くなんて、理事会はおかしい。だいたい、車だったら、ちゃんと順番待ちをすべきだろう。他の人はみな何年も駐車場の空くのを待ってるだろう」と、正論を言い、怒ってしまいました。こうなるのはわかっていたから嫌だったのに。Mさんは理事会の承認がとれてからは何にもしません。結局私がなんとか説得して、場所は確保しました。そして三輪バイクは来ました。

 そうすると、住民のあちこちから「なんじゃこりゃ?」という質問が殺到。そして、「あのスペースに入れようと、新しいバイクを買う契約を結んだのに、俺はどこに置けばいいんだ」(なんで今頃言うの?)という若者まで出てきました。あ〜あ、なんでもかんでも管理人に来るんですよね。Mさんは、自分のバイクが置ければそれでいいらしく、苦情はヘノカッパです。理事会も安易に許しすぎです。「写真で見たときは、こんなにすごいでかいものだとは思わなかった」と言っています。確かに、滅多にみることのない特殊なものですが。

 
 よくよく考えてみると、このMさん、確信犯的な感じがします。マンション購入手続きの段階で申し入れを行えば確実に拒否されるから、入居が決まってから明かしたのではないでしょうか?(だって、これだけ苦労して置かせてあげたのに、今は挨拶もろくにしないんですよ)

 う〜ん。困った人だ。だいたい、このバイク、国産高級自動車並みの値段なんだから、そんな金があるなら、きちんと駐車場借りられるはずでしょ。プンプン!



 蛇足ですが、このバイク、自動車扱いのためヘルメットなしで乗れるそうです。爽快に走っています。

これじゃなくて
これが3輪になったようなもんです。ちなみにバックギアがあるそうです。


2003/4