管理人は、マジつらいよ   
マンション管理最前線

 ゴミの始末 

こんなふうにきちんと分別してくれればなあ。は〜 愚痴ばっかり。




 管理人&清掃の一番大きな仕事が、ゴミの処理です。「管理委託契約」の中の「業務」に関する項目では普通、「ゴミ収集後の集積場の清掃」と記載されていると思いますが、収集後だけではありません。実際は収集前がものすごく大変なのです。

 あるマンションのゴミ集積場には「ゴミ出しは、住民マナーのバロメーター」「ゴミ出しと住民レベルは正比例」なんていう張り紙がしてありますが、まさしくそのとおりです。当マンションも住民レベルに比例して?か、一部住民のゴミ出しマナーがひどいです。

 皆さんの住む自治体はどうでしょうか? 今はどこの自治体もゴミ出しのルール・分別が非常に厳しく、「めんどくさくて、もういやんなっちゃう」と思っている人も多いのではないでしょうか。当市は、他自治体と比較するとかなり分別がおおざっぱで、楽です。しかし、それでもルールを守れない人が大勢います。テレビCMでパパイヤ鈴木が「蓋とって、ラベルはがして、Wash Wash、つぶして」とあれだけさんざん流しても、ペットボトルをきちんと捨てられる人は2割に満たないのです。残りの8割はどうするのか? 管理人と清掃員が始末するのです。
 分別方法はかなり楽ですが、その分厳しいです。ルールどおりにゴミを出さないと持っていってくれません。その袋は警告シールを貼られて集積場に置き去りにされるのです。そのため、毎回、ゴミ収集前に私たちが、「きちんとルールを守っているのか?」すべてのゴミをチェックしなければならないのです。200世帯以上のゴミです。大量です。大変な仕事です。中には犬の糞や赤ちゃんのオムツまであります。気持ち悪いです。臭いです。汚いです。でも、やらなくてはいけません。契約には記載されておらず、住民の皆さんも管理人がそんなことをしているとは露知らないと思いますが、実際はいつもやっているのです。

 他のマンションでは、契約どおりに収集後の清掃しかしないところもあります。そこでは、マナー違反ゴミはそのまま放置され、「ルール違反」とシールを貼られて、ずっとそのままです。出した人間が引っ込めるまでそのままです。管理人に「みっともないから片付けてよ」と苦情を言う住民もいるそうですが、「ルールを守らないのが悪いのです。そんなゴミの処理は契約業務外です」とつっぱねるそうです。
 本当は、ここでもそうしたいのですが、カラスや野良猫も多く、野外の開放型の当マンションのゴミ集積場では、ゴミ袋が破られ散乱するため、そうもいってられません。ですから、清掃局の人が気持ちよく持って行ってくれるように、清掃車が来る前に始末するのです。

 「透明・半透明でないゴミ袋に入れたゴミは、すべて出して、半透明のゴミ袋(管理会社負担)に詰め替える」「ダンボールのような箱に入れたゴミも同様」「ビン・缶・ペットボトルなどの分別ゴミを一般ゴミに混入させている場合は、すべて取り出す。」「ナイフや串、割れた瀬戸物などの危険物が入っている場合は取り出して、新聞紙にくるみ、”刃物・危険”とマジックで書く」などなどの作業を行います。ゴミ集積場は屋外ですから、冬場や雨・強風の日は大変です。それでも必ず行います。私の前の管理人さんは、もっとえらい人で、小さなゴミは集めて、まとめて、大きな袋につめ替えることまでやっていました。「小さなのは清掃局職員のごつい手袋(危険物を持ってもケガしないように、すごい丈夫な手袋をしている)だとつかみにくいんだよ。だから、大きな袋にまとめてあげるんだ。こうすれば、彼らも時間が早く済む」と言っていました。脱帽します。

 それにしても、200以上も世帯があると、ルールを守らない人が2割いるだけでも重労働になります。それに危険です。以前、金串が入っているゴミ袋を踏み、串が靴を貫通したことがありました。幸いかすりキズで済みましたが、もうちょっとで大怪我でした。包丁をむき出しでビニールに入れる人もいます。神経を疑います。ペットボトルは蓋をしたままでつぶしてないと、風が強いとすぐに飛んで行きます。また、体積が非常に大きくなるため、収集員は嫌がります。
 市では、いろいろな広報手段でゴミルールを周知徹底させていますが、なかなか浸透しません。私も、ゴミだしに関するいろいろな掲示物を作成しますが、多少の効果はあるものの、完全ではありません。やはり、住民のレベルです。「放り投げれば、あとは知らん振り。しったこっちゃねえ」という考え方をあらためない限り、無理でしょう。どこのマンションでも管理人さんは困っていると思います。

 大きなゴミ袋を使わず、スーパーの小さなレジ袋などに無理矢理詰め込む人が大勢います。資源のムダを省くのにはいいのでしょうが、無理矢理詰め込むので、袋の口が閉まりません。袋も破れやすくなります。そこからゴミが漏れます。漏れたゴミは私たちが拾います。カラスや猫の絶好の標的にもなります。それから、業界用語で「助さん格さん」というゴミ袋の形態があり、これも困ります。小さなレジ袋を2〜3個結びつけて捨てることです。江戸時代の町人の旅姿で荷物をそんな風に持っていたので、こう呼びます。これ、この袋の中に異物が入っていて、袋を開けて中から取り出すときに大変なんです。2〜3個の袋がからまりあっているため、ほどくのが簡単ではないのです。どういう理由で「助さん格さん」にするのかわかりませんが、収集員も嫌がってますし、できればやめて欲しいです。

 当マンションでは定期的に古紙回収を行っていますが、「明日が古紙回収日なのに、一般ゴミの中に古新聞を捨てる」人がいます。なんなんでしょう? 年間予定表も配布し、古紙回収1週間前になるとあちこちに掲示を出して呼びかけています。それに気づかないのでしょうか? もったいないので、私たちが抜き取り、古紙回収の時に出しています。

 長い間この商売をやっていると、いろいろ傾向がわかります。ゴミ出しのマナーが悪い人というのは、たいていタバコを吸うか、ペットを飼っています。ルールを守らない場合は、ゴミ袋をあけます。その時に吸殻を発見します。ペットフードの袋や缶を発見します。ほぼ90%の確率でどちらかを発見します。特にタバコを吸う人は、「空き缶を灰皿代わりにする」という最低の行為をします。この缶はリサイクルできません。

 収集曜日や時間を守らない人も多いです。日を守らない人は言語道断です。玄関ホールにそのゴミを置いて、「誰ですか、ルールを守らないのは」と貼り紙します。そうでもしないと、この手の人は”平気の平左”で何度も繰り返します。前夜に出すのも困ります。特に生ゴミの場合、確実に猫に荒らされます。遅いのも困ります。収集後に出す人もいます。また、収集時間が当マンションより遅い、他のマンションのゴミ置場に置く人もいて、そこの管理人さんから苦情が来ます。

 それからよく、「管理人がゴミ袋をあけて、住民のプライバシーを覗き見している」という苦情や批判をマスコミなどで見聞きしますが、たしかにそういう変態もいるでしょうが、こっちだって好きでゴミ袋を開けているわけではありません。住民全員がゴミ出しルールを守ってくれれば、「ゴミ収集後にさっと水を蒔く」程度で済む仕事なのです。それを毎回1時間もかけてゴミをチェックするのです。胃がムカムカする嫌な仕事です。プライバシーの問題に関してですが、「やりたくはない」と思いながらも、あまりにも悪質なゴミ出しをする人の場合は、個人的に注意するため、袋の中をあさり、手紙や書類などで名前がわかるものを探すこともあります。悪質な人というのは常習犯ですから、一回きちんと名指しで警告しないとダメなのです。しかし、時々我々以外の見知らぬ人間が、ゴミ袋を開けて、何かを探していることがあります。怪しいです。やはり個人情報がわかる書類などはシュレッドしたほうが賢明です。


2003/3
追伸 その後分別方法が厳しく改訂されました